モノやサービスが簡単には売れなくなった今、どの業界でも競争が激化し、他社との差別化が難しくなっています。
新規顧客の獲得難易度が上がっている中で、近年では既存顧客との関係性を深めるCRM(顧客関係管理)の重要性が高まっています。
そこで本記事では、「自社にCRMは本当に必要なのか?」という疑問を持つ方に向けて、CRMの基本的な機能や役割について解説します。
さらに、導入メリット・デメリット、活用ポイントや失敗しないCRMの選び方を分かりやすくお伝えします。
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このページの目次
CRM(顧客関係管理)は、企業の競争力を高め、持続的な成長へ繋げるために欠かせないツールです。
ここでは、CRMが必要とされている背景と具体的な理由について解説します。
新規顧客より既存顧客重視の時代
顧客ニーズの多様化と情報の複雑化
失注の原因分析が求められている
データに基づく経営判断が不可欠
多くの業界が成熟し、商品やサービスそのものだけでは他社との差別化が難しくなってきています。
新規顧客を獲得するためには、ターゲットにマッチした広告運用やSNS・ホームページを活用した情報発信を通じて、企業の認知度を高める必要があり、そのためには多くのコストと時間がかかります。
一方で、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した「パレートの法則(2:8の法則)」によれば、企業の売り上げの80%は全顧客の20%によって生み出されているとされています。
新規顧客より既存顧客を重視した戦略は、企業の利益を向上させる上で欠かせないのです。
総務省が2023年7月に発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、日本のSNS利用者数は、2022年の1億200万人から2027年には1億1,300万人になると予測されています。
SNSの普及によって、誰もが気軽に商品やサービスの情報を発信・取得できるようになり、顧客一人ひとりが異なる価値を求める時代へ変化しています。
顧客ニーズの多様化と情報の複雑化に対応するためには、顧客を適切に管理し、一人ひとりに合ったアプローチで満足度を高めていくことが欠かせないのです。
競争が激化する中、企業には失注の原因を明確にし、再発防止策を実施することが求められています。
原因を把握しないまま営業やマーケティングを行っても、同じ失敗を繰り返し、結果として顧客を取りこぼし続けてしまうからです。
CRMを活用して顧客行動や商談データを分析し、課題を可視化・改善できれば、顧客満足度の向上や成約率アップにも繋がります。
市場の急速な変化に対応し、最適な戦略を実行するためには、顧客データを活用した経営戦略が欠かせません。
例えば、購買履歴や問い合わせ履歴を分析すれば、顧客が本当に求めている商品やサービス、改善すべき点が見えてきます。
中長期的な経営戦略を立てる上でも、データに基づいた意思決定は、リスクを抑えながら成果を最大化する上で重要です。
顧客戦略の効率化に役立つCRMですが、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
ここでは、CRMの基本機能と役割について解説します。
CRMとは、顧客との関係を管理・強化するためのツールです。
顧客満足度の向上やリピート率の増加、LTV(顧客生涯価値)の最大化を通じて、長期的な売上と企業成長に繋げることを目的としています。
CRMでできることは主に4つあります。
CRMの基本機能ともいえるのが、顧客情報の一元管理です。
顧客の名前や住所、連絡先などに加えて、過去の購買履歴や問い合わせ内容まで全ての顧客情報をまとめて管理できます。
CRMでは、営業担当者が行ったアプローチ履歴や商談状況といった案件管理が可能です。
営業プロセスごとに対応内容や予定、結果などを時系列で記録できるため、それぞれの案件状況が一目で把握できます。
CRMは、情報管理をしている顧客に対してメール配信ができる機能があります。
新しい商品やキャンペーン情報をただ一斉送信するだけでなく、顧客の属性や購買履歴に応じて、適切な内容を配信することが可能です。
CRMに蓄積された顧客データをもとに、購買履歴や接触履歴、利用状況などを分析してレポート作成を行う機能もあります。
これにより、顧客のセグメントやニーズの可視化が可能になり、マーケティング戦略の立案に役立ちます。
CRMと混同しやすいツールとして、SFA(営業支援システム)とMA(マーケティングオートメーション)があります。
CRM・SFA・MAの違いは下記の通りです。
CRM(顧客関係管理) | SFA(営業支援システム) | MA(マーケティング オートメーション) |
|
活用目的 | 顧客情報の一元管理と 関係性の強化 |
営業活動の効率化と 進捗管理 |
見込み顧客の獲得と育成 |
対象部署 | 営業、マーケティング、カスタマーサポートなど全ての部署 | 営業 | マーケティング |
主な機能 | ・顧客管理 ・対応履歴 ・メール配信 ・分析やレポート作成 |
・顧客管理 ・案件管理 ・活動管理 ・売上管理や予測 |
・リード管理 ・シナリオ管理 ・メール配信 ・スコアリング |
様々な機能があるCRMですが、導入することで主に4つのメリットが得られます。
営業・マーケティングの生産性向上
顧客対応の品質向上と満足度アップ
情報の属人化を防ぎチーム連携が円滑に
LTV最大化による売上の安定化
CRMを導入することで、今まで手作業や個別管理で行っていた顧客情報の整理、対応履歴の確認、案件の進捗管理などを一元化できます。
これにより、営業が収集した顧客ニーズをマーケティング部門と共有し、施策立案に活かすといった部門横断的な連携もスムーズになります。
情報の共有が容易になることで、全社的に顧客をサポートできる体制が整い、結果として営業やマーケティングの業務効率や成果の向上に繋がります。
CRMを活用することで、顧客一人ひとりの情報や過去の対応履歴を瞬時に確認できるため、状況に応じた最適な対応が可能になります。
例えば、購買履歴や問い合わせ内容を確認しながらスピーディーに回答できれば、顧客は「自分のことを理解してくれている」と感じ、安心感に繋がるでしょう。
丁寧で一貫性のある対応ができれば、企業への信頼を築くことができ、顧客満足度の向上に直結します。
CRMは、顧客情報や対応履歴を組織全体で共有できるため、情報の属人化を防ぐことができます。
例えば、担当者が退職や異動した場合でも、他のメンバーが顧客対応を引き継げる体制が整っていれば対応遅延や品質低下を避けられます。
情報を可視化・共有する仕組みを整えておくことで、部門を超えたスムーズな連携が可能となり、組織全体のパフォーマンス向上に繋がるのです。
LTV(顧客生涯価値)とは、ひとりの顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益のことを指し、この数値をどのように最大化するかが企業の成長に直結します。
CRMを通じて顧客の購買履歴や興味関心を分析し、ターゲットに応じた適切なタイミングで関連商品やキャンペーンの訴求を行えれば、リピート購入やクロスセルが見込めます。
顧客との関係性を深めることにより、LTVが高まり、安定的な売上に繋がるでしょう。
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CRMは企業と顧客の関係性を深める有効なツールですが、導入にあたっていくつかの注意すべき点があります。
CRMの導入には、初期費用や月額費用などの運用コストが発生する点に注意が必要です。
導入方法は、自社でサーバーを用意して利用する「オンプレミス型」、インターネット経由で利用する「クラウド型」の2種類があります。
オンプレミス型は、自社のニーズに応じた柔軟なカスタマイズが可能である反面、サーバー構築や保守にコストと手間がかかります。
一方のクラウド型は、初期費用を抑えやすく導入しやすい点が特徴ですが、カスタマイズ性や機能の自由度に制限がある場合があります。
CRMは導入しただけで成果が出るものではなく、社内に定着させ、日常業務の中で活用されることが重要です。
どんなに多機能であっても、社員一人ひとりが使いこなせなければ十分な成果は得られません。
操作方法や活用方法に関する研修を実施したり、マニュアルやFAQを作成したりする工夫が必要となるでしょう。
CRMを効果的に運用するためには、今までの業務フローや運用ルールを見直して、再構築する必要があります。
例えば、営業日報の記入方法や顧客対応履歴の入力ルールが人によって異なっていると、情報の整合性が保てず、CRM上での分析や活用が難しくなります。
情報入力のルールや業務プロセスを明確化し、誰もが一貫して運用できる仕組みを整えることが重要です。
CRMの必要性は理解したものの、どのような点に気をつければ良いのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、CRMを単なる導入で終わらせず、実際に成果を上げるために押さえておきたいポイントを4つご紹介します。
導入目的・KPIを明確にする
CRMの活用を社内に浸透させる
担当者やチーム体制を整備する
正確なデータ入力と運用の継続がカギ
まずは、CRMを導入する目的を明確にし、目標達成に向けて具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。
例えば、「顧客満足度を10%向上させる」「営業の成約率を20%改善する」といった定量的で測定可能な指標が有効です。
CRMの活用を社内に浸透させて、日常業務の中で使えるように促すことも大切です。
機能性も重要なポイントではありますが、パソコンに不慣れな社員でも直感的な操作ができるツールを選んでください。
CRMを導入後、社員がしっかりと使いこなせるようにするには、あらかじめ運用を支える担当者やチーム体制を整えておくことが重要です。
操作方法の研修を行ったり、活用事例を定期的に共有したりするなど、社内で必要なサポート体制を準備しておきましょう。
商談内容や問い合わせ履歴など、社員一人ひとりが正確にデータを入力し、日常業務の中で継続してCRMを運用することが重要です。
蓄積されたデータは、マーケティング施策の立案や経営戦略に活用されるため、情報の「量」だけでなく「質」も重要な要素となります。
実際にCRMを導入するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。
下記の5つのプロセスを参考に準備を進めていきましょう。
現状課題の洗い出し
目的設定
ツール選定
無料トライアルを活用し、実際の使用感を確かめる
導入・運用開始
まず、自社の営業活動や顧客対応における現状の課題を全て洗い出します。
例えば、「顧客情報が部署ごとに分散している」「対応履歴が残っていない」といった問題が考えられます。
社員へのヒアリングやアンケートを通じて、現場で起きている問題点を把握することが大切です。
現状の課題を洗い出したら、解決する優先順位を決めてCRMの導入目的を定めます。
例えば、「情報共有を効率化させ、問い合わせに対する初期対応を24時間以内に短縮する」といった具体的かつ測定可能な目的を設定することが有効です。
目的設定を明確に行うことで、CRMに求める機能や活用方法が選定しやすくなり、ツール選びのミスマッチを防ぐことができます。
目的設定によって見えた必要な機能や活用方法をもとに、実際にツールを選定していきます。
ツールによって特性が異なるため、機能面や操作性だけでなく、サポート体制や料金体系なども比較をしながら検討しましょう。
ツールによっては、導入前に無料トライアルやデモ画面で操作感を確認できる場合があります。
導入後に活用できなかったという失敗をしないためにも、現場の社員に使ってもらい、操作性や機能に問題がないか確認する機会を設けましょう。
CRMを導入後は、社内へ浸透させるために研修やマニュアルを活用しましょう。
問題なく運用が開始できたとしても、PDCAサイクルを回しながら、必要に応じて軌道修正を行うことが重要です。
利用状況や業務フローに応じて運用方針を見直すことで、CRMの効果を最大限に引き出せます。
CRMは種類が多く、どれを選ぶべきか悩むケースも少なくありません。
自社にマッチしたツールを見極めるために、下記を参考に比較してみてください。
使いやすさ・UI
サポート体制
他ツールとの連携性
セキュリティと信頼性
費用
分かりやすいUIで、直感的に操作できるCRMを選びましょう。
無料トライアルやデモ画面などを活用して、実際に使う現場の社員がストレスなく使えるかを確認しておくと安心です。
CRM導入後にスムーズな運用を進めるためには、提供元企業のサポート体制も重要です。
操作方法に関する問い合わせ対応や、トラブル時の迅速なサポート、導入時の初期設定などが整っているか確認しましょう。
チャット・メール・電話など、サポートの提供方法や受付時間なども比較しておくと安心です。
将来的な事業拡大や業務フローの変化を考慮し、他ツールとの連携が可能かという点は必ず確認しておきましょう。
CRMは単体で使うだけなく、SFAやMA、会計ソフトなどと連携することで、情報の活用範囲がさらに広がります。
CRMは顧客の個人情報や企業の機密情報を管理するツールであるため、セキュリティ対策と提供元企業の信頼性は欠かせません。
データの暗号化やアクセス権限の設定、情報漏洩防止策が整っているかという点に加えて、ISOなどのセキュリティ認証の有無、導入実績も確認してください。
CRMの導入・運用には一定のコストがかかるため、費用対効果を見極めたうえで選定することが大切です。
初期費用に加えて、月額費用やオプションの有無など、総合的に比較しましょう。
単に価格の安さだけで判断せず、自社のニーズにマッチした機能とのバランスを重視してください。
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現代のビジネス環境では、顧客ニーズの多様化や競争の激化によって、従来の営業やマーケティング手法だけでは成果を出しにくくなっています。
企業の競争力強化と顧客満足度の向上を実現するために、CRMの活用は不可欠です。
課題や導入目的を明確化した上で、自社にマッチしたツールを選定してください。
画像出典元:O-DAN