年齢や勤続年数に応じて役職や賃金が決定する「年功序列制度」。
数多くの日本企業が採用している人事制度ですが、実はいくつものデメリットがあることをご存知でしょうか?
今回は、年功序列のメリット・デメリットを詳しく解説します。
さらに、年功序列と相対する「成果主義制度」のメリット・デメリットも紹介するので、「年功序列は廃止するべきかな?」と悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
そもそも、年功序列とはどのような制度を指すのでしょうか?
年功序列の定義や生まれた理由について解説します。
年功序列とは、社員の年齢や勤続年数に重きを置いて賃金や役職を決定する人事制度です。
「社員は勤務し続けるほどスキルが向上していく」といった考えに基づいた制度であり、勤続年数が高いほどもらえる給料が多い傾向にあります。
年功序列は日本特有の制度といわれていますが、ドイツやスペインなどの諸外国も年齢が高くなるほど給与が増加しているようです。
年功序列が生まれたのは、高度経済成長期の頃。
それまでの日本では、能力に対して賃金を払うのが一般的でした。
しかし戦後まもない中、人々は「生活の安定」や「賃金の保証」を求め、企業側は「長期的な社員の育成」や「人員の囲い込み」を模索し始めました。
そこで、同じ会社に長年務めると給料が上がる「年功序列」を確立させることで、双方の利害を一致させたのです。
年功序列と相対する人事制度として、「成果主義」が挙げられます。
昨今、着々と増え続けている成果主義の概要や年功序列との違いについて解説していきましょう。
成果主義とは、社員の実力や成果物の質によって賃金や役職を決定する人事制度です。
バブル崩壊に伴い少しずつ導入されている制度であり、コスト削減のために「年長者であればあるほど高賃金」から「成果を出している社員ほど高賃金」へと変化していきました。
年功序列と成果主義の違いは「評価基準」です。
年功序列は年齢や勤続年数に応じて給与が決まりますが、どれだけ成果を上げたとしても賃金には反映されません。
一方、成果主義は社員の成績に応じて給与を決定するので、長く勤務していても賃金が上がらないケースもあり得ます。
「自社にはどちらの制度が適しているんだろう?」と感じた方は、次項から紹介する年功序列と成果主義のそれぞれのメリット・デメリットをチェックしてみてください。
年功序列のメリットとしては、以下3つが挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
年功序列は、年齢や勤続年数に準じて給与や役職が決められるため、人事評価がしやすいメリットがあります。
どれくらい働ければどれくらいの賃金をもらえるのかが明白だからこそ、社員が給与形態に不安を覚えることもありません。
会社に長く勤務すればするほど給与や役職が上がるため、在籍期間の長い社員を増やすことが可能です。
長期勤続を前提として社員が働いているため、顔ぶれが変わりづらく組織の連帯感を強められるでしょう。
社員にとっても、勤続期間によって給与が上がることからライフプランが立てやすいメリットがあります。
年功序列の会社は在籍期間の長い社員が多いため、新入社員の育成もしっかり行えます。
長期にわたってじっくりと会社のノウハウを教えられるからこそ、着実に優秀な社員を育てられるのです。
さらに、長期で勤務するからこそ社員それぞれの能力を把握し、適材適所に配置することができます。
年功序列には、以下のようなデメリットがあります。
成果主義を導入する企業が増えているということは、年功序列に決定的なデメリットがあるということです。
人事制度に迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
年功序列は、どれだけ仕事で成果を出しても評価に反映されないので、社員のモチベーションが上がりづらいデメリットがあります。
「成果を上げている若手社員が、ベテラン社員よりも給料が少ない」といったことも起こりがちです。
このため、優秀な社員や若手社員が不満を抱いたり、離職したりするケースも考えられます。
成果によって給与が決定されるわけではないからこそ、生産性が低下することも多いです。
「頑張っても賃金が上がらないなら、最低限の仕事だけすればいいか」といった考えが充満してしまい、求められたことだけを行う人材が増えてしまいます。
ハイクオリティーを目指すのではなく、時間内にほどほどの仕事をこなすことに注力する社員が増加すれば、会社の業績は伸び悩んでしまうでしょう。
年功序列は長期的に働いてもらうようにつくられた制度だからこそ、高齢の社員が増加すると、人件費も増えるデメリットがあります。
業績拡大を行うために新入社員を雇いたくても、多くの高齢社員に給与を支払うだけで精一杯になってしまい、会社が成長する機会を逃してしまうことも考えられるでしょう。
年功序列と相反する「成果主義」のメリットは以下3つです。
それぞれについて詳しく解説します。
成果主義は、社員の実力や成績、結果に至るまでの過程が評価されるので、モチベーションの向上につながります。
頑張れば頑張るほど給与がアップするのであれば、一人ひとりが「目標以上を目指そう!」など会社の成長に向けて積極的に行動を起こしてくれるのです。
成果主義ならば、実力のある社員に高い給与を支払うと同時に、結果を出していない社員は低い給与で雇用することができます。
年功序列の場合に起こりがちな、実力の低い社員に高い給与を支払うといったことがなくなるので、コスト削減につながり適切な人件費で運用可能です。
自分の実力次第で給与が決まるからこそ、仕事の無駄を省き効率的に業務を遂行する社員が増えるため、生産性を高められます。
さらに、能力に自信のある優秀な人材も集めることができるため、会社のさらなる発展のための助けになるでしょう。
成果主義におけるデメリットは以下の通りです。
メリットとともにデメリットも把握しておくことで、自社に適した人事制度を導入できます。
年功序列の評価基準は年齢や勤続年数ですが、成果主義は成績や実力なので明確な評価基準の設定が難しいというデメリットが挙げられます。
さらに、事務職などの職種は目に見える基準を決めづらいため、基準の合意を社内で得るには様々な工夫が必要です。
成績で給与や役職が決定するからこそ、個人プレーを乱発する社員も生まれがちです。
チームワークが必要な場面で成果を出せなかったり、直接業績につながらない仕事は手を抜いてしまったりなどが起こる可能性も秘めています。
会社全体の利益ではなく自分の成績だけに注力してしまえば、組織の崩壊につながってしまうかもしれません。
「評価に値する成績が上げられない」と離職を選んでしまう社員も増えるでしょう。
後輩よりも給与が低いケースも発生するので、ストレスを感じてしまい、他の会社を検討することも考えられます。
現在、年功序列は様々な企業が廃止の方向へと舵をきっています。
そこで、ここからは年功序列が見限られてしまっている理由や社員の評価について解説していきましょう。
経済状況が停滞しているからこそ、終身雇用を前提とした年功序列を廃止する企業が増えています。
業績が拡大するか定かではない中、実力のない社員に高い給与を支払う体制が崩壊しつつあるのです。
少子高齢化によって労働人口が減少している現在、他社よりも優秀な人材を確保するために年功序列を廃止する企業もあります。
自分の頑張り次第で短期的に給与を伸ばせる成果主義を導入すれば、実力のある人材を多く雇用できるでしょう。
現在、グローバル化やデジタル化が進んでいることで、年功序列の根底にある「勤務年数が長い=仕事ができる」といった考えを断言しづらくなっています。
さらに、すでに高いスキルを持っている人や外国人など、多様な人材が採用されることも増えており、「年功序列による評価が勤務環境に適していない」と考える企業も多いです。
フォー・ノーツ株式会社による調査によると、年功序列の会社に勤める多くの社員は「仕事の結果やプロセスが公正に評価されず、やりがいを持って働けない」と答えていました。
他にも、年功序列だからこそ「適切な目標設定がされない」「自身の成長を実感できない」といったようなネガティブな意見を抱えている社員も見られました。
年功序列は勤務年数を重ねるごとに給与が増える安心感はありますが、純粋に仕事の成果を評価されないことから、やりがいを感じられないデメリットも考えられます。
「今までの年功序列を捨てていいのかな?」と悩んでいませんか?
しかし、実は今多くの有名企業が成果主義を導入しているのです。
こちらでは、成果主義を導入している企業の成功事例を紹介します。
株式会社ユニクロは、親会社の株式会社ファーストリテイリングが掲げるコンセプトのもと、「完全実力主義」を導入しています。
「世界一いい仕事をしたら、世界一いい報酬をもらってもいいじゃないか」という考えのもと、社員一人一人に成長する機会を与えています。
上司と話し合いながら目標を設定し、3ヶ月ごとの評価で給与が決定される仕組みです。
大東建託株式会社も、給与や昇格が実力によって決められる成果主義です。
20代でも高い成績を残せば約2,000万円の年収を受け取れる企業であり、まさに完全実力主義といえるでしょう。
株式会社リクルートホールディングスでは、社員の報酬は仕事の価値に応じた等級によって決定する「ミッショングレード制」というものを導入しています。
期待に沿った成果を出せれば給与は上がりますが、失敗してしまえば等級が下がるといった成果主義制度が導入されているのです。
ソニー株式会社は、会社から与えられる役割に応じて等級が決まる成果主義を開始しています。
期末に、「実績」と「行動」に基づいた評価を実施し、その「総合評価」により給与等級を改定していきます。
さらに、ボーナスは会社の業績と併せて、個人の実績が反映されるため、頑張り次第で高い年収を獲得することが可能です。
パナソニック株式会社は、仕事の大きさや役割に応じて給与を決定する成果主義を導入しています。
大企業ゆえ、多様な価値観をもった社員と良好なコミュニケーションをとりながら成果を出せる人材の評価が高くなる傾向にあるようです。
終身雇用を生み出したと言われているパナソニック株式会社ですが、さらなる発展のもと成果主義へと改革に踏み切ったのです。
年功序列から成果主義へ評価制度を移行する場合は、以下2つのポイントを意識してみましょう。
それぞれの注意点についても解説します。
「賃金制度は完全歩合制にするか」「年俸制を導入するか」など、自社にマッチした人事・賃金制度を設立してみましょう。
賃金制度の改革は、多くの社員にとって仕事への意欲や生活に大きな影響を与えるものです。
突然、成果主義へ移行してしまうと恩恵を受けない社員が離職する可能性もあるため、徐々に浸透させるような環境を作ってみてください。
どんな成果を上げれば給与が上がるのかなど、評価制度を明確に決定しましょう。
評価制度が不透明では、評価する側はもちろん評価される社員も困惑をしてしまい、中には不満を感じる人も出てきてしまいます。
また、営業職など成果が目に見える職種と、事務職などの成果が見えにくい職種では、同様の評価基準では不公平感が拭えません。
部署ごとに、成果主義の詳細な評価基準を確立したうえで、社員に対してしっかりとした説明を行うことも忘れないようにしてください。
日本企業の多くが導入している年功序列ですが、社員のモチベーションが上がりづらく、生産性が低下したりコストがかかったりなどのデメリットがあります。
一方、成果主義は評価基準の設定が難しいなどの欠点がありますが、社員のやる気が上がり、生産性の向上や適切な人件費で運用できるといった大きな魅力があるのです。
現在、大企業も開始している「成果主義」にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:Unsplash
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