写真の著作権ってどこまでが対象?困った時の対処法も紹介!

写真の著作権ってどこまでが対象?困った時の対処法も紹介!

記事更新日: 2024/09/27

執筆: 編集部

TwitterやInstagramなどのSNSで手軽に写真を掲載・保存できるようになりましたが、写真は著作権で保護されており、正しく取り扱わないと著作権侵害になるのはご存じでしょうか?

本記事では、著作権とは何か、著作権侵害をしたらどうなるか、著作権を侵害されたときの対処法などを専門家のアドバイス付きで解説します。

ケース別に分けて、写真の著作権が誰に発生するかも解説しているので、著作権の基本を押さえトラブルを未然に防ぎましょう。

この記事に登場する専門家

 

弁理士
靍田 輝政

大手金属系素材メーカーにおいて7年間、開発、量産設計、量産移管、品質管理までの一連の製品開発業務に従事。
2018年、弁理士試験に合格し、法的知識と技術背景を組み合わせる能力を持つ専門家として特許事務所への道を選択。
2023年、知財の全体戦略や個々の出願戦術から関わりたいという思いから、発明を醸成する段階から関わるためにスタートアップへの専門的知財支援を目指し、One ip弁理士法人に参画。  詳しくはこちら(専門家紹介へ)

著作権侵害とはどんなこと?

著作権侵害とは、「他人の著作物を権利者(作者等の著作権者)の許諾を得ないで利用すること」です。

本章では、具体的に著作権とはどういうものか、肖像権との違いや著作権を侵害するとどうなるかなどを、解説します。

「著作権」とは

自身の考え、気持ちなどを表した作品を創造した作者に与えられる権利を著作権と呼びます。

著作権は、作者の権利を守るための制度で「著作権法」によって保護されています。

また著作権は、著作物を「創作した時点で自動的に発生」し、作者が権利を取得するために何の手続きも必要としません。

そのため、誰がいつ創作をして、誰が財産権を持っているのか、第三者が客観的に把握しにくいという性質を持っています。

ここが、登録によって権利が発生する特許権や商標権等の産業財産権と異なる点です。

代表的な著作物は以下の通りです。

  • 小説、脚本、論文、講演といった言語に関する作品
  • 音楽
  • 舞踊または無言劇の作品
  • 絵画、版画、彫刻といった美術に関する作品
  • 建築物
  • 地図または学術的な図面、図表、模型といった図形に関する作品
  • 写真

靍田氏

著作権にも「登録制度」が存在します。ただしこの制度は、創作日や権利者などの事実関係を証明しやすくするために設けられた制度が目的ですので、権利を発生させるためのものではありません。上演権や公衆送信権などの著作財産権については譲渡などの商取引が可能であることから、著作権が移転されたことを登録するなどして、取引の安全を確保するために登録制度が利用されています。

著作権には「著作者人格権」と「財産権」がある

著作権は、著作者人格権と著作権(財産権)の2つに大別できます。

著作者人格権とは、作者の名誉や感情などの人格的な利益を保護する権利です。

具体的には、作品を公表するか決める権利、作品に作者の名前を表示するか決める権利、作品の内容やタイトルを勝手に改変されないようにする権利などがあります。

著作権(著作財産権)は、作者の財産的な利益を保護する権利です。

この財産権については、複製、上演、展示、譲渡、貸与などの作品の利用方法ごとに権利が規定されています。

この権利は第三者に作品を勝手に利用されないよう、作者を守ることを目的としています。

靍田氏

著作者人格権は、作者にのみ与えられる権利で、他人へ譲渡したり相続させたりすることはできず、作者の死亡によって消滅します。 一方で、著作財産権については、譲渡や相続が可能で、著作財産権の保護期間は、「創作したとき」に始まり、原則として、「作者の死後70年間」存続します。無名の著作物、団体名義の著作物、映画の著作物については、公表時から保護期間が起算され、公表後70年間存続します。

「肖像権」との違い

まず、肖像権とは、本人の承諾なしに、容姿を他人に公表されたり、写真や彫刻などに利用されたりしないようにするための権利です。

肖像権も、権利者の利益・人格を守るという点で、著作権と共通するところがあります。

ただし著作権は、「創作」によって発生し、創作した「作者」に与えられる権利であるのに対して、肖像権は、「発生のための要件を必要とせず」、「すべての人」に等しく与えられる権利である点が大きく異なります。

著作権は、著作権法という法律に明文化されていますが、肖像権は、法律で明文化されているわけではなく、憲法に基づいて認められている権利です。

他人の著作物を、無断で使用すること

著作権侵害とは、他人が作った作品(著作物)を許可なく勝手に使用することです。

著作権侵害をしてしまうと、被害者から訴えられるケースもあります。

著作権侵害の要件(著作権の侵害に該当するか否かの要件)としては、

  • 著作物であること
  • 著作権の保護期間内であること

などの前提要件の他に、

  • 権利者(作者等)の許諾を得ないで利用していることと
  • 依拠性があること(他人の著作物を参考に創作されていること)
  • 類似性が認められること(他人の著作物と本質的な特徴が似ていること)

などが挙げられます。

次の章で著作権侵害をした場合にどのような罰則を負うか、詳しく説明します。

靍田氏

インターネットで公開されている記事や写真を、無断で、そのまま転用すると、依拠性も類似性もあるものとみなされますが、記事の文章等を加工して利用している場合には、依拠性および類似性があるか、が侵害にあたるか否かの争点となります。

違反(侵害)するとどうなってしまうのか?

著作権を侵害した場合、民事責任や刑事責任を負うこととなります。

民事責任

著作権侵害をしたら、被害者から損害賠償や使用の差し止めなどを求められます。

刑事責任

著作権侵害の罰則は著作権法119条1項で定められており、個人が違反した場合は10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられるおそれがあります。

法人が著作権侵害をしたときは3億円以下の罰金が科せられる可能性もあるので、著作物の取り扱いは十分注意しましょう。

【ケース別】写真の著作権について

本章では4つのケースに分けて、誰に写真の著作権があるのか確認していきましょう。

自分で撮影したもの

自分で撮影した写真は、自分に著作権があります。

自身が投稿した画像を、第三者が自分が撮った写真としてSNSに再投稿するなど、自身の権利を侵害した場合、SNSの運営会社に問い合わせフォームを使って報告しましょう。

トラブルを防ぐには、写真にクレジット(コピーライト)を入れたり、写真に透かしを入れたり、第三者が無断で利用できないようにするのも有効です。

ネットで拾ったもの

ネットで拾った画像は出典元に著作権があります。

写真を加工してしまえばOKというようなことはなく、他人の著作物を勝手に加工して利用すると著作権侵害になります。

ただし、出典元が加工を許可しているときは、加工は可能です。

著作権法第三十二条で、「出典元を明記し、自分の著作物ではないと分かるようにしておけば、ネットで拾った画像を掲載することは可能」とされています。

出典元が利用範囲を制限していることもあるので、引用する際は出典元に確認して、トラブルに発展するのを防ぎましょう。

フリー素材サイトでダウンロードしたもの

「フリー素材=著作権がない」と決まっているわけではありません。

フリー素材を利用する場合は利用規約を読み、どのような範囲で利用すれば著作権侵害にならないかを事前に確認しましょう。

フリー素材といっても、商用利用を禁止していたり、著作権者の許諾が必要だったりと、制限を設けているサイトもあります。

靍田氏

著作権法では、著作物を編集したり変形させたりすることが翻案権として保護されています。 他人の著作物である写真を許可なく加工すると、この翻案権の侵害となります。 フリー素材であっても、加工を禁止するような利用規約となっているケースもあります。 フリー素材を利用する際には、加工して問題ないかどうかについても、利用規約で確認するようにしましょう。 

学校の資料として写真を利用するケース

第三者に著作権がある写真を、学校の授業のために資料として掲載することは、著作権者の利益を害さない限り著作権法違反にあたりません。

著作権法第三十五条で、学校の授業のために一定の範囲で利用することが認められているからです。

第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。

ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

引用元:著作権法|e-Gov法令検索

 

インターネット上の写真を使用してもいい例

写真を利用する際は、次に紹介する点を確認し、法律に違反しないよう注意してください。

利用細則に条件付きで使用許可の旨が書いてあった

フリー素材など、写真を無料・有料でダウンロードできるサイトには利用細則(利用規約)が必ず明記されています。

サイトによって「ブログなど個人での利用や学校の資料としての利用は可」「商用利用が可能」など利用範囲が記載されており、その範囲内での利用であれば著作権侵害にはあたりません

「個人での利用に限る」と書かれているにもかかわらず、広告用のチラシに利用した場合は著作権侵害にあたるので注意しましょう。

無断でも使用していいと書いてあった

著作権者が利用して良いと記載していれば、利用可能です。

ただし、「〇〇として利用する場合は可」など、どのように利用する方法を制限していることもあるので、利用範囲の確認をしてください。

試験問題として写真を利用した

入試やテスト、検定といった試験問題で写真を利用することは、著作権法第三十五条で認められており、使用にあたって著作権者に許可をとる必要はありません

社内のプレゼン資料として利用した

外部には出さない社内でのみ利用する資料であれば、許可を得ないでネット上の写真を利用できる場合があります。

例えば、コラボ商品の企画でコラボする漫画・アニメのキャラクターを検討する、イメージキャラクタとして起用する芸能人を誰にするか検討する、というような場合、正式な依頼を打診する前の段階から、写真利用の許可を取るのは業務の実情にそぐわないため、社内のみの利用に限って無断利用が可能です。

靍田氏

このようなケースで無断利用が認められるのは、あくまでも必要最小限の範囲であって、権利者の利益を不当に害することがないよう、注意が必要です。 

引用する場合

「引用」の条件に該当していれば、ネット画像を無断で利用することは可能ですが、「引用」と認められるためには、以下のような条件を満たす必要があります。

1. 自分の著作物が「主」で、引用部分が「サブ(従)」であること

あくまでも自分の著作物が主体である必要があり、ネット上で拾った画像が大半を占めていて自分の著作部分がわずかであればNGとなりますので要注意です。

2. 引用部分が明確となっていて、出所が明示されていること

引用する場合には、自分の著作物の部分と、他人の著作物の部分とが明らかに区別されている必要があります。

また、他人の著作物を表示する部分にはURLなどの出典元(出所)を明示することも必要です。

3. 写真を引用する必然性があること

インターネット上の写真を引用する場合、必然性が認められるケースであれば可能ですが、実際、必然性が認められる例は多くはありません。

インターネット上の写真を利用するケースにおいて例えば、自動車に関連する記事で自動車の写真を載せたいのであれば、自動車の写真であればフリー素材でもよく、他人の著作物をわざわざ引用する必然性はありません。

写真を引用する必然性が認められるケースとしては、写真自体を論評するケースや、写真に表れている特定のシーンについて論評するケースなどに限られ、必ずその写真でなければならないという理由が必要となります。

靍田氏

引用として認められるのは、写真をそのまま使用するケースに限られ、加工して引用すると、前述のとおり「翻案権」の侵害に該当してしまうので要注意です。

写真の私的利用について

個人または家庭内などの限られた範囲で使用する「私的利用」の目的であれば、写真等の著作物を自由に利用することは可能です。

例えば、ネットからダウンロードした好きなキャラクターや好きな芸能人の写真を自宅の自分の机に飾る、このような行為については、著作権の侵害にはなりません。

ただし、このような写真を自分のSNS上にアップしてしまうと、「公衆送信権」という著作権の侵害に該当してしまいます。あくまでも個人や家庭内で楽しむ目的が私的利用で、多くの人が閲覧できるSNSなどで公に発信してしまうと「公衆送信」という行為になり、著作権法における私的利用ではなくなります。

フリーランスの方が、ネットからダウンロードした画像を顧客に提示する資料で使う場合も私的利用には該当しませんので、注意が必要です。

靍田氏

私的利用の場合であったとしても、「違法にアップロード」されている写真等の著作物を、違法と認識しながらダウンロード(いわゆる違法ダウンロード)すると、著作権侵害となります。 違法アップロードおよび違法ダウンロードについては、年々、法規制が厳しくなってきていますので、要注意です。

 

画像を勝手に使われ著作権を侵害されていた時の対処法

著作権を侵害されたときの対処法は、主に以下の2つです。

相手に抗議する

1つ目は、相手に抗議する方法です。

相手に対し、下記の3つの請求を行えます。

  • 差し止め請求(利用を停止してもらう)
  • 損害賠償請求、不当利得返還請求
  • 名誉回復等の措置(謝罪文を出すように求める)

例えば、写真が勝手に無断転載されたケースの場合は以下のような流れで抗議することが可能です。

まず、アカウント所持者やメディア管理者に対して、自身の著作権侵害を主張し、投稿等の削除を求めます。

アカウント所持者などの投稿者が明らかではない場合には、「発信者情報開示請求」を行って相手が誰であるかを特定する必要があります。

相手側に直接、警告・削除要請をすることに抵抗がある場合には、弁護士に依頼して対応してもらいましょう。

相手が抗議に応じなかったときは、以下に挙げる法的措置をとる場合が多いです。

裁判を起こす

抗議して話し合いだけで解決すれば良いですが、加害者が著作権侵害を認めないケースもあります。

もし話し合いで決着がつかなければ、次に挙げる法的な措置への移行を検討しましょう。

  • 民事調停(裁判所で話し合う)
  • 民事訴訟(裁判所)
  • 刑事告訴(刑事処分を求める)

著作権侵害は刑事罰の対象にもなりますので、悪質な侵害行為の場合には、民事訴訟だけでなく刑事告訴を行うことも可能です。

法的措置をとる際は、手続きが複雑なので弁護士に依頼するケースが多いです。

著作権侵害が疑われるときは、弁護士への相談を検討しましょう。

相談だけなら5,000〜10,000円が相場です。

靍田氏

写真の著作物については、トラブルを未然に防ぐ観点で、クレジット(コピーライト)や透かしを入れておくなどの対応が効果的です。 クレジットは、著作権が存在することを示す意思表示となり、無断利用されることを防止する効果や侵害者側の「知らなかった」というような言い逃れができなくなる効果があります。

 

まとめ

インターネットで公開されているものは自由に保存し、自由に利用して良いと考えている人は少なくありません。

しかし写真は著作権で保護されており、利用方法によっては著作権法に違反するおそれがあります。

気付かない内に著作権を侵害し、他人の利益や権利を踏みにじっていないか、今回の記事を参考に振り返ってみましょう。

業務等で使用する写真を探す場合には、著作権フリー素材を集めたサイトを見つけておくとよいでしょう。

フリー素材のサイトを見つける際には、信ぴょう性に問題のあるサイトもありますので、サイトの運営元が信頼できる会社かどうかもよく確認するようにしてください。

著作権に関して正しい知識を身に付けることで、第三者だけでなく自身の権利を守り、トラブル防止にもつながります。

画像出典元:Pexels、AC写真

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