連結納税|制度導入のメリット・デメリットを徹底解説!

連結納税|制度導入のメリット・デメリットを徹底解説!

記事更新日: 2019/12/05

執筆: 奥谷佳子

グローバル化とそれに伴う事業規模の拡大が進むなか、企業内のある部門を独立させ新たな法人を設立する、外注先の企業を買収して子会社化するなど、複数の企業を傘下においた「グループ法人」の経営形態をとる企業が増えています。

企業は利益を追求することが目的ですから、グループ化により収益性や効率性の向上を図り、販路や業界シェアの拡大を目指すといった組織再編の流れが起こるのも必然です。

このようなグループ法人に対する税制の一つに「連結納税制度」というものがあります。

平成14年に創設された制度で、グループ内の法人の利益(所得)を合算して税額を計算するというものです。今回は連結納税の定義や要件、メリットとデメリットについて解説していきます。

「連結納税制度」とは?

連結納税とは何か?

通常、単体の法人であれば、課税期間の所得を計算して黒字なら納税、赤字なら繰越欠損金として次期以降に赤字を繰越す…といった内容の確定申告書を単独で作成して税務申告を完結します。

「連結納税」というのは、グループに属する法人それぞれが一旦課税期間の所得を計算した後に、それぞれの所得を合算してグループ全体の所得を再計算して納税を行うという制度です。

グループ内に黒字企業と赤字企業があった場合、連結納税ではこの黒字と赤字を相殺(損益通算)することが認められています。

具体的には以下の例示のようなります。

例示

同グループ

・A企業(黒字) 所得     300万円
・B企業(赤字) 所得 -200万円

《 A企業・B企業 連結納税をしない場合※ 》

※連結納税の要件については後述します。

・A企業     300万円 × ※30%=90万円
・B企業 -200万円 × ※30%=   0円

※実効税率30%として計算

納税額合計90万円

《 A企業・B企業 連結納税により損益通算した場合 》

損益通算後の所得 

・300万円-200万円=100万円 × ※30%=30万円

※実効税率30%として計算

納税額合計30万円

連結することにより60万円税額が少なくなります。

赤字企業がある場合、各社がそれぞれ単独で税額を計算するより、一つのグループとして計算したほうが税額を抑えられるという点が最大のメリットです。

ただし、連結納税制度は法人税のみで、地方税や事業税には適用されませんので注意が必要です。

連結納税をするための要件

連結納税をするにあたってポイントとなるのが、グループ法人に組み込むもうとする会社を「完全支配している」ことの定義です(法人税法第2条第12号の7の6)

完全支配関係とは、法人税法で「一の者が法人の発行済数式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係」としています。

要約すると、親会社がグループとする会社の発行株式の全部を直接保有又は間接的に保有していることが要件となります。

つまり、親会社が発行株式の全部を直接保有するケースの他、親会社の100%子会社が孫会社の株式を100%保有している場合、孫会社も完全支配関係に含まれるということです。


画像出典:国税庁 連結納税制度の概要


連結納税制度では、親会社が100%株式を保有する子会社は原則として「全て」連結グループに含めなければならず、意図的に一部の会社を除外することは認められません(外国法人は100%支配会社であっても連結納税グループに含めることはできません)

承認申請

連結納税をするためには、連結納税を開始する事業年度の開始3ヶ月前までに「連結納税の承認申請書」を国税庁長官に提出し、その承認を得なければなりません。

また、承認を受けた後は止むを得ない事情がある場合を除き連結納税を続けなければなりませんので、意図的に連結納税をしないということはできなくなります

制度を適用する際には十分注意する必要があります。

その他詳しくは「国税庁 連結納税制度の概要」を参照下さい。

連結納税制度のメリットとデメリット

メリット

連結納税をした場合のメリットとして、次のようなものがあります。

1. 連結法人間の黒字・赤字を損益通算することが可能となるため、結果として節税になる

前述とおり、連結法人間の黒字と赤字を損益通算できますので、単体法人で申告する場合と比べて法人税額が少なくなるケースがあります

黒字経営である親会社が節税のために、赤字経営の100%子会社を連結して納税額を抑えることも可能です。

2. 連結事業年度で生じた繰越欠損金を連結法人全体で控除することができる

連結により欠損金が生じた場合、単体法人と同様に欠損金を繰越すことができます(連結欠損金)

翌期以降に黒字が出た場合には当該欠損金と相殺することができますので税額を抑えることが可能です。

 

3. 親会社が持つ繰越欠損金を連結法人全体で控除することができる

親会社が繰越欠損金を持っている場合、連結した子会社の黒字と相殺することができます。

連結グループ全体でみれば納税額を抑えることが可能ですし、親会社の繰越欠損金を早期に解消することができます

4. 試験研究費控除など、税額控除額の上限が拡大する

税額控除のなかには、試験研究費の税額控除のようにグループ全体で支出した費用の総額に対して一定割合を乗じて計算するものもあります。

連結することで費用スケールが大きくなり、結果として税額控除額が増加するので節税となる場合があるというわけです。

デメリット

このように、主に節税面でメリットの多い連結納税制度ですが、当然デメリットもあります。

1. 子会社が持つ繰越欠損金が切り捨てられる

黒字企業である親法人が節税をするために、繰越欠損金を多く持つ会社を子会社として連結してしまうと租税回避が自由にできてしまうことになります。

これを防止するため、税法では連結納税を開始するにあたって「100%子会社が持つ繰越欠損金については一部例外を除き切り捨てる」としています。

親会社が持つ繰越欠損金を連結グループで控除することはできますが「子会社が持つ繰越欠損金は消滅するので連結グループとして控除することができない」ということです。

子会社の繰越欠損金が消滅しますので、場合によっては繰越欠損金を使って子会社単独で税務申告を行ったほうが納税額を抑えることができた、という事態も起こり得ます。

2. 連結グループに組み込む際、子会社が持つ資産を時価評価しなければならない

100%子会社が所有する資産に有価証券の含み損などがある場合、このまま連結グループに組み込んでしまうと、連結後に資産の評価損を計上してしまえば赤字企業をグループ内に作り出すことが可能となり、租税回避に繋がります。

これを防止するため、税法では100%子会社を連結グループに組み込む際に子会社の資産を時価評価することを求めています。

もし仮に評価損を計上するということになれば、子会社の自己資本比率が低下することを意味し、グループ全体の自己資本比率が低下することとなります。

3. 「中小企業者の特例」を使うことができなくなる

「中小企業者の軽減税率」や「交際費の限度額」など、中小企業者であれば受けることのできる税法上の特典というのがありますが、連結納税における中小企業者の適用判定は親会社が基準となります。

したがって、親会社が中小企業者に該当しない場合には、これら税法上の特典は使えなくなりますので、結果として納税額が増加するということもあり得ます。

まとめ

財務的な観点からみれば、連結納税はグループ全体の収支を明らかにすることができ、より正確な経営分析が可能となりますので大きなメリットがあります。

しかし、税制面から見た場合には必ずしもメリットばかりではありません。

一度承認を受けてしまうと、以降は継続適用が義務付けられます。

短期的な損益通算だけを念頭に連結するのではなく、子会社を含めグループ全体の中長期的な展望をふまえた上で適用の判断をすることが大切です。

画像出典元:o-dan

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