CRM(顧客関係管理)とERP(企業資源計画)には違いがあり、導入すべきシステムは企業の課題や目的によって異なります。
それぞれの特徴や機能を確認しておくことが重要です。
本記事では、CRMとERPの基礎知識や違いを解説します。
CRMとERPのどちらを導入すべきかの判断基準や、両者を連携するメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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このページの目次
CRMとは「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」の略で、日本語では「顧客関係管理」や「顧客関係性マネジメント」を意味します。
顧客との関係性を管理して相互利益につなげるためのマネジメント手法、および専用のシステムのことです。
収集した顧客情報を一元的に管理し、それをもとに最適なアプローチを行うことで、顧客満足度の向上やリピート率の改善が期待できます。
CRMには顧客管理に役立つ多彩な機能が備わっているため、営業活動の業務効率化や成果の最大化が期待できます。
ERPとは「エンタープライズ・リソース・プランニング」の略で、直訳すると「企業資源計画」を意味します。
企業活動の基本となる「ヒト・モノ・カネ・情報」を適切に配分して活用する考え方で、それらを一元的に管理するシステムを指します。
「統合基幹業務システム」や「統合基幹業務パッケージ」とも呼ばれ、企業の基幹業務の統合管理が可能です。
部門別・業務別で分断されていた情報を一つのシステムに集約することで、意思決定や経営戦略の精度向上に役立ちます。
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CRMとERPは目的や役割が異なるシステムです。
両者の違いを4つの観点から詳しく解説します。
CRMの目的は、顧客と良好な関係を構築することです。
顧客との関係性やコミュニケーションを把握して、顧客満足度を高めるための施策を実行します。
自社の商品のリピーターやブランドのファンを生み出すことで、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげることが最終的な目標です。
ERPの目的は、情報の一元管理によって経営資源を最適化することです。
企業内のあらゆる情報を可視化・共有することで、リアルタイムで企業の状況を把握できるようになります。
これにより、業務の効率化やスピーディーな意思決定につなげます。
CRMとERPの主な機能の違いは、以下の通りです。
CRM | ERP |
|
|
CRMの機能は、顧客との関係性構築に特化しています。
顧客の基本情報やコミュニケーションの内容を蓄積・管理し、それを分析することで、顧客一人ひとりに対して適切なアプローチを実施できます。
一方のERPは、さまざまな基幹業務を幅広くカバーする機能が揃っているのが特徴です。
対応範囲が広く、CRMに関連する機能が搭載されているケースもあります。
なお、CRMとERPはシステムによって対応範囲や搭載機能が異なるため、あらかじめ確認しておくのがおすすめです。
CRMとERPのメリットをそれぞれ紹介します。
CRMは、顧客情報を一元的に管理・共有できる点が大きなメリットです。
担当者が変更になった場合や不在時でも、顧客を待たせることなく適切な対応ができます。
その結果、担当者にかかる負担を軽減でき、顧客満足度の向上も期待できます。
また、CRMに蓄積した購買履歴やコンタクト履歴は、マーケティングに活用することが可能です。
購買層を特定したりニーズの高い製品を絞り込んだりすることで、より効果的な施策につなげられます。
ERPのメリットは、企業内の情報を統合したデータベースを作成できることです。
複数のシステムへの二重入力が不要になり、入力ミスや確認漏れのリスクが軽減されます。
業務効率化によって、従業員はより価値の高い業務に集中できるため、生産性を向上できるでしょう。
異なる部門の情報を集約することで、売上やコスト、在庫情報といった経営データを可視化できます。
最新の情報をもとに経営方針や戦略を立てられるため、スピーディーな意思決定が可能です。
CRMとERPの導入コストを、クラウド型とオンプレミス型に分けてまとめました。
CRM | ERP | |
クラウド型 | 初期費用:0~10万円 月額費用:0~1万円 / 名 |
初期費用:0~50万円 月額ライセンス制:数万~100万円 ユーザーライセンス制:数千円~数万円 / 名 |
オンプレミス型 | 初期費用:50~200万円 ライセンス費用:5~10万円 / ライセンス 運用・保守費用:5~30万円(年間) |
初期費用:数十万〜数千万円 導入サポート費用:数百万~数千万円 教育費用:数万~数百万円 ライセンス費用:数百万〜数千万円 運用・保守費用:導入費用の10~20%(年間) |
CRMは、ERPと比較すると安価に導入できます。
とくにクラウド型の料金は、初期費用を抑えられ、少人数からでも導入しやすいため、スモールスタートに向いています。
オンプレミス型のライセンス費用は、システムごとに毎月・毎年・買い切りなど料金体系が違うので確認が必要です。
一方、ERPは複数の基幹業務を統合するため、費用は高額になる傾向があります。
オンプレミス型の場合は、導入規模やカスタマイズによって、費用が大きく左右されます。
CRMとERPの導入コストは利用人数や運用形態で異なるため、まずは見積もりをとって比較することが大切です。
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ここまでの違いを踏まえたうえで、CRMとERPのどちらを導入すべきなのか、選定時に検討すべきポイントを解説します。
顧客関係管理に特化したCRMなら、導入コストと運用負担を抑えられます。
対応する業務の範囲が限られるため、大幅な業務フローの見直しが必要ありません。
従業員の教育にかかる時間や労力も少なく、比較的短期間で導入できます。
一方で、ERPは対応する業務範囲が広いため、導入コストが高く、大幅な業務フローの見直しが必要です。
従業員には十分なトレーニングが求められるので、導入まで手間や時間がかかります。
コストを抑えつつ、顧客管理や営業活動を最適化したい場合には、CRMがおすすめです。
システム間や部門間の連携を重視する場合は、ERPを選択しましょう。
企業全体の情報を一元管理することで、各業務プロセスを統合し、部門間のスムーズな連携を実現します。
販売管理や生産管理、会計管理などの基幹システム間でデータを連携すれば、業務の重複や手間を削減し、大幅な効率化が可能になります。
あらゆる情報をリアルタイムで把握でき、経営状況の全体像を可視化できます。
一方、CRMで一元管理できる情報は顧客との関係に限定されるため、より広範囲の情報を統合して活用したい場合には、ERPが適しています。
ただし、ERPに含まれるCRMは簡易的な機能しかないため、より精度の高い顧客管理を行いたい場合は、CRMと連携して併用することも検討してください。
企業の成長フェーズによって、CRMとERPのどちらが適しているのか判断しましょう。
顧客基盤の構築や営業活動の強化が必要な「創業期・成長初期」では、CRMの導入がおすすめです。
顧客情報の一元管理や営業プロセスの効率化を通じて、少ないリソースでも高い成果を目指せます。
また、CRMは導入コストが比較的低く、業務フローへの影響も少ないため、初期段階でも無理なく導入できます。
経営が安定して組織体制を確立する「安定・拡大期」では、組織全体の業務改善が求められます。
部門間の連携や業務全体の最適化が求められるこの段階では、ERPの導入が有効です。
販売管理や会計、人事など複数の業務を統合し、全社的な業務効率化と生産性の向上を図ることができます。
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CRMの中には、ERPとの連携に対応したシステムもあります。
より専門的な機能を搭載したCRMのデータをERPと共有することで、基幹情報とあわせて一元的に管理・分析できることがメリットです。
たとえば、ERPの在庫情報を参照しながら、CRMの顧客情報をもとに最適な商品提案を行うことができます。
また、CRMに蓄積した顧客情報を、ERPの経営戦略に役立てることも可能です。
CRMとERPの連携方法には、大きく分けて以下の2つがあります。
API連携 | システム同士をAPIで接続し、データや機能を共有する方法 |
CSV連携 | CSVファイルを用いて、データをエクスポート・インポートする方法 |
業務効率を重視し、担当者の負担を軽減したい場合は、リアルタイムで情報が共有できるAPI連携がおすすめです。
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CRMとは、顧客との良好な関係を築くために、情報やコミュニケーションを一元管理するシステムです。
顧客満足度の向上やリピーターの育成につなげます。
一方のERPは、基幹システムを統合して情報を一元管理できるシステムのことです。
企業全体の業務効率化やスムーズな意思決定をサポートします。
CRMとERPの違いを理解して、自社に適したシステムを選択することが重要です。
本記事では、目的や対応範囲、メリット、導入コストの違いなどについて詳しく解説しました。
自社にとって最適な選択をするために、ぜひ参考にしてみてください。
画像出典元:O-DAN