労働時間の計算方法を徹底解説!所定・法定や休憩・残業、切り捨てまで

労働時間の計算方法を徹底解説!所定・法定や休憩・残業、切り捨てまで

記事更新日: 2020/06/19

執筆: 編集部

労働時間の計算方法の基礎的な知識について徹底解説!

法定・所定等の労働基準法上の言葉の意味や、休憩、残業(36協定/割増賃金)、端数処理(切り捨て)についても解説しています。

正しい計算・把握方法とそうしない場合の罰則・リスクについても、これを読めばご理解いただけます。

労働時間とは?

労働時間の概念とは?

労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている全ての時間

普段働いているときには労働時間のことをあまり意識しないという方も多いかもしれません。

労働基準法(以下、労基法)で定められている「労働時間」とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいい、必ずしも現実に精神または肉体を活動させることを要しない、とされています(32条)。

したがって、実際に労働している時間(実労働時間)の他、使用者の指揮命令下に置かれている時間は全て労働時間として取り扱われ、手待ち時間(現実には作業をしていないが、使用者から就労の要求がある場合に備えて待機している時間)や残業時間等も労働時間に含まれます。

ちなみに、会社からの指示であっても、特殊健康診断(特定の有害な業務に従事する労働者に対して行う健康診断)の実施のための時間は労働時間に含みますが、一般健康診断の受診のための時間は労働時間には含まれません(業務に直接の関係がなく、労働者自身の利益にもなるため)。

労働時間かどうかは、客観的に判断される

そしてこの労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下にあると客観的に判断できるかどうかで決まります。

つまり、個別具体的な状況ごとに、実態で判断され、その判断は非常に難しいということです(実際に労働者[従業員]と使用者[会社等]とで争う場合などは、裁判でその判断が決まるケースもある程です)。

冒頭から少し難しくなってしまいましたが、労働時間とはこれだとは簡単には言い切れないということを見て頂きました。

それでは、私たちがよく使う「所定労働時間」「法定労働時間」「実労働時間」「拘束時間」という言葉はそれぞれ何を指すのでしょうか。

「所定労働・法定労働・実労働・拘束」時間とは? 

法定労働時間

まず法定労働時間ですが、労基法では原則「1週間について40時間を超えて労働させてはならない。1日について8時間を超えて労働させてはならない。」と定められています。

この1週間および1日の労働時間の最長限度のことを、労基法で定められた労働時間ということで「法定労働時間」といいます。

所定労働時間

これに対し、各企業ごとに就業規則等で始業時刻・終業時刻・休憩時間を定め、始業時刻から終業時刻までの労働時間から、所定の休憩時間を除いた時間を、事業所ごとに定めた労働時間ということで「所定労働時間」といいます。

もちろん所定労働時間は法定労働時間内で定めます。法定労働時間を超えることはできません。

 【所定労働時間=始業時刻~終業時刻ー休憩時間】 

ともいえるでしょう。

実労働時間・拘束時間

実労働時間・拘束時間については明確な定義はないのですが、一般的な言葉の意味合いを述べますと「実労働時間」は休憩時間を除いた、実際に労働している時間のことです(実際に労働していれば残業時間もここに含みます)。

「拘束時間」というのは、仕事に入ってから終わるまでに拘束される時間のことを示します。例えば、休憩時間が長い事業所等は拘束時間が長いといえるでしょう。

労働時間の計算・把握はどんな場面で必要になる?

労働時間の計算は毎月の給与計算で必要な他、昨今では労働者からの未払い残業代を請求された時等で必要になってきます。

また、労働時間を計算する以前に、平成29年に厚生労働省から「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が発表され、使用者の労働時間の把握義務が明確にされました。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)

この中で、主に

始業・終業時刻の確認及び記録すること

②労働者ごとに労働日数・労働時間数・休日労働時間数・時間外労働時間数・深夜労働時間数といった事項を賃金台帳等に適正に記録すること等

が使用者に義務付けられました。

特に②については、これらの項目を賃金台帳等への記入していない場合や、故意に虚偽の記入をした場合は労基法120条に基づいて30万円以下の罰金が課せられます。

労働時間数の把握は、労働時間を計算する上でも必須です。必ず適正に把握し、記録するようにしましょう。

労働時間の計算方法

労働時間の計算方法をみる前に、必要な各項目について整理したいと思います。

休憩時間について

休憩時間についても労基法で定められており、休憩時間は労働時間に含まれません。

労働時間ごとに必要な休憩時間は以下の通りです。

「少なくとも」なので、各企業でこれを上回る休憩時間が定められていても問題はないです(例えば、1日8時間の所定労働時間の会社が、休憩時間を1時間設けていても問題ないです)。

これらの休憩時間を労働の途中に与えなければいけません。また、これらを分割して与えることは問題ないです(例えば、60分の休憩時間を30分ずつ2回に分けて与えても差支えないです)。

ただし、昼食休憩時間等に来客当番等で労働者を待機させているような場合、それは労働時間として取り扱われますので、休憩時間は使用者の指揮命令下に置かない(自由に利用させる)ように注意が必要です。

休日について

労基法により原則、週に1回は休日を与えければならない

休日について、労基法では原則「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と定められています。これを法定休日といいます。

ただし、毎週1回の休日を与えられない場合でも、4週間を通じて4日以上の休日を与える場合には、法違反とはなりません。

労基法上の1週間は、就業規則等で特に定めのない場合、日曜日~土曜日までの暦週をいいます。この場合の法定休日は週の最終日の土曜日ということになります。

就業規則等で別段の定めをし、法定休日として規定している日がある場合にはその日となります。

日曜日としている会社が多いですが、不動産業やサービス業等では水曜日やその他の曜日を定めている場合もあります。どの曜日を定めるかは各企業の自由です(別段の定めがない場合は、上記の通り土曜日となります)。

休日労働はその日が「所定休日」か「法定休日」かに注意する

ですので、休日労働といっても、その日が所定休日(法定休日以外で会社カレンダー等により事業所が任意に定めた休日)なのか、法定休日(労基法上で定められた休日)なのか、注意が必要です。

例えば法定休日を日曜日と定めている会社で、会社カレンダーにより土日祝日が休みという場合、土曜日と祝日は所定休日、日曜日が法定休日となります。

後で述べますが、所定休日なのか、法定休日なのかでは残業時間数の把握や割増賃金率等も変わってきますので、この点を整理する必要があります。

残業時間とは?36協定と割増賃金について

残業させる場合は行政官庁への届け出(36協定)が必要

残業時間を考える前に、そもそも、残業(法定外時間外労働・法定休日労働)をさせる場合には、行政官庁(所轄労働基準監督署長)への届け出が必要です。

先ほど、「法定労働時間」の項目でもみましたが、原則「1週間について40時間を超えて労働させてはならない。1日について8時間を超えて労働させてはならない。」と労基法で定められているからです。

これを超える労働をさせる場合、届け出なしでさせることは全て違法となります。

その届け出のことを労基法36条で定められている協定、ということで「36(さぶろく)協定」と言います。そして、法定外時間外労働や休日労働等には割増賃金の支払いも必要です。

法定外時間外労働には36協定の届け出と割増賃金の支払いの2つが必要だと覚えておきましょう。

36協定は更新が必要!残業時間数の上限にも注意!

また、36協定は1度届け出ればいいものではなく、法定外時間外労働等をする限り、更新が必要ですので、更新の時期を必ず忘れないようにしましょう。

さらに、36協定を届け出れば制限なく残業させられるというわけではなく、法改正によって残業時間数に上限が設けられました。必ずこれを超えないようにしましょう。

また、事業の業種ごとに猶予措置等も設けられてる他、企業ごとに採用している変形労働時間制によっては原則の上限時間数が違いますので、ご自身の業種がどこに当てはまるのかや、上限時間数の仕組みを一度ご確認ください。詳細は下記の厚生労働省のパンフレットをご参照ください。

「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省パンフレット)」

それに対して、法定内時間外労働の場合、法律の範囲内(法定労働時間内)での時間外労働なので、36協定の届け出も割増賃金も不要です。所定の賃金を払えば問題ないです。

計算例

今までみてきたことを踏まえて、実際に計算してみましょう。

例:D社(所定労働時間は7時間30分)

始業時刻 8:30 / 終業時刻 17:00 / 休憩時間 1時間(12:00~13:00)

この会社の就業規則では法定外労働時間から割増賃金を支払うこと、法定休日は日曜日と定められています。

この会社で働くAさん(時給1,000円の労働者)が火曜日に19時まで残業したとします。

この場合、

①17:00~17:30までは法定内時間外労働で、法定労働時間(1日8時間)内の残業ですので、賃金は1倍(所定の賃金の支払い、ここでは時給1000円のこと)でいいですが

②17:30~19:00までの1時間半は法定外時間外労働(1日8時間超の部分)となりますので、1.25倍以上の割増賃金が必要です(各企業で1.25を上回る割増賃金率が定められていても問題ないです)。

つまり

①8:30~17:30(途中休憩12:00~13:00)→@1,000円×8時間=8,000円

②17:30~19:00 →1,000円×1.25=@1,250円×1.5時間=1,875円

火曜日の給与は①+②=9,875円

となります。

この事例ではあくまでこの1日だけをみて計算していますが、週全体で見て40時間を超えていたり、既に1か月に60時間超の残業をしていたり、休日労働等の場合では払い方や割増賃金率が変わってきます。

また、企業によっては所定労働時間外から割増賃金を支払うとしている会社もありますので、その点でも変わってきます。

以下に割増賃金の必要な場合と割増賃金率をまとめておきます。

1週44時間の特例措置の事業とは?変形労働時間制とは?

1週44時間の特例措置の事業について

常時10人未満の労働者を使用する下記の事業については当分の間、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができます。

①商業・理容業

②興行(映画の製作の事業を除く)

③保健衛生業

④接客娯楽業

この労働者数には例えば週に2日のパートタイム労働者であっても、継続的に勤務していれば数に含めます。

変形労働時間制について

事業所によっては様々な変形労働時間制を採用していることがあります。

フレックスタイム制や1年単位の変形労働時間制、事業場外労働に関するみなし労働時間制等、実に様々です。

紙面の関係上、ここではそれぞれの詳細な説明を割愛しますが、これらの制度を採用している場合は労働時間の計算方法も変わってきます。

ご自身の事業所が変形労働時間制を採用しているのかどうか、採用しているとしたら何を採用しているのか、一度ご確認ください。

労働時間・賃金支払いにおける端数処理等の仕方

労働時間は原則1分単位で計算します。

ただし、労基法では以下の端数処理は認められています。

①割増賃金計算における端数処理

 

②1か月の賃金支払い額における端数処理等

また、余談ですが、昨今副業・兼業が広く認められるような風潮になってきており、副業をしている会社員の方も徐々に増えつつあると考えられます。

事業場を異にする場合も、労働時間に関する規定は適用されますので、労働時間についても通算することが求められます。

会社員が一方で会社勤めをしながら、自分で起業しているような場合は労働時間の通算はする必要はありません。

2以上の事業主に雇用され(労働関係があるとします)、その通算した労働時間が8時間を超えるような場合、法定時間外に労働させた事業主が割増賃金を支払わなければなりません。

副業・兼業をしている労働者がいる場合は、この点にも注意が必要です。

労働時間を正確に計算・把握しない場合のリスク

従業員とトラブルになる

労働時間の計算や把握方法が正しくなかったり、そのしくみが不透明であった場合、従業員が会社に対し不信感を抱く可能性があります。

不信感を抱いた状態では、当然会社との関係も悪化します。ある日、突然従業員が会社を訴えたり、労働局から調査が入ることも考えられます。

「こんなはずでは…」となってしまう前に、今一度自社を点検する必要があります。

労基法上の罰則がある

上記で述べてきたような「労働時間」「休憩」「休日」「時間外労働等の上限規制」「時間外労働等の割増賃金」等の項目には、違反すると最高で6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

刑が重いか軽いかについては個人の主観にお任せしますが、近年の電通事件のように、ひとたび労働問題が起きると、社会的にその企業へ厳しい目が向けられることは記憶に新しいでしょう。

会社の業績や今働いている従業員への影響は勿論、将来の求人へも影響することは避けられません。

罰則以外の様々なそうした影響を、総合的に考えると、慎重に対応せざるを得ないかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今まで分かりにくかった所定・法定等の言葉の意味合いや、具体的な労働時間の計算方法が、スッキリとご理解頂ければ幸いです。

少しでも会社と、日々働く1人1人の従業員が、双方気持ちよく働けるように、正しく、明確な基準で労働時間の計算ができるといいですね。

画像出典元:PEXELS

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