労働時間の上限は1日8時間・週40時間!違反が発覚したらどうなる?

労働時間の上限は1日8時間・週40時間!違反が発覚したらどうなる?

記事更新日: 2024/05/23

執筆: 編集部

この記事では、労働時間の上限、変形労働時間制を採用した場合の上限時間、時間外労働の上限時間、労働時間違反をした企業に対する罰則、ブラック企業とみなされないための対策について紹介します。

2020年4月から法律で時間外労働の上限時間が明確に提示され、違反企業には罰則付きになりました。

無自覚であっても「時間外労働の上限ギリギリまで仕事をさせる」会社は、ブラック企業です。

正しい給与計算のためにも、労働時間とは何かを理解しなければなりません。

まずは、労働時間の上限「原則8時間・40時間」と「時間外労働の上限時間」の基準や数え方を理解が必要です。

大企業・中小企業関係なく、労働時間の上限について厳しく管理する意識を持ちましょう。


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労働時間の上限とは

労働時間の上限は「原則8時間・40時間」と決められている

労働時間の上限は労働基準法第32条でよって決められています。

労働基準法第32条1項

「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」

労働基準法第32条1項の②

「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」


この2つに基づいて法定労働時間の上限は、原則として「1日8時間まで、1週間40時間まで」までと決まっています

この労働時間の上限を守るには「8時間勤務×5日=40時間」が一般的です。

 

例:労働時間の上限内の勤務

  • 【全体の勤務時間】9:00から18:00
  • 13:00から14:00まで1時間休憩あり
  • 8時間勤務となるため、労働時間の上限内の勤務(残業なし)

例:労働時間の上限を超える勤務に該当

  • 【全体の勤務時間】9:00から19:00
  • 13:00から14:00まで1時間休憩あり
  • 9時間勤務になるため、1時間の時間外労働が発生したことになる

労働時間の上限は変形労働時間制でも変わらない

変形労働時間制とは、繁忙期・閑散期の労働量の上下に合わせて、労働時間を調整できる制度です。

社員30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店が適用できる労働時間の変則ルールです。

ただし、変形労働時間制にも「1週間単位」「1ヶ月単位」「1年単位」で労働時間に関する細かい上限時間の規制があります。


1週間単位の非定型的変形労働時間制

  • 1日の労働時間の上限は10時間
  • 1週間の労働時間合計が40時間を越えないように定める

1ヶ月単位の変形労働時間制

  • 1ヶ月以内の特定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間を越えない範囲内で、特定の日もしくは週に法定労働時間を越えて労働させることができる

1年単位の変形労働制

  • 1年以内の特定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間を越えない範囲内で、特定の日もしくは週に法定労働時間を越えて労働させることができる

「平均して1週間あたりの労働時間の上限が40時間を越えない範囲」が共通点です。

 

フレックスタイム制もみなし労働時間制も「原則8時間・40時間」が上限

フレックスタイム制とは、3か月以内の総労働時間を定め、その範囲で社員が始業・終業時刻を決められる働き方です。

みなし労働時間制とは、事業場外労働(営業の外回りなど)や裁量労働制(プロデューサーや研究職など)に適用される働き方です。

自由に労働時間が決められるイメージがありますが、どんな働き方も「原則8時間・40時間」の上限ルールは変わりません。

ただし、フレックスタイム制には、清算期間と総労働時間で調整が出来る特別ルールがあると覚えておきましょう。

 

どの労働時間の適用には就業規則や労使協定が必要

変形労働時間制・フレックスタイム制・みなし労働時間制にしても適用するためには、就業規則の改正や労使協定の締結と所轄の労働基準監督署長への届出が必要です

会社が勝手に労働時間の制度を変えて、上限を変更することは出来ません。

 

労働時間の上限と休憩のルール

労働基準法第34条で「休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定されています。

会社は従業員に労働時間数に応じた休憩時間を労働時間内で取らせる義務があります。

仕事が終わってから休憩時間は「休憩時間」には該当しません。

労働時間 与える休憩時間
6時間 なくてもよい
6時間越えで8時間まで 45分以上
8時間越え 60分以上

 

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時間外労働の上限時間

次に、時間外労働(残業)の上限時間について解説します。

時間外労働とは

時間外労働とは、労働時間の上限「1日8時間、1週間40時間」を超えて労働することです。

一般的には「残業」と呼ばれる労働時間を指します。

注意点は、従業員と会社で定めた終業時間が超過して残業してもそれが「1日8時間もしくは週40時間の範囲内」であるならば、法的には時間外労働にはならないことです。

例:時間外労働にならない

  • 【会社と契約している勤務時間】11:00から18:00
  • 【実際に勤務した時間】10:00から19:00
  • 13:00から14:00まで1時間休憩あり
  • 8時間勤務となるため、法的な労働時間の上限は超えていない

例:労働時間の上限を超える勤務に該当

  • 【会社と契約している勤務時間】12:00から19:00
  • 【実際に勤務した時間】9:00から19:00
  • 13:00から14:00まで1時間休憩あり
  • 9時間勤務になるため、法的な労働時間の上限を超えたので違法となる

時間外労働の上限が36協定で変わる?

労働時間「1日8時間、1週間40時間」を越えて従業員に仕事をさせる場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定が必須です。

この労使協定が「36協定」と呼ばれています。

会社は従業員側に「残業を依頼するかも知れない」という意味で36協定を締結します。

締結した36協定は所轄の労働基準監督署長への提出し承認を得ないと違法になります。

時間外労働の上限「月45時間・年360時間」とは

「月45時間・年360時間」は、法律上定められている時間外労働の上限時間を指しています。

36協定があっても、何時間でも残業を依頼して良いわけではありません

「月45時間・年360時間」以上の時間外労働は、36協定があっても超えてはいけない労働時間の上限です。

特別時間外労働でも上限は「年720時間以内」

臨時的かつ特別な事情向けの「特別条項付き36協定」を締結している会社は、36協定の「月45時間・年360時間」の上限を超えた労働時間が行えます。

しかし、特別条項付き36協定であっても、以下の上限時間は超える事は違法です。

特別条項付き36協定の上限労働時間

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働が月45時間を越えることができる回数は、年6ヶ月まで

 

平均残業時間を「月80時間以内」にしなければならない

平均残業時間を「月80時間以内」とは、上限「月45時間・年360時間」の時間外労働、上限「年720時間」の特別時間外労働のいずれかの場合でも、以下の2点は順守しなければならない事を意味します。

1:時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

時間外労働時間が45時間以内で特別時間外労働をしていなくても、時間外労働時間40時間、休日労働60時間のように合計が100時間を上回ると法律違反です。

2:時間外労働と休日労働時間の合計が、2ヶ月平均・3ヶ月平均・4ヶ月平均・5ヶ月平均・6ヶ月平均すべてにおいて1ヶ月あたり80時間以内

2点目については、月の時間外労働と休日労働時間を合計したものの平均(平均残業時間)を「月80時間以内」にするというのがポイントです。

残業時間80時間は過労死ラインの目安

月の残業時間80時間は過労死ラインの目安となる時間といわれています。

たとえば、80時間の残業は月に20日出勤した場合、1日あたり4時間以上の残業です。

36協定の労働時間の上限は「労働基準法のルールだと1分の残業でも違法になってしまう、それでは経営が成り立たない、生産性が追い付かない」というニーズ向けの特別ルールです。

毎日残業があること自体が「異常な職場である」と認識しましょう。

労働時間の上限「月45時間・年360時間」や「年720時間以内」を基準に考えるのではなく原則の「1日8時間、1週間40時間」を基準にした職場を作るのが会社や経営者の義務です。

法定労働時間と時間外労働時間の上限ルールのおさらい

  • 法定労働時間(原則)
  • 1日8時間・1週間40時間
  • 時間外労働時間(36協定がある場合に適用可能)
  • 1ヶ月45時間・1年360時間
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働時間の合計の平均は1ヶ月あたり80時間以内
  • 時間外労働をさせるには36協定が必要
  • 特別条項の時間外労働時間(特別条項付き36協定がある場合に適用可能)
 
  • 1年720時間
  • 時間外労働が月45時間を越えることができる回数は、年6ヶ月まで
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働時間の合計の平均は1ヶ月あたり80時間以内

 

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労働時間の上限違反があった企業はどうなる?

労働時間の上限違反の罰則とは

労働基準法第119条に基づき、労働時間の上限時間に違反した企業は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金刑に処されます。

労働時間違反の罰則に会社の規模は関係なく、一律です。

違反はどのようにしてバレるものなのか?

労働時間違反が発覚するケースとしては、従業員やその家族や配偶者による労働基準監督署への相談や申告があります。

労働基準監督署では、直接訪問・労働基準関連情報メール窓口・電話という3つの窓口を設けています

通報からその後の流れは一般的に以下のようになります。

1. 従業員やその関係者が労働基準監督署に通報

2. 労働基準監督署から従業員へ対応のアドバイス

3. 労働基準監督署の調査員が会社の労務人事担当者や従業員、帳簿などを立入調査

4. 労働基準監督署が違法性がありと判断するなら是正勧告

 

労働基準監督署から是正勧告されたらどうする?

労働時間について法律違反の疑いありとなった場合、会社に対して最初に行われるのが事実確認のための立ち入り調査です。

これは臨検監督と呼ばれ、基本予告なしで実施されます。

臨検監督後の流れと会社の対応方法は以下のとおりです。

1. 立入調査により、違法性ありと判断されたなら、違反事項と是正期日が記載された是正勧告書が交付される

違法性が乏しいものの改善の余地ありと判断されたなら、指導票が交付される

2. 指摘された内容を改善し、期日までに是正報告書を提出


是正勧告書には法的拘束力はありません。

しかし、会社が指摘通りに改善せずに是正報告書を提出しない場合は労働基準監督署は高い確率で再監督(一度是正勧告を行った会社への再調査)を行ないます

是正勧告書を提出すれば、労働基準監督署からの調査が終了というわけではありません。

是正勧告した内容がその後も継続して守られているかを確認するために再度の臨検監督が行われるケースがあります。

いずれにせよ、再監督などで是正勧告した内容が改善されていないと判明した場合は、法律違反をしている悪質な使用者とみなされ、検察庁に書類送検され罰則が科される可能性が高いです。

労働時間の上限を知る・ブラック企業から脱する

労働時間の上限規則に違反しているブラック企業というレッテルを貼られないために、どのような対策を講じることができるのか最後に説明します。

本当にその仕事、労働時間内の終わらない?

労働時間の上限を守れないブラック企業の多くは本当に忙しいより「残業に対する意識の低さ」に原因があります。

特に日本の企業に多い傾向です。

「残業を前提として業務のスケジュールを組んでいる」

「残業代目当てで残っている」

「上司がいるから先に帰れない」


会社の雰囲気で労働時間が長時間になっている可能性があるなら、労働時間の上限について社内で周知したり、業務内容の可視化などを図って「適正な労働時間」を経営者・従業員を情報共有を行いましょう。

労働時間を可視化する事で「自分の業務の怠慢」が表に出たり「残業の抑止力」に繋がります。

労働時間の上限に対する正しい知識を持つ

経営者や労務人事担当者が労働時間の上限に対する知識を持つことが最初のポイントです。

労働時間は「勤務時間」「法定労働時間」「法定時間外労働」「休憩時間」で構成されています。

労働基準法で明確に罰則付き上限時間が決められているのは、労働時間・残業時間・休憩時間の3つです。

労働時間の上限に対する正しい知識を持たなければ、無自覚に違法な労働時間を行い、会社としての信頼や人材の流出の原因を自分で作っていることになります。

会社の経営がうまく行っていない原因が「労働時間」かも知れないという視点を持ちましょう。

「うちの業界ではこれだけ働くのが当たり前」

「みんなこれくらい働いている」


雰囲気的な労働時間のルールを曖昧にするのではなく、法的な根拠に基づいた正しい労働時間の上限規制を守ることが企業の義務です。

勤務時間

  • 出社から退勤まで会社にいる時間の合計こと
  • 法定労働時間と呼ばれる
  • 休憩時間も含めて「会社に拘束されている時間」

労働時間

  • 勤務時間から休憩を引いた「実際に仕事をしている時間」
  • 法定労働時間と呼ばれる
  • 法的に「原則一日8時間・週40時間」と労働時間の上限が決まっている

残業時間

  • 労働条件で決めた定時の後の発生する残業の時間
  • 法定時間外労働と呼ばれる
  • 「一日8時間・週40時間」を超え時間は法的な時間外労働(残業)に該当する

休憩時間

  • 就業規則や労働基準法の原則に従った休憩時間
  • 勤務時間と連動している

労働時間を減らす方法とは

長時間労働の原因は「業務内容」と「スケジュール」を正確に把握できていない事です。

労働時間を減らすには「労働時間の可視化」が重要となってきます。

まずは、何が原因で労働時間の上限を気にしなければならないのかを経営陣や労務管理者が把握しましょう。

ノー残業デーの導入も積極的に検討し、労働時間を調整する体制を作りましょう。

労働時間を可視化する

労働時間を可視化できるツールで経営者・人事労務担当者と従業員の双方が労働時間を可視化できるようにすることです。

主に次の3つの方法で労働時間を可視化できます。

  • 出勤簿やタイムカード
  • エクセルシート
  • 勤怠管理システム


労働時間の可視化は、従業員と人事労務管理担当者の両方が労働時間の入力ミスや計算ミスなどのうっかりミスを防止するために必要です。

さらに、経営者と従業員の両方が労働時間を把握することで、不必要な長時間労働の抑止や人件費の削減などの効果を期待できます。

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まとめ

法定労働時間と時間外労働の上限について説明しました。

労働基準法の改正によりすべての企業はこの労働時間の上限を守らなければ罰則を受けることになります。

労働時間の上限を順守しないなら、労働基準監督署から指導を受け、外部からブラック企業というレッテルを貼られます。

法律に沿った労働時間を設定し、働きやすい労働環境を提供するために必要であれば労働時間の社内規定を見直してください。

画像出典元:O-DAN

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