近年では上司と部下のコミュニケーション方法として、1on1ミーティングという手法が注目されています。
限られたミーティングの時間を有効活用するためには、しっかりとした意識をもって充分な準備を持って臨むことが大切です。
そこで今回は、1on1ミーティングの目的や注目を浴びている背景、効果的な進め方やおすすめのテーマ例などについて解説いたします。
また、1on1ミーティングの実施に役立つ書籍や便利なツールの紹介も行っているため、参考にしてみてください。
このページの目次
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う面談のことであり、月に1~4回、30分~1時間程度行うのが一般的です。
1on1ミーティングは評価面談とは異なり、より幅広いテーマを話し合う対話の時間であると言えます。
1on1ミーティングは上司が部下の想いに寄り添いながら話を良く聞くための場であり、部下の自発的な思考を促すことで、課題解決力の向上を図ります。
また、本音で話をしてもらうことによる部下のモチベーションアップも目的の一つです。
さらに定期的な対話によって管理者は現場を把握でき、マネージャーとしての自覚を高めることも期待できるでしょう。
1on1ミーティングが必要となった背景には、社会構造の変化があると言えるでしょう。
終身雇用制や年功序列制の崩壊により人材は流動的になり、社員の転職に対する抵抗感は下がりつつあります。
人口減少により長期的には労働力人口が減っていくと考えられる中で、企業としては流動的な労働力をどれだけ自社に留めておけるのかが大切な要素となっているのです。
また、近年はIT技術の発展により情報伝達のスピードは急速化しています。
急速な状況変化に対して柔軟に対応するため、自発的かつ創造的な思考・行動を取れる社員の育成が企業に求められているのです。
さらに直近で考えると、コロナウイルスの影響によるリモートワーク・テレワークの推進は、上司と部下間でのコミュニケーションを減らすことにもつながります。
そこで対話やフィードバックの時間を補うためにも、1on1ミーティングの活用が重要視されてきているのです。
1on1ミーティングにおいてはまず、事前にテーマを明確にして共有しておくことで、スムーズな進行が期待できます。
テーマに沿って上司は部下にどんなことを聞くのかを考えておき、部下は上司に何を話すのかを考えておくことで、限られた時間でも内容のあるミーティングができるのです。
1on1ミーティングの実施にあたってはまず、テーマに関する理想の姿、つまり目標をなるべくはっきりと部下にイメージしてもらうことが大切です。
そして目標と現状のギャップを作り出す本質的な課題に対して部下が自発的に考えを巡らせるように、上手く質問を投げかけていくことが上司には求められます。
「上手くいかなかった理由は何か」「今回上手くいったのはどうしてか」など、答えを教えるのではなく問題解決に向けた行動を促すような問いかけをする姿勢が重要です。
1on1ミーティングを実施する中では、お互いが話したことを記録し、忘れないようにすることが大切です。
お互いが会話の内容を覚えていないようでは、1on1ミーテイングを通じて信頼関係を築いてていくことがなかなかできません。
また、毎回の内容を振り返って回を追うごとに効果の高いミーティングにしていくためにも、どんな話をしたのか都度記録していくことはとても重要です。
さらに、蓄積された記録を部下が確認することで、自分自身の成長を感じることにもつながります。
1on1ミーティングをより良い時間としていくためには、継続的に実施して改善を繰り返していくことが大切です。
毎回の日程を事前に決めておかなくては忙しい日常業務の中でついつい後回しになってしまうものですから、確実な実施のためには明確に予定をすり合わせておく必要があります。
また、毎回の1on1ミーティング終了時には振り返りの時間を設けることも、良いミーティングにしていく為には大切でしょう。
部下のキャリア形成に関する話は、1on1ミーティングで話すべき議題の一つです。
部下自身の強みや弱み、今の業務で感じているやりがいなどを会話の中で引き出すことができれば、部下が今後のキャリアについて自ら考えるよい機会となるでしょう。
1on1ミーティングを通じて部下と信頼関係を構築するには、心身の健康状態に関する話をすることも大切です。
体調の変化や睡眠が取れているか否か、日々の業務量が過度な負担となっていないかなどを聞くのはもちろん、顔色の状態などにも気を配るようにしましょう。
現在関わっている業務の内容や問題点、改善点などについて話し合うことも重要です。
ただし、上司から話し過ぎると業務に関して詰められているような印象を部下に与えてしまうため、部下の話を聞くスタンスは保つように意識しましょう。
部下に成長してもらうことが1on1ミーティングの重要な目的の一つですが、あまりに気負い過ぎて上司が話し過ぎてしまい、部下の話をよく聞けていないことがあります。
1on1ミーティングはあくまでも会話の中で部下の自発的な成長を促すことが目的ですから、部下の意見に耳を傾ける姿勢が大切です。
上司が自分の主張をし過ぎてしまったり、部下の話を否定してしまったりすると、部下が委縮してしまって1on1ミーティングが逆効果ともなりかねません。
部下が上手く話せていないと感じても、話が終わるまでは傾聴のスタンスを貫き、一通り話し終わった後に質問を投げかけるようにしましょう。
1on1ミーティングは、日常業務に対する不満を上司に伝える貴重な機会ではあります。
しかし、だからと言って不平不満を聞いてあげるだけでは部下の成長はなかなか望めません。
不満や愚痴が出てきた場合にはただ聞いてあげるだけでなく、その問題点について整理したうえでどうすれば解決できるかを話し合うようにしましょう。
部下が具体的な改善提案をできるよう、上司としては上手にリードしてあげることが必要です。
ミーティングが継続的に行われていないことも、上手くいかない主な原因の一つです。
1on1ミーティングは「準備・実施・振り返り・改善」のPDCAサイクルを回していくことではじめて効果が期待できます。
あまりに期間が明き過ぎては前回の振り返りを活かすことが難しくなるため、可能であれば週1回、少なくとも月に1回のペースで行うようにすべきです。
『シリコンバレー式 最強の育て方』では、1on1ミーティングの限られた時間を活用する方法を体系的に学ぶことができます。
1on1ミーティングをあくまでも部下のための時間だと位置づけ、部下のメンタルヘルスやモチベーションなどを良い方向に向けるための方法が多数詰められているのです。
『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』は、1on1ミーティングにおける上司の役割や、実際の改善事例、会話形式などが多数盛り込められた一冊です。
細かな方法論を具体的に記述してあるため、より実戦的な書籍であると言えるでしょう。
『任せるリーダーが実践している 1on1の技術』はアドラー心理学派の心理カウンセラーとして有名な小倉広氏が書いた1on1ミーティングの技術書です。
1on1ミーティングの導入手順を4つのステップに分けて解説しており、1on1ミーティングのメリットについても触れられています。
TeamUpは1on1の事前準備や記録の管理、振り返りフローをクラウドで管理できる1on1ツールです。
1on1進行のテンプレートをカスタマイズしたり、定期的な1on1の予定をくり返し設定によって自動配信したりと、1on1ミーティングの管理に便利な機能が多数搭載されています。
Wistantは目標設定や1on1ミーティングの実行、フィードバックで構成されるピープルマネジメントを可視化でき、パフォーマンスの向上に役立ちます。
事前のアジェンダ作成やスケジュール管理、実施状況や対話における質の分析なども行うことが可能です。
1on1naviは1on1ミーティングの目標設定やフィードバックにかかる手間を削減できる、スマートフォンアプリです。
1on1ミーティングでの気付きを登録することで、SNSを利用するように上司や周囲とのコミュニケーションを図ることができます。
上司と部下の信頼関係を築き、部下の自発的な行動を促す手段として、1on1ミーティングは近年注目されている手段です。
事前の準備や定期的な実施、実施内容の記録やそれを踏まえた改善などを繰り返していくことで、限られた対話時間でも大きな成果を出すことが期待できるでしょう。
1on1ミーティングの参考になる書籍や便利なツールなども多数あるため、自社や職場の状況に合わせてとり入れていくことをおすすめします。
画像出典元:Burst