新聞やテレビでの報道内容を受けて「あの新聞は○〇派だから」「あのテレビ局は〇〇寄りだから」といったコメントを目にしたことはありませんか?
しかしながら、何となく違いがあることは知っていても、実はよく意味がよく分かっていない...という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、新聞社やテレビ局各社の関係性や相関図をわかりやすく紹介します。
また、各社の特徴や関係の深い子会社・球団の情報に加え、俗に言われる「右寄り・左寄り」「保守・リベラル」などの傾向も解説していきます。
メディアの全体像や裏情報について知りたいという方は、ぜひご参考ください。
このページの目次
そもそも、新聞社とテレビ局は、別々に発生した後に提携をしたのではありません。
歴史的に見ると、テレビは、新聞社から派生する形で誕生しました。
大正時代まで、ニュースを伝える手段は印刷物・新聞が主流でしたが、ラジオ放送の普及により、新聞社各社は「よりリアルタイムで伝える」ための独自のラジオ中継をスタートさせました。
その後、ラジオ東京(現在のTBSラジオ)がテレビ放送を始めたことに刺激を受け、ラジオ局や新聞社などが出資する形で『テレビ局』が次々と誕生し、現在のような布陣となったのです。
よって、別のメディアからの出資や影響を受けずに設立されたテレビ局というのは1社もありません。
そのため、表向きは放映内容は独立・独自のものを流していると説明されていても、どの局も、少なからず裏での結びつきに影響を受けているのが実態なのです。
似たような名前も多い新聞社とテレビ局ですが、どことどこが繋がっているのでしょうか。
さらに、新聞社にはそれぞれ、お抱えの球団やスポーツ競技大会がありますが、何系列なのか混乱してしまいますよね。
この章では、大手新聞社5社とテレビ局、球団などの相関関係を解説していきます。
大手新聞社5社とテレビ局の出資関係、売上高などの相関図は次のとおりです。
新聞社側のほうが売上高が大きいのは日本経済新聞のみ、その他は後発のテレビ側のほうが巨大化しています。
年々新聞社の経営状況は悪化しており、例えば毎日新聞は直近4期連続の営業赤字で、資本金を1億円に減額したばかりです。
また、「朝日新聞・テレビ朝日」のように、株式の持ち合いをしているグループもあれば、一方向の場合もあります。
さらに特徴的なのは、産経グループでは、テレビ局であるフジテレビの側が新聞社に対して40%近くの一番多い比率で株式を保有している点でしょう。
このことは、過去に大きな話題となった、ニッポン放送・フジテレビに対するライブドアの買収問題にも関連する過去の歴史に起因するともいえます。
5大新聞社と球団など、関係性が深い競技・メディアの関係は次のとおりです。
新聞・テレビとプロ野球球団、と聞くと、繋がりが強そうなイメージがあります。
しかしながら、2022年現在、筆頭株主としてオーナー権を持っているのは、5大新聞社では読売新聞のみ、全国でも中日新聞社だけなのです。
過去には、複数の新聞社・テレビ局がオーナー権に係わっていましたが、異業種からの参入も増えて球界の様相もだいぶ変わりました。
ただし、現在でもその過去の繋がりに起因し、産経・フジテレビのヤクルトびいき、毎日・TBSの横浜ベイスターズびいきはいくらか残っているという声もあります。
また、楽天やDeNA、ソフトバンクなどのIT企業や異業種のオーナーが増えたことがプロ野球離れの要因の一つと指摘する声もあり、球団経営側としては今後も難しい舵取りが予想されそうです。
<球団とメディアの歴史についてさらに詳しく知りたい方はこちら>
球団だけでなく、例えばサッカーであれば、かつて読売新聞は東京ヴェルディ(旧:読売ヴェルディ)を創設し、Jリーグの立ち上げ期の普及に大きな影響を与えました。
このように、特定のスポーツチームや競技そのものと繋がりをもつことは、どのメディアにとっても重要な施策です。
例えば、読売、朝日、毎日は、それぞれ箱根駅伝や夏・春の甲子園の設立に係わっています。
一方、産経、日経も、大手3社のように目玉になる競技大会を持ちたいと戦略を練ったのでしょう。
現在では、産経(フジテレビが主導)はワールドカップバレーボール、日経も世界卓球を後援したり独占放映権を取得するようになりました。
しかしながら、国内でのファン層の多さや視聴率への貢献度では、駅伝や甲子園の強さには敵わないため、主力となるスポーツコンテンツ探しに各社とも頭を捻らせていることでしょう。
各メディアの右寄り・左寄りの傾向は、時代や立場、視点によって変化しますが、まず一般的に良く言われる傾向を整理します。
また、大前提として、各メディアともに「自社は〇〇寄りだ」と公表したり、宣言しているわけではなく、建前上はどのメディアも中立です。
そのため、どちらの傾向があるかについては、読者やユーザーの印象によるところも大きいのですが、新聞大手5社のグループをどちら寄りか整理して欲しいと問われたYahoo!知恵袋、教えてgooなどを編集部にて独自調査・集計したところ、一番賛同を得た回答の傾向は次のとおりでした。
日本経済新聞が一番中立の立場であり、朝日・毎日のほうがどちらかといえば左寄りの傾向、読売・産経は右寄りといわれることが多いそうです。
左派と右派の起源は、フランス革命後の議会において、「新しいルールを作ろうとする派」が議長の左に座り、「伝統を守ろうとする派」が議長の右側に座ったことに起因するといわれています。
つまり、ざっくり言うと、改革したい派=左、守りたい派=右、ということです。
また、左派・右派の主張の違いを具体例に沿って分類すると、一般的には次のとおりです。
左派・左翼 | 右派・右翼 | |
別名 | リベラル・革新派 | コンサバ・保守派 |
主張の傾向 | 人権・国際主義・個人主義 |
国粋主義・全体主義 |
憲法改正 | 消極的(護憲派) | 積極的(改憲派) |
共謀罪 | 反対 | 賛成 |
集団的自衛権 | 反対 | 賛成 |
自衛隊 | 廃止 | 強化 |
靖国参拝 | 反対 | 賛成 |
原子力発電所 | 反対 | 維持 |
夫婦別姓 | 賛成 | 反対 |
反韓・嫌中意識 | 低い | 高い |
憲法改正の議論において、「守りたい派の右派が改憲派?」といきなりわかりづらいですよね。
このポイントにおいて右派が守りたいのは、戦前の天皇を敬い、国家第一主義の体制なのです。
そのため、米国主導で作られた(と考える)戦後憲法を改憲するのが右派で、個人の自由を尊重する現憲法に肯定的な左派は護憲派ということになります。
さらに、国家の権限を強める共謀罪(改正組織犯罪処罰法)にも右派は賛成し、左派は反対の立場を取ります。
また、「自由」と「平等」に反する制度を批判する左派は、選択的夫婦別姓には賛成ですが、伝統的な家族形態を大事にする右派は反対の立場となるのです。
では、新聞社の左・右寄りを決めている要因は何なのでしょうか。
実は各社の姿勢は、設立時からの伝統などで決まっているのではなく、時代によって、その新聞社の中の権力者や外部とのパワーバランスによって論調が変化するのです。
例えば読売新聞は、1950年代は社会部が力を持っていたため、左派・反権力の論調でした。
しかしその後、政治部出身で政権との距離が近い、ナベツネこと渡邉恒雄氏が権力を握ったことにより、政権寄りの右派・保守寄りの傾向に大きく変わりました。
また、産経新聞は、経営難に陥った際に財界からの支援を手厚く受けたことで、財界・政界寄りの右派・保守の傾向が強くなったとも言われています。
これらの傾向は、記事の論調に反映されたり、社説欄などで顕著な違いが出ることもあります。
それでは、実際の社説や報道実例を元に、各社の論調の違いを比較してみましょう。
憲法改正については、左・右の論調の違いが出やすいです。
例として、2022年5月3日憲法記念日の社説を比較してみます。
社説抜粋 | 態度 | |
朝日新聞 | 揺らぐ世界秩序と憲法 今こそ平和主義を礎に 日本国憲法が掲げる平和主義を礎にした、粘り強い努力を重ねたい |
現憲法を礎に努力すべき(左寄り) |
毎日新聞 | 憲法の枠内で防衛力を見直すことは必要 懸念されるのは、侵攻を憲法改正に結びつけようとする動きだ |
改憲せずに防衛力を見直すべき(左寄り) |
日本経済新聞 | 危機に備える憲法論議を深めよ 国会での冷静かつ丁寧な議論を通じ、国民の幅広い理解を得ながら結論を導いていくべきだ |
議論を深めるべき(中立) |
読売新聞 | 激動期に対応する改正論議を 国の安全を守るため、憲法に立ち返って議論を深める必要がある |
改憲の議論をすべき(右寄り) |
産経新聞 | 改正し国民守る態勢築け 現憲法は、国際的に平和を守らない国がいる現実にどのように対処していくかを明記していない、欠陥憲法 |
強い改憲姿勢(右寄り) |
並べてみると、各社の論調がかなり異なっていることがわかります。
左寄りといわれる朝日・毎日は、現憲法をベースに平和や防衛力を見直そうという論調です。
対して、右寄りといわれる読売・産経は、憲法の『改正』というワードをしっかり使って、改憲主張を論じています。
また、日本経済新聞は、"議論を深めるべき"と、中立の書き方をしています。
度々議論になる、首相の靖国参拝問題についても、新聞社によって違いが表れることがあります。
【朝日新聞】
軍国主義の精神的支柱となった施設に政治指導者が参拝することは、遺族や一般の人々が犠牲者を悼むのとは、全く異なる意味を持つ。(2021年8月17日社説 中略・抜粋)
→靖国参拝はすべきではないという論調(左寄り)
【産経新聞】
国のため尊い命を犠牲にした戦死者を篤く弔うのは、為政者としての責務である。この当たり前のことが、なぜできないのか(2020年年頭社説 抜粋)
→靖国参拝を促す論調(右寄り)
時に"なぜできないのか"といった強い論調で書かれることもあり、各社とも社説においては主義をベースにした主張を展開しています。
なお社説は、日本経済新聞以外であれば各社とも無料でインターネットでも見られるので、左・右で意見が分かれる事案に関しては横断的に意見を見てみるのも良いかもしれません。
メディアをめぐる事件や、裏の繋がりは、度々話題になることがあります。
この章では、過去の有名事案や、過去の経緯が引き起こした繋がりの実態など、気になる案件の理由や裏側を解説していきます。
2005年に起きた、ライブドアによるニッポン放送・フジテレビへの敵対的買収事件をご存知でしょうか。
株式のやりとりなど詳細像はかなり難しく、混乱してしまうので、勢力関係をメインに何が起きたのかをざっくりいうと、
といった流れになります。
ここでのポイントは、なぜ、放送とは全く関係のないITベンチャーであるライブドアが、巨大なフジテレビグループを相手に買収をしかけられたのか、です。
その要因にも、前述の新聞社・テレビ局・メディアの相関図の歴史が大きく関係していました。
元々、新聞社→ラジオ局→テレビ局と進化した歴史をひきずり、フジグループは、小さな親会社ニッポン放送が、巨大な子会社フジテレビを支配するという関係が続いていました。
この親子関係のねじれを突いて、ライブドアは、フジテレビではなく、その小さなニッポン放送を抑えることでフジ全体が支配できることを思いつき、敵対的買収を開始したのです。
現在この案件は和解関係にありますが、新聞社の経営難や親子関係の逆転などが残されているメディアグループもまだ散見されるので、各社とも新時代に合ったグループ内再編を検討していく必要があるでしょう。
プロ野球球団は、球場にファンを集めるためにも、広く放送してもらい人気を高めることが重要です。
しかしながら、新聞社やテレビ側も、常に経営が安定しているわけではないですし、社長・会長の意向によって、どこまで球団経営に関わるかという点も変わってきてしまいます。
そのため、その立ち上げ期から現在まで、多くのメディアに支えられ、翻弄されてきた歴史があるのです。
ここでは、その裏の繋がりや、歴史の中から代表的なものを3つ紹介します。
歴史①:ヤクルトスワローズは元々フジテレビのものだった!
例えば、現在の東京ヤクルトスワローズは、元々産経新聞・フジテレビのものでした。
1960年代、後楽園球場のテレビ放映権を日本テレビが独占していたことに対抗し、フジテレビジョンは神宮球場を本拠地にする国鉄球団の経営を引き受けました。これがスワローズの前身です。
のちに産経新聞社、フジテレビジョンが筆頭株主となりますが、その後ヤクルトに売却し経営からは撤退します。
しかしながら、現在でも20%程度の株式を保有しているため、ヤクルト戦の放映や、番組などでの扱いもヤクルトびいきである文化が残っているのです。
歴史②:横浜ベイスターズは、ニッポン放送→TBS→フジを経由!?
また、フジサンケイグループは、かつて横浜ベイスターズとも複雑な関係がありました。
横浜ベイスターズは元々、フジサンケイグループであるラジオ局のニッポン放送が、一部の株式を持っていました。
一方、フジテレビジョンはスワローズの株式を持っていたため、同じ企業グループが2つの球団(しかも同一リーグ)と関係を持つことは、放映権や球団のバックアップ体制、また2チームが試合を行うとき慣れ合いとなるのではないかと問題視されました。
しかもその最中、横浜が筆頭株主をニッポン放送に変更しようとしたため、他球団などから猛反対を受け、結果TBSが一時的に筆頭株主となったこともありました。
その後、ニッポン放送とフジテレビの持ち株会社化により、またフジ・メディアホールディングスへ株式移転した後、2016年にDeNAへの売却がなされ、ねじれ問題はやっと解決するに至ったのです。
歴史③:読売とナベツネの、プロ野球全体への影響力!
プロ野球とメディアの関係を語るうえで外せないのは、読売グループの最高権力者たちの影響力です。
プロ野球巨人軍は、読売新聞を買収し、関東第一の新聞社に成長させ、「日本テレビ放送網」を設立したことでも有名な正力松太郎氏によって設立されました。
その後、日本テレビで巨人軍の試合を連日放映するなど、読売の後ろ盾によって巨人軍の人気は確立されました。
また、正力氏の2代後にグループのトップに立ったナベツネこと渡邉恒雄氏の影響力も大変強かったと言われています。
プロ野球選手会と組んで、フリーエージェント制を導入したり、ドラフト制度の改革(逆指名制度など)なども、渡邉恒雄氏の主導であったと言われており、一球団だけはなく、球界全体に意見を轟かせる力がありました。
左寄り、右寄りの議論と並んでよく論じられるのが「反韓・嫌中」などの傾向です。
SNS上などでは、一般ユーザーから、フジテレビは韓国寄りだ、TBSは反日だといったコメントが出ることもしばしばありますが、これは何を論拠に言っているのでしょうか?
しかも、フジテレビと繋がりが深い産経新聞社は右寄り・保守に分類され、どちらかといえば反韓の傾向があるのにも関わらず、フジテレビの態度はそれと逆行するようにも思われます。
これには諸説ありますが、フジテレビの韓国寄り、というのはエンターテイメント面で効率よく稼ぐための手段として行ったことであり、政治的な立ち位置とは異なるというのが原因のようです。
フジテレビが韓流ドラマを頻繁に放送し始めたころは、韓国ドラマの放映権が安く、それでありながらコアなファンに訴求できるという点がメリットでした。
また、K-POPの日本における著作権はフジ・メディア・ホールディングスのグループ会社「フジパシフィック音楽出版」が保有していたため、音楽番組などでの扱いもし易かった点も挙げられます。
なお、TBSを反日寄りと論じる方たちには、在日の優先採用枠がありその人たちが上層部で権限を持ったためなどといった、真偽のほどがわからないコメントもあります。
それらのソースはあいまいではありますが、TBSは、資本関係は薄いものの協力関係にある、左寄りの毎日新聞係の解説員などを登用した報道番組を放送しているため、右寄り思想の視聴者から、反日だと見られる傾向があるようです。
この記事では、新聞社・テレビ局の関係性について、歴史も交えながら解説しました。
また、新聞社各社の、左寄り、右寄り、といった違いについても、具体例に沿って紹介しました。
特に今の若い世代は、インターネットでニュースを見ることも増え、新聞社の論調に触れる機会が減っているしれません。
しかしながら、ネットニュースそのものもレコメンドされて表示されているため、気づかずいつの間にか偏った情報ソースばかり見ていることもあります。
就活・社会人の基礎知識として、時に、新聞社各社を横断的に見るなどして、広く世の中の主義主張を見ておくのも良いでしょう。
画像出典元:o-dan
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