ランク付けしない評価制度「ノーレイティング」とは?メリットや導入事例を解説!

ランク付けしない評価制度「ノーレイティング」とは?メリットや導入事例を解説!

記事更新日: 2024/04/11

執筆: 編集部

近年、注目されているノーレイティング(No rating)。

人事評価を社員を数値やランク分けで行わないという、比較的新しい人事評価手法です。

レイティング(rating)とは、ある基準に基づき数値化や等級分けを行うことを意味しており、従来の人事評価は基本的に数値やランク付けによって行われてきたレイティング評価ということになります。

しかし近年ではレイティングによる弊害も散見されたことを背景に、レイティングに頼らない評価手法「ノーレイティング」が拡大してきました。

この記事では、ノーレイティング制度の意味、それを導入するメリット・デメリット、実際に導入している企業の例などを紹介します。

人事評価制度の見直しを検討しておられるならこの記事を参考にしてみてください。


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ノーレイティングとは?

レイティング(rating)とは、対象となる物事に対してある基準に基づき、数値化や等級分けを行うことを意味します。ですから、ノーレイティングとは、人事評価のために社員を数値やランクで分けないということです。

とはいえ仕事の努力や成果を何も評価しないという意味ではありません。

各社員にリアルタイムに目標を設定し、その目標達成について定期的に上司と一対一の対話(1on1ミーティング)を行います。

それによって社員は上司からのフィードバックを受け、その都度何かしらの評価をしてもらうという方法になります。

上司との面談やコミュニケーションにより、仕事の努力や成果はきちんと評価されます。

ノーレイティングでの人事評価の方法

ノーレイティングではリアルタイムなその人個人の目標を設定します。

さらにその目標に対する取り組み方や成果などを上司と部下の1on1ミーティングで話し合います。

このミーティングの目的は教育や指導、評価を与えるというだけではありません。次の目標についても話し合われます。

この上司とのミーティングでの評価が給与や昇進に影響します。

レイティングとノーレイティングの違い

従来の人事評価制度ではフィードバックは「年1回」です。しかしノーレイティングは定期的にそれが行われます。

年1回のフィードバックでは1年間の仕事に対する取り組みや成果、つまり過去のことを話題にする傾向が強いですが、ノーレイティングでは、現在取り組んでいる仕事の過程や成果だけでなく、それに基づく次の目標やキャリアパスなど将来のことも話題にします。

また従来の人事評価制度では会社の目標に個人がどのようにアジャストしていくかに注目されがちでしたが、ノーレイティングは個人の成長が注目されるようになります。

つまり個人として成長することで、会社の成長にどのように貢献できるかを考えるわけです。

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ノーレイティング制度が必要とされた背景

従来の人事評価制度つまりレイティングは、企業のグローバル化やIT化が浸透するまでは確かに効果を発揮してきました。

しかし企業のグローバル化、IT化が進むとビジネスサイクルは短くなり、経営者には正確ですばやい意思決定が求められるようになりました。

こうした背景を受けて、従来の年1度のレイティングによる人事評価では、加速するビジネス環境に対応できないので、新しい人事評価制度つまりノーレイティングが必要とされるようになったわけです。

従来の人事評価制度での問題点

さらに、これまでのレイティングによる評価制度にはいくつかの問題点がありました。たとえば以下のものがあります。

  • 評価基準が不透明
  • 評価者の主観や経験に基づいて評価されるので不公正感がある
  • 評価結果のフィードバックや説明が不十分

こうした問題があるので、自分はきちんと評価されていないと感じる社員もいます。

そうした感情は仕事に対するモチベーションの低下、優秀な人材の流出につながります。

こうした問題を解決する手段としてノーレイテイングが注目されるようになりました。

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ノーレイティング導入のメリット

次にノーレイティング導入で企業が獲得できるメリットを紹介します。

  • 個々の社員が成長できる
  • 優秀な人材の発見・育成・確保
  • 評価が明確なので納得しやすい
  • ワークスタイルの多様化に対応できる

 

個々の社員が成長できる

ノーレイティングでは定期的に上司と部下が1on1ミーティングなどでコミュニケーションし、個々の社員の能力や状況に応じたリアルタイムな目標を設定します。

さらに教育や指導、評価のフィードバックによりその目標に対する取り組み方、達成率、次の課題などを上司と部下の間で共有できます。

そしてそれを基準に次の現実的な目標が設定され、ノーレイティングの同じ工程が繰り返されことになります。

個々の社員が達成可能な目標を持つことができ、仕事に対するモチベーションが上がり、ナレッジやスキルの点で成長できます。

優秀な人材の発見・育成・確保

定期的な部下とのミーティングで上司はこまれで気づかなかった才能を持った人材を発見できるかもしれません。

さらに定期的なミーティングとそのときに行われるフィードバックによる個々の人材の育成が可能です。

1年に1回のレイティングとフィードバックでは社員が何かに気づいたり、改善したりするには遅すぎる場合があります。

なにか改善すべき点があればすぐに伝えてほしいという気持ちもあります。ノーレイティングではそうした社員の要望に答えることも可能です。

ノーレイティングでは個々の社員が達成可能な目標を持ち、仕事に対する意欲を保ちやすくなります。それにより会社に対するロイヤルティが向上します。これらは優秀な人材の他社への流出を防ぎ、人材を確保することにつながります。

評価が明確なので納得しやすい

ノーレイティングは評価基準が明確なので、受け取る側も納得しやすいというメリットがあります。

レーティングによる評価基準は不透明な部分があるという問題がありました。さらに評価が上司の主観や経験、好き嫌いに影響される部分があります。

たとえば、仕事で結果を残していないのに上司に気に入られているという理由で評価されている人がいれば、他の従業員はその人に対する評価だけでなく自分に対する評価にも納得いかないでしょう。

しかしノーレイティングでは、上司が個々の従業員の働きを見て評価するので、不透明感はありません。

個々の社員は上司の評価を受け入れやすいです。

ワークスタイルの多様化に対応できる

ノーレイティングは多様化するワークスタイルに対応できるというメリットがあります。

たとえば育児に専念するために仕事の時間を短くしている社員には、いつもより達成するのが容易な目標を設定できます。

テレワークの社員には、オンライン会議やチャットツール、勤怠管理システムなどを上手に活用し、仕事の過程と結果を確認しながら、ふさわしい目標を設定できます。

ワークスタイルが違っていても、ノーレイティングは個々の社員の働きを評価するので、オフィス勤務の社員と時短勤務の社員、テレワークの社員との間に評価格差が生まれたり、不公平感が出ることはありません。

ノーレイティング導入のデメリット

ノーレイティング導入によりクリアしなければならない課題もあります。デメリットともいえるそうした点には以下のものが挙げられます。

  • 定期的な1on1ミーティングが必要
  • 上司にマネジメント能力が求められる

定期的な1on1ミーティングが必要

ノーレイティング導入を成功させるカギは定期的な1on1ミーティングの実施です。

レイティングのときには、年に1回上司が部下を評価しフィードバックするだけでしたが、ノーレイティングでは、上司と部下のミーティングが定期的に必要となるので上司の負担が増えます。

しかし、これはミーティングの数をこなせばいいという問題ではありません。ミーティングの質や会話の内容を意味あるものにしなければなりません。

企業によっては評価担当の上司にもこうした点での研修や訓練が必要でしょう。

上司にマネジメント能力が求められる

これまでのレイティングでは定められた判定基準や評価項目があったので上司はそれほど考える必要はありませんでした。

しかしノーレイティングではそれがありません。日頃の観察やミーティングで仕事に対する努力や過程、結果を把握し、それに基づいて教育・指導・評価し、次の目標を設定しなければなりません。

こうしたことを達成するために、上司は部下を管理するマネジメント能力が求められます。

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給与や昇進の決め方はどうなる?

ノーレイティングを導入した場合、社員の給与・昇給はどのように決められるのでしょうか?

給与の決め方

従来の制度とは違い、ノーレイティング制度にはランクがないため、マネージャーや上司の裁量によって給与が決定されます。

マネージャーや上司は提示された予算を部下に分配します。

その際に、不公平にならないよう分配ルールを企業ごとに設けることが一般的です。

マネージャーや上司の負担は大きくなりますが、評価対象者の性格や特性、評価対象期間など細かな要素を考慮できるため、通常の評価制度より納得感が高い給与設定ができます。

昇進の決め方

昇進は給与と異なり、ノーレイティング制度においても従来と同じ手法をとります。

社員を総合的に評価し、次のステップに進めると判断された場合、昇進・昇格します。

各社員のキャリアプランや成長シナリオを人事と管理職が話し合う「タレントレビュー」も活用し、昇進を判断します。

ノーレイテイングを導入した企業

レイティングを廃止しノーレイティングを導入した企業の事例を紹介します。

Microsoft

Microsoft社にはスタックランキングシステムと呼ばれるレイティングによる人事評価制度がありました。

従業員や元従業員は、この制度によりマネージャー間の権力争い、従業員同士の足の引っ張り合いが生じたと意見を述べています。実際にスタックランキングシステムはMicrosoft社の内外から「Microsoftの最も破滅的なシステム」と評価されていました。

このレイティング制度を廃止し、Microsoftはノーレイティングを採用しました。その目的は、「コネクト」と呼ばれるプロセスを通じ、よりタイムリーなフィードバックと意義深い議論によって従業員の学習・成長・成果を助けることとしています。

さらに企業内でひとつの時間軸に沿うのではなく、ビジネスの各部分のリズムに合わせてスケジュールを決め、開発や成果を議論する時期や方法は柔軟にするとも述べています。

Adobe

デザイン編集ソフトのPhotoshopで有名なAdobeもレイティングによる人事評価制度を早くから廃止した企業です。

2012年には独自の評価制度として「チェックイン(Check-in)」を導入しました。それまでは年間目標の達成度合いでランク付けをする「アニュアルパフォーマンスビュー」というシステムを採ってしました。

従来の制度では人事評価にあまりにも時間がかかるという問題が生じていました。さらに、レイティング特有の、従業員からの有用なフィードバックが得られない、評価に納得できないなどの不満の声も上がっていました。

Adobeのノーレイティング導入後の成果

新しい「チェックイン」では、マネージャーと従業員が常に対話を行うことで、その中から明確な目標を定め、何度もフィードバックし、キャリアアップについて話し合うことができるようにしました。

これにより、マネージャーの人事評価にかかる時間を最初の1年間で8万時間削減することができました。従業員数が増加した現在では、さらに年間10万時間以上の時間削減ができていると推定されています。

従業員側の仕事に対する意欲や定着率も高まり、自分でパフォーマンス管理もできるようになるというメリットも生まれました。

まとめ

ノーレイティングという新しい人事評価制度を紹介しました。年に1回、1年間の仕事だけを判断基準にして行われる従来のレイティングとは違う新しいタイプの人事評価制度です。

特徴となっているのは以下の点でした。

  • リアルタイムな目標設定
  • 上司と部下の定期的な1on1ミーティング
  • すぐに行われるフィードバック(教育・指導・評価)
  • 評価基準に不透明感がなく受け入れやすい
  • 多様化するワークスタイルに対応できる
  • 報酬の分配は上司の裁量にゆだねられる

ノーレイティングでは上司にコミュニケーション・マネジメント・コーチングなどの能力が求められるようになります。

ビジネスのグローバル化、IT化が進むなかで、企業は従来の人事評価制度を見直さなければならない時期に来ています。

ノーレイティングの仕組みとそのメリット・デメリットを理解し、自社にふさわし人事評価制度を検討することができるでしょう。

画像出典元:pexels、pixabay

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