残業の基礎知識|Excelでの計算方法や労働時間法制について解説

残業の基礎知識|Excelでの計算方法や労働時間法制について解説

記事更新日: 2024/05/22

執筆: 奥谷佳子

中小企業や従業員数が少数の場合、残業代を含む給与計算をExcelで行っている会社も多いのではないでしょうか?

残業代とは労働基準法で定められている割増賃金のことであり、単純な計算ミスでも未払いとなれば刑罰が科せられる可能性があります。

また、2019年4月に法整備された労働時間法制においても、長時間労働の削減を目的として、残業に関わるものが多く見直されました。

そこで今回は、残業代に関する基礎知識からエクセルでの計算方法、労働時間等を管理するおすすめの勤怠管理システムまでを紹介します。

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最低限知っておきたい残業代の基礎知識

残業代とは割増賃金

会社が労働者に支払わなければならない残業代とは、労働基準法で定められている割増賃金のことです。

割増賃金とは以下のような労働に対し、一定の割増率を乗じた賃金のことです。

  • 時間外労働(1日8時間)……25%以上
    (月60時間超……50%以上(※1))
    (月45時間を超え60時間まで……25%超(努力義務))
  • 深夜労働(午後10時~午前5時まで)……25%以上
  • 法定休日労働(週1日あるいは4週4休)……35%以上

ただし、会社の所定労働時間(※2)が1日7時間の場合、1日8時間の労働をしても法定内時間労働ですので1時間分の通常賃金のみで割増賃金は発生しません。

一方、時間外労働や休日労働が深夜に及んだ場合にはそれぞれの割増率が合算されます。

  • 時間外労働(25%)+深夜労働(25%)=50%以上
  • 休日労働(35%)+深夜労働(25%)=60%以上
  • 1ヶ月60時間を超える時間外労働(50%)+深夜労働(25%)=75%以上

※1:2023年度から中小企業でも時間外労働が月60時間を超えたときの割増率が50%に引上げられます。

※2:法定労働時間の範囲内で、会社が就業規則等で独自に決めることができる労働時間。

残業代(割増賃金)の計算方法

残業単価(1時間当たりの割増賃金額)の計算

残業代を計算するには、あらかじめ1時間当たりの割増賃金額を労働基準法に定める計算方法によって算出しなければいけません。

計算方法は以下のとおりです。

  給与の形態 計算方法
1 月給制 月額給与÷1ヶ月平均所定労働時間(※3)×割増率
2 日給制 日額給与÷1日所定労働時間×割増率
3 時給制 時間給×割増率
4 歩合給制 歩合給÷1ヶ月総労働時間(※4)×割増率
5 上記2つ以上で定められている場合 1~4のそれぞれに計算した額の合計額

※3:1ヶ月平均所定労働時間=年間労働日数×所定労働時間÷12ヵ月
※4:1ヶ月総労働時間=所定労働時間+時間外労働時間+休日出勤労働時間

割増賃金の合計額の端数処理

1時間あたりの割増賃金を計算する際に生じた円未満の端数処理は以下のとおりです。

  • そのままの数字にする(小数点第2位くらいまでが一般的)
  • 四捨五入
  • すべて1円に切り上げ

切り捨てる方法もありますが、常に労働者に不利になることから労基法の趣旨に沿わないものと考えます。

時間外労働時間の端数処理

残業時間は1日ごとに算出するのではなく、1ヶ月を合計して支給単価に満たない時間については、切上げ・切捨てすることになります。

【例】残業時間が39分の場合
  • 支給単価1時間の場合…切上げして1:00
  • 支給単価30分の場合…切捨てして0:30
  • 支給単価15分の場合…切上げして0:45

除外できる賃金の種類

計算の基礎から除外することができる賃金は以下のとおりです。

  • 家族手当(扶養家族数によって支給されるものに限る)
  • 通勤手当(通勤距離や定期券購入相当額によって支給されるものに限る)
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を越える期間ごとに支払われる賃金

上記7種類の手当は“割増賃金計算の基礎賃金”から控除してもよい賃金として限定されているものですので、通常の賃金であれば除外することはできませんので注意しましょう。

Excelでの計算方法

創業時や従業員数が少数の場合、残業代を含む給与計算をExcelで行っている会社も多いのではないでしょうか?

Excelの関数を使えば誰でも残業代も算出できますので、数式の一例を簡単に説明します。

 【例示】

1ヶ月の勤務時間は以下のとおり(休日:土曜・日曜)

時間外勤務の計算

1日8時間を超えた労働時間(時間外)の計算方法は、退社時間から出勤時間を引き、さらに休憩時間を引いた時間を計算する数式になります。

=IF(ISBLANK(D9),"",IF(E9-D9-F9>1/3,E9-D9-F9-1/3,""))

休日は計算が不要なので今回はISBLANKを使用し、出社時間(D9)が空白かどうかを判断させました。

深夜勤務の計算

退社時間が22:00を超えた分の勤務時間として数式を組みました。

(早朝勤務がある場合の数式ではありません)

=IF(E15>TIME(22,0,0),E15-TIME(22,0,0),"")

 

休日勤務の計算

休日勤務の計算では、土曜もしくは日曜C列が土・日あればG列の勤務時間をかえす、という数式です。

カレンダー通り休日であれば勤務時間が入力されることはないので0:00となります。

=IF(OR(C12="日",C12="土"),G12,"")

 

勤務時間は人によって違う

上記の数式はほんの一例にすぎません。

特にIF関数の理論は数式を組む人によっても違ってきます。また、会社の業務形態や就業形態によって勤務時間も人によって様々です。

業務に繁閑の差がある場合は、変形労働時間制を採用している会社も多いでしょう。

そこで、残業代の計算において最も重要になってくるのが割増賃金に乗じる従業員の労働時間の管理(勤怠管理)です。

労働時間の管理は使用者の責務

労働時間とは?

労働時間とは労働者が労働契約に基づいて使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。

労働基準法では、労働時間や休日・休暇などといった労働時間法制についても定めています。

特に、労働時間に関しては「使用者は労働時間を適正に把握する責務」があるとともに、賃金期間ごとに集計した労働日数や労働時間数を賃金台帳に記載しなければならないことが明確に規定されています(労働基準法108条)

注意!異なる事業場・事業主でも労働時間は通算される

昨今、働き方改革によって副業や兼業を行う労働者が増えてきました。

労働者の副業や兼業を会社が認めた場合、注意しなければならいのが2つ以上の異なる事業場および事業主であっても、労働者の労働時間は通算されるということです。

つまり、自社で8時間以内の勤務であっても勤務前に他社で勤務し、通算して8時間以上働いていたとすると、割増賃金が発生している可能があるのです。

厚生労働省:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

整備された労働時間法制の主な内容

他にも、働き方改革により労働時間法制は2019年4月1日に見直されたばかりですので、勤怠管理に関わってくる主な内容を列挙してみましょう。

  • 残業時間の上限規制
  • 年5日間の年次有給休暇の取得
  • フレックスタイム制の拡充
  • 労働時間の客観的な把握
  • 月60時間超の割増賃金率引上げ
  • 勤務間インターバル制度の導入促進(努力義務)

上記の中の「労働時間の客観的な把握」については、これまで管理監督者には時間外・休日労働について割増賃金を支払う必要がないということで、タイムカードを利用しなくても、例えば、出勤簿に押印するのみで問題ないという取扱いが許容されてきました。

しかし、現在は“管理職を含むすべての労働者”についてタイムカードやICカードのように客観的な方法で労働時間を把握することが原則とされますので、労働時間管理のあり方がより重要になってきています。

編集部厳選!おすすめの勤怠管理システム5選

働き方改革では、個々の事情にあわせた働き方を選択できる社会を目指しており、労働時間法制の見直しや雇用形態に関わらない公正な待遇の確保は、大企業だけでなく中小企業や小規模事業者においても義務化されてきています。

前述した“客観的な方法で労働時間を把握することが原則”となったことに加え、ワークスタイルの多様化が進めば、労働時間の管理(勤怠管理)はより煩雑な作業になっていくと考えられます。

そこで、ミスなく適正に労働時間の管理をするための「勤怠管理システム」を導入する企業が増えていますので、本記事でもおすすめのシステムをいくつかご紹介します。

 

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1. 月200円から導入可能!『ジョブカン勤怠管理』


画像出典元:「ジョブカン勤怠管理」公式HP

特徴

最大の魅力は200円/月で導入できる安さ。30人程度のベンチャーから1,000人以上の企業まで、全ての規模で利用可能です。主要な給与計算ソフトと連携できる便利なシステムです。

打刻方法

打刻方法は、PC/タブレット打刻・モバイルGPS打刻・ICカード打刻・指静脈打刻・LINE/SLACK打刻の5種類。

生体認証打刻が搭載されているので、不正打刻に悩んでいる企業におすすめです。

 

運用のしやすさ

マニュアルがかなり充実しているので、初めて勤怠管理システムを導入する企業でも問題ないでしょう。

UI マニュアル整備 問い合わせ窓口
HPに動画説明あり 電話(平日のみ)・メール・チャット

 

料金プラン

10人以下の企業でも月額費用2,000円が発生するので、注意しましょう。

10人以下の企業向けに無料プランが用意されていますが、機能がだいぶ制限されます。(無料お試しとは別物)

初期費用 月額費用/ユーザー 最低利用料金 無料お試し期間
0円 200円~ 2,000円 30日間



 

2. 追加料金なしで全機能利用できる!『jinjer勤怠』


画像出典元:「jinjer勤怠」公式HP

特徴

jinjer勤怠は、全機能が最初から搭載されているため、追加費用が発生しません。予算がたてやすいことは、大きな魅力です。

打刻方法

打刻方法は、PC/タブレット打刻・モバイルGPS打刻・ICカード打刻・Slack/Chatwork打刻の4種類。

Apple Watch・Google homeでも打刻できます。

運用のしやすさ

サポート体制が充実しています。

UI マニュアル整備 問い合わせ窓口
HPに動画説明あり 電話(平日のみ)・メール・チャット

 

料金プラン

人事管理・給与計算・経費精算・労務管理・雇用契約と組み合わせる場合は、追加費用が発生します。

初期費用 月額費用/ユーザー 最低利用料金 無料お試し期間
100,000円 300円〜 設定なし 30日間

 

 

 

3. 勤怠管理クラウド市場シェアNo.1『KING OF TIME』


画像出典元:「KING OF TIME」公式HP

特徴

KING OF TIMEは多くの外部サービスと連携可能。入退室管理システムと連携できる勤怠管理システムは少ないので、かなり貴重です。

打刻方法

PC/タブレット打刻・モバイルGPS打刻・ICカード打刻・指静脈打刻・指紋打刻・指ハイブリッド認証打刻・顔認証・カメレオンコード認証・入退室管理システム連動打刻などの16種類。

運用のしやすさ

オンラインセミナーを実施しているシステムは、ほとんどありません。KING OF TIMEの強みの1つです。

UI マニュアル整備 問い合わせ窓口
HPに動画説明あり
オンラインセミナー週2回開催
電話(平日のみ)・メール

 

料金プラン

登録した人数ではなく、その月に打刻利用があった人のみが課金対象となります。

初期費用 月額費用/ユーザー 最低利用料金 無料お試し期間
0円 300円〜 設定なし 30日間

 

 

 

4. スタッフ30人までは0円『スマレジ・タイムカード』

画像出典元:「スマレジ ・タイムカード」公式HP
 

特徴

スマレジ・タイムカードは、従業員30人まではタイムカードでの勤怠管理を無料で利用可能。

有料プランなら、勤怠管理の他に給与・賞与計算、日報管理・プロジェクト管理も利用できます。

ウェブ上で従業員の休暇管理を行えるため、管理コストを削減できます。申請後は管理画面やメールで通知されるため、承認や確認漏れの心配もありません。

60日間の無料お試しが用意されています。

打刻方法

PC/タブレット打刻・モバイルGPS打刻、アプリ打刻(打刻はiOS端末のみ)での打刻方法になります。

運用のしやすさ

動画説明がわかりやすいと評判です。

UI マニュアル整備 問い合わせ窓口
HPに画像付き説明あり メール・チャット・ヘルプサイト

 

料金プラン

初期費用 月額費用/ユーザー 最低利用料金 無料お試し期間
0円 0円(30名まで)〜 0円は30名まで 60日間

※31名以上は、月額 1,100円(税込)〜の費用が発生します。

 

5. 1ID月額110円で使えるクラウド型勤怠管理『勤怠Reco』

画像出典元:「勤怠Reco」操作画面
 
 

特徴

「勤怠Reco」はSBIグループが提供する低コストのクラウド勤怠管理システムです。自社で勤怠管理サーバを立ち上げた場合と比べても、他のクラウド勤怠管理システムと比べても、ひとり月額110円換算で導入できる点は費用対効果が高いです。難しい機能は詰め込まずに、基本的な操作で誰でも利用できる点に注視しており、全業種で利用できる勤怠管理システムです。

打刻方法

打刻方法は、PC/タブレット打刻・モバイル打刻の2種類。主要システムと比べると少ないです

 

注目機能

申請機能 アラート機能 シフト機能
要問合せ

 

運用のしやすさ

UI マニュアル整備 問い合わせ窓口
要問合せ 要問合せ

 

料金プラン

導入サポートを受ける場合には、別途費用が必要です。

初期費用 月額費用/ユーザー 無料お試し期間
0円 110円 (10ID単位でのお申し込み) 要問合せ

 

今回ご紹介したシステムを含む、各社の勤怠管理システムの料金、特徴、機能などをまとめた資料も無料でご確認頂けます

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まとめ

残業を正確に把握し、適切に是正していくことは、労働者を守るだけでなく、事業者として法的に義務付けられている責任です。

重い責任ではあるものの、Excelや自社に合った勤怠管理システムなど便利なツールをうまく活用すれば、それほど難しいことではないでしょう。

今回ご紹介した勤怠管理システムを含む各社の勤怠管理システムの料金、機能、比較など詳しい情報を含む資料を無料でご確認頂けますので、こちらもご活用ください。

画像出典元:o-dan

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