給与体系のモデル作成方法から見直し手順までをやさしく解説

給与体系のモデル作成方法から見直し手順までをやさしく解説

記事更新日: 2021/07/02

執筆: 河野亜希

働き方の多様化に伴い、従来型の給与体系の見直しを検討する企業が増えています。

貴社の給与体系は時代に即したものとなっていますか?

労働対価に見合う賃金の支払いがなされていなければ、従業員のモチベーションの低下につながってしまいます。

従業員の労働対価に見合う正当な賃金を支払って、信頼関係を保持するためにも、給与体系の仕組みを熟知した上で、仕事の成果に応じた賃金を支払わなければなりません

今回は、給与体系について、その種類や給与の算出方法、モデルの作成方法のほか、見直しの手順についても詳しく解説していきます。

今回の記事を参考にして、企業の実情に合った給与体系へと見直していきましょう。

給与体系とは

給与体系とは、基本給や各種手当といった給与に関する項目の構成や、その決定方法、支払い基準を表したものです。

労働基準法第11条では、給与について、労働の対価として支払いを受けるすべてのものと定義しています。賞与や退職金など、臨時的に支払われる賃金も含まれます。

賃金支払いの5原則

労働者が労働対価としての賃金を確実に受け取ることができるようにするため、労働基準法第24条において「賃金支払いの5原則」を定めています。

・通貨払いの原則

・直接払いの原則

・全額払いの原則

・毎月一回以上払いの原則

・一定期日払いの原則

 

通貨払いの原則

賃金は、原則現金で支払わなければならないと定められており、自社株や在庫商品などによる現物支給を禁止しています。

ただし、労働者の同意があれば、銀行口座への振込による賃金の支払いが可能です。

直接払いの原則

賃金は、直接労働者に支払わらなければならないと定められています。

代理人への支払いを禁止しており、未成年の労働者に対しても直接本人に支払うべきとされています。

全額払いの原則

法令などに別段の定めがない限り、賃金は全額支払うべきとされています。

別段の定めとは、社会保険料や所得税の控除など、賃金からの差し引きが認められているもののことです。

毎月一回以上払いの原則

毎月一回以上、賃金を支払うことも定められています。賃金未払いの期間が長くなってしまうと、労働者の生活が不安定になる恐れがあるからです。

賞与などの臨時的な支払いを除いて、一定間隔で賃金を支払わなければならないのです。

一定期日払いの原則

賃金は、「毎月20日」などと、一定期日に支払うことと定められています。「毎月第4金曜日」などのような曜日指定の支払いはできないようになっています。

給与体系の種類

給与体系の種類は、大きく「基準内賃金」「基準外賃金」「割増賃金」の3つに分けられます。

ここで、種類ごとの賃金構成を見ていきましょう。

1. 基準内賃金

基準内賃金とは、所定の労働時間内に労働した対価として支払われる賃金のことです。

主なものは基本的な労働に対して支払われる基本給ですが、役職手当や職務手当、資格手当なども含まれます。

基本給の性質上、次の3つに分けられています。

属人給

属人給とは、年齢や学歴、勤続年数など、従業員の個人的要素を重視して基本給を決定するケースをいいます。日本の終身雇用で行われている給与体系の代表例です。

仕事の成果を出さなくても在籍していれば昇給しますが、能力や成果に応じた査定がなされず、従業員のモチベーションが上がらないといったマイナス面があります。

仕事給

仕事給では、担当する職務内容や職務遂行能力など、仕事の役割や要素で基本給を決定します。仕事の対価を重視することから、成果主義を導入する企業で多く利用されています。

適切な人事評価が可能であり、勤続年数が長くなることで負担になる人件費を抑えられる反面、社内での配置転換が難しく、市場の変化に鈍感になりやすいといったマイナス面もあります。

総合給

総合給では、属人給と仕事給の両方を総合的に見て基本給を決定します。

決定するための要素が多くなるため、さまざまな角度から判断できる反面、運用が複雑化するというデメリットがあります。

2. 基準外賃金

基準外賃金とは、所定の労働時間での労働に関係なく支払われる賃金のことで、従業員の勤務実態や個人の事情などにより変動します。

通勤手当

自宅から会社までの通勤にかかる交通費を支給する手当をいいます。法律での支払い義務はありませんが、9割近い企業が支給しています。

通勤手当を一律の金額で支給する場合、基準外賃金に該当せず、残業としての単価計算に含める必要があるため注意が必要です。

家族手当

配偶者や子供など、従業員に扶養家族がいる場合に支給される手当のことで、扶養手当とも呼ばれています。

所得税の非課税枠や社会保険の扶養枠との関係上、配偶者手当には配偶者の年収に制限を設ける企業が多数です。

従業員の家庭事情などを考慮せずに一律に家族手当を支給する場合は、通勤手当と同様、残業としての単価計算に含める必要があります。

住宅手当

従業員が住宅ローンや家賃の支払いを行っている場合に支給される手当です。家賃補助などの名目で導入するケースもあります。

従業員一律に支給する場合は、残業としての単価計算に含めなければなりません。

その他諸手当

単身赴任者に支給される「別居手当」、子供がいる従業員への教育費支援として支給される「子女教育手当」、結婚や弔事など臨時的に発生するものに支給される「臨時賃金」、賞与など年に1回等の期間で支給される「一ヵ月超ごとの支払賃金」などがあります。

3. 割増賃金

割増賃金とは、法定労働時間を超えて労働させた場合に、支払いが義務付けられている賃金のことで、いわゆる「残業手当」が該当します。

従業員が労働した時間帯によって、割増賃金は次の3つに分けられます。

時間外労働割増賃金

法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えて労働させた場合に、支払い義務が生じる賃金のことです。

割増賃金の単価×割増率25%×超過時間で計算されます。

休日労働働割増賃金

労働基準法第35条で定める休日に従業員に労働させた場合、支払い義務が生じる賃金のことです。

割増賃金の単価×割増率35%×休日に勤務した時間で計算されます。

深夜労働働割増賃金

午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させた場合に、支払い義務が生じる賃金のことです。

割増賃金の単価×割増率25%×深夜時間帯の労働時間で計算されます。

給与の算出方法

給与の算出方法にも種類があります。主なものは「定額制」「出来高制」「年俸制」の3つです。

定額制

定額制とは、月額や時間給など、働く期間に応じて給与を定めて支払う仕組みのことです。パートやアルバイトの場合、1日単位や1週間単位で支払われるケースもあります。

月額で支払われる場合は、月の休日数や勤怠状況に関係なく、毎月一律の金額が支給される「完全月給制」、遅刻や欠勤によって給与を減額する「日給月給制」に分けられます。

出来高制

出来高制とは、従業員の業務実績に応じて給与を支給する仕組みのことで、「歩合制」とも呼ばれています。

出来高制には、固定給に出来高分を加算して支給する「一部出来高制」、給与全体を歩合給とする「完全出来高制」とがあります。

年俸制

年俸制とは、従業員の前年度の業績に応じて、賞与を含む年間の給与を決定するという仕組みのことで、決定された金額を12ヵ月で分割して支給されています。

法定時間外での勤務に関する割増賃金は給与とは別に支給しますが、毎月一定時間分の残業を見込んで、固定残業代金を含めて年俸を決定するケースもあります。

給与体系モデル作成の手順

2020年に改正された労働基準法において「同一労働同一賃金」制度の実施が義務付けられて、雇用形態にかかわらず、同じ仕事をする人には同額の賃金を支払うこととされました。

従業員の働き方が多様化する中、従業員の職務内容や難易度、責任の度合い等によって給与を決定するという「職務給」の考え方が浸透してきています。

ここで、職務給を軸にした給与体系モデルの作成手順をご紹介します。

1. 年齢給・職能給との違いを確認

「同一労働同一賃金」を目指すために必要な職務給は、従業員の職務の重要性や仕事により生み出される価値に応じて、客観的に給与を決定するのが特徴です。

一方、年齢給は、従業員の年齢に応じて給与を決定するため、職場経験や業績はほとんど関係がありません。また、職能給は、職務に関する知識や経験、リーダーシップなどの資質に応じて決定されることから、長く勤務して能力を高めれば昇給が期待できるため、モチベーションの向上につながります。

職務給を軸にして給与体系を設計することが重要ですが、企業風土に合わせて、職務給と年齢給、職能給を組み合わせて設計することも検討してみてください。

2. 職務に関する「役割評価表」を作成

職務給により適正な評価を行うためには、「役割評価表」を作成して、企業における職務の役割の重要度を測定する必要があります。

その測定方法のうち、多く用いられているのが、点数によって職務の重要度を可視化する「要素別点数法」です。

職務における問題解決の困難度、経営への影響度、人材台体制など、各評価項目において判断尺度を設定し、点数化します。

職務の重要度に応じて、倍率を設定しても問題ありません。職務給による給与体系を効果的に運用するには、判断尺度を具体化しておくことが大切です。

3. 職務給導入によるニーズの明確化

役割評価表を作成したら、従業員に対して、職務給を導入することによりどのような待遇を実現したいのか、ニーズを明確にしておきます。

従来の給与体系から職務給へと移行させるために、労働環境の変化や事業活動の方向性を踏まえつつ、従業員に導入目的を具体的に説明することが重要となるからです。

給与体系モデルの改定により、すべて職務給へと置き換える企業もありますが、従業員の職務執行能力と職務への意欲を高めるために、他の給与体系と組み合わせて検討することもおすすめします。

4. 職務給の設計を実施

役割評価表による職務の役割評価を実施して、特定の職種への偏りや、給与体系の作成方針との矛盾などがないか、しっかり確認します。

給与体系の公平性の確保には、職務間や等級間におけるバランスが重要です。バランスを保つためには、評価項目の点数倍率や職種、等級について、変更が必要となるケースもあります。

現行の給与体系と新しい給与体系とを比較し、各従業員の処遇の変化も検証しつつ、職務給を決定します。

5. 新しい給与体系モデルの導入・運用

新しい役割や等級などに応じて給与額を設定したら、その給与体系モデルを導入して効果的に運用するために、実際の給与額から金額が増減する従業員に対して、賃金の経過措置を検討しなければなりません。

金額が超過している場合は、調整給を支払う、上位等級への格付け変更などが考えられます。単に超過分を減額してしまうと、労働条件の不利益変更となるため、注意しなければなりません。

金額未達の場合は、職務に見合う賃金が支払われていないことになるため、未達分の賃金引き上げが必要です。

一度での賃金引き上げが困難であれば、昇給額を調整して、数年かけて引き上げるのも一つです。

正しく給与体系を導入、運用するためには、従業員の育成や能力開発のための環境整備、人事評価制度の見直しも重要になります。

給与体系は定期的な見直しが必須!

働き方が多様化し、法令の改正がなされる中で、現行の給与体系が適切なものかどうか、定期的に見直しを行うことが重要です。

そのためには、どのような点に注意して見直せばよいのでしょうか。

賃金水準を調査

定期的に見直しを図るためには、現在の雇用情勢や世間の賃金相場について、しっかりと把握することが重要です。

毎年厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査」や、民間の研究機関や労働組合などが調査・集計した統計などを参考にすることをおすすめします。

給与体系の見直し

賃金水準を調査した結果、企業の給与体系が世間の情勢とかけ離れているのであれば、見直しを検討する必要があります。

企業風土に合わせた給与体系への移行、不足する手当の追加や不要な手当の廃止、賃金支払いの5原則の充足、人件費などのデータチェックや従業員へのアンケート等による給与体系の課題分析などにより、企業が求める従業員像に合わせた賃金項目や報酬基準などの見直しを行っていきます。

現状の給与が従業員の労働対価に見合っているか、従業員の生活を支えるために正常に機能しているかが、重要なポイントになります。それらを踏まえて、見直さなければなりません。

給与体系移行のシミュレーション

給与体系を見直したら、導入前にしっかりとシミュレーションを行う必要があります。

シミュレーションにより、移行後の制度が企業風土や実情に見合うものかどうか、不備や不都合がないかも確認できるため、スムーズに導入することが可能となります。

従業員に対する詳細説明

入念なシミュレーションが終了したら、運用する前に、従業員に対して新しい給与体系に関する説明が必要となります。

資料などにより、変更点や運用方法などについて、詳細な説明が必要となります。従業員が新体系について正確に理解したことを確認した上で、運用するようにしてください。

まとめ

ここ数年で、法改正や働き方改革などにより、従来の給与体系の見直しを図る企業が増えています。

従業員の労働対価に見合う賃金が支払われることで、従業員のモチベーションが向上し、企業の事業戦略の実現が可能となります。

関連法令や情勢の把握などにより、自社の風土に合う給与体系を設計して、企業の発展につなげていきましょう。

画像出典元:Pixabay、Unsplash

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