人事評価とは、社員の能力や業績、会社への貢献度などを一定の基準で評価することです。
現在中小企業では、「年功序列」ではなく「能力」によって待遇や給与を決める企業が増えています。いかに人事評価を行うかは非常に重要な問題といえます。
「人事評価はあるけれどうまく運用できていない」「導入していない」という企業は、社員のモチベーション向上を図るためにも、一刻も早く適切な人事評価制度を導入する必要があるでしょう。
本記事では、人事評価制度の役割や目的、人事評価制度導入のポイントや評価シート作成のコツなどを紹介します。
人事評価制度の導入に迷っている企業にむけておすすめの人事評価ツールも紹介するので、併せて確認してみてください。
このページの目次
人事評価制度をうまく利用できれば、企業の成長が期待できます。中小企業が更なる発展を目指す上で非常に有益なツールの一つと言えそうですが、実際にはどのようなものなのでしょうか。
人事評価制度の概要と中小企業における人事評価制度について紹介します。
人事評価とは、社員のパフォーマンスや会社への貢献度等を一定の評価基準の下で評価すること。「人事評価制度」というときは、そのための仕組みを指します。
人事評価によって得られた評価結果は、社員の賃金や待遇に反映されるほか、企業の人材育成や人材配置などにも適用されます。
大企業と比較して従業員数の少ない中小企業では、従来の「年功序列」制度を廃止し、実力主義に切り替えるケースが少なくありません。
人事評価によって社員の得手・不得手や能力を適切に測れれば、実力・適性に応じた人員配置が可能です。限られた人的リソースを有効活用でき、企業の生産性向上や業績アップが期待できます。
人事評価における評価基準は、企業によってさまざまです。しかし、どの企業も半年・1年など、一定の期間ごとに人事評価を行うのが一般的です。
人材不足に苦しむ中小企業が多いにもかかわらず、中小企業の間で人事評価制度が完全に浸透しているとは言い難い状態です。
2016年に厚生労働省が発表した「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書~企業の雇用管理の経営への効果~」によると、
「働きぶりを評価し昇給や昇進に反映する仕組み」を採用していない企業は、
という結果でした。
また、仕組みを導入している企業であっても、それを社員にフィードバックしていない企業は
にも上ります。
これは、企業規模が小さいほどコア業務以外の部分に時間や人を割く余裕がなくなるためと推察できます。
政府主導の「働き方改革」が進む中、政府も企業の人事評価制度導入を積極的に推進しています。
なぜ「中小企業ほど人事評価制度を導入すべき」といわれるのでしょうか。
人材不足に陥りやすい中小企業の場合、適切な人事評価が社員の定着率を高めるきっかけとなり得ます。
新しい人材の確保にはコストがかかる上、育成には時間も必要です。企業の業績を安定させ更なる発展を目指すなら、現在いる熟達した社員の離職を抑え、長く定着してもらうことが必須でしょう。
ところが会社で適切な人事評価が行われない場合、社員はやりがいや目標を持って働けません。
「頑張っても報われない」「働かない社員と待遇が同じ」では、優秀な社員は条件の良い会社に移っていってしまうでしょう。
適切な人事評価の導入は、社員のモチベーションを高めます。社員全員が会社の業績や将来目標のために一丸となって働きやすく、それぞれが大きな戦力となるのです。
社員数が少ない中小企業ほど、個々のトラブルや状況が全体へ与える影響が大きくなります。人事評価の導入は、こうしたトラブルの早期発見に有益です。
人事評価するには、社員と個別に言葉を交わしたり現状把握に努めたりせねばなりません。上司と部下が密なコミュニケーションを取りやすく、悩みやトラブルを相談しやすい環境につながります。
また、人事評価の導入は上司をリーダーとして育成する上でも有益です。
まず、部下の人事評価をする上司は「理想の社員」「会社が求める社員」とは何かを常に考えねばなりません。そしてその上で、自ら手本を示さねばならないと気持ちが引き締まるでしょう。
加えて部下と接する機会が増えれば、「リーダーとしてどうふるまうべきか」も次第に見えてくるはずです。
人事評価という責任のある仕事を任せることで、上司にもリーダーとしての自覚が生まれます。
中小企業が人事評価を取り入れるメリットは大きいといえます。「現在人事評価を導入していない」という中小企業でも、状況によっては人事評価導入を検討した方が良いでしょう。
中小企業が人事評価を導入するべき目安について考察します。
従業員数が50人以上になると、全社員の顔と名前を完璧に把握するのが困難になります。
社員への評価が偏りやすく、一方的でワンマンな評価に不満を持つ社員も増えてくるかもしれません。人事評価制度を導入して、評価の透明性を高めるのがベターです。
一般に、チームの人員が5人を超えると業務の把握や社員の管理が困難になりやすいといわれます。
現在の自社の状況をまずはきちんと把握してみてはいかがでしょうか。
従来のような年功序列型の給与形態の場合、働きの悪い社員にも高額な給与を支払わねばなりません。
これは現代の会社のあり方にそぐわない上、人件費が肥大化する原因ともなります。
人件費を無駄なく効率的に使うなら「働きの良い人には給与を増やし、悪い人は減らす」といったメリハリの効いた配分が必要です。
人事評価は、給与を増やしたり減らしたりする際の根拠となります。給与が減ってしまった社員も評価を見せられれば納得せざるを得ません。
「給与を上げるにはどうすべきか」を自身で考えるようになるでしょう。
ただし、人事評価では「誰もが納得できる評価基準を定めること」「評価が適切かつ公平であること」に注意しなければなりません。
適切な人事評価制度があれば、新規採用するときも「どのような社員を選ぶべきか」を判断しやすくなります。
人事評価では、「あるべき社員の姿」「評価すべき行動」が明確になっているはずです。新規採用のときもビジョンを明確に打ち出しやすく、それを踏まえた応募者が集まります。
会社は「欲しい」と思う人材を採用しやすくなりますし、採用された方も「こんな会社だと思わなかった」というミスマッチが少なくなるでしょう。
新規に入社した社員は会社の意図を理解した上で入社するため定着しやすく、離職率も下がるはずです。
人事評価の重要性が広く知られるようになるにつれて、積極的に人事評価制度を導入する中小企業が増えているようです。
人事評価システム「あしたのチーム」の導入事例より、人事評価制度の変革によって企業の雰囲気や社員の意識が変わった企業を2つ紹介します。
昭和8年の創業「株式会社平岡」は年功序列の給与体制でした。
ところが近年、若い社員から不満の声が上がるようになり、会社は人事評価制度の見直しを決定。
コンピテンシー(優れた成果をあげる人の行動特性)がほどよくマスター化でき、行動目標の設定が容易な人事評価システムを導入したのです。
これにより社員は自身で考えて仕事の目標を設定するようになりました。
それまでの受動的な勤務態度から能動的に「考えて動く」マインドに変わり、会社全体に前向きな雰囲気が醸成されつつあります。
こちらの会社では、人事評価制度の導入前は経営者一人で全社員の給与を決定していました。
ところが離職率が高く、優秀な人材が残らないという事態に直面。評価基準を明確にし、社員にも分かりやすくするために透明性の高い人事評価制度を導入しました。
これにより不公平感が軽減された他、いわゆる「モンスター社員」が退職し、企業の雰囲気が改善されます。
加えて「会社の求める人物像」が評価制度の確立で明確になったため、「会社にマッチした人材」が集まりやすくなりました。
人事評価の制度によっては、かえって混乱を招いたり社員のモチベーションを下げることになりかねません。
中小企業が人事評価を導入する上でのポイント、さらには失敗例を紹介します。
評価する側が人事評価の意義や約束事を理解していない場合、公正な評価は不可能です。
評価者それぞれが評価の判断基準について理解を深め、評価者によってばらつきが出ないようにすることが重要です。
特に発生しがちな評価ミスとしては、次のようなケースがあります。
人事評価制度を導入する際は、評価者への研修もきちんと行うことが大切です。
せっかく人事評価を行っても、FBが無ければ意味がありません。
評価結果を社員に伝えるとともに、その社員が持つ課題や今後期待されること、ステップアップに必要なことなどをきちんと提示しましょう。
人事評価が「ただ賃金や待遇を決めるためのもの」になってしまえば、社員の育成やモチベーションアップにはつながりません。
人事評価のメリットである「社員の育成」「社員の能動的態度の醸成」を得るためには、面談などを行ってしっかりFBを行うことが重要です。
人事評価の導入がスムーズにいかず、失敗してしまうケースも少なくはありません。
まず多いのが「評価者の不満による失敗」です。
中小企業で人事評価を導入すると、ただでさえたくさんの仕事を抱えているチームリーダーは新たな仕事を背負い込むことになります。
「自分の仕事ができない」「その分仕事を減らしてくれ」などの声が上がり、結局人事評価をやめてしまうのです。
次に「社員の不満による失敗」も少なくありません。
人事評価の結果によっては、「あの人より評価が低いのはあり得ない」「えこひいきだ」などの声が上がり、会社の雰囲気がギスギスしてしまいます。
対人トラブルの増加から、人事評価をあきらめてしまう会社も多いでしょう。
評価者や社員による不満は、人事評価導入初期にはよくあることです。これに対処するには、まず「評価者の意識を改革する」「噴出した課題は一つ一つ対応する」を心がけましょう。
評価者の意識改革は、前述のとおり事前研修などを行うことが有益です。
一方、社員の不満は中にくすぶっていたものです。表面化してよかったと前向きにとらえ、一つ一つ問題をクリアしていくように努めてください。
人事評価制度は「やる」と決めてすぐにできるものではありません。一般的に、導入までには半年~1年程度かけて準備するのが望ましいとされます。
実際に社内に人事評価制度を作る場合、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。人事評価を導入する際の手順を見ていきましょう。
人事評価制度は、次の3つによって構成されるのが一般的です。
それぞれの評価については、良い方から順番に5~1段階で数値化した5段階評価を使用するのが一般的です。
また、これらの評価を補うために、以下のような評価手法を併用するのも有益です。
上司が判断した5段階評価では評価の偏り・誤りが懸念されます。評価される側が「公平である」と感じられるよう、人事評価では異なるタイプの評価制度を併用するのがおすすめです。
評価制度を併用すれば、「業績が悪いけれど、やる気はあり他者からの評価も好評」など、一面的な評価では見えない長所が見えてくることもあります。
これは、社員のモチベーションを保つ上で非常に有益です。
評価制度が決まったら、「誰が評価を担当するか」を決めねばなりません。一般的には、社員直属の上司が評価者となることが多いでしょう。
ただし、評価者となるには「私情を挟まない」「評価のポイントをきちんと把握している」といったことが必須です。
誰が評価者になるにせよ、「評価者となるための研修」は必ず行いましょう。
また、人事評価は期間を決めて行われます。変動しやすい情意評価と成績評価は半年に1度程度、変動がさほどない能力評価は1年に1度程度というのが一般的です。
人事評価制度を導入する際は個々の社員用の「人事評価シート」が必要です。
どのようにシートを作成しようか迷ったら、厚生労働省のテンプレートを活用してみましょう。人事評価制度の導入を推奨しているだけあって、さまざまな職種の評価シートがダウンロードできます。
厚生労働省の人事評価シートと、評価結果の活用法について見ていきましょう。
厚生労働省の「職業能力評価シート」は、厚生労働省が提案するチェック式の評価シートです。
「評価シート(本体)」と「サブツール」の2つで構成されており、社員の能力や知識を具体的に評価できるようになっています。
キャリアマップや活用マニュアルもセットになっており、自社に該当する職種の評価シートをダウンロードすればすぐに活用できます。
こちらを利用すれば、評価を受ける社員に対し「能力はどの程度なのか」「次のレベルにいくには何が不足しているのか」を具体的に提示することが可能です。
定期的にチェックすることで、社員自らが習熟度のアップダウンを把握しやすくなるでしょう。
出典:キャリアマップ、職業能力評価シート 導入・活用マニュアル事務系職種の人材育成のために(人事・人材開発・労務管理・生産管理・ロジスティクス)
職業能力評価シートの種類はさまざまあり、事務系、サービス系、介護系など多様です。自社に該当している場合はぜひ活用してみてください。
人事評価の結果を賃金や待遇に反映させるときは、「どの等級になればいくらもらえるか」を明確にすることが大切です。
また、「どこを改善したら上に上がれるか」という個々の改善点についてもきちんとフィードバックしておきましょう。
評価基準を明確にしないまま人事評価の数値だけで給与や待遇を決めると、社員からの反発を招きます。
「どれだけ頑張れば給与がどのくらい上がるのか」「昇格できるのか」が分からないまま働けば、モチベーションを維持できません。
社員が「きちんと業務に取り組めば等級が上がって給与も増える」という未来のキャリアパスを描きやすくすることが大切です。
具体的な目標があればこそ、社員のパフォーマンス向上にもつながります。
次に、評価制度や報酬制度などの設計・構築業務を依頼できるサービスを見てみましょう。
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人事評価システムを導入することで制度の運用も楽になります。
人事評価は社員の労働意欲を上げたり一人ひとりのスキルや問題点を把握する上で有益です。
とはいえ、人的リソースが限られた中小企業では個々の仕事負担が多く、「人事評価にまで手が回らない」というのが現状ではないでしょうか。
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