定期的に行われる人事評価は、社員の待遇や給与を決める上での重要な指標です。
自分自身を客観的に評価してコメントを記載することは意外に難く、評価シートを前にして「何を書こうか……」と悩む社員は少なくありません。
そこで本記事では、自己評価の例文を職種別にご紹介します。
自己評価の目的や記載するときのポイントも紹介するので、併せてチェックしてみてくださいね。
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このページの目次
「処遇を決めるためのベースにするなら、上司が部下を評価するだけで良いのでは?」と考える人も多いはず。
人事評価で自己評価の提出を求められるのはなぜなのでしょうか?
自己評価の意義や目的を紹介します。
自己評価を行うためには、自身のこれまでの業績・勤務態度を振り返る必要があります。
これにより社員は「あまり良い成果を上げられていない」「ちょっと人に頼り過ぎた」など、自身の業務を客観的に見られるようになるでしょう。
慌ただしい日常を過ごしていると、自身の仕事ぶりや勤務態度について思いをめぐらせる時間は少ないものです。
自己評価は社員に自身の課題や問題点に気付いてもらい、改善するためのきっかけとなります。
どれほど細かく評価規定を策定しても、一方向的な評価だけでは偏りが出るものです。
評価する側だけではなく「される側」の視点も評価に加えることは、人事評価の精度をより高めることにつながります。
人事評価を行う上司も、全ての部下の事情を把握しているわけではありません。
担当する部下が多い場合は、スキル・能力のある社員を見落としてしまうこともあるでしょう。
社員に自己評価を求めることは、公平性の観点からも必要です。
客観的な自己評価を促すことは、企業と社員との間にある「評価についての認識の差」を近づけることにつながります。
例としては、自身の現状について「できた」「できなかった」で答える項目です。
社員はチェックを入れながら、企業が求める社員像と自身との違いを認識します。
チェックを入れ終われば「企業で評価されるポイント」が明確化し、努力の方向性・スキルアップの重要性を理解するでしょう。
企業の評価が低いにもかかわらず、自己評価が高い社員もいます。
企業と社員の評価をすり合わせることは、社員・企業双方にとって有用です。
人事評価での評価基準となるのは「成果」「能力」「情意」の3点といわれます。
自己評価を記載するときは、それぞれの基準を意識することが必要です。
自己評価を書くとき、盛り込みたい内容を紹介します。
社員が「どれだけの業績を上げたか」「どのような目標を達成できたか」は、非常に重要な評価項目となります。
企業利益の向上につながったと思える成果があれば、ささいなことでも漏らさずに記載しましょう。
企業としては、誰よりも「企業の発展のために尽力してくれる社員」に厚く報いたいと考えます。
成果を声高にアピールすることを遠慮したり、ためらったりする必要はありません。
社員のスキル・能力も、人事評価では重要な評価ポイントです。
業務を円滑に遂行する上で役に立ったスキル・知識があればしっかりとアピールしましょう。
企業が定義する「能力」には、実行力や提案力・交渉力・改善力なども含まれるのが一般的です。
業務をスムーズに進める上で役に立ったと自負できる能力があれば、高い評価を得られるでしょう。
人事評価における「情意」とは、勤務態度や業務に取り組む姿勢などを指します。
例えば以下のような資質をアピールすることは、評価点の加算につながるでしょう。
情意基準は数値化や具体例の提示が難しく、記載の仕方に迷うかもしれません。
一方で、業績が芳しくなかったり、スキル・知識をアピールする機会に恵まれなかった人には絶好のアピールチャンスにもなります。
ちょっとしたエピソードなどを交えて、遠慮せずにアピールするのがおすすめです。
人事評価システムを導入すれば、評価管理を自動化でき評価の精度・公平性の向上も見込めます。
目標設定を自動添削してくれる便利な製品もあるので、ご覧ください。
自己評価シートを書くときは、自身の職種に適したアピールを行うことが必要です。
シートのアピール力を高められるよう、書き方のコツを理解しておきましょう。
ここからは、職種別の自己評価シートの具体的な書き方を、NG例とともに紹介します。
自身の職種に合うものをチェックして、スムーズに自己評価シートを仕上げましょう。
今期は個人売上が前期よりも大幅にアップしました。
新規顧客の獲得についても目標をクリアしており、チーム・企業利益に貢献できたのではないかと考えます。
課題は、クレームが数件あった点です。来期はクレームを受けないよう注意したいと思います。
成果・課題ともにあいまいで、内容が漠然とし過ぎています。
具体性がない点がマイナスとなり、良い評価を受けられない可能性があるでしょう。
営業は、他の業種と比較して「自己評価を書きやすい」といわれます。
数値目標や達成率が数字できっちり出されるため、成果の可視化が容易だからです。
営業として自己評価を記載するときは、具体例を提示しながら分かりやすくアピールしましょう。
「前期プラス10%の売上アップ」の目標をクリアし、売上550万円を達成しました。
新規顧客獲得数も前期比プラス5件となり、チーム・企業利益に貢献できたのではないかと考えます。
課題は、2件のクレームを受けてしまった点です。
今後はより一層顧客管理・顧客ニーズのくみ取りに努め、顧客に寄り添った営業を展開していく所存です。
総務として、社員管理や備品管理を行っています。
今期に入って残業をする人が増えたので、全社的に注意を促しました。
また、新システムのマニュアル作りにも取り組むなど、社員が働きやすい環境作りに努めています。
具体的な取り組みを行った点は高評価ですが、その後の成果が分かりません。
自身が起こしたアクションに対し、どのような結果が返ってきたのかを記載しましょう。
事務職は幅が広く、業務内容によっては具体的な数値を上げにくいかもしれません。
この場合は「自身の取り組みにより、どのようなことが改善されたか」をしっかりとアピールすることが大切です。
総務として、社員管理や備品管理を行っています。
今期は残業削減を目標に、社員に対し積極的な働き掛けを行いました。
結果、前期と比較して、残業する人の割合は約5%減少しています。
また新システムの問合せが増えたため、マニュアルを作成して各部署に配布しました。
1日数件あった問合せがゼロになり、社員の業務効率アップに貢献できたと考えます。
今期は前期に引き続き○○事業を担当しました。
特に目立った進捗はなく、前期と変わりません。
○○事業はしばらく担当する予定ですので、効率的に業務を進めていけるよう努めます。
たとえ事実だとしても「前期と同じ」は好ましくありません。
今期行った取り組みについて、1つ、2つは挙げておきましょう。
公務員といっても業種はさまざまです。
人によっては中長期にわたり同じ事業を担当することがあり、具体的な目標や成果について述べるのは難しいかもしれません。
具体的な成果を提示できないのであれば、「目標達成に向けてどのような取り組みをしたか」をアピールするのがおすすめです。
今期は前期に引き続き、○○事業を担当しました。
来期に予定されている中間報告で有益な意見を出せるよう、課題の洗い出しと資料の取りまとめを行いました。
より密な連絡体制を維持できるよう、チームミーティングの回数を増やした点も良かったと思います。
メンバー間の意思疎通・情報共有がきちんと行われるようになり、業務効率が向上しました。
今期は社員・アルバイトとの連帯感を高めるべく、報連相を徹底しました。
備品の不備にも気を配り、働きやすい職場作りに貢献できたと自負しています。
ただし仕事のシフトについては不満を持つ人が数人いたため、来期は細かく聞き取りをして調整できるようにしたいと考えます。
接客業であるにもかかわらず、顧客の視点がありません。
快適な職場環境の構築は重要なことですが、まずは「接客の面でどのような成果があったのか」を記載しましょう。
接客業で評価されるのは、「接客態度」「対応の迅速さ・丁寧さ」などです。
自己評価を記載するときは、顧客にどのような態度で接したか・顧客の反応はどうだったのかを中心に振り返りを行ってみましょう。
今期は「お客様のニーズ・要望を読み取ること」を意識しました。
接客中は相手の表情・態度を読み取り、必要なタイミングできちんと声掛けできたと思います。
売上は前期から大きく変動していませんが、「ありがとう」と言ってもらえたりお客様から声を掛けてもらったりすることが増えました。
来期はさらにステップアップして、売上につながるセールストークの精度を上げていきたいと思います。
今期は事前準備からしっかり取り組んだため、余裕を持って仕事ができた点が良かったと思います。
ムダな工程のカットによって業務効率も上がり、納期に遅れることもありませんでした。
業務をこなすスピードは確実に速くなっているため、来期は正確性を高めることに注力したいと考えます。
「ダメ」と言い切るほどではありませんが、自分のことに終始している点が気になります。
技術者はチームで働くことがほとんどのため、コミュニケーションスキルやチームへの貢献度も重視されます。
数値化できる成果と併せて、自己評価には「どのようにチームに貢献できたか」を入れておくのが理想です。
業務フローの見直しを提案したことにより、開発費を15%コストカットできました。
また作業分担の再編を行ったことで、20%の工数カットにつながったのも良かったと思います。
課題はバグの発生による手戻りが数件あった点です。
来期はテスト工程を追加し、手戻りゼロを目指すつもりです。
前期と比較して、チームの生産数はアップしました。
私としましては、ムダな業務は積極的にカットしたことが、業務効率につながったと思います。
来期も「まずは何でもやってみる」の精神で、積極的に業務に取り組んでいこうと思います。
積極性は評価されるべき資質ですが、「勝手なことをしている」と取られる可能性もあります。
特に製造業は安全面の観点から、厳密なマニュアル・規定が設けられているケースが少なくありません。
安易に「自己流で業務改善を行った」とは記載しない方が良いでしょう。
製造業は、どちらかというと定量目標を立てやすい業種といわれます。
自己評価では、数値を用いて成果をアピールするのがベターです。
業務の改善に貢献できたことがあれば、そちらも併せて記載しておきましょう。
今期、我がチームは前期と比較して10%の生産性向上を達成しました。
チームミーティングで現行の業務フローにおける問題点の洗い出しを行い、情報共有できたことが良かったと思います。
また今期から加わった新人3人には、マニュアルを作成して新人教育を行いました。
現場でのOJTも積極的に行ったため、新しい人にも必要な知識・作業の流れを伝えられたと自負しています。
被介護者に危険がないよう、常に見守るようにしました。
居室で異変を感じた場合は、なるべく早めに状況確認をするように心掛けています。
また、介護の基本的なスキルと知識を身に付けるため、介護福祉士実務者研修を受けようと考えています。
研修を受け終わったら、介護福祉士国家試験にも挑戦できたらと思います。
全体的に具体性に欠けるのがマイナスポイントです。
介護職では、被介護者の安全が最重視されます。
評価点をアップさせるためには、より具体性のある記述を心掛けましょう。
また、資格の取得を目指すのは好印象ですが、「つもり」「したい」だけでは評価の付けようがありません。
具体的な期間を提示した方が、説得力があります。
「国家資格を取る」ということは、非常にアピール力が高いです。
被介護者に危険がないよう、全身が見える場所からの見守りを徹底しました。
居室で異変を感じた場合は2分以内に部屋へ行き、状況確認するようにしています。
また、介護のスキルと知識を習得するため、◎月●日から○日まで介護福祉士実務者研修を受ける予定です。
実務者研修を修了したら、介護福祉士国家試験の勉強も始めます。
似たような内容でも、書き方次第で評価者に与える印象は変わります。
自身の成果・やる気を正当に評価してもらえるよう、正しい書き方を理解しておきましょう。
自己評価シートを記入するとき、心掛けたいポイントを紹介します。
「できました」「達成しました」だけでは、個人の感想と変わりません。
成果をアピールするときは、具体的な数値で客観性を担保しましょう。
例えば、営業や販売・製造などは、成果が数値で表わされるのが一般的です。
目標値を出したり達成率を出したり、数値を引っ張ってくるのは難しくないでしょう。
一方で、バックオフィス業務を担当する事務職や技術系などは、具体的な数値の提示が難しいかもしれません。
この場合は、具体的な成果をそのまま述べればOKです。
評価者に独りよがりな印象を与えないよう、あいまいさ・誇張表現をなくし、事実を淡々と述べましょう。
良い評価を得たいからといって、良いことばかり記載するのは好ましくありません。
「自分を客観的に見られない人」ととらえられ、評価者の心証を悪くします。
自己評価シートに自身の抱える課題・問題を書くときのポイントは、改善点を併せて記載することです。
どれほど優秀な人でも、失敗やミスと無縁ではいられません。
失敗やミスをマイナスで終わらせず、今後につなげていくことが高評価につながるでしょう。
自己評価シートは、自身の成果・資質をアピールするためのものです。
業績が芳しくなかったとしても、ネガティブな表現に終始するのは避けましょう。
また、企業によっては「今期の総括」として自身に5段階評価を付けさせるところもあります。
このとき遠慮して低く自己評価を付けると、そのままの評価が付くかもしれません。
自分では良い働きができたと思えるのなら、遠慮なく「5」を付けてください。
自己評価を行うときに痛感するのが「客観的に自分を見るのは難しい」ということです。
もしかするとあなたも、自分を過大評価したり過小評価したりしているのかもしれません。
ここからは、「過大評価タイプ」「過小評価タイプ」の傾向と対策を紹介します。
過大評価タイプは、自分を実際よりも「すごい」「できる」と評価する人のこと。
ある意味ポジティブで素晴らしいといえますが、度が過ぎると周囲からの信用を失ってしまうかもしれません。
過大評価タイプの傾向と対策を見ていきましょう。
自身を過大評価しがちな人は、基本的に自信家です。
「自分はすごい」と思い込んでいるため、態度も堂々としています。
また自分に自信がある分、周囲を見下したような態度を取ることも少なくありません。
自分が間違っていても人のせいにしたり、他者からのアドバイスに耳を貸さなかったりすることも多いでしょう。
自身を過大評価しがちな人に欠けているのは、客観的な視点です。
自分の言動を俯瞰して見られるよう、他者との関わりを増やしていきましょう。
ただし、自分にとって居心地の良い人とだけ交わっていたのでは、認識を改めることができません。
思い切って知り合いゼロのコミュニティに飛び込み、いろいろな人の意見・考えに触れると大きく視野が広がるでしょう。
過小評価タイプは、自己評価の低い人です。
成功してもおごらないのは美徳といえますが、消極的な態度のままでは、高い評価を得にくくなります。
過小評価タイプの傾向と対策を見ていきましょう。
過小評価タイプの人は、自己アピールが苦手な傾向にあります。
大きな成果を上げても、誰かに大声で知らせることはしません。
周囲の人に長所や能力を認めてもらうには、やや時間がかかるでしょう。
「他者を煩わせたくない」と考えるのも、過小評価タイプに多く見られる特徴です。
他者への遠慮から、他者と競合するシーンでは、常に一歩下がってしまいます。
謙虚なタイプともいえますが、周囲にネガティブな印象を与えることも多いでしょう。
自己評価の低い人に必要なのは、自信です。
自分自身を正当に評価できるよう、「自分って意外にすごいかも」と思える経験を積みましょう。
まずはじめは、小さな目標を立ててクリアしていくことです。
成功体験が積み上がっていけば、少しずつ自信も付いてきます。
「自分だってやればできる」と思えることが、意識を変えるきっかけとなるはずです。
人事評価における自己評価は、評価の公平性・客観性を保つために重要です。
提出を求められた場合は、詳細に記載して提出しましょう。
自己評価を記載するときのポイントは、具体性と客観性です。
自己陶酔しているような内容では、評価者にあまりよい印象をもたれません。
自分の成果・スキルを俯瞰して、信頼性のあるアピールを行ってください。
この記事で紹介した例文を活用し、スムーズに自己評価シートを仕上げましょう。
画像出典元:Unsplas、Pixabay
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