個人事業主、法人どちらの場合でも「免税事業者」として認められるための条件を満たすことで、消費税納税が免除されます。
しかし国税庁のサイトでの説明は少し分かりづらく、またルールが改定されることもあるので、多くの人にとって正しく理解するのが簡単ではありません。
また古い記事だと、ルール変更前の情報が載っている場合もあるので要注意です。
本記事では、2019年の最新の情報にもとづき、
をわかりやすく解説していきます。
このページの目次
免税事業者とは、消費税の納税が免除される事業者(個人事業主・法人)のことです。
事業者が商品をサービスを販売するとき、その価格には消費税が上乗せされていますよね。事業者は、購入者から支払われた消費税を毎年決まった時期にまとめて納税する義務を負っています。
しかし納税する消費税の計算は大変です。そこで小規模な事業者については納税が免除されることになっています。
これが「免税事業者」であるというわけです。
免税事業者というのは、小規模な事業者のための優遇措置です。もうかっている企業が免税事業者になると、不平等が生じることになります。
そこで、免税事業者として認められるための条件が細かく定められています。
国税庁のホームページから確認することができますが、分かりづらいです。ここでは現在何期目かで場合を分けて、もう少し分かりやすく説明していきます。
なお、個人事業主と法人で条件は変わりません。
唯一の違いは、法人では事業年度を自由に決めることができるのに対して、個人事業主は1月1日から12月31日までが会計年度と決まっていることです。
1期目の場合、免税事業者になるための条件はシンプルです。
1期目であれば、ほとんどの事業者が免税事業者です。
例外は一つ、事業年度開始の日における資本金が1,000万円以上である場合です。この場合、消費税は免除されません。
あらためて1期目になるための免税事業者の条件をまとめると以下のようになります。
基本的に免税事業者
例外:資本金が1,000万円以上
2期目も消費税が免税されるための条件は、1期目とほぼ同じです。
2期目開始時点で、資本金が1,000万円を超えていなかったら免税事業者です。
ただし平成23年(2011年)の税制改正により、2期目の場合、もう一つ例外ができました。
2期目の場合、もう一つの例外として、前事業年度の開始〜6ヶ月の期間の売上・給与等支払額がともに1,000万円を超えた場合は課税事業者となってしまいます。
なお、前事業年度の開始〜6ヶ月の期間というのは以下を指します。
個人事業主:前年の1月1日から6月30日まで
法人:前年度の決算開始日から6ヶ月間
今は2期目の話をしているので、1期目の最初の6ヶ月間ということですね。
この期間の売上と給与等支払額がともに1,000万円を超えた場合、2期目から消費税が課税されることになります。
両方とも超えた場合、という点に注意です。
たとえば、売上だけが1,000万円を超えた場合はセーフです。免税事業者事業者ということになります。
なお給与等支払額とは、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当せず、未払額は含まれません。
よって、2期目に免税事業者になるための条件をまとめると、以下のようになります。
基本的に免税事業者
例外1:資本金が1,000万円以上
例外2:前事業年度の開始〜6ヶ月の期間の売上・給与等支払額がともに1,000万円を超える
3期目以降の場合、免税事業者かどうかは2期前の売上を基準に決めます。例えば3期目であれば、1期目の売上が基準になります。
2期前の売上が1,000万円以下の場合、納税の義務が免除されます。
2期前の売上が1,000万円を超える場合はもれなく課税事業者です。ただし、2期前の売上が1,000万円以下でも、課税事業者になる場合があります。
それは、前事業年度の開始〜6ヶ月の期間の売上・給与等支払額がともに1,000万円を超えた場合です。
そうです、これは2期目の場合と同じ条件です。
ちなみに3期目以降は、資本金は免税事業者かどうかの判断の基準になりません。
よって、3期目以降の条件は以下になります。
2期前の売上が1,000万円以下なら免税事業者
例外:前事業年度の開始〜6ヶ月の期間の売上・給与等支払額がともに1,000万円を超える
ここまで、消費税の免税を受けるための条件を解説してきました。ここからは、これらのルールを活用して、できるだけ長い期間「免税事業者」でいるための方法を解説します。
まずは個人事業主についてですが、個人事業主は決算期を自由に決めることもできないため、免税期間を伸ばす方法は多くないのです。
しかし、そんな個人事業主における免税期間を最大化する最強の方法が「法人成り」です。
法人成りとは、個人事業主が会社を設立し、法人としての活動を始めることです。
同じ個人が事業をしている場合でも、個人と法人は税制上別の人格として認識されるので、法人成りすることで、また1期目からスタートということになります。
よって、個人事業主としての免税期間が終わるぎりぎりのタイミングで法人成りをすることで、また新たに1期目の免税事業主として活動できるのです。
これをうまくやれば、1~3年も免税期間を伸ばすことができるので大変おすすめです。
ただし、法人成りは会社を設立することなので、設立や維持費用、手間がかかります。本当に必要なコストに見合うだけのメリットが得られるかは健闘する必要があります。
資本金が1,000万円以上になると、1期目から消費税を課税されてしまいます。特別な事情がない限り、会社設立時の資本金は1,000万円未満にしましょう。
しかし、たとえ資本金が1,000万円を超えてしまいそうな場合でも、やりようはあります。
注目すべき点は「資本金」が条件となっていることです。この資本金とは、資本準備金を含まない額です。
ここではあまり詳しくは解説しませんが、例えば1,000万円を出資したい場合でも、すべてを資本金とせず、半分の500万円を資本金、残り半分の500万円を資本準備金とすることで、消費税の課税義務を回避することができるのです。
詳しくは以下の記事で解説しています。「資本準備金」は会社経営にあたって知っておいて損はない言葉なので、知らなかった方はぜひ参考にしていただきたいです。
また国税庁のホームページを熟読された方は、「資本金」ではなく
資本金の額又は出資の金額が、1,000万以上である場合
と書かれていることが気になったかもしれません。
しかし、ここで書かれている法人税法上の「資本金の額又は出資の金額」とは、結局は資本金の額のことを意味しています。
だから、資本金を1,000万円未満にすることだけを意識していれば大丈夫です。
会社設立時に決める決算期を適切に設定することで、免税期間を最大化できます。
結論からいってしまえば、できるだけ免税期間を伸ばすためには、1期目を長くとるのが有効です。
1期目が丸々12ヶ月になるように決算期を設定することで、免税期間を最大化できます。
もしかすると「1期目の売上が1,000万円にいかないように決算期を短めに設定することで、3期目も免税事業者になることができる」という話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、それは間違いです。
国税庁のホームページでは、基準とする期が1年に満たない場合は、1年相当に換算した売上金額により判定するとしています。
よって、1期目が短くなるように決算期を設定しても意味はないのです。
免税期間を長くするためには、1期目が丸々12ヶ月になるように決算期を設定するのがベストです。
なお、会社設立時に決算期を決める際には、他にも頭に入れておくべきことがあります。それについては以下の記事で解説していますので、決算期を決めようとしている方は参考にしてください。
国税庁のホームページが分かりづらいこともあるのですが、前事業年度の開始〜6ヶ月の期間の売上が1,000万円を超えただけで消費税の課税対象だと勘違いしてしまう方が非常に多いです。
給与等支払額が1,000万円以下の場合は免税事業者になるので、売上が超えていても慌てず、給与等支払額を計算することが重要です。
「免税事業者」になって消費税の免除期間を最大化する方法を解説してきました。
消費税免税の効果は大きなものです。免税分、業績を向上させることの大変さを考えると、免税のために使う労力はささやかなものです。
賢い経営をするためにも、税金という支出に敏感になりましょう。
画像出典元:Pexels
ボーナスにかかる税金とは?手取り額の計算方法や保険料の種類も解説!
【図解】インボイス制度とは?何をすべきか?をわかりやすく解説!
脱税注意!パパ活やギャラ飲みにかかる税金とは?節税対策や確定申告の仕方も解説
芸能人が個人事務所を作る事情とは?独立の成功例・失敗例も解説
タックスヘイブンとは?対象の国や法人税軽減のやり方をわかりやすく解説
【保存版】起業後かかる税金と納付時期|個人事業主と法人それぞれ解説
ケイマン諸島と投資信託の関係とは?ファンドが多い3つの理由
特定支出控除|会社員のスーツも経費申告できるのか?詳しく解説!
脱税とは?申告漏れとの違いや話題のイートイン脱税についても解説!
連結納税|制度導入のメリット・デメリットを徹底解説!