残業代、正しく計算できてます?残業の判断基準や時給と割増率を紹介

残業代、正しく計算できてます?残業の判断基準や時給と割増率を紹介

記事更新日: 2024/05/24

執筆: 編集部

残業代を計算するには残業時間のほか、「時給」「割増率」を知ることが必要です。

ただし会社の業務形態によっては、遅くまで働いても残業になるケース・ならないケースがあります。まずは残業とは何なのかを具体的に理解しましょう。

残業の定義と計算方法、さらには割増率や残業の判断が難しいケースを紹介します。


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残業代を計算するには

1. 残業代の計算式

通常勤務の残業代は、次のように計算されるのが一般的です。

残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

ただし割増率は休日、深夜などで異なります。また、自分は残業のつもりでも法律に照らすと「残業ではなかった」というケースもあるかもしれません。

残業代の計算をするときは「どこからが残業になるのか」をきちんと把握することが必要です。

2. 残業時間の考え方

残業時間は「時間単位」で記され、これを元に残業代が計算されます。このとき1時間に満たない端数があった場合は、労働基準法の定めるところによって処理されねばなりません。

基本的に、端数の時間については以下のように定められています。

  • 30分未満は切り捨て
  • 30分以上は切り上げ

例えば1カ月の残業代が6時間25分だった場合は6時間に、6時間35分だった場合は7時間になるということです。

ただし端数処理が認められているのは、「1カ月の残業時間」です。1日の残業時間を端数処理するのは労働基準法違反に該当します。

「残業」に該当するかどうかの判断基準

残業に該当するか否かを判断するとき、知っておきたいのが「法定労働時間」と「所定労働時間」です。それぞれどのようなものなのか詳しくみてみましょう。

1. 「法定労働時間」について確認しておこう

法定労働時間とは、労働基準法第32条に定められている労働時間の上限です。

第三十二条  

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

つまり国で定めた法律によれば「1日8時間、1週間40時間」以上に働いた場合は「法定時間外労働」、つまり「残業」とみなされます。

 

2. 所定労働時間とは

一方、「所定労働時間」とは会社が規定する労働時間です。

会社は法定労働時間の範囲内で始業時間、終業時間、休憩時間を自由に決めることが認められています。

とはいえあくまでこれは労働時間の目安のようなもの。法的効力のあるものではありません。

会社の定める所定労働時間を超過しただけならば、残業には該当しないケースも散見されます。

3. 所定時間外労働は残業に該当しないこともある

「会社の定める所定労働時間を超過しただけならば、残業には該当しない」ケースは次のような場合です。

週休二日・所定労働時間が1日7時間の会社で、週3日8時間勤務した

週休二日で所定労働時間が1日7時間の会社の場合、1週間の労働時間は35時間となります。

この会社で週3日1時間の超過勤務をしても、1週間の労働時間は「38時間」。国が定めた1週間「40時間」という法定労働時間内に収まっています。

つまりこれは「所定時間外労働」には該当しますが「法定時間外労働」には該当しません。法的には「残業ではない」ということになります。

一般的に終業時間を過ぎて働けば「残業」と認識する人は少なくありません。しかしそれが法定労働時間を超過していない場合、会社には残業代を支払う法的義務はありません。

所定労働時間を過ぎて働いた場合、残業代が支払われるかどうかは会社の就業規則次第です。自分の会社がどうなっているかわからない場合は就業規則を確認してみましょう。

3. 会社が「36協定」を結んでいるかも重要

時間外労働の上限については「36(さぶろく)協定」に示されています。

36協定とは労働基準法36条に基づく労使協定です。もしも36協定届を労働基準監督署に提出せずに時間外労働をさせている会社があれば、それは労働基準法違反です。

一般の会社ならほとんどのケースで企業代表と労働者代表がこの協定を結んでいますが、気になる場合は確認してみることをおすすめします。

具体的な残業代の計算方法

より詳しい残業代の計算方法は次のようになります。

「法定時間外労働」×「時給(1時間あたりの基礎賃金)」×「時間外労働の内容別の割増率」

「割増率」は状況によりさまざまですが、通常の時間外労働なら「時給の1.25倍」と法律により定められています。

これを元に残業代を計算してみましょう。

1. 時給を算出する

時給を算出するには、次の方法で行います。

(月給)÷(1カ月あたりの平均所定労働時間)=(時給:1時間あたりの基礎賃金)

ただし上記の方法では、祝日や土日の関係で計算が複雑になるケースも少なくありません。

このようなときは雇用契約に提示された1年間の労働日数から1年間の労働時間を算出しましょう。それを12カ月で割って月の所定労働時間を出し、時給を換算すると間違いがありません。

雇用契約上の1年間の労働日数×雇用契約上の1日の労働時間=1年の労働時間

1年間の労働時間÷12=1カ月の所定労働時間

月給÷1カ月の所定労働時間=時給(1時間あたりの基礎賃金)

これを使って1カ月の所定労働時間を160時間と算出したとき、月給30万円なら時給は次のとおりです。

30万円÷160時間=1,875円

また残業代を計算するときは、基本給から諸手当を引いて計算しなければなりません。家族手当・通勤手当・住宅手当、残業手当などはすべて除外しましょう。

2. 割増率は働き方によって変動する

残業代の割増率については、以下の表を確認してください。

労働時間 時間 割増率
時間外労働(法定時間内) 1日8時間、週40時間以内 0
時間外労働(法定時間外) 1日8時間、週40時間以内 1.25倍
法定休日労働 全日 1.35倍
時間外労働(深夜) 原則22:00~5:00 1.5倍

 

1. 休日労働の場合

法定休日に労働した場合は、すべて残業とみなされ、割増率は1.35倍と定められています。これ以外の休日に働いても通常勤務と同様の扱いなので注意しましょう。

2. 深夜残業

午後10時から翌5時までに残業した場合は「深夜残業」となります。「深夜労働」の割増率「0.25倍」と「時間外労働」の割増率「1.25倍」が適用されるため、割増率は「1.5倍」です。

3. 月60時間以上の法定時間外労働について

このほか、大企業の場合は月60時間以上残業した場合も割増率が変わるので注意が必要です。

2010年に労働基準法が改正され、月60時間を超える残業については1.5倍の割増率が定められました。

現在のところ一定規模以上の大企業にのみ適用されていますが、2023年4月からは中小企業でも同様の割増率が導入されることが決まっています。

3. 残業代の端数処理方法

労働基準法では、残業時間と同様に残業代の端数処理についても定められています。

残業代の総額に1円未満の端数が生じた場合

  • 50銭未満は切り捨て
  • 50銭以上は切り上げ

つまり残業代の総額が12,360円30銭になった場合は12,360円と計算してよいですが12,360円60銭になった場合は12361円とするということです。

残業代の支給において注意が必要なケース

法定時間を過ぎて働けば残業となりますが、例外となるケースもあります。残業代が支給されないケースとはどのようなものなのでしょうか。

1. 役職者・管理職は残業手当支給の対象外

一般に役職者や管理職は残業代が支給されません。

労働基準法では「管理監督者」に該当する者は経営者と一体的な立場にあるとされます。

そのため労働者の権利である労働時間・休憩・休日の規定が適用されないことになっているのです。役職者や管理職に適用されるのは「深夜手当」のみでしょう。

ただし近年は、残業代を支給したくないために名ばかりの管理職を置くケースも増えています。

勤務の実態が一般社員と変わらないのなら、管理職であっても残業代の支給対象と考えられます。 おかしいと思ったときは労働基準監督署に相談するのがベターです。

2. 固定残業(みなし残業)

会社が「固定残業」という雇用形態を導入している場合は、残業代の支払はありません。給与にはすでに「見込みの残業代」が入れられているはずです。

残業が当たり前のように多い会社に見られ、会社は「時間外労働時間」「残業代」を前提に給与を設定し月のプランを組んでいるのです。

 

3. フレックスタイム制

出勤や退勤の時間が個人の裁量に任されているのがフレックスタイム制です。必ず出勤しなければならない「コアタイム」はありますが、それ以外は自由に働けます。

この労働形態では日ごとの残業代計算が難しいため、残業代は

精算期間で会社が定める労働時間に対し、実働時間がどのくらいあったか

で計算します。

「遅くまで残って働いた」と思っても、会社が規定する労働時間内ならば残業代は支給されません。

 

4. 変形労働時間制

変形労働時間制は、繁忙期や閑散期などがあり、時期によって人手の要・不要が大きく異なる企業などで導入されます。

週、月、年単位で、社員に特定の週や日に法定労働時間(1日あたり8時間または1週間あたり40時間)を超えて労働させることが認められているのが特徴です。

もちろんこの場合でも、法定時間外労働はすべて残業代が支払われます。法定労働時間と実際の労働時間を比較して、超過している部分は残業代の対象です。

残業かどうか判断が難しいケース

残業といってもさまざまなケースがあり「これは残業になるのだろうか」と迷うことも多いのではないでしょうか。

残業かどうか判断が難しいケースについて考えてみましょう。

1. タイムカードを押した後の残業

タイムカードを押してしまった後でも、残業せざるを得ないケースはあるものです。この場合、実際に働いているわけですから残業に該当します。

タイムカードはあくまでも記録ですから、絶対的なものではありません。残業時間をきちんとメモし、残業代を請求しましょう。

2. 接待・会食で遅くなった

接待や会食が残業として認められるかどうかは、以下の3点を満たしているかどうかによります。接待や会食が「労働時間」に該当すると認められれば、残業と考えられます。

  • 義務性:上司の命令で断れないなど
  • 業務性:会社の取引先と会うなど
  • 指揮監督性:上司の監督下にある、開始と終了をメールや電話で上司に当日または後日報告したなど

上記に該当しない場合は残業として認められないかもしれません。

3. 自宅に持ち帰って仕事をした場合

自分の判断で仕事を持ち帰った場合は、残業と認められないケースがほとんどでしょう。

しかし上司から「明日までに仕上げてきて」などの指示があったのなら、残業に該当すると考えられます。

作業時間をきちんとメモし、後日請求しましょう。

まとめ

残業代は「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率」で算出されますが、ますは自身のケースが「残業に該当するか」を把握することが大切です。

法定労働時間と所定労働時間の違いを知り、残業に該当するか否か判断してください。

また残業に該当するケースでも割増率は状況により異なります。特に深夜にわたって残業した場合は「深夜手当」も付与されますから忘れずに計算しましょう。

働いていれば「残業を申請しにくい」と感じる場面もあるかもしれません。しかし残業代は労働者の権利でもあります。超過した労働時間に対しては相応の残業代を請求しましょう。

画像出典元:Unsplash、Pixabay

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