AI導入の大きな障壁となる初期コスト。
この課題は、2025年度に拡充された補助金制度を戦略的に活用することで解決可能だ。
本記事では、AI導入に最適な補助金主要5制度の特徴から、採択率を高める申請ノウハウまでを徹底解説する。
目次

AI導入や開発に活用できる補助金は多岐にわたるが、制度ごとに「対象となるAIツール」や「補助される金額規模」が大きく異なる。
確実な採択を目指すためには、自社の導入目的(業務効率化、新事業、販路開拓など)に合致した制度を選ぶことが最初のステップだ。
ここでは、2025年度にAI活用での申請が可能な主要5制度を厳選し、その特徴と選び方を解説する。
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者のITツール導入費用を国が支援する制度だ。
企業はこれを利用することで、業務効率化やDXを推進できる。
特に、AIを搭載したソフトウェアやサービスには本制度の対象となる製品も多いため、AI導入を検討している企業にとって最も身近で活用しやすい補助金の一つといえるだろう。
IT導入補助金の最大の目的は、生産性向上に役立つITツールの導入促進だ。
補助の対象となるツールは、事前に事務局に登録・承認されたものに限られる。
本補助金をAI導入に活用する場合、申請前に確認しておきたい重要なポイントは以下の2点だ。
| 申請枠の名称 | 対象者 |
| 通常枠 | 中小企業・小規模事業者等 |
| 複数社連携IT導入枠 |
|
| インボイス枠 (インボイス対応類型) |
中小企業・小規模事業者等 |
| インボイス枠 (電子取引類型) |
中小企業・小規模事業等およびその他の事業者 |
| セキュリティ対策推進枠 | 中小企業・小規模事業等 |
| 申請枠の名称 | 補助率 | 補助上限額 |
| 通常枠 | 中小企業:1/2 最低賃金近傍の事業者:2/3 |
最大450万円 |
| 複数社連携IT導入枠 | 最大2/3 | 最大3,000万円 |
| インボイス枠 (インボイス対応類型) |
~50万円以下:3/4 (小規模事業者:4/5) 50万円~350万円:2/3 ハードウェア購入費:1/2 |
最大350万円 |
| インボイス枠 (電子取引類型) |
中小企業:2/3 大企業:1/2 |
最大350万円 |
| セキュリティ対策推進枠 | 中小企業:1/2 小規模事業者:2/3 |
最大150万円 |
参考:IT導入補助金2025
中小企業省力化投資補助金は、構造的な人手不足の解消と生産性の向上を目的として、中小企業や小規模事業者が省力化投資を行うための経費を支援する制度だ。
本補助金は、「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型があり、AI技術を活用した機器・システムの導入に利用が見込まれる。
この補助金の最大の目的は、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援することだ。
補助金制度は、投資内容に応じて以下の2つの類型に分かれている。
| 申請枠の名称 | 主な対象者 |
| カタログ注文型 | 中小企業・小規模事業者 |
| 一般型 | 中小企業、小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人 |
| 補助対象 | 補助率 | 補助上限額 | |
| 補助対象として カタログに登録された 製品等 |
1/2以下 | 従業員数5名以下 | 200万円(300万円) |
| 従業員数6〜20名 | 500万円(750万円) | ||
| 従業員数21名以上 | 1,000万円(1,500万円) | ||
※賃上げ要件を達成した場合、()内の値に補助上限額を引き上げ
| 補助対象 | 補助率 | 補助上限額 | |
| 個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築 |
【中小企業】 【小規模企業者等】 |
従業員数5人以下 | 750万円(1,000万円) |
| 従業員数6〜20人 | 1,500万円(2,000万円) | ||
| 従業員数21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | ||
| 従業員数51~100人 | 5,000万円(6,500万円) | ||
| 従業員数101人以上 | 8,000万円(1億円) | ||
参考:中小企業省力化投資補助金
この補助金は、小規模事業者が経営計画を作成し、それに基づいて行う「販路開拓(売上拡大)」の取り組みを支援する制度だ。
AI導入に関しては、「第18回公募 公募要領」に記載されている以下の対象経費区分に基づき、活用が可能であると考えられる。
※注意: 公募要領(第18回版)において、ウェブサイト関連費は「単独での申請は不可(他の経費と組み合わせる必要がある)」かつ「補助金総額の1/4まで」という制限がある。
この補助金の最大の特徴は、商工会・商工会議所のサポートを受けながら経営計画を作成し、販路開拓を行う小規模事業者を支援する点にある。
| 特徴 | 内容 |
| 補助目的 | 販路開拓(新たな顧客獲得)や、それに付随する業務効率化(生産性向上)の支援 |
| 対象者の範囲 | 小規模事業者であること
|
| 必須の手続き | 地域の商工会または商工会議所による「事業支援計画書」(様式4)の発行が必要。申請前に経営計画の内容について相談・確認を受けるプロセスが必須となる。 |
| 申請枠の名称 | 主な対象者 |
| 通常枠 | 最も標準的な枠組みで、多くの事業者が利用できる。販路開拓等の取組が対象。 |
| 創業型 | 創業後3年以内の小規模事業者を重点的に支援する。 |
| 災害支援枠 | 令和6年能登半島地震などの被災事業者が対象。被災した店舗や設備の復旧、事業再建に向けた取組を支援する。 |
| 共同・協業型 | 複数の小規模事業者が連携して取り組むプロジェクト向け。共同での製品開発やプロモーション、地域活性化の取組を支援する。 |
申請する枠組みや特例の適用有無によって、補助上限額が異なる。
| 申請枠の名称 | 補助率 | 補助上限額 |
| 通常枠 | 2/3 | 50万円 |
| 創業枠 | 2/3 | 200万円 |
| 災害支援枠 | 2/3 | 200万円 |
| 共同・協業型 | 2/3もしくは定額 | 5,000万円 |
参考:小規模事業者持続化補助金
本補助金は日本の中小企業を対象に、ものづくり・商業・サービスを支援する制度だ。
AI導入においては、システム開発や専用ソフトウェアの購入など、機械装置・システム構築費などが対象経費となり得る。
第22次公募要領に記載された「補助事業の目的」および「概要」に基づくと、本制度の定義と特徴は以下の通りである。
補助事業の目的 本補助金は、中小企業・小規模事業者が今後複数年にわたる相次ぐ制度変更に対応するため、「生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発」や「海外需要開拓」を行う事業を対象とする。
これらの取り組みに必要な設備投資等(機械装置やシステム構築費など)を補助することにより、中小企業者等の生産性向上を促進し、経済活性化を実現することを目的としている。
補助事業の概要 中小企業者等の「生産性向上」や「持続的な賃上げ」に向けた、革新的な新製品・新サービスの開発や海外需要開拓に必要な設備投資等を支援する。
| 特徴 | 内容 |
| 補助目的 | 革新的な製品・サービスの開発や、海外事業の拡大を通じた生産性向上・賃上げの実現。 |
| 必須要件(基本要件) |
3〜5年の事業計画を策定し、以下の要件を満たす必要がある。
|
| 申請枠の名称 | 主な対象者 |
| 製品・サービス高付加価値化枠 | 新製品・新サービス開発に挑む中小企業 |
| グローバル枠 | 海外展開・インバウンドに取り組む企業 |
申請する「枠」によって補助上限額や補助率が異なる。
AI導入・開発で主に活用される枠は以下の通りだ。
| 申請枠の名称 | 補助率 | 補助上限額 |
| 製品・サービス高付加価値化枠 | 1/2 または 2/3 | 最大 2,500万円 |
| グローバル枠 | 1/2 または 2/3 | 最大 3,000万円 |
参考:ものづくり補助金
本補助金は、中小企業等が既存事業とは異なる事業への前向きな挑戦を行い、企業規模の拡大や付加価値向上を図る取り組みを支援する制度である。
AI導入やシステム開発も、新事業進出(新市場・高付加価値事業への進出)に不可欠な投資であれば対象となり得る。
この補助金の目的は、中小企業が新市場・高付加価値事業へ進出する挑戦を後押しし、企業規模の拡大と賃上げにつなげることである。
単なる業務効率化や設備更新ではなく、「新市場・高付加価値事業への進出」が条件となる。
AI導入に関連した対象経費は以下の通りである。
| 申請枠の名称 | 主な対象者 |
| - | 新規事業に挑戦する中小企業等 |
| 従業員数 | 補助率 | 補助上限額(基本) |
| 20人以下 | 1/2 | 2,500万円 |
| 21~50人 | 1/2 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 1/2 | 5,500万円 |
| 101人以上 | 1/2 | 7,000万円 |
参考:新事業進出補助金

AI導入のための補助金申請は、準備から受給まで半年〜1年以上の期間を要する長期プロジェクトだ。
全体像を把握せずに行き当たりばったりで進めると、「書類が間に合わない」「手順前後で不採択になる」といった事態を招くことになる。
ここでは、採択を勝ち取るための標準的なロードマップを4つのステップで解説する。
最初に行うのは、「どの補助金を使うか」と「どのAIツールを入れるか」の決定だ。
パートナーが決まったら、審査の核となる「事業計画書」を作成する。
準備が整ったら、電子申請システム(jGrantsや各補助金専用ポータル)から申請を行う。
ここで注意が必要なのは、「採択 = すぐに発注OK」ではない点だ。
採択された後、詳細な経費配分などを確認する「交付申請」を行い、事務局から正式な「交付決定通知」を受け取る必要がある。
補助金の審査は、提出された「事業計画書」のみに基づいて行われるため、計画書の出来栄えが採択の可否を100%決定する。
「この企業に投資(補助)すべきだ」と思わせるためには、以下のポイントを押さえた計画書が必要だ。
多くの補助金(特にものづくり補助金や事業再構築補助金)では、共通して以下の3つの観点で審査が行われるため、これらをバランスよく盛り込むことが不可欠だ。
| 評価項目 | 審査員の視点 | AI導入におけるアピール例 |
| ① 技術面・革新性 |
|
|
| ② 事業化面・実現性 |
|
|
| ③ 政策面 | 国の目的(生産性向上・賃上げ)に合致しているか? |
|
審査員が最も嫌うのは「AIを入れて業務を効率化したい」という抽象的な記述だ。
採択される計画書には、必ず「Before/After」の数値が明確に記されている。
このように、「時間」「金額」「率」で具体的な効果(ROI)を示すことで、計画の説得力が飛躍的に高まる。
素晴らしいAI導入計画であっても、基本的なミスで不採択になるケースが後を絶たない。
提出前に以下のポイントをセルフチェックすることが重要だ。

補助金は「もらえるお金」だが、ノーリスクではない。
特に中小企業にとっては、一時的な資金負担や、採択後の厳格なルールが経営の足かせになることもある。
ここでは、申請前に必ず理解しておくべき3つのリスクと、その対策を解説する。
多くの導入者が最初に直面する壁が「資金繰り」だ。
原則として、補助金は「後払い(精算払い)」である。
AIツールの導入費用は、一度自社で全額立て替えて支払いが必要だ。
補助金はもらって終わりではない。
国税を使っている以上、導入後に「本当に効果が出たのか」を国に報告する義務がある。
ビジネス環境の変化により、申請時の計画通りに進められなくなるケースもあるが、勝手な判断は厳禁だ。
補助金制度は複雑であり、申請前には多くの疑問が生じる。
ここでは、AI導入を検討している導入者から特によく寄せられる3つの質問について回答する。
A.可能である。
多くのAI関連補助金は、法人だけでなく個人事業主(フリーランス含む)も対象としている。
特に以下の2つは、個人事業主でも活用しやすい制度といえる。
ただし、申請には「開業届」の提出や、確定申告(青色申告推奨)を行っていることなど、「事業の実態」があることが前提条件となる。
副業レベルで事業実態が曖昧な場合は対象外となるケースもあるため、公募要領の「補助対象者」の欄を事前によく確認しておきたい。
A. 「同一の経費」に対して複数の補助金を受け取ることはできない。
これは「重複申請の禁止」と呼ばれるルールだ。
例えば、全く同じ「AI-OCRソフト(100万円)」の導入費用を、IT導入補助金と小規模事業者持続化補助金の両方に申請し、二重取りすることは不正とみなされる。
しかし、「異なる事業」や「異なる経費」であれば、併用が可能なケースがある。
例:
このように、目的と対象経費が明確に分かれていれば、時期が重なっていても問題ない場合が多い(※ただし、制度によっては同一年度内の併用を制限していることもあるため、念のため専門家に確認することを推奨する)。
A. 可能である。
一度不採択になっても、諦める必要はない。
多くの補助金は年間に複数回の公募締め切り(締切回)を設けており、次回の締切で再チャレンジ(再申請)することが可能だ。
実際に、1回目は不採択だった計画書をブラッシュアップし、2回目で採択されたケースも数多く存在する。
再申請で採択されるためのポイント:
本記事では、2025年版のAI導入・開発に活用できる主要な補助金と、採択を勝ち取るためのポイントについて解説した。
AI技術はもはや「未来の技術」ではなく、今すぐビジネスに実装すべき「競争力」だ。
補助金は、導入コストという最大の壁を取り払い、DXを加速させる強力な手段となるだろう。
補助金制度を賢く活用し、リスクを抑えながら、確実な成長へと繋げてほしい。
画像出典元:O-DAN
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