個人事業主が法人成り(法人化)するメリットと必要な手続きを解説

個人事業主が法人成り(法人化)するメリットと必要な手続きを解説

記事更新日: 2024/11/19

執筆: 古村ゆあみ

個人で仕事を請け負っている人、「個人事業主」の中には法人化しようと検討している方もいることでしょう。

法人化=法人成りとはどのようなものか、メリットやデメリットについて、また法人成りした方が良いのはどのような人なのかをご紹介していきます。

法人成りとは

法人成りとは、個人の事業を拡大した際に、株式会社や合同会社などの法人に成ることです。

つまり、個人事業主ではなく会社の代表になると言うイメージを持ってもらえば良いでしょう。

もちろん、何もしないでできるわけではありません。しかるべき手続きを踏んで法人化していきます。

法人成りすることによるメリットもありますが、そればかりだけではなくデメリットも存在します。

法人成りのメリット

法人になると仕事を請け負う際に信用度が向上するなど、いくつかのメリットが挙げられます。

1. 信用を得ることができる

個人事業主として活躍していた方であれば経験があるかもしれませんが、取引先の中には法人に限定した取引を行なっている企業も少なくありません。

そのため、個人事業主では請負えなかった新しい仕事を始められる可能性も出てきます。どの企業であれ、信頼のおける会社に安心して任せたいのが心情でしょう。

また、法人であれば金融機関から融資が受けやすいといった点もメリットになります。

2. 所得税を抑えられる

個人の所得税は、所得が増えるにつれ上がってしまいます。所得税と住民税を合わせると、最大で55%もの税率が課せられる場合も。

一方で法人税は、実効税率は30%程度。

これらの観点から、所得が900万円以上ある場合は法人成りした方が節税ができる可能性が高いのです。

3. 消費税の免税期間が伸びる

すでに個人事業主として活動されている方は、事業を開始してから2期目までは基本的に消費税の納税が免除されることを知っていることでしょう。

法人成りを検討するような方であれば、一定以上の売上が出ているため、通常だと3期目・4期目からは消費税の免除を受けることができません。

しかし法人成りをすると、新たに法人として事業をスタートしたことになるので、再び消費税の免除が適用されるようになるのです。

消費税免税の条件、免税期間を最大化する方法については以下の記事で詳しく解説しています。

 

4. 経費計上できる品目が増える

自動車を社用車としたり、自宅を社宅としたりすることで経費計上できるようになります。また、上限なく生命保険料の控除を受けることもできるようになります。

法人成りのデメリット

法人成りにはメリットばかりではなく、デメリットも存在します。

法人になると様々な手続きや運営上の手間などが発生します。

1. 設立時の費用や手続き

個人事業主であれば開業届の提出だけで完了した手続きですが、法人化するとなると役場での認証や法務局での登記が必要になります。これらの手続きには手数料や税金が発生します。

自身で行うのが不可能な場合は専門家へ依頼することができますが、その際の報酬も必要になってきます。自分でするとなると、その分時間と手間がかかってしまいます。

そこで、専門家に依頼する費用や自分で手続きする手間で悩む方には、オンラインで手軽に手続きできるオンライン登記書類作成サービスを利用するのも良いでしょう。

たとえば「GVA法人登記」であれば、最短7分で書類を自動作成してくれます。

司法書士が監修しているサービスでありながら、書類作成費用も5,000円(税別)〜10,000円(税別)と安価で書類作成や申請が可能となる点も嬉しいポイントです(ストックオプションは30,000円[税別])。

通常は、関東地区での本店移転登記を司法書士に依頼すると平均47,000円発生するとされている(日本司法書士会連合会2018年1月調査)ので、かなりリーズナブルで手軽に利用できるサービスと言えます。

2. 会計などの事務作業

法人になると会計処理が煩雑になります。

個人事業では、税務申告や会計処理を自身で行っている人もいるかもしれませんが、法人化すると自分で行うのには限界があります。そのため、税理士をはじめとする専門家に委託する法人も多くあります。

事務処理も自身でまかないきれなくなってしまえば、事務を専門に行うスタッフを雇うことも視野に入れなくてはなりません。その分かかってしまう経費が法人化のデメリットと言えるでしょう。

3. 赤字でも税金を支払う

法人住民税は、収益が赤字の場合でも支払いの義務が生じます。

個人事業主であれば、所得税や住民税の免除がありますが、法人成りすると、最低でも法人住民税が年間7万円発生します。経営状況に関わらず支払う必要があるため、個人事業主と違いデメリットとなり得ます。

4. 社会保険への加入義務

個人事業主の場合、雇用人数が5名未満であれば社会保険加入は任意です。

一方で、法人の場合は社会保険への加入が義務になります。社会保険料は会社と従業員が半分ずつ払うことになるので、従業員を雇うほど費用負担が大きくなります。

また、法人成りした当事者とその家族が加入した際の保険料の負担は従業員の人数などの条件によって大きく変わってきますのでしっかりと確認しておきましょう。

会社設立時の社会保険加入義務については以下の記事で解説しています。個人事業主との違いも詳細に説明しているので、ぜひ参考にしてください。

 

法人成りした方が良い人

メリット・デメリットをよく見極めた上で、法人成りした方が良い人や、もう少しタイミングを見計らってからするべき人がいます。

一般的には、事業での利益が900万を超えたタイミングと言われています。法人になることで発生する費用もありますが、節税メリットの方が大きくなるのがこのラインです。

また法人成りのタイミングには、事業の売上も絡んできます。法人成りのベストタイミングの見極め方は以下の記事で解説しています。

 

法人成りの失敗事例

手続きを終え、晴れて法人成りを果たしても、その先をしっかりと見据えていないと事業が回らなくなります。ここではそんな失敗事例を紹介します。

代表がクリエイターのパターン

会社経営者

法人成りしたら、クリエイターを増やしてプロダクトを充実させていきたい!

 

結果

クリエイティブスタッフばかり雇い、手足として使っていたものの、それ以外の事務スタッフを雇わず代表自身で行っていました。また、代表もクリエイターであったため、事務手続きが後手に回っていました。

結果として、給与遅延、保険加入の遅れが頻発し、雇ったスタッフの信頼を失い多くの人が一斉に辞めてしまったのです。その後会社を立て直すのに余計な苦労を強いられました。

経営者になるという自覚を持とう

個人事業主は、何かしらのスキルを活かしたクリエイターであることが多いです。ライターやエンジニアなどが代表例と言えます。

自分が好きな仕事ばかりに集中し、会社として必要な事務手続きをおろそかにならないよう注意しましょう。

法人の代表になるということはスタッフの生活へ責任を持つことでもあります。必要な人材はきちんと確保し、先を見据えた経営をしましょう。

法人成りの手続き

実際に法人成りをする手続きの流れを解説します。新しく法人という箱を用意し、個人事業主として行ってきた事業を移し変えていく手続きです。

大きく分けて4ステップが必要になります。

1. 法人の設立

まず最初に事業を引き継ぐための法人を設立します。手続きは一般的な起業・会社設立と同様であり、定款作成や登記申請が必要となります。

法人形態は株式会社または合同会社を選べますが、法人成りの場合は合同会社の設立をおすすめします

理由を端的にのべると、株式会社に比べ運営費用が安く、同等の節税メリットを受けることができるからです。

合同会社設立のメリット・デメリットについては、以下の記事を参考にしてください。

 

2. 資産などの移行手続き

次に、設立した法人へ個人事業主としての資産を移行させましょう。移行の方法は売買契約・現物出資・賃貸借契約の3種類があります。

それぞれ手続きや適用される税法が異なるため、税理士と相談して最適な方法を選ぶのが望ましいです。また、資産は時価で算定する必要があり、その際にも税理士への相談が必要になるかと思います。

なお、税理士の探し方・選び方については以下の記事を参考にしてください。

 

3. 名義変更

個人事業主として契約しているものは、法人への名義変更が必要になります。代表的な例を以下に示します。

  • 銀行口座
  • 事務所や店舗、駐車場などの賃貸借契約
  • 電気・ガス・水道、ネット回線、リース契約など
  • 自動車
  • 車両保険
  • 借入金

法人用口座の作成

会社設立の手続きが終わったら、必ず法人口座を作成しましょう。法人口座は取引先とのお金のやり取りや、税金の支払い、融資や助成金を得る際に必要になります。また、法人口座の開設は個人口座とは異なり審査が厳しいため、できるだけ早く着手しましょう。

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4. 個人事業の廃業手続き

法人への事業・資産が引き継げたら、最後に個人事業主としての活動を終わらせましょう。

個人事業の開業届出・廃業等届出書などの書類を税務署に届け出る必要があります。加えて、都道府県および市区町村への事業廃止(廃止)等の申告書も忘れずに提出してください。

それぞれの書類は期限が異なりますので、事前に確認しておきましょう。また、廃業年度の確定申告は必要ですので忘れずに。

まとめ

今回は、法人成りについて解説してきました。法人格は信頼できる企業の証明となります。

メリットは十分にありますが、デメリットも熟知した上で、しっかりとしたシミュレーションのもと、タイミングを見計らって行うのが得策といえます。


実際に法人成りをすると決めた場合は、まず合同会社の設立です。以下の記事を参考に進めていきましょう。

画像出典:Burst

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