商標権とは?取得のメリットや申請・登録の流れを分かりやすく解説

商標権とは?取得のメリットや申請・登録の流れを分かりやすく解説

記事更新日: 2024/10/03

執筆: 川崎かおり

商標権とは知的財産権の一つで、商品やサービスの商標を保護するための権利です。ただし、権利を取得するためには特許庁への出願が必要です。

手続きが完了するまでは、どのような独創的な商品やサービスも商標権を主張することはできません。

商品やサービスの価値を高め育てていくためにも、ぜひ早めに商標登録を済ませておきましょう。

本記事では商標権取得のメリットや取得までの流れ、査定後の手続きなどについて紹介します。

 

この記事に登場する専門家

 

弁理士
靍田 輝政

大手金属系素材メーカーにおいて7年間、開発、量産設計、量産移管、品質管理までの一連の製品開発業務に従事。
2018年、弁理士試験に合格し、法的知識と技術背景を組み合わせる能力を持つ専門家として特許事務所への道を選択。
2023年、知財の全体戦略や個々の出願戦術から関わりたいという思いから、発明を醸成する段階から関わるためにスタートアップへの専門的知財支援を目指し、One ip弁理士法人に参画。  詳しくはこちら(専門家紹介へ)

商標権は商標法に定められた「商標」を保護するための権利

商標権は、事業者が商品やサービスについて使用するマークやネーミングなどの「商標」に対して与えられる独占排他権です。

個人や企業は、商標権を取得することで、登録された商標を独占的に使用できるようになります。

なお、商標権の存続期間は登録から10年ですが、10年ごとに更新でき、半永久的に存続させることが可能です。

ただし商標権は、商品やサービスを作ったときに自動的に付与されるものではありません。企業や個人が特許庁に申請し、それが認められて得られるものです。

ここでは、商標権の「商標」とはどのようなものなのか、また、商標権が及ぶのはどの範囲なのかについて紹介します。

1. 商標とは

特許庁のHPでは「商標」を次の2点の要件を満たしているものと定義しています。

1. 事業者が使用するマーク

2. 事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)

事業において、自社製品と他社製品を区別することは非常に重要です。

企業マークやブランドロゴそのものがサービスや商品の信頼性を担保することもあり、「このブランドロゴがあるから購入する」という顧客もいるでしょう。

つまり企業が独占的に自社の商標を使うことは、企業全体の利益にも大きく関係するのです。

2. 商標法の保護対象

商標法が商標権によって真に保護しようとしている対象は、商標そのものというよりは商標の使用によって蓄積された「信用」といえます。

継続的な使用により信用が蓄積された商標には、他にはない優位性を持つようなメッセージを発信する機能(出所表示機能・品質保証機能・宣伝広告機能など)が生まれます。

商標を勝手に他人に使われてしまうと、せっかく築いたブランドイメージが崩れたり、売り上げを奪われたりするなどの損害が生じる恐れがあります。

また、他人の商標を盗用・模倣した粗悪な商品やサービスが出回ると、消費者の利益を害することにもなります。

事業者の利益を守るだけでなく需要者の利益を守るためにも、独占権による商標の保護が必要です。

商標法は、商標を使用する事業者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達へ寄与するとともに、需要者の利益の保護することを目的としています。

3. 商標登録を受けるための要件

商標登録を受けるための要件を簡単にまとめると、以下のようなものが挙げられます。

  • 自己の業務にかかわる商品・サービス(役務)について使用をする商標であること
  • 自己の商品・サービスと他人の商品・サービスとを区別し得る識別力を有していること
  • 公益性に反するものである、他人の登録商標または周知・著名商標等と紛らわしいものである、などの不登録事由に該当しないこと

前述のとおり商標法の保護対象は、商標に蓄積された「信用」であり、使用しない商標には信用が蓄積しないため、使用しない商標に独占排他権を付与して保護する価値がありません。

そのため登録要件として「使用をする商標であること」が規定されています。

ただし、出願時点において使用していなくても、将来において使用する意思(使用する予定)があれば登録を受けることが可能です。

商標登録出願も、原則として早い者勝ち(先願主義)であり、同じ商標であれば先に出願した者が商標登録を受けることができます。

ただし、他人の周知・著名商標と紛らわしい商標については、仮にその周知・著名商標が未登録であったとしても登録を受けられません。

周知・著名商標には信用が蓄積されており、登録の有無にかかわらず保護する価値があり、需要者の利益を損なう可能性があるためです。

4. 登録可能な商標の種類

平成26年からは、登録可能な商標の種類が拡充され、「色彩のみ」「音」「動き」「ホログラム」「位置」などについても新しいタイプの商標として登録が可能となりました。

現在、商標として登録できるものは、以下の通りです。

商標の種類 内容 具体例
文字商標 カタカナ、ひらがな、漢字、ローマ字、数字などの文字のみで形成されるもの Google、amazonなど
図形商標(ロゴ商標) 図形のみ、図形+文字の組み合わせ、文字を図案化したロゴ文字商標 WAONの犬マークなど
立体商標 3次元的形状をしたもの ソフトバンクの「ペッパー」など
結合商標 文字、図形、記号、立体形状などを結合して構成されるもの ハローキティ(図形×文字×文字)、不二家のペコちゃん(立体形状×文字)
色彩のみからなる
商標
単色または複数の色彩の組合せを商標としたもの セブン-イレブン・ジャパン、トンボなど
音商標 音のみの商標 「おーいお茶」など
ホログラム商標 すかしを含め、ホログラムで表現されているデザイン 三井住友カード株式会社のカードの模様など
動き商標 時間の経過とともに変化する図形や文字 エステー化学の「ひよこ」など
位置商標 文字や図形などのマークを付ける位置を商標としたもの エドウィンのデニムのタグなど

 

靍田氏

アメリカやオーストラリアなどでは、「匂い」の商標登録が認められています。

例えば、アメリカでは、久光製薬のサロンパスの香りが商標として登録されています。日本でも、ニーズや国際的な動向を踏まえて検討はされているため、将来、「匂い」「味」「触感」などが保護対象として認められる日がくるかもしれません。

5. 商標権の範囲

商標権の登録は、「ロゴやマーク」+「使用する商品・サービス」のセットで行われます。

つまり、商標権を持っている人は指定商品又は指定サービスについて登録商標を占有的に使用できるというわけです。

ただし、「商標法第26条」では「商標権の効力を一律に及ぼすと円滑な経済活動に支障を来すおそれがある場合は商標権の効力が及ばない」とされています。

一般に、以下のような場合には商標権が及びません。

1. 自己の氏名・名称等を普通に用いられる方法で表示する場合

2. 商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する場合

例えば自社名と同一の登録商標があった場合は、必ずしも商標権の侵害とはなりません。

商標権を認めると「社名を名乗れない」ことになってしまいます。このケースは経済活動に支障があるに該当するといわざるを得ないでしょう。

また普通名称や品質を表す文字等が登録された商標の場合、普通名称や品質を表すものとして使用する範囲なら第三者が使用しても商標権の侵害には当たらないとされています。

これは、「朝バナナ事件」を見ると分かりやすいかもしれません。朝バナナ事件とは、「ぶんか社」と「データハウス社」が「朝バナナ」という商標を巡って行った裁判です。

「朝バナナダイエット」などの書籍を出版し「朝バナナ」という言葉を商標登録していたぶんか社は、同じようなタイトルの書籍を出版したデータハウス社を「商標権の侵害に当たる」として訴えました。

これに対し裁判所は、以下のような理由から商標権の侵害には当たらないとしたのです。

  • 被告書籍は単に書籍の内容を示す題号の一部として「朝バナナ」と表示したに過ぎない
  • 自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されていると認めることはできない


つまり、たとえ商標登録された言葉でも「自社と他社の商品を区別するために使われたもの」ではなく「内容を表すために使われたもの」なら、商標権の侵害にはならないということです。

商標権を取得するメリット

商標権は、必ずしも取得しなければならないものではありません。にもかかわらず、多くの企業や個人が取得を試みるのはなぜなのでしょうか。

商標権を取得するとどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

1. 商標を独占的に使用できる

まず大きなメリットが、商標を独占的に使用できるという点です。

一般に、商標は「商品の顔」「もの言わぬセールスマン」などといわれます。

顧客の中には、いちいち商品名を覚えていない人も少なくありません。そのような人にとって一目で自社製品と分かるロゴやマークでアピールすることは非常に有意義であるといえます。

市場において同業他社との区別を明確にすることが、商品価値を高めたり利益を積み上げたりすることにつながるでしょう。

また、商標は「ライセンス」として貸し出すことも可能です。他者や他企業が商標を使用する際は、「ライセンス料」という収入も期待できます。

2. 権利を侵害する者を排除できる

商標権には指定商品・サービスについて類似したロゴやマークの使用を認めない権利も含まれています。

万が一権利を侵害された場合は、法に則って解決することが可能です。

一つの商品やサービスがヒットすると、二匹目のドジョウを狙って多くの類似品・サービスが発生します。

せっかく革新的なアイデアで生まれた商品やサービスも、存在感が薄くなってしまうかもしれません。

しかし、商標権を有していれば、侵害行為の差し止めや損害賠償等を請求できます。

法のバックアップがあることで正当性を主張でき、社会的にも「正当」と認められやすくなります。これは、企業にとって大きなメリットです。

靍田氏

商標権者は、他人による登録商標の使用を排除できるだけでなく、登録商標と似ている商標の使用も排除できます。

また、指定した商品・サービスに対する使用を排除できるだけでなく、指定した商品・サービスと似た商品・サービスへの使用も排除できます。つまり、他人の使用を排除できる範囲(禁止権)は、独占的に使用できる範囲(専用権)よりも広く設定されています。

3. 業務上の信用度が上がる

商標登録すれば、商標を育てて「ブランド化」できます。

商標そのものに信用が付けば、わざわざ宣伝をしなくてもロゴやマークのみで消費者に購買行動を促すことができるでしょう。

例えば、「iPad」と聞けば、Apple社のタブレットを思い浮かべる人がほとんどです。

商標を聞いただけで「革新的な製品だから欲しい」「価値が高い」と判断する人は少なくありません。特別な宣伝がなくても、欲しい人はおのずと集まってくるでしょう。

2012年、Apple社は中国で「iPad」という商標を使うため、商標権を持っていた台湾メーカーに対し6,000万ドルを支払いました。

これは日本円で約64億円という途方もない金額です。しかし、Apple社は「iPad」という世界統一の商標を使用した方が今後の利益は大きいと判断しました。

これは商標が単なる名前ではなく、守るべき企業の財産であるという好例です。

商標権を取得する流れ

出典:初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁

ここからは、実際に商標権を取得するにはどのような手続きが必要なのかを見ていきましょう。

創業当初はキャッシュに余裕がない場合も多く商標登録出願にコストを割けないと考える方もいらっしゃるかもしれません。

商標は、最初にケアをすべき知的財産権であるといえ、なるべく早いタイミングで出願することをおすすめします。

靍田氏

商標登録出願をしていなかったことで、他人に商標登録が取られてしまい、逆に訴えられたり、商標の権利を高額で売るという交渉を持ち込まれたりする実例が存在します。

商標登録出願にかかる費用よりもトラブル対応にかかる費用のほうがよっぽど高くつきます。創業時や新規事業の立ち上げ時であっても商標登録出願の予算を確保しておきましょう。

1. 商標をどのような様態で権利化するか決める

「どのような様態で」とは、例えば、文字商標の場合であれば、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字など、どの表記で出願するのか、標準文字で出願するのか、それとも文字のデザインも含めてロゴ文字商標として出願するのかなどを検討します。

図形と文字の両方を含む商標であれば、図形だけ、文字だけで出願するのか、図形と文字を組み合わせた結合商標で出願するのか、そのどちらも出願するのか等の検討も必要です。

どのような様態で出願すべきかについては、実際に使用する際の様態に合わせてケースバイケースで判断する必要があるため、判断に迷うようなケースでは弁理士等の専門家に相談するとよいでしょう。

2. 商標権の出願前に「先行商標調査」する

商標権出願前に「同じものが登録されていないか」を調べましょう。

調査方法は「商標公報類で調べる」「民間の有料データベースを利用する」などがありますが、特許庁では特許情報のプラットフォームである「J-PlatPat」の利用が推奨されています。

商標権は指定した商品・サービスでは「唯一無二」のものです。

他人が既に同一・類似の商標(マークが類似し、かつ、商品・役務が類似するもの)を登録している場合には、登録を受けることができないだけでなく、無断で使うと商標権の侵害となる可能性もあります。

商標権の申請はそれなりに手間やコストがかかります。無駄足を踏まないためにも、事前の調査は必須です。

調査する時は

1. 称呼(読み方)が類似する商標を探す

2. 同じ文字を含む商標を探す


などして探しましょう。

ただし、一つ二つ検索にかけたくらいでは、チェック漏れが生じる恐れがあります。

検索する時は検索項目やキーワードを変え、網羅的に行いましょう

靍田氏

先行商標調査においては、自分が使用・登録したい商標と、先行調査で見つかった商標とが類似するか否かの判断(類否判断といいます)が必要となりますが、この類否判断には専門的知見を必要とする場合が多いです。

最近では、AIを活用した類否判定を提供しているサービスもありますが、気軽に相談できる弁理士とつながっておくことをおすすめします。

3. 商標登録願を作成する

先行商標調査に問題がなければ、所定事項を記載した「商標登録願」を特許庁に提出します。出願書には商標登録を希望する商標及び指定商品などの記載が必要です。

商品・役務(サービス)の区分についても調べておこう

指定する商品・サービスの詳細を記入するとき、必要となるのが「区分」です。

これは、商標が利用される商品やサービスを45種類に分けたもの。

商標登録出願の際には、自社の事業に合わせて適切な区分を選ばねばなりません。

詳細は以下の特許庁のHPで確認できるので、ぜひチェックしてみてください。

類似商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕 | 経済産業省 特許庁

靍田氏

商標は商標権者であったとしても指定商品等と類似する商品等に対する登録商標の使用(禁止権の範囲での使用)が制限される場合があります。

そのため、出願前から今後の事業展開も踏まえて、権利化する商品・サービスの範囲をしっかり考えることが重要です。商標登録出願に慣れていない方は、出願前に、弁理士等の専門家に相談のうえで、指定商品・指定役務を選択することをおすすめします。

4. 商標登録願に記入する

出典:商標登録出願書類の書き方ガイド書面による出願手続について

商標権の申請には定められた様式があります。書類は「独立行政法人工業所有権情報・研修館」のHPで入手できるので、こちらからダウンロードしてください。

また、商標権登録願を作成する際の注意点としては以下のようなものがあります。

(1)用紙は、日本工業規格A列4版〈A4〉(横21㎝、縦29.7㎝)の白紙で、インキがにじまず、文字が透き通らないものを縦長に用い、用紙には不要な文字、記号、枠線、罫線等を記載しないでください。

(2)文字は、黒色で明瞭にかつ容易に消すことができないように書いてください。

出典:商標登録出願書類の書き方ガイド書面による出願手続について

このほか、商標ごとの詳細な注意点については上記のガイドに記されているので、確認しながら記入しましょう。

5. 特許印紙を購入する

商標権の申請には、出願手数料が必要です。

ただし現金ではなく、集配郵便局等で「特許印紙」を購入して添付します。

出願手数料は、1区分につき「12,000円」(3,400円+区分数×8,600円)です。

例えば2区分に渡って申請する際は「3,400+(8,600円×2区分)=20,600円」となるので、間違えないように計算してくださいね。

6. 特許庁に提出

商標権登録願の作成が終わったら、特許庁に提出しなければなりません。直接持参するか、郵送するかしましょう。

まず直接持参する場合は、特許庁1階に出願受付窓口に行きましょう。

・受付時間:平日:9~17時まで

(土曜日、日曜日、祝日、年末年始(12月29日から翌年の1月3日まで)は、閉庁)


また、郵送の場合は、以下の住所に送ってください。

・〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 特許庁長官 宛 


ただし、大切なものですから「送ったことが分かる」方法を選択する必要があります。

必ず書留・簡易書留郵便・特定記録郵便のいずれかを選んでください

さらに、書面で提出した場合、別途「電子化手数料」が必要となります。出願日から数週間後に払込用紙が郵送されるので、

電子化手数料:2,400円+(800円×書面のページ数)


を納付しましょう。

商標登録までには半年以上かかる

商標権の申請をした場合、何も問題がなかったとしても登録までには約1年かかるといわれます。商標申請から登録までの流れはどのようになっているのでしょうか。

1. 出願日から約1ヶ月後:方式審査

商標権の申請をしても、書類がすぐに審査されるわけではありません。まずは書類の書き方や提出方法に不備がないかチェックされます。これが「方式審査」とよばれるものです。

方式審査では、具体的に以下のことがチェックされます。

  • 記載項目に抜け漏れがないか
  • 正しく代理人に委任されているか
  • 出願料が正しく支払われているか


ここで不備があった場合は特許庁から不備を修正するようにという書面が届きます。

2. 出願日から5か月~9か月:実体審査

方式審査が終わるといよいよ本審査です。これは「実体審査」とよばれ、申請書の内容そのものが厳しくチェックされます。

ただし、前述の通り商標権の申請は増えており、実体審査に入るまでには半年以上かかることが多いようです。

審査は提出順に行われるので、ここは待つしかありません。

審査の着手時期の目安については以下の特許庁のHPで随時確認できるので、確認してみてはいかがでしょうか。

商標審査着手状況(審査未着手案件) | 経済産業省 特許庁

審査を通らなかった場合

商標権の申請内容によっては、商標登録を却下される場合もあります。審査を通らなかった場合、どのような流れになるのでしょうか。

1. 拒絶理由通知が送られてくる

実体検査で登録要件を満たしていないと判断されれば、申請は認められません。特許庁より「拒絶理由通知書」が送付されます。

商標登録出願において最も多い拒絶理由は、以下の2つです。

  • 識別力がないという拒絶理由(単なる品質の表示である、一般名称・慣用名称である、キャッチフレーズであるなど)
  • 同一または類似の商標が先に登録されている

その他にもよく見受けられる拒絶理由としては、「指定商品・指定役務の記載が不明確であるという拒絶理由」などがあります。

拒絶理由に対しては補正や意見書で反論しますが、ケースバイケースでさまざまな対応が求められるため、拒絶理由を解消できそうか弁理士に相談することをおすすめします。

2. 拒絶査定

意見書や手続補正書を提出しても拒絶理由が解消できない場合は、登録に必要な要件を満たしていないと判断されます。

登録申請は拒絶され、「拒絶査定謄本」が送られてくるでしょう。

こちらに納得できない場合は、審判で争うことが可能です。

しかし、審判を行っても審決が出るまでに2年、3年とかかるケースもあり、必ずしも商標登録できるとは限りません。

金銭面や手間を考えると、商標登録を諦めた方がよい場合もあります。

商標の登録査定を受け取った後の流れ

商標登録が認められると、特許庁より「登録査定」が送られてきます。

ただし、まだ手続きが完了したわけではありません。商標登録は「登録料」を納付して初めて権利として認められます。納付期限は30日以内と定められているため、早めに手続きを行いましょう。

登録料や納付方法などは、改定される可能性があるため、特許庁が出している正確な情報を確認してください。

納付書は以下の特許庁のHPからダウンロード可能です。

・商標の登録査定を受け取った方へ | 経済産業省 特許庁

また、納付金額を確実に知りたい場合は、以下の特許庁のHPを活用することをおすすめします。

手続料金計算システム | 経済産業省 特許庁

商標は更新が必要

ただし、注意したいのが「商標は更新が必要」という点です。

商標権の存続期間は設定登録の日から10年と定められています。

期日が近付いても、特許庁からお知らせが来ることはありません。

自社で日付を管理し、適切に更新してくださいね。

靍田氏

商標は取得して終わりではなく、活用してこそ知的財産権としての価値が生じるものです。言い換えれば、商標登録するからブランドが生まれるのではなく、ブランド戦略の中で商標を活用する(ブランド戦略において守るべき商標を登録する)ことが大切です。

戦略的にブランディングしたいのであれば、意匠権などの他の知的財産権の活用も含めてブランド戦略を提案してくれる弁理士等の専門家を見つけるとよいでしょう。

商標登録は登録後の管理が重要

商標登録については、登録されたから安心するのではなく、むしろ、登録後の管理が重要であるといえます。

登録商標は、以下の点に注意して管理しましょう。

  • 継続した使用が必要
  • 他人による使用を監視
  • 普通名称化への対策
  • 類似する商標登録出願を監視

継続した使用が必要

登録商標は、指定商品・指定役務に対する継続した使用が求められます。

商標法の保護対象は、商標自体というよりは、商標に蓄積された「信用」です。

登録商標であったとしても、使用されておらず信用が蓄積されない状況なのであれば、保護価値がないともいえます。

実際に、継続して3年以上、指定商品等に対して登録商標を使用していなければ、不使用取消審判により登録商標が取り消される場合があります。

他人による使用を監視する

自身の登録商標(又は類似商標)を、他人が無断で使用している場合には、警告状を送付するなど、迅速な対応が求められます。

例えば、自身の登録商標を、他人が粗悪な商品等に対して使用していれば、自身の商品等の評判の悪化を招く可能性があります。

他人による登録商標の使用を監視せず、商標権侵害を放任していると、登録商標に蓄積された信用を失いかねません。

普通名称化への対策

登録商標が不特定多数のものに使われて普通名称化してしまうと、事後的に登録商標が無効(権利の効力が無くなる)となってしまう場合もあります。

このような普通名称化は、登録商標の商品・サービスが他から傑出している場合、他人のフリーライドや辞書・書籍等における普通名称であるかのような記載を放任している場合などで起こりやすいといえます。

そのため、普通名称化を防ぐために、他人による権限のない使用や、他の事業者・マスメディア・辞書等で普通名称のような使用がされていないか監視し、普通名称のように使用しているケースを発見したら、使用を中止するように通知するなどの対応が必要です。

商標が自身の登録商標であることを広く知らしめるために、登録商標の使用時に「Rマーク」や「登録番号」等を付すなどして、自身の登録商標であること表示・告知するなどの対応を取ることも有効です。

類似する商標登録出願を監視

他人による登録商標等の監視をするとともに、自身の登録商標と類似する商標が出願されていないかどうかの監視も必要です。

類似する商標の出願が見つかった場合には、特許庁に対して情報提供を行ったり、異議申し立てを行ったりするなどの対策を検討しましょう。

類似商標の出願監視については、自動でモニタリングしてくれるウォッチングサービスが存在しており、これらのサービスを利用することで労力を削減できます。

商標権に関する紛争が発生したら?

商標権の登録について各フローを解説してきましたが、もし、商標権に関する紛争が発生した場合の備えはできていますでしょうか…?

ここでは、いざという時に役に立つ編集部おすすめのサービスをご紹介します。

初期費用ゼロで弁護士に依頼『ATEリスク補償』

画像出典元:「ATEリスク補償」公式HP

特徴

ATEリスク補償は、金銭などを請求する債権者側となる法人・個人事業主が、初期費用ゼロで弁護士に依頼するための費用立替・補償サービス。

トラブルの解決を弁護士に依頼する際に必要な着手金や実費などを立て替えてくれるので、気軽に弁護士に依頼できる(※弁護士の選定・依頼は自己対応)という利点があります。

商標登録後にトラブルが発生した場合、紛争発生後からでも弁護士費用の補償をしてくれるので安心です。

料金プラン

ATEリスク補償のリスク補償料は、立替・補償額に応じて決まります。

請求額が75万円以上、立替・補償希望額が20万円以上の事案が対象になっている点は注意しましょう。

 

商標権の登録はなるべく早めに行おう

商標権は、商品やサービスの顔ともいえる商標を保護する上で必要な権利です。

自社商品の価値を高め育てていくためにも、ぜひ取得しておきましょう。

手続きに必要なポイントはさまざまあるので、申請書は抜け漏れのないよう慎重に記載してくださいね。

近年は商標登録を希望する人が増えており、出願から登録までには約1年もかかります。

なるべく早めに準備を進め、スムーズな商標権獲得を目指しましょう。

画像出典元:Pixabay、Unsplash

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