【実態調査】決算公告はしなくてもいい?実際とルールを解説。

【実態調査】決算公告はしなくてもいい?実際とルールを解説。

記事更新日: 2018/11/09

執筆: 小石原誠

事業年度が終わり、決算が無事完了したら貸借対照表などの計算書類を開示する「決算公告」

法律でも定められている義務でもあるのですが、実際のところ決算公告をきちんと行っている企業は多くはないという話を聞いたことがある方も多いと思います。

特に、起業したばかりの起業家にとっては決算公告をどうすべきか迷っている方も多いでしょう。

そこで今回は、決算公告に関する実態とルールについて整理してご説明していきます。

決算公告とは

決算公告は法律で定められている義務

そもそも「公告」とは株式会社が持っている情報を広く一般に知らせるという作業であり、決算の情報以外にも、例えば会社の合併や組織変更、資本金の減少、あるいは会社の解散などの情報を公告する義務が課せられています。

これは会社法などの法律により定められているものであり、会社の規模などによって公告すべき内容は異なるものの、基本的にはすべての株式会社が決算に関する情報の公告、すなわち決算公告をする義務を負っています

株式会社に課せられている決算公告の内容

決算公告として公にしなければならない情報は会社の規模などにより具体的な内容が異なるのですが、ここでは会社の規模による違いを説明しておきます。

〇 会社法第2条第6項に定められる「大会社」の場合

  • 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること
  • 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること

以上のどちらかに該当する大会社の場合は、「貸借対照表」と「損益計算書」の双方の書類を公告する義務があります。

〇 大会社以外の場合

大会社ではない場合は、貸借対照表のみ公告の義務があります。

特に、起業したばかりの場合には大会社に該当することはほとんどないと思います。そういった大会社でない限りは貸借対照表だけを公告すればよい、と覚えておけば大丈夫です。

決算公告はいつまでに、どうやって行う?

決算公告すべき情報は理解できたとして、それでは具体的にいつまでに、どうやって情報を公にすれば良いのでしょうか?

まず決算公告を行うべき時期については、会社法第440条により

定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

とされているとおり、具体的な時期までは定められていません。

次に、公告の具体的な方法として、会社法第939条により3つの方法が指定されています。

1. 官報での公告

官報という、国が発行する広報誌に掲載してもらう方法です。官報を利用する場合には貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載でOKです。

料金は日刊新聞誌と比較して安いとされていますが、それでも通常は72,978円(税込)もの掲載料金が必要となります。

2. 日刊新聞紙での公告

新聞社に依頼して掲載してもらう方法です。

会社法第939条第1項第3号には「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙」と定められており、大手5新聞はもちろんのこと地方紙や業界新聞でもOKですが、スポーツ新聞や隔日・週刊などの新聞ではできません。

新聞での決算公告も官報と同様に要旨のみの掲載で良いのですが、官報と比べて料金は高くなります

サイズにもよるのですが、安い場合で10万~20万円ほど、場合によっては100万円を超えることもあります。

3. 電子公告

自社のホームページか帝国データバンクなどの公告サービスに掲載する方法です。

自社のホームページであれば当然費用はかかりませんし、広告サービスを利用する場合でも料金は数万円程度と、官報や日刊新聞紙と比較してコストが抑えられるというメリットがあります。

一方で、官報及び日刊新聞紙とは異なり、貸借対照表などを要旨ではなく全文公開しなければならない上に、5年間公告を掲載しなければならない義務があります。

なお、公告は会社の定款にあらかじめ記載した内容で行いますが、会社法第440条第3項に則り決算公告のみは定款に記載した方法ではなく電子公告でも行うことができるとされています。

このように決算広告には3つの方法がありますが、費用も抑えられ、全文公開をする必要がない官報での公告がもっとも一般的です。

決算公告をしないとどうなる?

ここまで、決算公告に関するルールと具体的な方法までをご説明してきました。決算公告については方法までは具体的に定められているものの、一方でその期日については「遅滞なく」となっており具体的に定められていないことがポイントです。

期日が定められていないとはいえ、もし決算公告を怠ったままだとどうなるのでしょうか。

会社法第976条で「100万円以下の過料」と定められている

結論からいいますと、決算を含めて公告を怠ったとき、あるいは不正の公告を行ったときには「100万円以下の過料に処する」と会社法第976条で定められています。

ただし、過料とは金銭罰(金銭を徴収される制裁)の一つではあるものの、罰金や科料とは異なり刑罰には該当しないものであり、過料を支払ったからといって前科がつくというわけでもありません。

決算公告に関する実態

決算公告を行わなければ過料が科される決まりとなっているわけですが、現在の企業の実態としてはどうなっているのでしょうか。

決算公告を行っていない企業も多く存在する

決算公告にはある程度の手間と費用とがかかること、貸借対照表などの会社運営に関する機微な情報を公開しなければならないこと、さらに決算公告を怠ったとしても課せられる過料は100万円以下と軽微でありかつ刑罰には該当しないことなどから、決算公告を行っていない企業も多く存在することが実情です。

名のある大手企業であってもこれは同様で、2004年には西武グループ傘下のプリンスホテル株式会社が、なんと約30年もの間決算公告を行っていなかったことが報道により明らかにされたという実例があります。

決算公告を行わないことへの処罰も完全には行われていない

日本にはおよそ百数十万の株式会社が存在するとされており、これら全ての株式会社について決算公告がきちんと行われていることを確認するのは、およそ容易な作業ではないことは想像がつきます。

決算公告を行わないことに対する「100万円以下の過料」という処罰もほとんど行われていないのが実情です。

ちなみに、一部インターネット上の情報では処罰の実例がないとされていますが、厳密にいえば処罰があっても公にされていないだけであり、実例がない=処罰が行われることは一切ない、ということではありません。

まとめ

今回は株式会社の決算公告に関するルールと実態についてご説明してきました。決算公告は法律に定められた株式会社の義務であり、怠った場合の処罰も定められています。

しかし、実際には決算公告を怠っているかどうかを行政機関が確認することは非現実的であり、かつ処罰が与えられたという実例もあまり多くはないことなどから、きちんと決算公告を行っていない企業も多く存在するのが実情です。

決算公告に関する法律自体、実態に即していないものであるため廃止すべき、という意見も存在します。

いずれにしろ、決算公告に関してはコストなどを鑑みて自社にとって適切な対応を選択するようにしましょう。

画像出典元:写真AC

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