TOP > 組織 > 人事制度 > 人材育成とは?基本的な考え方や具体的な方法を解説!
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人材育成と聞くと研修を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、ただ研修を行うだけでは人材育成を成功させることはできません。
基本的な考え方を理解し、戦略や目標に合致した育成施策を計画・実行する必要があります。
この記事では、人材育成の考え方や具体的な育成方法、成功事例などを詳しく解説し、実践に役立つポイントをわかりやすくご紹介します。
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このページの目次
人材育成とは、企業の目標達成に貢献できる人材を計画的に育成することを指します。
社員一人ひとりの能力やスキルを高め、組織全体の成長につなげるための重要な取り組みです。
特に、社員のキャリア段階や役割に応じた育成計画が求められ、その内容は企業の理念や戦略、現状の課題に応じて異なります。
人材育成と人材教育は似たような意味で使われますが、目的が異なります。
人材教育は、特定の知識や技術などを教え込み、即戦力となる人材を育成する短期的な取り組みを指します。
例えば、新しいソフトウェアの操作方法や業務手順を教えるトレーニングなどが該当します。
一方で、人材育成は、組織の目標や課題に応じて、社員を計画的に教育し、自社の成長に貢献する人材を育てる活動です。
スキルや知識だけでなく、人間性やリーダーシップの向上など、幅広い領域が対象となります。
人材開発と人材育成は、広い意味では同じですが、目的や対象が異なります。
人材開発は、職種や役職にかかわらず、個人の能力やキャリア志向に基づき、人材のポテンシャルを最大化することが目的です。
自己啓発支援やキャリア形成プログラムなどを通じて、内発的な動機づけを促し、個々の可能性を引き出す点に特徴があります。
一方で、人材育成は、職種や立場ごとで対象者を分け、業務を進めるうえで必要なスキルなどの習得を目指します。
人材育成は労働生産性の向上や企業の競争力強化に有益といわれます。
ここでは、人材育成が必要とされる背景について詳しく紹介します。
人材育成が必要な理由としてまず大きな要因となるのが、日本の生産年齢人口(15歳~64歳)の減少です。
2018年に経済産業省が発表した「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」によれば、日本の生産年齢人口の大幅な減少が予測されています。
1995年時点では、生産年齢人口が人口全体に占める割合は約70%でした。しかし2020年時点では約60%まで減少し、2050年には50%程度になる見込みです。
こうした労働力となる人口の不足により、企業は働き手の確保が困難になり、経済規模の縮小や国内需要の減少など、さまざまな社会的・経済的課題が深刻化することが懸念されています。
さらに、前線で活躍できる社員が減少していく一方で、長時間労働は法律違反の対象となるため、「足りない人員を時間で補う」という従来の解決策が通用しなくなっています。
企業が安定的に成長するためには、限られた人材をいかに有効活用するかが最重要課題です。
そのため、組織改革や成長戦略の見直しと同時に、人材育成によって個々の社員の能力を最大限に引き出し、労働生産性を高めることが欠かせません。
現在、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。市場がグローバル化、IT化している上、日本社会が抱える少子高齢化、労働生産人口の減少といった問題もあります。
これらにうまく対応していけない企業は、今後他社との競争に勝つことは難しくなっていくでしょう。企業が安定して業績を伸ばすには、状況に臨機応変に対応できる人材が必要です。
また、労働の効率化が求められる昨今では、ICTツールやデジタル機器などの活用が不可欠です。
企業は個々の社員のスキルを高め、必要なツールや機器などを適切に使いこなせるようにしておく必要があります。
加えて、近年は足りない労働力やスキルについて、「アウトソースを活用する」ことも一般的になってきました。
労働効率が重視される昨今、企業にはムダな人材を置いておく余裕はありません。企業は社員全てを「他では代替できない人」に変える必要があるのです。
ここでは、人材育成で特に大切にすべき4つのポイントについて解説します。
人材育成を効果的に進めるには、育成の目的を明確にすることが大切です。
目的が曖昧なままでは、社員の成長が組織の目標達成に結びつかず、成果が見えにくくなります。
例えば「リーダー候補の育成」「イノベーションを推進できる人材の創出」など、具体的な目的を設定しましょう。
目的を社員や指導担当者と共有することで、育成プロセスを一貫性のあるものにできます。
人材育成は、短期間で成果を出すことが難しい分野です。
急なスキルアップや知識の吸収を求めるだけでなく、社員のキャリア全体を見据えて長期的な成長を支援することが重要です。
個々の社員がどのように成長していくべきかを計画し、役職や業務内容の変化に合わせて段階的にスキルを磨く仕組みを整えると、組織全体の持続可能な成長につながります。
人材育成の成果は、指導担当者のスキルや意識に大きく左右されます。
指導担当者にも人材育成を効果的に進めるために、人材育成手法の知識やコミュニケーション能力など、必要な知識やスキルの習得が求められます。
定期的な研修や評価制度を通じて、指導担当者の育成にも力を入れましょう。
社員のモチベーションは、人材育成の成功を左右する重要な要素の一つです。
やりがいや成長を実感できる仕組みを整えることで、社員は自ら進んで学び、挑戦する姿勢を持つようになります。
具体的には、目標達成を適切に評価したり、努力が組織の成果に結びついていることを実感させたりする方法があります。
また、個々の興味やキャリア志向を尊重することで、育成が社員にとっても組織にとっても価値のあるものとなります。
人材育成を行うときは、明確なビジョンを持つことが大切です。そのためには、具体的な研修や実習に取り組む前に、育成の筋道を立てておきましょう。
人材育成に取り組む前に行いたいステップを紹介します。
まず必要なのは、企業の現状を把握することです。社員を階層や部署で細かく分類し、誰がどのような役割を果たしているのかを確認します。
こうすることで、企業全体の生産性を俯瞰でき、足りない部分や補うべき部分が分かるようになります。
このとき注意したいのが、現場の社員や管理職の意見を重視するということです。人材育成は、現場のニーズに合わせて行われねばなりません。
一見すると人員が足りているようでも、「実は手が回っていない」などというのは良くあることです。
現場と現状のイメージが乖離しないよう、まずはニーズや課題を適切に整理してください。
個々の社員の情報を把握するには、「スキルマップ」の活用がおすすめです。
スキルマップとは、個々の社員の業務遂行能力やスキル、職能などを一覧表にまとめたものです。「力量管理表」「技能マップ」などと呼ばれることもあります。
スキルマップを作成することで、社員の能力やスキルの可視化が可能です。
社員の担当部署や担当業務を鑑みながら、「どのようなスキル取得を目指すべきか」「補うべきポイントはどこか」が分かりやすくなります。
スキルマップの作成を社員自身に任せる企業もありますが、多くの場合は上司の業務です。
上司は部下のレベルを客観的に判断し、社員が役職や勤続年数にふさわしいスキルや知識を得ているかどうかを評価します。
現状が把握できたら、3年後・5年後の姿をイメージしてみましょう。「管理職は何人か」「新人は何割くらいか」などを予想し、それが適切かどうか測ります。
このとき管理職が足りない、現場を回す人間が足りないなどと思い当たれば、中長期的な目線で社員を育成していかねばなりません。
将来の予想をより具体的にイメージできれば、人材育成の研修内容・指導内容も詳細かつ具体的になるでしょう。
人財育成を実施する際は、大まかに3種類の手法があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
・OJT:On the Job Training(職場内研修)
これは、実務をしながら業務を学んでもらう手法です。上司や先輩が講師となって、通常業務を教授します。教えを受ける側は、実践的なノウハウや知識を学べます。
OJTの発祥は、第一次世界大戦のアメリカ軍が行った「4段階職業指導法」です。以下の流れで行われます。
OJTは、教えを受ける側にとって「個々に合わせた実務経験がつめる」「実務経験のある人から直接指導を受けられる」などのメリットがあります。
日本では、高度経済成長期以降盛んに取り入れられてきました。
しかし、OJTのみでは近年重視される「主体性」「自立性」を促すのは難しいと言われています。
「いかに気付かせるか」「どこまで支援するか」などが難しく、教える側にもそれなりのスキルや配慮が必要です。
・OFF-JT :Off-The-Job Training(職場外研修/集合研修)
OFF-JTは現場を離れた研修です。研修は、集団研修やグループワーク、座学となることが多いでしょう。
OJTが「アウトプット」なら、OFF-JTは「インプット」です。
特定業務に取り組む前に、仕事の基礎、理論、原理・原則などを体系的に学び、知識の土台を作ります。階層や職能によって学ぶべきものが異なるため、社員の選別が重要です。
また、OFF-JTは社会人として必要な知識やビジネススキル、キャリア研修などにも用いられます。
OFF-JTで事前に必要な知識を蓄えておくことは、実務に取り組む際のハードルを下げることにつながります。OJTを補う形で取り入れるのと、より有益です。
・SD:Self Development(自己啓発)
SDとは、業務をより良くこなすため、個人が自発的に行う学習のことです。書籍やWebで学んだり、セミナーに参加したりなどもSDに含まれます。
仕事に関係する資格取得を目指すこともSDと言えるでしょう。この場合、所属する企業から支援金などの補助があるのが一般的です。
また、企業によってはeラーニングシステムを導入して社員の受講を促すところもあります。企業は中長期的な目線で有益なプログラムを用意し、社員のスキルアップを支援します。
SDのメリットとしては、個々のニーズに合わせやすいという点です。時間や場所の拘束がない上、すき間時間などを活用できます。
ただし、社員の自主性に任せる部分が大きいため、均一的な効果を得にくいという一面もあります。
人材育成は、社員のキャリアステージごとに異なる課題やニーズを考慮して行う必要があります。
以下では、階層別の人材育成のポイントを詳しく解説します。
新入社員は社会人としての基礎を築く時期であり、初期教育が非常に重要です。
社会人としての基本的なマナー(挨拶、電話対応、メールの書き方など)を徹底的に指導しましょう。
OJTとOff-JTを組み合わせた実践的な教育が効果的です。
配属先の業務内容に必要な知識やスキルを段階的に教えましょう。
具体的なタスクを通じて学び、成功体験を積ませることが重要です。
メンターによる相談窓口があると、新入社員の早期離職を防ぎやすくなります。
配属先の先輩社員をメンターとしてつけ、業務や職場環境への適応をサポートしましょう。
中堅社員は、組織の中核として役割が拡大する時期であり、専門性とリーダーシップの強化が求められます。
業務に関連する専門知識やスキルのさらなる向上を図りましょう。
定期的な研修や資格取得支援を活用し、成長意欲を引き出すことが重要です。
小規模なプロジェクトやチームのリーダーを任せ、メンバーの成長を促すフィードバックの仕方や、目標達成のプロセス管理など、マネジメントスキルを実践的に養いましょう。
キャリア面談やコーチングを通じて、自身のキャリアを考える機会を提供し、目指すべき目標の設定を促しましょう。
管理職は、経営的視点を高め、組織の目標達成に向けてメンバーを導くリーダーシップが求められます。
管理職にはリーダーシップを育むプログラムを実施していきましょう。
部署単位の課題だけでなく、企業全体の経営目標や戦略を理解し、部下に浸透させる力を養いましょう。
経営陣との定期的な交流や経営セミナーへの参加が効果的です。
面談やコーチング技術、モチベーション管理の方法を学ばせ、部下の能力を引き出し、適切な役割分担や成長機会を提供できるスキルを高めましょう。
メンバー間のコミュニケーションを活性化し、信頼関係を築く取り組みが欠かせません。
ランチミーティングやチームレクリエーションなど、業務以外の場でも関係を深める機会をつくりましょう。
成功している企業の多くは、人材育成にも積極的です。広く名の知られた企業から、人材育成の成功事例を紹介します。
ユニクロはさらなる事業拡大のため、「世界中どこででも経営ができる人材を200名確保する」という人材育成目標を立てました。これをクリアするため、社内には2010年より経営者育成の専門機関が設けられています。
育成には柳井会長自身が乗り出し、直接ミーティングなども実施。社員とトップの位置を近付けることで、社員に企業との一体感を与えました。
結果、人材育成は順調に展開し、2019年時点では執行役員だけでも50名を超える人員がそろっているそうです。そしてその大半が、先述の人材育成教育を受けた、30代、40代の若い社員です。
ニトリは『モノやカネは残らない。でも技術はヒトが継承できる』『教育こそ最大の福利厚生』というモットーを掲げて人材育成に当たっています。
「社員一人一人が豊富な知識と技術を持ち、広い視野で物事を見られるように」という意図のもと、社内に「ニトリ大学」を設置しました。
ここでは、社員が入社期別研修、e‐ラーニング、社外講座や社内資格認定制度なといった教育の機会とツールを提供されます。
これにより、企業だけに留まらない、社会全体に貢献できる人材の育成が見込めるのです。
充実した教育機会の提供により、社員は必要な知識や技術を適切に獲得できるようになりました。そしてこれが、社員の高いモチベーションの源となっています。
人材育成は、企業の安定的な発展に不可欠です。社会や市場の変化が激しい昨今、自分で考えて行動できる社員が求められます。
人材育成を行う際は画一的な教育ではなく、個々の性格やスキルに合うようカスタマイズが必要です。
また、人材育成の体系を整えても、浸透・定着しなければ意味がありません。
スキルマップや目標管理シートなどを作成して、定期的に効果検証を行います。そしてその内容を人事評価に反映させ、都度FBを行ってください。
今後日本のビジネス環境はますます厳しくなると予想されます。5年後、10年後も安定的に利益を出せる企業を目指すなら、将来を見据えた人材育成が必要です。
画像出典元:Pexels、Pixabay
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