事業を継続的に行い、企業が成長していくためには人事制度が欠かせません。しかし、近年では働き方の多様化などにより従来の人事制度では対応しきれないといった場合があります。
そのため、制度自体を変える必要があると考える企業も増えてきています。
そこで今回は、人事制度の目的や役割、構成要素や課題点、改革を行う際の注意点など、導入事例を交えながら詳しく解説していきます。
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このページの目次
まず、会社を経営していくうえで必要不可欠となるものは何かといえば「ヒト、モノ、カネ、そして情報」この4つの経営資源(リソース)です。
会社というのは、こうした経営資源によって成り立っているため、逆にリソースがなければ会社経営は成り立ちません。
ヒト・モノ・カネ・情報、この4つのリソースは会社経営にとって非常に重要なものであり、お金では買うことができない、いわゆるプライスレスです。
【4つの主な経営資源】
さて、会社経営において非常に重要たるものを知ったうえで、人事制度とは何か。についてですが、これは上記で挙げた4つの経営資源があるうち、まさに“ヒト”にあたります。
ヒト(人材)は「モノ・カネ・情報」これらすべてを司り、事業目的を達成する際のカギとなるため、会社経営にとって最も重要な資源であると言えます。
そして、この最も重要となる人材に対して評価や等級、報酬など、処遇に関する組織のルールを人事制度といいます。
会社経営にとって人事制度というのは非常に重要な制度で、適切な人事制度を行わなければ会社の成長は望めないと言っても過言ではないでしょう。
企業活動において事業目的を果たし、会社が成長していく。こうした一連の過程には「ヒト」つまり人材が欠かせません。
とはいえ、単に人がいれば良いというわけではなく、たとえ優れたモノや多くの資金があったとしても、これらを適切に運用し活かすことができるだけの能力を持った人材でなければ全く意味がありません。
また、優秀な人材がいれば良いのか、というと必ずしもそうではありません。いくら優秀な人材がいても、職場環境が悪かったりモチベーションが上がらなかったりすると能力は発揮されません。
能力を発揮するためには職場環境を良いものにし、モチベーションの維持や向上を念頭においた仕組み等が必要なのです。人材の能力を伸ばし、さらに成長させていくといったところも人事制度の大きな役割となります。
つまり、従業員の能力や意欲を向上させながら経営戦略を実行し、そして企業成長へと繋げていく。これが人事制度の目的であり必要性です。
続いて人事制度の構成要素について理解を深めていきましょう。
下記は人事制度の全体像を表した図で、人事制度は大きく「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの要素によって構成され成り立っています。
【人事制度の全体像】
それでは、人事制度の構成要素について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
能力や職務、役割などに基づき「1等級(取締役)」「2等級(部長)」「3等級(課長)」…といったように、従業員に対して序列化するものを等級制度といいます。
この等級制度は、人事評価や報酬、人材育成などにも関係してくることから、人事制度の骨格ともいえる重要な部分です。
なお、等級制度には「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」といった3つの種類がありますので、種類ごとそれぞれご紹介します。
職務を遂行するにあたり、どのくらいの能力があるのかを判断し、その能力に応じて部署の配置や人事評価、昇給・昇進などを決定する制度です。
この制度は、たとえ部長や課長などのポストが空いていなかったとしても、同格の職能資格を得れば同じ報酬がもらえるなど、従業員のモチベーションを保つ効果があります。
ただし、勤務年数が長い従業員ほど能力が高いという考え方、いわゆる年功序列のような運用になってしまうケースも多々あります。
年功序列は、特に若い従業員のモチベーションの低下に繋がる恐れが高いため運用には注意も必要です。
業務遂行能力を評価対象とする職務等級制度に対し、職務等級制度はそれぞれの業務を細かく網羅し、その職務ごとに賃金や賞与を決定する制度です。
そのため、企業が示した職務内容に対して遂行できていれば勤続年数や年齢など従業員個人の事情に関係なく、同一の報酬がもらえるので、従業員間における公平性が保ちやすくなります。
ただし、職務等級制度は職務に対してそれぞれ細かく定義づけしてあるため、組織改変など環境の変化に対する柔軟性が乏しく、昇給の機会も少なくなるなどのデメリットもあります。
役割等級制度は管理職や年齢、キャリア等に関係なく従業員の役割を設定し、その役割に応じて序列や等級を決定する制度です。
ちなみに役割等級制度は、同一役割、同一成果を上げていれば報酬や評価もそれに見合うだけのものが得られることから「ミッショングレード制」とも呼ばれています。
この役割等級制度は、業務に対する役割が明確になるため、従業員自身も目標を持ってモチベーションを保ちながら日々の仕事に取り組むことができます。
仕事の成果に応じて報酬が支払われる役割等級制度は、もっとも合理的な評価が得られるというところで主体性を持って仕事に取り組める人材も育ちやすくなります。
ただし、従業員に対する役割設定に関しては企業によって異なるため、導入の際は経営側と現場側とが入念に話し合いながら、企業の実情に合わせて適切な役割定義、グレードとなるよう定めることが重要です。
評価制度とは、業務における従業員の姿勢や成果、貢献度など、企業が定めた一定基準に基づいた評価を行い、等級の昇格や昇給、昇進など処遇を反映させる制度です。
評価制度は単に従業員の処遇を決めるためだけのものではなく、従業員のモチベーションや生産性の向上、適切な人材の配置や異動、育成など、最終的に企業の業績アップに繋がる可能性があるとして期待が持てます。
長きにわたり続けられてきた終身雇用や年功序列といった日本独自の雇用システムが崩壊しつつある今、企業それぞれが定める評価制度に基づき、従業員の処遇を決めるといった企業が増加しています。
なお、評価制度を導入する際は、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
等級や評価、実績に基づき従業員の給与や賞与など報酬を決定するのが報酬制度です。
なお、給与は役職など等級によって上限・下限が定めら、賞与や昇給などが評価制度によって決定されるのが一般的です。
この報酬制度は、仕事の成果によって報酬が異なってくるため、従業員のモチベーションを高める効果が期待できます。
前述のとおり、かつて日本の報酬体系といえば勤続年数や年齢によって報酬額が変わる年功序列制度が中心的でした。しかし、近年ではこうした年功序列制度が見直され、より成果主義による報酬制度を導入する企業が増えてきています。
ただし、報酬制度は企業体制や状況などによって機能する、機能しないがありますので、自社の状況をしっかり把握することが重要です。
さて、ここまでで人事制度というのは「等級制度」「評価制度」「報酬制度」この3つの構成要素によって成り立っているということが分かりました。
現段階においてはこうした3つの柱を基軸とした人事制度を採用している企業が大半です。しかし、一般的に広く採用されているこの人事制度も問題点が無いわけではありません。
特に近年では、テレワークをはじめフレックス制度や時短勤務、副業…など、働き方改革の影響などから働き方への多様化が進んできています。
おそらく今後も就業場所や時間など、縛りの少ない柔軟な勤務スタイルが増えていくものだと考えられます。
このように、働き方が多様化してくると、これまで採用してきた人事制度では対応しきれなくなる箇所も出てくるものだと考えられます。
そのため、人事制度を構成する「等級制度」「評価制度」「報酬制度」も、多様化する働き方に合わせて見直しや改定が必要な場合があります。
働き方が多様化すると共に業務に対する取り組み方も変化してきています。
これまでは複数人が同じ業務を遂行し、技術等が熟練していくにつれて評価も上がっていくといったシステムが一般的です。
しかし、近年では業務に対して従業員をそれぞれ割り当てる、いわゆるジョブ型雇用が増えてきました。
ジョブ型雇用は、年齢や勤続年数に関係なく、個人の実力やスキルなど成果が重要視されるため、評価基準も個別化する必要性が出てきます。
人事制度は報酬や昇進、昇格など、従業員のモチベーションに大きく影響してくるため、現在の人事制度に納得していない従業員もなかには存在することでしょう。
特に評価基準が不透明かつ、評価する側のスキルが足りていない場合、不平不満が出やすくなり、従業員離れも進んでしまいます。
人事制度というのは、公平かつ適切な評価であればあるだけ従業員のモチベーションを向上させ、企業の目的達成に繋がるのです。
企業にとって人材はもっとも重要な経営資源です。近年では早期退職者が増えていることから人材の定着率を上げつつ人材を育成していくことを経営課題として捉えられています。
特に中小企業では会社離れなど人手不足が深刻な問題となっており、その課題解決策として人事制度が重要視されています。
しかし、人事制度を構築して運用するには多くの時間や資金が必要となります。中小企業では、常に多額の資金を保有しているわけではありませんし、人事を担う担当者も他の業務と兼任しているケースがほとんどです。
つまり、人事制度を導入するには時間や資金が無いといった問題に直面する場合もあるのです。
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前述のとおり、人事制度を導入する目的は、従業員に気持ちよく働いてもらい、企業が掲げる経営戦略を実行していくことにあります。
しかし、働き方の多様化などにより、従来の人事制度では適切に従業員を評価することが難しくなりつつあるのが現状です。そのため、時代の流れに合わせ、人事制度も見直していかなければならないものだと考えられます。
そこで、ここ近年で新たに注目されている人事制度をいくつかご紹介します。
まずはノーレイティングです。このノーレイティングは「結果に対して従業員のランク付けをしない」といった人事評価制度です。
前述したとおり、これまでは従業員に対して1等級、2等級、3等級…などランク付けを行う等級制度が一般的でした。
この等級制度には、従業員に対して競争意識を高める効果がある一方で、評価を気にし過ぎるがあまり、業務に対して消極的になってしまうという欠点もあります。
しかし、ノーレイティングは結果に対してランク付けは行われず、リアルタイムの目標設定とフィードバックに重点を置きます。
そうすることによって、従業員は結果を恐れることなく積極的な行動ができるほか、上司との密なコミュニケーションが実現するため社内全体のパフォーマンス向上に繋がります。
コンピューター技術開発の大手企業マイクロソフト社。その日本法人である日本マイクロソフト株式会社では、ノーレイティングの評価制度をいち早く採用した代表的な企業です。
同社では、従業員に働く意欲を感じながら業務を遂行してもらいたいという思いから2週間に1度、上司と部下との1on1ミーティングを実施しながら業務が進められ、さらにどのような評価が行われているかなど評価の仕組みをあらかじめ従業員に公開しているとのことです。
また、顧客や自社への貢献度によって評価と報酬が決定する非常にシンプルなノーレイティング制度を行っているため、従業員のモチベーション維持にも繋がりやすくなっているといいます。
そして、同社は年に一回、従業員に対して意識調査を実施しており、より働きやすい労働環境の構築や人材育成などに力が注がれています。
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評価対象者に対し、上司をはじめ同僚や部下など複数の関係者が評価者となって評価を行うことを360度評価(多面評価)制度といいます。
従来の人事評価制度では、上司が部下を評価するというカタチが一般的でしたが、360度評価の場合、ひとりの上司視点だけではなく、立場の異なる複数の視点から評価が行われるため、客観性や公平性を保つ効果が期待できます。
インターネット関連事業を行うGMOインターネット株式会社は、経営ポリシーに「ガラス張りの経営」と掲げており、役員の目標と評価、報酬など社内のあらゆる部分が可視化されています。
また、人事制度として6段階の役割等級が導入され、等級にも複数のランクが設定されています。なお、ガラス張りの経営ということもあり、従業員すべての等級やランクも開示し、さらに各役割等級の給与額もオープンされているようです。
このような制度を導入しているなか、360度評価の実施は従業員ひとり一人が自分自身の役割をしっかり果たせているかなどの判断ができる材料として取り入れられているようです。
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バリュー評価は、従来の結果や成果に重点を置く人事制度とは違い、企業のバリュー(価値観)をいかに理解し、それに沿った行動ができたかを評価するものです。
ちなみにバリュー評価のほか「行動評価」とも呼ばれています。
近年においては、インターネットやSNSなどの普及により、ビジネス環境の変化も激しい時代です。
そのため、企業方針をしっかり理解し、従業員自ら「自分は何をすべきなのか」ということを考え判断し、そして行動していかなければ、目まぐるしく変化していく時代の流れに対応していくことが厳しくなります。
バリュー評価は、そうした自ら考えて行動する人材を育成するのに効果的であることから、導入する企業も増えてきています。
個人間で簡単かつ安全にモノが売買できるフリマアプリを手掛ける株式会社メルカリ。
同社は2013年にサービスをスタートさせて以降、若者を中心に非常に多くの利用者を獲得、2019年時点で累計取引件数5億件を突破するなど、いまやCtoCビジネスにおける代表的な企業へと成長しました。
こうした成長があるのも、やはり人事制度が重要なカギを握ります。同社が行う人事評価制度は「バリュー」と「OKR」の2つ。
OKRというのは、「Objectives and Key Results」の略で、達成すべき目標とその目標を達成するための主要な成果を各組織・各個人で設定するというもの。
バリューは、同社のミッションを達成するため「Go Bold」「All for One」「Be Professional」といった3つのバリューが設定され、どれだけ実践できたかを評価します。
同社はこの2つをもとに四半期に1度といった短いサイクルで1on1ミーティングを実施し、成果やパフォーマンスの見直し等が繰り返し行っているとのこと。
そうした取り組みによって同社で働く従業員は、指示待ちではなく、自発的に行動できる人たちが育つようになったとしています。
働きやすい職場環境づくりは企業成長において非常に重要であり、それには人事制度は欠かせない仕組みのひとつです。
なお、人事制度というのは時として構築や見直しをしなくてはならない場合があります。では、人事制度を見直す時期であると考えるべきタイミングはどういった場合なのでしょうか。
人事制度の見直すべきと考えるタイミングを見ていきましょう。
事業拡大に伴い会社の規模が大きくなれば、それだけ従業員の数も増やさなければなりません。
しかし、従業員が増えれば増えるほど指導や評価がしづらくなり、最終的には手に負えない状態へと陥る可能性が高まります。
なお、部下に対してしっかりとした指導や評価ができる会社の規模としては5人から10人程度。30人を超える規模になってくると管理不能だとされています。
ずさんな人事制度は貴重な人材を手放すことに繋がりますので、会社規模の拡大が人事制度の見直すタイミングと捉え、従業員を増やす前に制度の見直し、改定を行うようにしましょう。
新規事業分野への進出など、社内における経営理念が変更となる場合はもちろんですが、社会全体の価値観が変わってきた時なども人事制度を見直すタイミングとして捉えるべきでしょう。
近年、働き方改革により厚生労働省では「長時間労働の是正」や「柔軟な働き方ができる環境づくり」、「非正規雇用の待遇差改善」「賃金引き上げと労働生産性向上」など、様々な取り組みが推進されています。
企業としては、社会における環境変化にも柔軟に対応していくということは、会社存続という観点から考えても非常に重要な取り組みであると言えるでしょう。
企業が継続的に成長していくためには、人事制度は必要不可欠な取り組みです。そのため、しっかりと適切な人事制度を構築していきたいところです。
人事制度は経営理念に基づいたものでなければなりません。そのため、自社の経営理念、基本理念を再度しっかりと確認し、人事ポリシーを明文化するところから始めます。
また、人事ポリシーは人事制度を構築するうえで非常に重要な部分であると同時に「従業員のことを会社はどう考えているのか」「どのような人材に育って欲しいのか」など、従業員に対するメッセージとしての役割も担っています。
経営理念や基本理念を再確認し、人事ポリシーが決定したら現状の課題を分析、「人材が育たない」「従業員のやる気が感じられない」などの問題点を整理し方向性を明確にします。
また、従業員へ直接ヒヤリングを行うなど従業員に対する満足度調査に加え、一般的な給与水準の比較などを実施します。
こうした様々な分析結果をもとに、人事制度の基本軸である「等級制度」「評価制度」「報酬制度」をどのようにするか方向性を決定します。
等級制度は、人事制度の3つの軸「等級制度・評価制度・報酬制度」とあるなかで、評価制度と報酬制度はこの等級制度によって決る骨格とあるため、はじめに等級制度から構築していきます。
等級制度は自社の方向性を沿いながら、「職務資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」など、どのような等級制度を導入するかを決定します。
この時、等級の階級や条件など等級に関する定義も設計するようにします。
ちなみに、等級は企業規模が100名以下で6~7等級、1,000名を超すような大規模企業で8~10等級ほどが一般的です。
評価制度では、「何を評価するか(評価項目)」「どのように評価するか(評価基準)」が重要となります。
また、評価制度は従業員のモチベーションと大きく関わりがあるため、慎重に設計することも大切です。
ぜひ自社の経営理念、そして人材ポリシーに基づき、企業と従業員とが同じ方向を向き、モチベーションの向上に繋がる評価制度となるよう、心がけるようにしましょう。
等級制度・評価制度が決定したあとは、社内の等級や評価制度を正しく給与や報酬を反映させるため報酬制度を設計します。
なお、報酬制度の設計では「職能給・年齢給・職務給・役割給」など報酬の基本となる部分を決めていきますが、賃金は従業員の生活に多大なる影響を与える重要な部分です。
そのため、同業者等の賃金水準や世の中の消費者物価指数など、外的要因などしっかり考慮し、入念に検討を重ねていくことが重要です。
一通りここまで設計することができたら人事制度は完成です。しかし、完成したからといってすぐに運用してはいけません。
本格的に導入する前は、必ずシミュレーションを実施します。
「等級や評価などの変化に従業員のモチベーションが低下していないか」「新制度を用いて十分な生産性は見込めるか」など、様々な変化を確認する必要があります。
また、従業員に対して新制度の趣旨を十分に説明し理解と協力を求めることはもちろん、新制度を適用するにあたって等級や報酬など処遇が大きく変わってしまう従業員がいる場合、長期間にわたって丁寧に対応していくなどの配慮も必要です。
入念にシミュレーションを実施し、新しい人事制度への移行準備ができたら、本格的に人事制度の運用をスタートさせていきます。
なお、人事制度を狙いどおりにしていくためには、「新制度に関する周知の徹底」と「適切な運用」が最も重要なカギとなります。
そのため、従業員には人事制度の趣旨や目的などの十分な説明、管理者には適正な運用が行えるよう評価者研修の定期的な実施が必要です。
また、運用していきながら課題があれば繰り返し改善を施していくことが大切です。こうした取り組みが制度自体を浸透させ、自社にあった良い人事制度の構築ができるのです。
事業を継続的に行い、会社が成長していくためには人事制度が欠かせません。しかし、人事制度を取り入れたものの、期待通りに機能しないといったケースもあります。
では、どのような人事制度改革を行った場合に失敗してしまうのかというと、「最新の人事制度を安易に取り入れてしまう」ということ。これが非常に多いです。
近年、働き方改革の影響などにより、柔軟な働き方を実施する企業や業務に対する従業員の意識も以前と比べ大幅に変わりつつあります。
企業でもこうした社会の変化にあわせて人事制度を見直す動きが加速しており、結果的に成果を上げている企業がたくさんあります。
しかし、最新の人事制度を取り入れたからといって、必ずしも生産性の向上に繋がるわけではありません。
確かに、社会情勢を意識し、それに合わせて変化を加えていくことはビジネス行う上で非常に重要なことではあります。
ただ、人事制度の場合、自社の理念や風土にマッチしていなければ、かえって逆効果となる場合があるので注意も必要なのです。
最新の人事制度を取り入れるのは決して悪いことではありませんが、事例を参考にする場合は、その人事制度が自社にマッチするかどうかを第一に考えることが重要なポイントです。
企業が継続的に事業を行い、経営理念やビジョンを実現させていくためには人材の確保や育成が非常に重要です。
そのため、企業は従業員ひとり一人のモチベーションを向上させ、やりがいを持って業務にあたれる環境や仕組み作りが必要不可欠です。
人事評価はこうした従業員のモチベーションに直結するものであり、適正かつ納得のいく評価であればあるほど従業員の満足度は高まり、そして生産性の向上へと繋がっていきます。
ただ、従業員ひとり一人に対して能力や業務実績を把握するのは難しく、従業員数が多ければ多いほど人材管理は困難となり評価基準も不明確になってしまいます。
現に、総合人事・人財サービスを展開するアデコ株式会社が行った「20代~30代の働く人を対象とした人事評価制度に関する意識調査」によると、
勤務先の人事評価制度に対し6割以上の人が不満を持ち、そのうちの8割が評価制度を見直す必要があると感じている。
といった調査結果が出ているなど、多くの人は会社の人事評価に対して満足していないのです。(人事評価制度に関するアンケート調査『アデコ株式会社』)
こうした調査結果を見て分かるように、適材能力や企業に対する貢献度を適切に管理し、従業員が納得する人事評価を行うことが、いかに難しいことなのかが分かるはずです。
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