6月、12月は嬉しいボーナスシーズンですが、手取り額が意外に少なくて驚いた経験はありませんか?
実は、ボーナスからも税金などが天引きされるので、「手取りは額面の8割ほど」になるのが一般的といわれています。
せっかくのボーナス、何にいくら引かれるのかを把握して、スマートな使い道を考えたいですよね!
この記事では、ボーナスにかかる税金や社会保険料の種類と、手取り額の計算方法について詳しく解説していきます。
具体的な金額・年齢などを元にした計算シミュレーションも紹介していくのでぜひご参考ください。
このページの目次
結論からいうと、毎月の給与と同じく、ボーナスからも税金等が引かれます。
ボーナスから控除されるものは、収入がある人が皆支払っている「所得税」と、生活していく上での補償費などに使われる「社会保険料」の大きく2つです。
それぞれの金額・料率は、所得金額や、家族構成、居住地等によって異なります。
その控除総額は全体の2割~3割といわれ、手元に実際にもらえるのは約8割ほどになります。
給与は、その最低額や支払いの方法が、最低賃金法・労働基準法などの法律に定められています。
しかしながら、ボーナスは法律などによる取り決めの縛りはありません。
よって、ボーナスを「支払う・支払わない」「いつ支払う」「いくら支払う」かは、各企業の自由判断になります。
一般的には夏と冬の2回もらえるもの思い込んでいても、勤める会社によっては、ボーナスが3回ある、ボーナスが出ない、など個別のルールがある場合があるので、必ず事前に確認しましょう。
ボーナスの具体的な定義などについては、以下の記事もご参考ください。
ボーナスから税金や社会保険料などが引かれることはわかっても、具体的には色々種類がありすぎて、混乱してしまいますよね。
ここでは、ボーナスにかかる5つの税金等について「何のお金なのか」ざっくり見てみましょう。
①所得税
所得のある方は必ず納めることになる税金です。ボーナスにも所得税がかかります。
②健康保険料
病気やケガで治療を行う際の医療費を一部負担するための財源となる、医療保険料です。
③ 介護保険料
介護施設や介護サービス等を利用する際に給付される財源となる保険料です。40歳~64歳の方が対象となり、健康保険料にプラスされます。
④ 厚生年金保険料
老後もしくは障害・死亡の際に給付される財源となる保険料です。70歳未満の方が対象となります。
⑤ 雇用保険料
失業した時や、育児・介護のため休業をとった際に給付される財源となります。
それでは、ボーナスの手取り額は実際どのように計算すればよいのでしょうか。
手取り額は、ボーナス額から、さきほど紹介した「所得税」と「社会保険料」を引くとわかります。
手取り額=
ボーナス -(所得税+健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)
それぞれの税金・保険料の計算方法と料率をまとめると、下図のとおりです。
まずは、ざっくりと知りたいという方は、ボーナス額面×75%~80%で概算しましょう。
料率(%)に幅がある保険料などを「自分のケースではいくらなのか」もっと詳しく知りたい場合は、以下の計算方法をご覧ください。
所得税の計算には、保険料の合計額が必要になるので、まずは各保険料の計算からはじめます。
ボーナス × 健康保険料率 ÷2
① ボーナスに、加入している健康保険の保険料率をかけます。
② 健康保険料は会社が半分納めているので2で割ります。
保険料率は加入している組合や勤務地によって異なるため、加入組合のHPなどから確認しましょう。
40歳~64歳の方は、健康保険料にプラスして介護保険料がかかるため注意が必要です。
<例えば>
東京都の協会けんぽに加入している場合、
・介護保険料なしの方・・・保険料率 9.81%
・介護保険料ありの方・・・保険料率 11.45%
となります。
参考:全国健康保険協会(協会けんぽ) >令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」
ボーナス × 18.3% ÷2
① ボーナスに厚生年金保険料率の18.3%をかけます。
② 厚生年金保険料も会社が半分納めているので2で割ります。
厚生年金保険料率は、平成16年から段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月に引上げが終了し、現在は一律18.3%で固定されています。
ボーナス × 0.3%
① ボーナスに雇用保険料率の0.3%をかけます。
事業の種類、年度によって異なりますので、厚労省のHPを確認しましょう。
令和4年度の雇用保険料率は以下の通りです。
・一般の事業 0.3%
・農林水産・清酒製造の事業 0.4%
・建設の事業 0.4%
{ボーナス -(保険料合計)}×賞与に対する源泉徴収税率
最後に所得税の計算です。
① 上で計算した社会保険料の合計額をボーナスからひく
② ①に「賞与に対する源泉徴収税率」をかける
「賞与に対する源泉徴収税率」は、扶養人数とボーナス前月の給与(手取り額)によって決まります。
国税庁の源泉徴収税額表を確認しましょう。
<例えば>
・扶養親族2人
・ボーナス前月の手取り額(社会保険料控除後の給与)が35万円
の場合、
下記図より、扶養親族2人のタテ列から、手取り額31万2,000円~36万9,000円の箇所を確認
→6.126% であることがわかります。
なお、子ども手当の登場により、所得税の計算では、16歳未満の子どもは扶養親族には含みません。
料率の計算はなんとなくわかったけれど、一体いくら手元に残るのかが気になりますよね。
ここからは、具体的な金額や家族構成をあてはめて、手取り額をシミュレーションしてみましょう。
【1】まずは、3つの社会保険料から計算します。
①健康保険料:30万円×9.81%÷2=14,715円
②厚生年金保険料:30万円×18.3%÷2=27,450円
③雇用保険料:30万円×0.3%=900円
① + ② + ③ =43,065円
ということで
ボーナスにかかる社会保険料は43,065円です。
【2】次に、所得税の計算です。
{30万円-(43,065円)}×賞与に対する源泉徴収税率
国税庁の源泉徴収税額表を確認すると、扶養0人で手取り15万円の場合、税率は4.084%です。
これを当てはめると
{30万円-(43,065円)}×4.084%=10,493円
ボーナスにかかる所得税額は10,493円となります。
【3】最後に、ボーナスの手取り額を出します!
30万円-(保険料43,065円 + 所得税10,493円)=246,442円
ということで、
手取り額は、24万6,442円となります。
額面30万円のうち、5万3千円ほどが税金・保険料で引かれて、手取り率は、82.1%です。
結構、もっていかれるな...というイメージでしょうか。
次に、同じボーナス額40万円の方が、扶養家族あり・なしで手取りにどのくらいの差があるのかを比較してみます。
・東京都在住、30代、協会けんぽ加入、前月の社会保険料控除後の給与が20万円
扶養家族2人 | 扶養家族なし | ||
ボーナス額面 | 40万円 | 40万円 | |
社会保険料 | 健康保険料 | 1万9,620円 | 1万9,620円 |
厚生年金保険料 | 3万6,600円 | 3万6,600円 | |
雇用保険料 | 1,200円 | 1,200円 | |
所得税 | 6,995円 | 1万3,991円 | |
控除額計 | 6万4,415円 | 7万4,411円 | |
手取り額(ボーナス額面-控除額計) |
33万5,585円 | 32万8,589円 | |
手取り率 |
83.9% | 82.2% |
扶養家族2人の場合の手取りは33万5,585円、扶養家族なしの場合は32万8,589円です。
年齢の条件が同じ場合、扶養人数が変わっても社会保険料は変わりませんが、所得税に差が出ます。
そのため、前月給与もボーナスの額も同じであっても6,995円の差額が発生します。
今度は、同じ年齢・扶養親族数であっても、月給・ボーナス額が違った場合、税金等で引かれる金額がどのくらい違うのかを比較してみます。
・東京都在住、40代、協会けんぽ加入、扶養親族1人
Aさん 前月の手取り給与 15万円 |
Bさん 前月の手取り給与 30万円 |
||
ボーナス額面 | 30万円 | 60万円 | |
社会保険料 | 健康保険料 | 1万7,175円 | 3万4,350円 |
厚生年金保険料 | 2万7,450円 | 5万4,900円 | |
雇用保険料 | 900円 | 1,800円 | |
所得税 | 5,196円 | 3万1,178円 | |
控除額計 | 5万271円 | 12万2,228円 | |
手取り額(ボーナス額面-控除額計) |
24万9,279円 | 47万7,772円 | |
手取り率 |
83.1% | 79.6% |
Aさんの手取り額は、24万9,279円、Bさんの手取り額は、47万7,772円です。
もちろん元々の額面を多く稼いでいるBさんのほうがもらえるボーナス額が大きいです。
ですが、手取り率で表すと、Aさんは83.2%であるのに対し、Bさんは79.6%と8割を切っており、税金等の引かれる割合がかなり大きいことがわかります。
社会保険料はボーナス額が2倍であれば、単純に2倍払うことになるので順当といえば順当です。
しかし所得税は、前月の給与が変わると算出率が大幅に変わるため差が出やすくなり、Bさんは額にして約25,000円増、6倍の金額を払うことになるのです。
そのため、額面の年収でほぼ倍の差がついている2つの世帯であっても、税負担の差によって、手取りに残る分は所得の少ない側のほうが率が高いのです。
年配の方や親世代から、「昔はボーナスからとられる額が少なかったのに」といった話をきいたことがあるかもしれません。
実は、ボーナスから控除される社会保険料は、1995年~2003年までは厚生年金保険料のみでした。
しかも、特別保険料としてたった1%の徴収だったので、現在の18.3%とは大きな違いです。
その後、2004年からボーナスにも、給与と同じく、現在の4種類の社会保険料が全てかかるようになったので、昔は控除額が少なかったというのは事実なのです。
ボーナスは「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう」(健康保険法第三条, 6)とされています。
そのため、年4回以上支給される場合はボーナスではなく通常の給与扱いとなるので、保険料の計算が変わります。
産休育休を取得した場合は、会社の賞与規定にある要件を満たしているか確認しましょう。
ちなみに、産前産後休業中および育児休業中の被保険者(3歳まで)については、申請により毎月の社会保険料が免除されます。
この記事では、ボーナスにかかる税金と保険料の種類と計算方法について解説しました。
大切なボーナスの2割程度を徴収される税金等が、いったい何に使われるお金なのかを知ると納得感が少し増しますよね!
また、計算方法は、一度慣れてしまえば簡単なので、シミュレーションの例に沿って自分の金額をあてはめてみると、これまでわかりづらかった手取りの意味がわかりやすくなるかと思います。
今後もボーナスを受け取ったら、何にどれだけ納めているか理解した上で、上手に使い道を考えたいですね。
画像出典元:写真AC
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