「福利厚生」という言葉は、法人の代表であれば何となくは理解していることでしょう。
しかし、最近は働き方改革などの影響により、特に求職者が福利厚生を重視して仕事を選ぶことが増えてきています。同時に多くの企業が自社の福利厚生について見直しを行い、様々な新しい取り組みも増えてきています。
今回は、「福利厚生ってそもそも何なの?」という疑問を解消すべく、基本事項を解説していくとともに、最近、各企業が導入し始めている福利厚生の最新事例についても紹介していきます。
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まず、そもそも「福利厚生」とは何か?ということについて解説していきましょう。福利厚生とは、会社等の組織において従業員に対して給料やボーナスとは別に支給する「非金銭報酬」です。
福利厚生を実施する目的は、従業員の組織に対する貢献度を高めることにあります。もう少し噛み砕いた言い方をすると、やる気を出してもらうということです。
もちろん、給料やボーナスなどの金銭報酬を高くすることも有効ですが、それ以外にも様々な角度から従業員の生活をサポートしたりメリットを提供することで、金銭報酬と合わせてより効果的に従業員の帰属意識を強めて貢献度向上につなげることができます。
福利厚生を大きく分けると、法令等で実施が定められる「法定福利厚生」と、会社等が独自に定める「法定外福利厚生」とに分けられます。
法定福利厚生は、企業が実施することを法律で定めらられた福利厚生のことです。
法定福利厚生の代表的なものとしては、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険、厚生年金などといった社会保険料を会社が一部または全部負担するような仕組みが挙げられます。
これらはそれぞれ健康保険法や厚生年金保険法などによって企業が一定の割合を負担することが定められており、基本的には同じ雇用形態がであれば会社ごとの差異は生じない、ということになります。
一方、法定外福利厚生は各企業が自主的に行うものです。
あとで紹介するように様々な種類のものがあり、多くの会社が導入しているようなポピュラーなものもあれば、その会社のオリジナリティが出ているような珍しい内容の福利厚生も存在します。
人材獲得を優位に進めることを目的に、福利厚生によって他の企業と差別化をおこなっている会社もあります。
会社が独自に実施する法定外福利厚生には、実に様々な種類のものがあります。具体的にみていきましょう。
結婚祝い金、出産祝い金、死亡時慶弔金、災害見舞金などの慶弔・災害に関する福利厚生は、最もポピュラーな法定外福利厚生といえます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成29年に行った、全国の「10人以上規模の民間企業」を対象とした調査によると、およそ9割の企業が「慶弔休暇制度」や「慶弔見舞金制度」を導入している、という結果が出ています。
社員寮の提供や家賃補助、住宅ローン補助などの「住宅に関する福利厚生」も比較的ポピュラーな福利厚生といえるでしょう。先述の調査では、およそ44%の企業が「家賃補助や住宅手当の支給」を実施しています。
例えば、アパートを借りて一人暮らしするのと実家から通勤するのとでは、かかる費用が大きく違ってきます。メリットを得られるのが一時的な慶弔・災害に関する福利厚生などよりも、日常的に必要となる住宅に関する福利厚生を重視するという考え方も強いものと思われます。
健康・医療に関する福利厚生としては、法定以上の健康診断や人間ドック受診補助といった直接的な福利厚生に加えて、最近ではスポーツ活動への補助などといった間接的な福利厚生も登場してきています。
最近は「健康経営」という言葉も使われるようになってきており、従業員の健康維持は企業組織としてのパフォーマンス向上のための重要な要素と捉えられ始めています。そのための福利厚生には今後も様々なタイプのものが登場してくると予想できます。
法定以上の休暇や社内託児施設整備、時短勤務制度などといった育児・介護に関する福利厚生は以前からあったものですが、最近は共働き世帯の増加などにより特に「育児」に関して制度の見直しや改善が各企業で進んでいます。
特に、男性の育児参加を重視するという視点から、これまでは主に女性が対象であった育児休暇を男性従業員にも適用しよう、という動きが出てきています。
一方で、連続して子どもを出産することで育児休暇も連続してとる、という実例に一部から批判の声が上がるなど、制度運用に関して難しい点があるのも特徴といえるでしょう。
社員食堂・カフェ等の整備や仮眠室の整備など、業務・職場環境に関する福利厚生も、ここ最近様々な進化を見せている福利厚生のひとつです。
特に最近は「フリーアドレス」などの取り組みが進むなど、職場環境が大きく変化してきており、それに伴いカフェや仮眠室等の整備などの職場環境に関する福利厚生にも注目が集まっています。
福利厚生を実施する目的は、先述のとおり従業員の組織に対する貢献度を高めることにありますが、福利厚生の良さは、給料やボーナスの良さと同様に対外的なアピールにもなります。
特に法定外福利厚生には、例えば家族がいる従業員に対するサポートや、従業員のワークライフバランス是正など、従業員個々の生活により焦点を当てた取り組みを行いやすいという特徴があり、人手不足が叫ばれる近年は、人材獲得を有利に進めるために各企業等が様々な福利厚生に取り組んでいます。
一風変わった福利厚生の最新事例を紹介します。
サイボウズ株式会社で行われている制度です。
いったん退職しても6年以内であれば復職が可能となる制度です。
自分の成長のために、留学や転職などで環境を変える判断をしやすいように整備されました。
株式会社チカラコーポレーションで行われています。
失恋した翌日から、20代前半なら1日、20代後半なら2日、30歳以上であれば3日の休暇を取得できる制度です。
年齢が上がるにつれ、休暇の日数が長くなるのも面白いですね。
フロンティア株式会社の事例です。
社員同士でのコミュニケーション促進の一環として整備された制度、飲み会だけでなくイベントや遠足に行ったりしたときに手当が出る制度です。
株式会社Saltworksの制度で、社内でダイエット宣言をすると、ダイエットした分に応じて1グラムあたり1円が会社から支給されます。
リバウンドした場合はどうなるのでしょうか…。
株式会社サニーサイドアップで実施されている、歩くだけで健康と報奨金3,200円を手に入れることができる制度です。
ネーミングも特徴的ですね!
最近は様々な福利厚生を代行する「福利厚生サービス」を行う企業が登場しており、外部のサービスを利用することで簡単に福利厚生を実施することが可能となっています。
一般的に福利厚生サービスというと、利用することで旅行や宿泊、その他引っ越しなどが割引になるサービスが多いです。
ただ、今回おすすめしたいのは社食サービスです。
社食サービスの魅力は、従業員の経済的メリット以外にも多くの効果が期待できることです。
たしかに割引サービスは従業員にとっても嬉しいものですが、旅行が割引になった結果、旅行に行く従業員が増えるかというとそう簡単な話ではありません。多くの場合、旅行に行かない理由は別にあるので、根本的な働き方改革を行わないとあまり意味がないのです。
一方で社食サービスは、社内コミュニケーションが増える、従業員の健康管理が行えるというメリットを得ることができます。
簡単に導入できて、すぐに効果が出るというのが社食サービスがおすすめな理由です。
社食サービスは以下の記事で比較紹介しています。こちらをぜひ参考にしてください。
福利厚生は、従業員の会社に対する貢献度をアップする上で重要な取り組みです。特に近年では求職者が福利厚生を重視する傾向にあること、また多様な働き方が広まってきたことなどから、自社の福利厚生を見直す動きも出始めています。
いずれにしろ福利厚生について考える際には、きちんと福利厚生の制度と種類について理解したうえで、会社にとって無理のない範囲でより効果的な施策を実行することが重要です。
最近はアウトソーシングでの福利厚生を請け負ってくれるようなサービスも出始めていますから、様々な選択肢を比較検討してみるようにしましょう。
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