芸能人が個人事務所を作る事情とは?独立の成功例・失敗例も解説

芸能人が個人事務所を作る事情とは?独立の成功例・失敗例も解説

記事更新日: 2022/11/07

執筆: 大山直美

米倉涼子、中居正広、前田敦子にガッキーまで、、昨今、有名芸能人の独立報道が相次いでいます。

うまくいけば、ギャラの取り分や節税対策で、これまでの何倍もの収入を得ることも夢ではないようですが、独立にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

この記事では、芸能界の独立事情の裏側や、独立後の収入・税金事情、そして成功の明暗などについて解説していきます。

この記事でわかること

・なぜ最近の芸能人は独立するのか?業界の何が変わった?
節税にも効果的!個人事務所の税率メリットは最大21.8%も
皆がうまくいくわけではない?独立の成功・失敗パターン例
中堅でも年収8,000万?個人事務所だとどのくらい儲かるのか具体例を紹介

 

なぜ退所・独立が増えているのか?

節税メリットによる収入増

個人事務所を作るどんな芸能人にも必ず共通する動機が1つあります。それは「節税メリット」です。

実は、芸能人のほとんどは事務所に雇われているのではなく、個人事業主として、芸能事務所と業務委託契約を結んでいるだけです。

その際、個人事務所=「芸能人一人だけが所属する法人」を作って、そこで仕事を受けたほうが、仕事の自由度に加え、税金面でもメリットがあるため、皆こぞって独立を目指すのです。

税率が低くなる

個人事業主として活動している場合、収入に対してかかる税金は「所得税」です。

所得税の税率は収入が多ければ多いほど高くなり、最大45%です。

それに対し、個人事務所にかかる税金は「法人税」なので、最大税率が23.2%まで下がります

法人を作れば自身の手元に残る分を増やすことができるので、有名になり年間収入の多いタレントほど法人化するメリットがあります。

家賃や通信費なども経費化できる

法人化することのメリット2つめは、必要経費を申告できるということです。

拠点とする自宅の家賃や、仕事のための連絡をする携帯費用、通信費、移動のための車の購入なども経費化できる可能性があります。

費用として認められれば、その分利益の額が小さくなるので、支払う税金の額も少なくなります。

経費に含まれるもの、含まれないものの考え方については、以下の記事もご参考ください。

 

芸能界のボス世代・社長の交代

相次ぐ独立の次の要因は、テレビ黄金時代を牽引してきた社長世代の引退・代替わりです。

新人の頃から自らを育ててくれた恩師と離れることで、事務所独立を選ぶタレントが増えるようになりました。

一番わかりやすいのはジャニー喜多川氏が亡くなられた後のジャニーズ退所ラッシュでしょう。

また、米倉涼子さんが所属していたオスカー事務所も、世代交代による経営方針の変化でスタッフが大量退職し、それに続いてタレントの離脱も相次いだと言われています。

Youtube、SNSなどの台頭

昨今のメディアの多様化も、独立の増加に大きな影響を与えています。

かつての主要メディア、テレビ、映画、イベントなどは、事務所の力を使わなければ露出の機会が得られないのが当たり前でした

ところが、近年では個人で立ち上げたYouTubeチャンネル、SNSの発信からでも、バズれば一発で多数の視聴者、ファンを獲得することもできるようになりました。

これら新興メディアでの成功者の例を見て、事務所に頼らずに、自らファンを増やしマネタイズしていこうという層が増えてきたのです。

独禁法の監視の影響

芸能界内部の変化だけでなく、実は行政・ルールの変化も独立気運の高まりに影響しています。

業界でまことしやかに言われていた『辞めると干される』に最近、行政の監視が強まったのです。

2019年に公正取引委員会が、"芸能事務所を辞める際、将来の活動の妨害をほのめかして断念させるケースなどは独占禁止法で問題となり得る"との具体例を発表しました。

このことも、これまで辞めたくても怖くて辞めれなかったタレントたちの行動を後押ししました。

<成功パターン例>

それではここから、独立のメリットを生かして成功したパターンを具体的に見ていきましょう。

1. 取り分増大で収入増

芸能事務所は仕事を芸能人に委託しているので、そこには必ず仲介手数料が発生します。

吉本の芸人さんが「ギャラ10のうち事務所が9、芸人が1」と笑いのネタにすることもありますが、業界の手数料率は平均40%~60%ほどと言われています

それが独立後は、条件を交渉して仕事を選ぶことができるようになるため、自分の取り分を増やすことができるのです。

例えば、元吉本芸人の藤森慎吾さんは、独立後のギャラ交渉は自分で行っているとアンジャッシュの児嶋一哉さんのYouTubeチャンネルで明かしています。

また、「YouTubeの収入がテレビを超えた!」とも別チャンネルで発言したことも話題に。


藤森慎吾さんの収入を、独立前後で仮にざっくり推計してみましょう。

  • テレビ1本のギャラはひな壇で10~30万円 →中堅の20万円と推定
  • テレビ出演本数はトップ10位で月30本程 →半分の15本と推定
  • 吉本芸人のギャラ比率中央値は5:5ほど

  • YouTube広告は1再生数につき0.05円〜0.1円の単価
  • 藤森さんの動画公開本数は月16本、再生数平均200万回程

  <独立前> テレビメイン
テレビ出演料:
20万円×15本×ギャラ取り分50%=月150万円

年収1,800万円

<独立後> テレビ+YouTube
テレビ出演料:
20万円×15本=月300万円 年3,600万円

YouTube収入:
単価0.1円×200万回×16本=月320万円 年3,840万円

年収 7,440万円

なんと4倍もの差がついてしまいました!

実際はこれ以外にも、イベント出演など別の仕事もありますし、独立後のテレビ出演料も別の事務所を通している可能性もあるため100%総取りではないかもしれません。

しかしながら、児島さんが動画上で「なんでそんなに金持ってんの?」とツッコんでしまうのも無理はないほどの収入を得ていることは確実でしょう。

2. 個人ファンクラブ運営で収入増大

固定ファンが既に一定数いるのであれば、個人サロンやファンクラブ運営で儲けるパターンもかなり有効です。

例えば、ジャニーズ独立組で一番の成功者と言われる赤西仁さんは、個人ファンクラブの収入だけ年1.6億円の収入があるとも言われています。

年会費5,500円×会員数3万人=年収1億6,500万円

ただし、赤西仁さんの独立後の成功は、SMAPの元マネージャーである敏腕スタッフによってサポートを受けたことによって成し得たという見解もあります。

独立時の本人の人気だけでなく、信頼できる力のあるスタッフがその後も付いてくれるかも重要なポイントのようです。

3. 芸能以外の事業運営で成功

独立して個人事務所を作るのは、芸能活動のためだけとは限りません。

タレント活動以外のビジネスを行うために会社を設立し、別領域で収入を得る方も沢山います。

以下の方々が皆さん、社長や経営者だというのをご存知ですか?

  • 柴咲コウさん →サステナブルにこだわったアパレルブランド経営
  • 田村淳さん →日本初の遺書動画サービス運営会社の会長
  • 西川貴教さん →地域再生事業の会社を経営
  • GACKTさん →東南アジアでの投資事業を行う企業の共同経営者
  • ダレノガレ明美さん →自身プロデュースのコスメやアパレルの会社を設立


例えば、ダレノガレ明美さんは、芸能活動+事業運営で、年収6,000万円以上を得ていると過去のテレビ出演時に明かしたこともあるそうです。

芸能業には浮き沈みのリスクもあるため、独立して第二のビジネスを始めることも賢い一手かもしれません。

 

<苦労・失敗パターン例>

自由度や収入の増大を目指して独立してみたものの、その後の活動が思うようにいかず、苦労・失敗してしまうパターンもあるようです。

ここからは、その具体例を見ていきましょう。

1. 本業に手が回らなくなる

米倉涼子さんが、2021年に『櫻井・有吉THE夜会』に出演した際「独立って大変なの?」と問われ、「やめたほうがいい」と即答したそうです。

理由としては、会社全体の業務を知っていたいと動いてしまう中で、演者としての仕事との両立が大変だということ。

社長業に時間をとられるとパフォーマーとしての準備に割く時間が減ってしまうことがジレンマのようでした。

独立した際、自身が社長になる方も多いですが、場合によっては、親族や信頼できるスタッフに経営を任せることも必要なようです。

2. 管理を怠ると脱税も

せっかく独立したのに、大変だからと管理の部分を怠ると、重大な損害に繋がることもあります。

チュートリアルの徳井義実さんの脱税事案などはその最たるものでしょう。

2019年に個人事務所における税金の無申告を東京国税局から指摘され、申告漏れしていた1億2,000万円と追徴課税3,400万円を支払うことになりました。

「自身のルーズさが原因」と会見では説明していましたが、7年間にわたり所得隠しや無申告があったのですから、その間に周囲の指摘や気づきなどがあってもおかしくはなかったはずです。

適切な士業の支援を受けるべき

知らぬ間に脱税や脱法行為を行わないためにも、経営や税金の知識に自信がない場合は、適切な士業の支援をしっかりうけるべきです。

税金申告処理などを税理士に依頼するのであれば、一件あたり数万円~お願いできますし、月30~50万円程かかりますが、顧問税理士を雇うのも手でしょう。

また、登記の手続きが難しい場合は行政書士・司法書士などの力も借りましょう。

動画やコンテンツ制作をメインにするのであれば著作権などに詳しい人のサポートを受けられれば更に心強いでしょう。

 

3. 円満退社の失敗で裁判に

独立に成功した方々も沢山いますが、中には、独立相談のタイミングを誤り、合意に至らずに揉めてしまうこともあるようです。

朝ドラマで一躍有名になった能年玲奈さん(のん さん)は、当時所属事務所との契約が残っているにも関わらず、先に個人事務所を立ち上げたことで揉めてしまいました。

また、俳優の岡田健史さんは、事務所からの退所が合意に至らず裁判にまで発展。昨年8月にやっと和解が成立したそうです。

なお、一方で、最近ゴチレースのレギュラー入りで話題になった高杉真宙さんも、実は、岡田健史さんと同じ事務所からの独立組です。

岡田健史さんの例を受けてか、独立後も営業活動で元事務所と協力関係をもつなど良好な関係維持に努めており、大型の仕事が舞い込むのは元事務所の女性社長の力によるところが大きいそうです。

先人の例を見て、独立を穏便に、良好に進めることができるかどうかが、その後の成功の鍵に大きく関わるようです。

4. 露出制限やリスク管理の苦労

公正取引委員会の監視が強まったとはいえ、テレビなどに太いパイプを持つ大手から独立すると、その後の露出に影響が出てしまうことは今でもあるようです。

また、テレビCMは特に信頼度の高いタレントを起用したがるため、独立後にYouTubeなどの規制やルールがまだ過渡期の世界で有名になっても、信用問題が怖くて使ってもらえないこともあります

さらに、週刊誌報道やスキャンダル対策も、大手芸能事務所であれば、雑誌やメディアとの独自の結びつきで穏便な処理を講じてくれる場合もあるそうですが、独立後はそうはいきません。

個人事務所になった場合は、これらのリスク対策を自ら管理しなければならない苦労も肝に銘じておきましょう。

まとめ

芸能人の独立・個人事務所設立について、そのメリット・デメリットを解説しました。

YouTubeやSNS、有料配信サービスの台頭もあり、業界の常識も変わりつつあるため、今後も様々な形で独立するタレントが増えることは必至です

ただし「独立して自由に仕事がしたい」と飛び出したとしても、人によって成功したパターン、失敗したパターンが様々です。

自分の応援している芸能人が独立を画策しているようであれば、失敗方向に進んでいないか注目してみるのも良いでしょう。

 

画像出典元:o-dan

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