個人事業主から法人になることを「法人成り」といいます。
法人成りの最大のメリットは節税です。本記事では、法人成りのベストタイミングを利益と売上から見極める方法を解説します。
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法人成りのメリットはなんといっても節税効果です。
とはいえ、法人成りすれば必ず節税できるわけではありません。このあと解説するように、利益と売上から節税効果が出る適切なタイミングを見極める必要があります。
また節税の他にも法人成りのメリットはあります。
会社としての信用や信頼度が向上し、融資を受けやすくなったり、取引がスムーズにいったりする利点が存在します。
個人事業主ではできなかった仕事も可能になり、さらに事業を発展できると考えられます。そのため、これから事業を拡大していこうと考えている場合は法人成りした方が動きやすくなるといえます。
一方の法人成りのデメリットはランニングコストの増加です。
たとえ赤字であっても、法人には法人住民税が必ず課されます。一人会社のような小さい会社でも、法人住民税は最低7万円がかかります。
この他にも社会保険料や、税理士を雇った場合は税理士顧問料が必要となってきます。
もちろん、これに加え、会社設立の際にはそれに付随する手数料が少なくとも6万円かかります。
法人成りのメリットがデメリットを上回るときが、法人成りのベストタイミングです。
つまり、年間の節税効果が会社運営にかかるコストを上回る時こそ、法人成りを行うべきタイミングだといえます。
税額は利益と売上で決まるので、法人成りのベストタイミングは必然的に利益と売上で決まることになります。
法人の実効税率は、法人税など諸々の税負担を合わせて30%弱であり、利益が増えてもあまり変化しません。
一方で個人に対する所得税は、累進課税制度がとられており、所得が増えれば増えるほど税率が上がります。所得税は最大で45%にもなり、さらにそれに住民税10%が追加されることとなります。
下の表は課税所得と、それに対する税率をまとめたものです。
※ 税の一部は控除されることには留意する必要があります。
よって、この個人としての税負担が、法人に対する税率30%弱を超えるタイミングが法人成りのタイミングといえるわけです。
このタイミングは、一般的に個人事業の利益が800万円を超えたあたりだといわれています。
ただし、所得控除や事業以外の所得の有無などの条件によって変わってくるので、厳密にはかるには税理士などの専門家に相談する必要があります。
売上と法人成りのタイミングが絡んでくるのは、売上が消費税課税の基準となっているからです。
所得税の課税には、2年前の売上が影響してきます。2年前の売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。
例えば、個人で仕事を始めた1年目の売上が300万、2年目が700万、3年目が1000万であれば、5年目から消費税の納税義務が課せられます。
ここで、5年目に法人成りをすれば、個人と法人は別とみなされるので、一度その売上がリセットされます。
新たに会社としての2年前の売上実績ができる会社設立3年目まで、消費税の納税を遅らせることができるのです。
そのため、2年前の売上が1,000万円を超えている方は、法人成りをするタイミングが来ているということができます。
ただし、資本金1,000万円以上で会社を設立した場合、売上にかかわらず納税義務が生じるので、資本金の設定には注意が必要です。
基本的には、これまで解説したタイミングで法人成りするのが適切です。しかし、法人成りの結果、売上自体を減らしてしまっては元も子もありません。
売上が多くなる繁忙期に法人成りの手続きを行うと、本業に専念できず、売上を落とす恐れがあります。
そのようなことが起こらないよう、前年の仕事量を参考にしながら繁忙期を避けるようにしましょう。
法人成りにおける失敗は、そのタイミングを逃すことです。
タイミングを逃してしまったために、税金の支払いが多くなってしまい損失になる可能性があります。
法人成りという言葉を知っていたとしても、いつ法人成りすれば良いのかわからないといった理由で、先延ばししてしまう個人事業主も少なくありません。
そのうち、事業が軌道に乗り、売上も上昇していくうちに、忙しくなりタイミングを見計らう余裕もなくなり、気がつけば払わなくてすんだ税金を払っているということがめずらしくありません。
また税金を考慮して仕事をセーブするというのも、もったいないことです。
それらを回避するためには、自分の中で「タイミングはここ!」と決めておくのが良いでしょう。この利益・売上にいったら法人成りする、という決めごとをしてしまうのが有効です。
法人成りを決めたあとにぶつかる問題は、どの会社形態で会社設立するかです。
現在設立可能な会社形態は4種類ありますが、法人成りでおすすめの形態は合同会社です。
合同会社は株式会社の次に人気のある会社形態です。
株式会社には、株式の取引によって柔軟に資金調達を行えるというメリットがありますが、一方で会社運営にかかるコストは合同会社より高いです。
設立費用だけでも、合同会社は最低6万円で可能なのに対して、株式会社は少なくとも20万円はかかります。
外部から資金調達をして今後事業を大きくしていきたいという方以外は、合同会社にするのが合理的な判断だといえます。
なお、以下の記事では、合同会社と株式会社のメリット・デメリットを比較しています。法人成りを決めた方はぜひ参考にしてください。
今回は法人成りするタイミングについて解説してきました。法人化することで、節税という大きなメリットが得られます。
利益と売上からベストタイミングを見極め、損のない法人成りを行いましょう。
合同会社の設立を決めた方は、以下の記事を参考に、早速手続きを進めていきましょう。
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