新たな価値観を創出し、市場や業界に影響を与えるイノベーション。
設立したてのスタートアップ企業に、大企業がシェアを奪われる事例も増えてきました。
スタートアップ企業が優秀であったことはもちろんですが、実は大企業だからこそイノベーションが起こりにくいワケがあります。
今回は、なぜ大企業ではイノベーションが起こりにくいのか、イノベーションのジレンマを克服するためにはどのような方法があるのか解説していきます。
代表的なイノベーション成功事例についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
このページの目次
イノベーションとは「今までにない新しい製品やサービスを生み出すこと」です。
日本語では「技術革新」と呼ばれることもありますが、実際は技術だけに限らず、新しい仕組みや考え方などもイノベーションに含まれます。
ここではイノベーションの定義や種類について、詳しく解説していきます。
イノベーションの概念は、オーストラリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター氏によって定義されました。
シュンペーター氏はイノベーションを以下の5種類に分類しています。
シュンペーター氏は、既存事業を応用しつつ、新たな価値観の創出や変革もイノベーションであると提唱しています。
近年では、イノベーションの分類方法に変化があり、次の2つに分類されていることが多いです。
企業によってイノベーションの定義は異なりますが、大まかな分類が存在すると覚えておきましょう。
ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授は、イノベーションには2つの種類があると提唱しています。
一般的に大企業では、企業の構造や顧客志向により、持続的イノベーションを重視して、破壊的イノベーションを軽視する傾向があります。
これによって、新たな事業への参入が遅れると、先に破壊的イノベーションを興した企業に市場を奪われてしまうリスクも。
このようなリスクを「イノベーションのジレンマ」といい、大企業の悩みのタネでもあります。
ではなぜ、イノベーションのジレンマが起こるのか、次の章で詳しく解説していきます。
多くの大企業が新たな価値の創出を目指しているにも関わらず、イノベーションのジレンマが起こってしまう理由は何なのでしょうか。
そこには、以下3つのような、大企業ならではの体制や構造によるしがらみが関係していると考えられます。
企業はその規模が大きくなればなるほど、顧客満足度や収益性向上のために、既存事業の改良を優先せざるを得なくなります。
目先の利益が見込めない事業の立ち上げは、自然と後回しになってしまい、新たな市場への参入が遅れてしまうことで、イノベーションの機会を逃してしまうのです。
収益モデルがしっかり構築されている既存事業に対して、新規事業は何もかもが未知の領域です。
売上高や利益率といった業績評価を、既存事業と同じ土台で判断することはできません。
それは人事評価でも同じことで、大きな成果が発生したときのみ評価する制度のままでは、担当者のモチベーションが下がってしまいます。
新規事業は、積極的に新しいことへ挑戦し、良質な失敗を積み重ねることが重要であるため、既存事業とは切り離した評価軸が必要なのです。
新規事業を成功に導くためには、協調力、分析力、忍耐力、コミュニケーション力などを保有する人材が必要不可欠です。
しかし、優秀な人材はすでに重要なポジションに就いていることが多く、新規事業へのアサインが困難な場合がほとんど。
イノベーションを起こしたくても優秀な人材を巻き込めなければ、プロジェクトは進まず停滞してしまう可能性があります。
ここでは3つの業界で起きたイノベーションジレンマをご紹介します。
携帯電話市場は、高い技術を誇る日本の大手電機メーカーが多くシェアを獲得していました。
折りたたみケータイやスライドケータイなど、高度な技術でさまざまなガラケーを開発しており、当時は海外メーカーの参入は困難であろうと言われていたのです。
しかし、海外メーカーであるApple社が開発した「iPhone」を皮切りに、日本の携帯電話市場は一変。
スマートフォンの登場により、ガラケーの改良に注力していた日本企業は海外企業に市場を奪われてしまったのです。
中国や韓国のメーカーが開発した安価なスマートフォンもシェアを伸ばしていることから、イノベーションのジレンマの代表例と言えるでしょう。
高級ブランドアイテムを身につけることが一種のステータスであったバブル時代。
しかし、1990年代後期に「安価で高品質なアイテム」が登場したことで、アパレル業界は大きな影響を受けました。
安価で高品質なアイテムは、ブランド物に興味がない層や、ファッションにこだわりがある層から大きな支持を集めたのです。
方向転換を行った高級ブランドもありますが、そのまま高級志向を貫いたブランドは新規参入してきたアパレルブランドにシェアを奪われてしまいました。
低価格で多種多様なメニューを提供する居酒屋チェーンは、1990年代以降に日本各地へ出店し、利益を伸ばしていました。
1店舗の利益は少ないですが、店舗が増えれば増えるほど総利益が増えるため、どの居酒屋チェーン店も店舗を増やしていたのです。
しかし、地産地消をテーマにした居酒屋、コンセプト居酒屋、出店エリアを限定した居酒屋などの、特化型居酒屋の登場により顧客の獲得に伸び悩みます。
さらに、一部居酒屋チェーンでは従業員の長時間労働やパワハラが問題となり、顧客離れに発展。
市場の変化とともに顧客離れが進んだことで、イノベーションのジレンマが起こりました。
イノベーションのジレンマを回避・克服するためには、企業のあり方を変化させなければなりません。
ここでは大企業がイノベーションのジレンマを克服する3つの方法をご紹介します。
破壊的イノベーションは、常に小さな市場から始まります。
まずは小規模からプロジェクトを開始し、試行錯誤を繰り返しましょう。
社内に適任者がいない場合は、外部の人材を採用するのもおすすめです。
また、積極的にイノベーションを起こそうとしているスタートアップ企業を買収するのも効果的でしょう。
新規事業を成功に導くためには、既存の概念にとらわれない新たな視野が必要です。
既存事業と同じプロセスでは新規事業へ予算や人材が配分されず、イノベーションは起こりません。
また、評価が低ければ社員のモチベーションも上がらず、イノベーションが起こる前に撤退となる可能性もあります。
新規事業では従来の価値基準ではなく、長期的な成果を見据えチャレンジした社員を高く評価できるような制度を取り入れましょう。
新しい製品やサービスが、必ずしも既存顧客に受け入れられるとは限りません。
新規事業開発を行う際は、評価してくれる市場(顧客)を新たに見つけることが大切です。
ニーズの変化を追いながら、狙い目となる市場を見極めていく必要があります。
イノベーションが起きたことで成功した企業も存在します。
ここからはイノベーションによって、社会や業界に大きな影響をもたらした成功事例を2社ご紹介します。
言わずと知れた世界的大企業のAmazonは、イノベーションに成功した企業のひとつです。
元々、書籍のオンラインショップから事業が始まり、現在は日用品からビジネス用品、嗜好品など、さまざまな製品を取り扱っています。
Amazonは2000年頃に赤字状態が続き、このままでは倒産確実とされていました。
赤字の原因は物流センターへの投資であり、投資家からも建設を反発されていましたが、創業者であるジェフ・ペゾス氏は建設を諦めませんでした。
そして、自社倉庫とIT技術を駆使し「いつ届くかわからない」「在庫がない」といったネットビジネスの課題を解消したのです。
在庫の回転率を高めるIT技術のおかげで、世界的な大手ネット通販企業となりました。
花札メーカーとして京都で誕生した任天堂は、時代の流れを見越した斬新なアイデアで世界的に人気のゲームメーカーとして認知されています。
アーケードゲームで賑わっていた当時、家庭用ゲーム機ファミコンを開発し、空前の大ヒットが巻き起こりました。
また、2006年に開発されたWiiはコントローラーではなく、体を動かして操作する斬新な手法が話題に。
現在はNintendo Switchも販売され、より本格的な運動ができるリングフィットアドベンチャーは世界的に人気のタイトルとなりました。
オープンイノベーションとは、ノウハウや知識など他社のリソースと自社のリソースをかけ合わせて、まったく新しい価値を生み出すことです。
2003年に現UCバークレービジネススクール教授であるヘンリー・チェスブロー氏によって提唱されました。
ここでは他社とのオープンイノベーションを導入するメリット、導入のポイントについてご紹介します。
オープンイノベーションを導入するメリットは、次の3つです。
オープンイノベーションは他社と共同で新規事業に取り組むため、開発コストを削減できます。
自社にはない知識や技術、マーケティングのノウハウを身につけることができるのも大きな魅力です。
さらに、社内で新規事業を立ち上げるリソースがなくても、他社のリソースをフル活用することで事業推進スピードの向上が期待できます。
他社とのオープンイノベーションを成功させるためには、デメリットについても把握しておく必要があります。
オープンイノベーションのデメリットは次の3つです。
オープンイノベーションは、他社の知識や技術が学べる反面、自社のノウハウが流出してしまうリスクもあります。
プロジェクト完了後も他社が自社の技術や知財を使用してしまうケースは、よくあるトラブルのひとつです。
また、利益配分やプロジェクトの進め方について齟齬が生じないように、オープンイノベーションの専門部署を設立するなど、判断スピードを高める仕組みづくりをしておきましょう。
変化の激しい市場においては、大企業であっても、イノベーションを起こせなければ市場競争に負けてしまいます。
他社とのオープンイノベーションを含め、リスクを恐れず、新たな事業へチャレンジしていきましょう。
画像出典元:写真AC
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