労使協定とは?意味や就業規則との違い、36協定についても解説!

労使協定とは?意味や就業規則との違い、36協定についても解説!

記事更新日: 2021/04/07

執筆: 編集部

時間外労働や変わった労働形態を取り入れたい時、必要になる「労使協定」

しかしその意味や種類を知らずにいると、思わぬところで法律違反をしてしまう可能性もあるでしょう。

そこで今回は、労使協定の意味や就業規則との違い、代表的な労使協定である36協定などについてご紹介します。

これを読めば、押さえておきたい労使協定の基礎知識について理解できますよ!

労使協定とは

労使協定はその名の通り、「労働者(会社員)」と「使用者(会社)」の間で結ばれる協定です。しかし、労使協定という文言そのものは労働基準法に明記されていません。

労働基準法の「労働基準」と、実際の会社経営上必要な「労働条件」を近づけるために、労使協定が必要になります。この点を踏まえて、労使協定についてもう少し掘り下げていきましょう。

労使協定って何?

労使協定は、労働基準法の36条(当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定)によって示されている協定です。

この協定は、時間外勤務やフレックスタイム制の勤務など「労働基準法に定められた勤務形態」と異なる働き方をさせたい場合に使えます。しかし、どんな条件でも設定できるわけではなく、労働基準法で定められた条件でのみ設定が可能なため、この点は注意が必要です。

書面による協定自体は、労使協定以外にも複数あります。これらを混同しないよう、以下で各言葉の違いについて見ておきましょう。

書面による協定の優先順位

書面による協定には様々ありますが、大きいものでは「労働基準法・労働協約・就業規則・労働契約」が挙げられます。

これらは労働者に民事的効力(強制力)のある決まりであるのに対して、労使協定には労働者への民事的効力はありません。

そして、労働者に強制力のある4つの協定の力関係は次のようになっています。

労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約

これらを踏まえて、各協定と労使協定の違いについて見ていきましょう。

労使協定と労働基準法の違い

労働基準法は国の定めた法律であるため、何より強い効力を持っています。その目的は「労働者の保護」であり、労働における雇用条件等を設定している法律です。

その労働基準法に例外を設定するのが「労使協定」のため、労使協定には法律のような強制力がありません。この関係性については、しっかり押さえておきましょう。

労使協定と労働協約の違い

労使協定と労働協約は「労働者の代表と使用者(会社)が話し合いで決定する」点が共通しています。しかし、以下のような違いを持っています。

  労使協定 労働協約
規律性 なし(免罰効果のみ) あり
効力 全労働者(効力が定められていない場合) 「労働組合の組合員のみ」もしくは「労働組合員が労働者の3/4以上を占める場合労働者全員」
人数 「労働者の過半数で組織する労働組合」もしくは「労働者の過半数の中から投票や挙手などで選ばれた代表者」との合意 労使協定の条件に加え「労働者の過半数に満たない労働組合」でも可
有効期限 法律上の制限なし(だいたいは1年で設定) 上限3年

規律性について少し補足をすると、労使協定は「労働基準法でまかないきれない例外を認める」協定です。

そのため、労使協定そのものに労働基準法のような規律機能はありません。しかし労働協約には「労働基準法を補う」役割があるため、規律機能を持っています。

労使協定と就業規則の違い

共通性のあった「労使協定・労働協約」と異なり、「労使協定・就業規則」はそもそも効力や作り方、在り方が全く異なります。混同しないよう、ポイントを押さえて見ていきましょう。

  労使協定 就業規則
意味 労働者と使用者の合意のもと締結する規則 労働者が10人以上いる会社に作成義務のある規則
作成者 労働者と使用者 使用者(労働者へは意見の聴取義務)
効力 免罰効果は発生するが、民事的な権利義務は発生しない 規範的効力はもちろん、民事的な権利義務も発生

ポイントは作成者とその効力です。

労使協定が「労働者と使用者(会社)の話し合い」で決定されるのに対し、就業規則は「使用者(会社)のみで作成」することになっています。

もちろん聴取義務はありますが、就業規則は使用者(会社)に作成義務があるため、この点は大きな違いです。

また効力についても、労使協定より就業規則の方が強い形になっています。そのため、就業規則を先に設定し、それに基づいて労使協定を設定するのが一般的です。

労使協定と労働契約の違い

労働契約については、アルバイトなどで耳にしたことのある人もいるでしょう。労使契約と労働契約の違いは以下の通りです。

  労使契約 労働契約
契約を結ぶ目的 労働基準法を補い免罰効果を得ること 労働への対価として賃金を払う約束をすること
契約の影響が及ぶ範囲 労働者のみに効力発生 労働者・使用者どちらにも民事的効力発生

契約の及ぶ範囲について補足すると、労働契約はあくまで、「会社といち労働者」の結ぶ賃金に関する契約です。

そのため労働者ごとに契約内容が異なっても問題ありませんし、労働基準法以上の内容が書かれていたとしても、合意さえあれば適用されてしまいます。

そのぶん効力は高く、労働者だけでなく使用者にも民事的効力が発生します。

労使協定の特徴

これらを踏まえて、改めて労使協定の特徴をまとめました。他の協定とは以下のような点が異なるため、しっかり押さえておきましょう。

  • 労使協定は「労働基準法の例外を認める」協定
  • 労働者への民事的効力はなく、免罰効果を得られるのみ
  • 労使協定は「労働者」と「使用者(会社)」の話し合いで設定する
  • 契約の影響は労働者にしか及ばない

 

労使協定の種類

労働基準法で認められている労使協定は、労働基準監督署に届出が必要なものとそうでないものの2種類に分けられます。

手続き漏れが起きないよう、それぞれの協定について見ていきましょう。

手続きの必要な労使協定

労使協定のうち、手続きの必要なものは次の通りです。

1. 労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合の労使協定
・労働基準法第18条に関連
※毎年4/30までに、3/31以前1年間の預金管理状況の報告義務あり
2. 1カ月単位の変形労働時間制に関する労使協定
・労働基準法第32条の2に関連
※勤務時間を1カ月で平均した時、1週間あたりの勤務時間が40時間を超えない場合に届出義務
3. 1年単位の変形労働時間制の労使協定
・労働基準法第32条の4、第32条4の2、施行規則第12条の2、第12条の4、第12条の6、第65条、第66条に関連
※勤務時間を1年で平均した時、1週間あたりの勤務時間が40時間を超えない場合に届出義務
4. 1週間単位の非定型的変形労働時間制の労使協定
・労働基準法第32条の5に関連
※1日10時間まで労働させられる協定を結んだ場合に届出義務
5. 時間外・休日労働に関する労使協定(※)
・労働基準法第36条、第133条、施行規則第69条に関連
6. 事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
・労働基準法第38条の2に関連
※事業場外労働が法定労働時間内におさまる場合、届出必要なし
7. 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
・労働基準法第38条の3、4に関連
※専門性が高いことから、労働時間の算定が難しい場合に締結

※印で示した「時間外・休日労働に関する労使協定」が、後ほど紹介する36協定と呼ばれる労使協定です。こちらの詳細については後ほど解説します。

手続きのいらない労使協定

労使協定のうち、手続きのいらないものは次の通りです。

1. 賃金から法定控除以外にものを控除する場合の労使協定
労働基準法第24条に関連
※財形貯蓄などの賃金控除が可能になる
2. フレックスタイム制の労使協定
労働基準法第32条の3に関連
※フレックスタイム制の導入が可能になる
3. 休憩の一斉付与の例外に関する労使協定
労働基準法第34条に関連
※一斉に休憩を取らなくてよくなる
4. 年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定
労働基準法第39条、第135条に関連
※割増賃金の代わりに有休を与えることが可能になる
5. 年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合の労使協定
労働基準法第39条第5項に関連
※1年のうち5日を上限とし、時間単位での有給取得が可能になる
6. 育児休業及び介護休業が出来ない者の範囲に関する労使協定
育児介護休業法第6条、第12条に関連
※育児休業や介護休業のできない労働者に有休を与えることが可能になる
7. 看護休暇適用除外者に関する労使協定
育児介護休業法第16条の3に関連
※看護休業のできない労働者に有休を与えることが可能になる

 

労使協定の代表「36協定」って何?

36協定は、代表的な労使協定の1つです。労働基準監督署で手続きの必要な労使協定で、届出を忘れてしまうと当然罰則があります。

ここでは、36協定の内容や限度時間、罰則について確認していきましょう。

36協定とは

36(さぶろく)協定は、「時間外・休日労働に関する労使協定」の別称です。労働基準法の36条に基づいて設定される協定のため、36協定と呼ばれています。

36協定は労使協定の1つですので、民事的効力はなく免罰効果があるのみです。しかし、時間外労働や休日労働をさせたい場合、労働基準法で設定が義務づけられているため、忘れず届け出る必要があります。

36協定の定める内容

36協定と関わりのある、労働基準法36条の内容は次の通りです。

(時間外及び休日の労働)

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

引用元:労働基準法第36条

書面による協定というのは、1番最初にお話しした「労使協定」を指す言葉です。

そして36協定は、労働者に「法定労働時間を超える業務」や「休日労働」をさせたい場合に締結する義務のある協定になります。

ここでいう法定労働時間とは「1日8時間、週40時間」の勤務のことです。こちらは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

つまり36協定は、労働者に「1日8時間、週40時間を超える労働」もしくは「休日労働」をさせたい場合、必ず締結しなくてはならない協定ということになります。

36協定違反の罰則

36協定を結ばずに時間外業務や休日労働をさせた場合、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。

加えて2019年の4月には、36協定で指定できる時間外労働に罰則付きの上限がつきました。

以下に内容をまとめましたので、この上限を超えない範囲で勤務時間を設定しましょう。

2018(平成30)年6月に労働基準法が改正され、36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設けられることとなりました。

時間外労働の上限(「限度時間」)は、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。また、月45時間を超えることができるのは、年間6カ月までです。

引用元:厚生労働省|36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

 

まとめ

労使協定の意味や種類、そして労使協定の代表例である36協定について見ていきました。

労働者の働きやすい環境を作るためにも会社の利益を上げるためにも、労使協定を適切に活用することは大切です。

ぜひ今回ご紹介した内容をもとに、労働環境に適した労使協定を適切な方法で締結してみてください。

画像出典元:o-dan

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