近年、日本でも重要視されはじめた”サバティカル休暇”。
「聞いたことはあるけど、どんな制度なの?」「導入したときのメリットやデメリットを知りたい」と考えていませんか?
サバティカル休暇は、社員の充電期間を確保するために設けられた大切な制度です。
今回はサバティカル休暇とはどんな制度なのか、そのメリット・デメリットを解説します。
このページの目次
サバティカル休暇とはどんな制度なのか、サバティカル休暇が重要視されている理由も解説します。
サバティカル休暇とは、一定期間勤務を続けた社員に対して長期休暇を与える制度です。
休暇期間は1ヵ月~1年ほどが一般的ですが、企業ごとに期間は異なります。
サバティカル休暇は法律に定められている制度ではないので、取得条件や給与額なども企業によってさまざまです。
日本の場合、休暇中は無給の企業が多いですが、中には手当が支給されるところもあります。
サバティカル休暇が重要視されるのは、国内で「働き方改革」が進められているからです。
働き方改革とは、政府主導の「人々が自分で好きな働き方を選べるようにするための改革」を指します。
サバティカル休暇の導入により、社員は充電期間中にリフレッシュができ、復職後はより一層仕事に打ち込むことが可能です。
もともとサバティカル休暇は、アメリカで大学教員の研究を助けるために誕生したといわれていますが、「ワークライフバランスを大切にする」という価値観から徐々にヨーロッパの企業で広まりました。
「離職率が低下する」「企業への評価が上がる」などのメリットからも、現在多くの企業がサバティカル休暇を導入しています。
サバティカル休暇には、以下のような4つのメリットがあります。
1.離職率が低下する
2.社員が成長し異なる視点が生まれる
3.長期不在を見据えて業務の効率化が図れる
4.企業への評価や注目度が上がる
サバティカル休暇は、社員がリフレッシュできる充電期間です。
通常の働き方ではなかなか心身を休めることができず、結果として離職を選んでしまう社員もいるでしょう。
サバティカル休暇の導入により、気兼ねなくプライベートに打ち込む時間ができるので、良い気分転換ができ、離職率を低下させることにつながります。
社員は長期間の休暇が取れるため、仕事以外の分野で新たな知識を身につけられます。
例えば、留学や資格取得など、今まで社員が気になっていた分野のスキルアップが可能です。
社員が成長すれば、職場へ復帰したときも今までとは異なる視点から業務を遂行してもらえます。
サバティカル休暇は、会社に貢献してくれる社員を生み出すための育成期間ともいえるでしょう。
社員がサバティカル休暇を取るには、事前にその人が不在でもスムーズに業務を回せる工夫が必須です。
誰がサバティカル休暇を取得しても仕事ができるように、「必要のない業務は削除する」「マニュアルを作成する」など、業務の効率化に取り組むことができます。
業務の効率化によって生産性も向上するので、企業全体の利益にもつながるでしょう。
日本でサバティカル休暇を導入する企業はまだあまりないので、採用すれば企業の評価を上げることができます。
「社員に親身になってくれる企業」としてイメージアップにつながるため、多くの人材が自社への就職を考えるきっかけにもなるでしょう。
長期休暇が取りやすいサバティカル休暇を採用すれば、従業員エンゲージメントの向上も期待できます。
社員は業績の向上を積極的に目指すようになり、結果として顧客満足度アップにも貢献するでしょう。
サバティカル休暇のデメリットは以下の2つです。
1.業務が滞る可能性がある
2.復職時の受け入れ体制を整えなければならない
導入前にデメリットを押さえておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
それぞれどのようなところがマイナスなのか解説しましょう。
特定の社員が休暇に入ることから、担当業務が滞る可能性があります。
一般的に、サバティカル休暇は1ヵ月~1年と長期的な休暇なので、事前に引継ぎや業務の効率化を行なっておかなければ現場は混乱してしまうでしょう。
どの社員がいつサバティカル休暇をとっても問題ないように、普段から「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすよう意識してみてください。
業務の全体像を把握しながら、スムーズに進まない部分を見直すことで改善策を考えていきましょう。
長期的な休暇だからこそ、社員は復職時に現場把握への時間を要することが考えられます。
最初は単純作業を行なってもらうなど、取り掛かりやすい業務を担当してもらいながら、無理のないように通常業務へと移行していきましょう。
復職後に長期休みを取得したことで嫌な思いをしないように、社内でサバティカル休暇制度への認識を浸透させておくことも大切です。
業務だけでなく人間関係にも注意しながら、復職時のフォローアップを検討しておきましょう。
一般企業のみに導入されていると思われがちなサバティカル休暇ですが、実は公務員にも似たような制度があります。
こちらでは、公務員版サバティカル休暇ともいえる「自己啓発等休業制度」について紹介しましょう。
公務員には、「自己啓発等休業制度」と呼ばれるサバティカル休暇に似た仕組みがあります。
自己啓発等休業制度とは、「大学などにおける修学」と「国際貢献活動」を希望する職員が長期休暇を取得できる制度です。
通常、大学などにおける修学の場合は2年以内、国際貢献活動の場合は3年以内の期間で休職することができます。
なお、自己啓発等休業期間中に給与は支給されません。
自己啓発等休業を取得できるのは、以下に当てはまらない公務員です。
出典元:人事院
上記の条件に当てはまらなければどんな職種でも適用されますが、「大学などにおける修学」と「国際貢献活動」以外の目的では取得できません。
実際に、どのような日本企業がサバティカル休暇を導入しているのかまとめました。
ヤフー株式会社では、一定期間働いた社員に自らを見つめなおし、さらに成長するようにとサバティカル休暇制度を導入しています。
休暇期間は2~3ヵ月であり、支援金として給与1ヵ月分が支給されるのです。
有給休暇との併用も可能なので、給与を心配せずに一定期間休暇をとることもできます。
ANAでは、1年以上勤務したパイロットや客室乗務員、地上職の正社員を対象に、サバティカル休暇制度を導入しています。
取得期間は最短1ヵ月、最長2年であり、「日本では珍しい年単位での休暇が可能な企業」として話題になりました。
基本的に休暇期間中は無給ですが、1年以上の場合は補助金として20万円が支給されます。
株式会社ぐるなびでは、新たな経験やキャリアの振り返りをするために、「プチ・サバティカル休暇制度」を導入しました。
勤続5年で連続した3日間の休暇が取得でき、支援金として2万円が支給されるそうです。
他企業と比べて休暇期間が短いように感じますが、「ブライダルデー休暇」など、他にもさまざまな福利厚生制度が充実しています。
ソニー株式会社は、キャリアを継続するために「フレキシブルキャリア休職制度」を導入しています。
この制度では、「海外赴任する配偶者に同行するために休職する場合」と「仕事に生かす知識を学ぶために休職する場合」が対象です。
前者は最長5年、後者は最長2年の休職が認められており、給与は出ないものの社会保険料はソニーが負担します。
株式会社ファインデックスは、勤続10年ごとに最長6ヵ月の休暇を取得できます。
休暇の理由に制限はなく、留学や資格取得はもちろん、競合企業でなければ他社で働くことも可能です。
休暇中は、基本給の3割が支給されます。
サバティカル休暇を導入するなら、以下のようなポイントを意識しましょう。
それぞれの注意点を解説していきます。
社内全体で、サバティカル休暇を取得しやすい環境作りを心がけましょう。
人によっては「必要以上に休むなんて......」と考えることもあるので、サバティカル休暇を取るのは悪いことではないという認知を広めることが大切です。
スムーズな復職ができるように、取得後のフォローや業績に響かないような対応を考えてみてください。
サバティカル休暇中も、会社に在籍する以上は社員から社会保険料を徴収しなければなりません。
振り込みを忘れていたという事態を避けるためにも、徴収方法などをあらかじめ設定しておきましょう。
サバティカル休暇は完全無給と決めてしまうと、社会保険料の支払いなどを理由に取得しにくくなります。
支援金や有給休暇との併用を認めるなどの工夫も必要です。
最後に、サバティカル休暇に関するよくある質問を紹介します。
サバティカル休暇は法律で定められた制度ではないので、給料を支給するかどうかは企業によって異なります。
日本の企業はほとんどの場合は無給ですが、支援金や給与の3割など、ある程度の金額を支給するところもあるようです。
有給休暇と組み合わせることで、一定の収入を確保できるようにしている企業もあります。
サバティカル休暇の取得条件は企業によって異なりますが、最低でも「一定期間勤続している」という前提は押さえておきましょう。
具体的にどのような取得条件にするのかは、今回紹介した日本企業の導入事例を参考にしてみてください。
基本的にサバティカル休暇の過ごし方は自由なので、ふつうの休暇のように交友関係を深めるなどのリフレッシュを行うことができます。
一方で、留学や資格取得など、スキルアップや将来役立つことを学ぶ機会にするのもよいでしょう。
社員の成長を促す目的なら、「スキルアップの場合にのみ支援金を給付する」などの条件をつけてもいいかもしれません。
サバティカル休暇は社員にとって充電期間になるだけでなく、離職率の低下や業務を効率化できるなどのメリットがあります。
一方で、業務が滞る可能性、復職時の受け入れ体制を整えるといった、デメリットへの対策も必要です。
これまで勤続してくれた社員がサバティカル休暇を利用し、さらに意欲的に働いてくれるような制度として機能するよう検討していくとよいでしょう。
画像出典元:Pixabay、Unsplash
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