最近、国内でも導入を進める企業が増えている「年俸制」。
年間の給与があらかじめ決められている給与形態ですが、具体的にどんな賃金制度なのか分からない方も多いでしょう。
今回は、年俸制の概要やメリット・デメリットをお伝えします。
さらに、月給制との違いや年俸UPの交渉術まで解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
年俸制とは、年単位で給与の金額が決定される賃金制度を意味します。
従業員の成果や業績に応じて給与が決められ、「年俸を12等分して毎月支払われる方法」や「14等分した年棒が毎月支払われ、2回分はボーナスとして支払う方法」が多いです。
年俸制であっても就業規則に定められていれば、労働しなかった時間や日数分の給与を差し引く「欠勤控除」が適用されることも押さえておきましょう。
年俸制は、「単一型年俸制」と「複合型年俸制」の大きく2種類に分けられます。
それぞれの特徴を解説しましょう。
単一型年俸制とは、業績を中心に1年間の給与を決定する形態です。
プロ野球選手などは単一型年俸制が採用されており、基本的に毎年契約更改が行なわれ、活躍に応じて給与が決まります。
欧米で主に採用されている賃金制度ですが、日本で導入している企業は少ないです。
複合型年俸制とは、「基本年俸」と「業績年俸」の2本立てで1年間の給与を決定する形態です。
基本年俸は一般的な基本給と同じような性質を持ち、年功や職能等級などによって決められます。
一方、業績年俸とは業績に応じて臨時に支給される給与、いわゆる賞与に当たるものを指します。
複合型年俸制は一定水準の年収が保証されるので、年俸制が多用されていない日本企業でも取り入れやすい制度です。
エンジニアやデザイナーなどの専門職や管理職に適用されることの多い給与形態でしょう。
年俸制と月給制は、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?
併せて日給制との違いも解説します。
年俸制は、1年間の給与をあらかじめ決定し、12回や14回などで分割して支払います。
対して、月給制は月ごとに給与が決められて支払われる賃金制度です。
このため年俸制は1年間に支払われる金額が固定されていますが、月給制は会社の業績や個人の成績などで左右します。
また、年俸制は従業員の能力や功績に応じて給料が決められる一方、月給制は従業員の年齢や勤続年数によって決定されるのも違いの1つでしょう。
日給制とは、1日あたりの給与額が決められており、勤務日数に応じて賃金が支払われる賃金制度です。
能力に関係なく勤務日数が多いほど給与が支払われるといった特徴があります。
対して、年俸制は1年に支払われる賃金は決まっており、勤務日数よりも従業員の業績に重きを置かれて給与額が決定されるのです。
年俸制と月給制のどちらが従業員にとって得なのでしょうか?
年俸制は、個人の業績が給与に直結するからこそ、成果を残すほど対価が支払われます。
頑張った分だけ手元にお金が入ってくるので、やりがいを感じながら仕事をしたい人にぴったりでしょう。
また、年間に支払われる額が決まっているからこそ、綿密に1年間の計画を立てたい人にもおすすめです。
月給制は年齢や職務に応じて給与が決定されるので、年間で大きく給与が変わることはありません。
年俸制のように業績に応じた大きな給与UPはありませんが、毎月一定水準の収入を得られるので、安定した生活を送りたい人に向いています。
また、給与が減額することはほとんどないからこそ、ローンを組んだり、大きな買い物をしやすいといった特徴もあります。
年俸制のメリットは以下の3つです。
それぞれの特徴を解説します。
事前に1年間の給与が決定されているため、会社の業績などに応じて賃金が減ることはありません。
急に給与が変動することがないからこそ、1年間の計画をスムーズに決められるのが魅力的でしょう。
もし、期待されている成果が残せなかった場合も、1年間の給与は変わらないといった特徴もあります。
年齢や職務などにかかわらず、業績を残せば給与が上がるのもメリットの1つです。
従来の月給制は、どれだけ成果を残したとしても、「新入社員だから」などといった理由で対価に見合う給与をもらっていなかった人もいるでしょう。
年俸制なら、会社の評価基準をクリアするほどの力量があれば大幅な給与アップも期待できます。
成果に応じて賃金が決められる年俸制は、従業員のモチベーションにもつながります。
通常は年齢や役職によって給与が決められるので、「最低限の仕事だけこなせばいいか」「どれだけ頑張っても給与には反映されないからな」とネガティブに取り組む従業員も多いです。
しかし、頑張るほど給与が上がる年俸制なら、年齢や役職関係なく、成果次第で同年代の誰よりも稼げる可能性があるため、モチベーションがアップするでしょう。
良いことばかりに思える年俸制ですが、実は以下のようなデメリットも存在します。
それぞれのデメリットを押さえて、後悔しないような働き方を選びましょう。
個人の業績が大きく影響する年俸制だからこそ、期待されている成果を残せなかった場合は来年度の給与が減額することもあります。
どれだけの時間働いたとしても会社が求める成果を出せなければ、給与として評価はされません。
「とにかく結果を出さなきゃ!」と焦ってしまい、短期的な計画を立ててしまったり、個人の成績を優先してしまいチームとの連携ができなくなってしまう人も出てくるでしょう。
年俸制は正しく評価されなければ、適切な給与をもらうことができません。
月給制は年齢や役職など給与の上がる基準が明確ですが、月給制は個人の業績が重要視されるからこそ評価する側にも重要な責任があります。
せっかく会社のプラスになる働きをしたとしても、正当な評価がされなければ給与UPは見込めないでしょう。
年俸制で働くにあたって、以下3つの注意点を押さえておくべきです。
それぞれの注意点を理解しておけば、後悔することもないでしょう。
みなし残業制(固定残業制)が採用されている企業では、残業代が支払われないこともあります。
みなし残業制とは、あらかじめ一定の残業代を給与に組み込んでおく制度です。
ただ、想定されている以上の時間を残業した場合、会社は残業代を支払う義務があります。
年俸制だからといって、1年の途中で退職をしても全ての給与を受け取ることはできません。
基本的に、働いていない月の分は給与を受け取ることが不可能なので注意しましょう。
年俸制の税金は、分割方法によって異なります。
これは、「毎月年俸の1/12ずつ受け取る場合」「年俸を14分割して、毎月の給与と2回の賞与を受け取る場合」などの受け取り方で、社会保険料など各種税金の計算方法が変わるからです。
どのように支払われているのかを確認して、実際に計算をしてみてください。
もともと会社がボーナスを支払う義務は法律上ないからこそ、企業によってボーナスの有無は異なります。
年俸制でボーナスが出る場合は、以下のようなパターンが考えられるでしょう。
「年俸制だからボーナスが出ない」ということはありませんが、企業によって支払いの有無は変わるので事前に確認しておくのがベストです。
まだまだ国内で少ない年俸制ですが、実際にどのような企業が導入しているのでしょうか?
代表的な企業や導入の目的を解説します。
ソニーグローバルソリューションズ株式会社では、専門性を磨き上げ、会社と個人が成長できるように年俸制を導入しています。
「ジョブグレード制度」と呼ばれるソニー独自の評価形態を採用しており、役割の変動に応じて年齢に関係なく給与が変更されるのです。
年2回のボーナスは、会社や個人の実績に応じて決定されます。
アマゾンジャパン株式会社では、職種や役割以外にも、評価の基準を上司と話し合い、達成されているかによって年収が決定されます。
個人の能力に応じて年収が決まるので、年齢や年次によって決まる月給制とは異なるのです。
アマゾンが年俸制を導入しているのも、ソニーと同じく優秀な人材の獲得と育成のためでしょう。
「自社が年俸制だけど、なかなか給与が上がらない」と悩んでいませんか?
年俸を上げるには、以下3つのポイントを意識して交渉をするのがおすすめです。
それぞれの交渉術について解説します。
まずは、自身の業績が年俸を上げられるほど好調かを確認しましょう。
人事制度を細部まで把握するのはもちろん、会社が設定する評価基準もチェックし、自身の能力がクリアしているかどうかを客観的にチェックしてみてください。
「〇年仕事をしてきたから年俸を上げてほしい」など、評価基準以外の主観をベースに交渉してしまっては、給与をアップすることは難しいです。
自分が年俸を上げてもらえる人材であることを、論理的に伝えられるようにしましょう。
年俸を上げてもらう交渉は、タイミングを意識することが大切です。
例えば、上司がバタバタと忙しいときや自身が失敗してしまったときなどは、交渉が上手く行かない可能性が高いでしょう。
上司に余裕があり、自身も大きな成功を納めたときなどに伝えれば、スムーズに要求が通るかもしれません。
良いタイミングが来たら、年俸を上げてほしい理由を論理的にはっきり伝えましょう。
言い出しづらい話題ですが、遠回りな言い方をすると「結局何が言いたいの?」と思われてしまうので、結論と理由を順序だてて話すことを心がけてみてください。
また、主張は明確に伝えるべきですが、高圧的に行うのではなく、あくまで穏やかに伝えることも意識するべきでしょう。
年俸制とは、年単位で給与の金額が決定される賃金制度です。
急な給与の変動がなく成果によって給与が上がるメリットがある一方で、期待されている成果を出せないと給与が下がるデメリットもあります。
年俸をアップさせるには、自社の評価基準を自身がクリアしているか確認してから、論理的に交渉してみましょう。
画像出典元:Pixabay、Unsplash
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