TOP > 経営 > 保険 > 一人社長で会社を設立!その時「社会保険加入」は必須?
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いよいよ会社を設立!とはいえ設立当初は、設立者本人=社長一人のみで事業を回すというケースも少なくありません。
そこで多くの方が疑問として挙げているのが、「一人社長でも社会保険は加入すべきか」という問題。
今回はこの疑問点について、詳しく解説します。
このページの目次
日本では、すべての国民が「健康保険」に加入することが義務付けられています。
そして健康保険は「国民健康保険」と「社会保険の健康保険」と、大きく2つの種類に分けることができるのです。
このように、会社に勤めていると、社会保険というのはもれなくついてくる、といった印象を持つ方も多いのではないでしょうか?しかし、従業員ではなく、役員という立場ならばどうなるのか、気になるところですよね。
結論、役員(社長を含む)であっても、「会社に使われている立場として、報酬を受け取って入れば、社会保険の加入対象になり得る」と言えます。つまり、会社との「関係性」が社会保険の対象有無を左右するのです。
ただし、所属関係にあれば、必ず社会保険の適用対象になるわけではありません。
例えばあなたの名刺上の肩書が、「●会社の社長 Aさん」だとしましょう。この際、名刺上の肩書だけ社長で、実際には役員報酬を受け取っていない、もしくは役員報酬額が極端に低い場合には、社会保険を加入しなくても良いのです。
しかしながら、一定額の報酬を受け取っている限りは、会社の下で働き報酬を得ていることになるので、社会保険の適用対象となります。
つまり、「一人社長でも社会保険の加入はマストなのか」という議題の答えは、この通り。
加入しなくてもよい例外ケースはあるものの、役員報酬が一定額ある限り、社長のみの会社であっても加入の義務がある。
これを踏まえると、一人社長でスタートする会社であっても、設立当初から社会保険加入の必要性について、真剣に考える必要性がありそうですね。
賃金報酬がある場合、社会保険適用
事業をする際、個人事業として展開するのか、会社(法人)にするのか、大きくわけて2つの選択肢があります。では、個人事業と会社、いずれも一人で事業を進める場合、社会保険の観点で考えるとどのような違いがあるのでしょうか?
社会保険とは、健康保険 / 厚生年金保険 / 雇用保険 / 労災保険の4種類。
これらそれぞれの加入義務と特徴について、個人事業主・一人社長会社(法人)を比較してみましょう。
※下記の表は、いずれも従業員雇用はず、事業主一人のみで展開している場合を想定
個人事業主 | 一人社長会社 | |
社会健康保険 |
加入義務:なし ただし国民健康保険に加入する必要あり |
加入義務:原則あり 役員報酬が無い、もしくはその額が少ない場合に限って加入義務がない |
厚生年金保険 |
加入義務:なし ただし国民年金保険に加入する必要あり(満20~60歳) |
加入義務:原則あり 役員報酬が無い、もしくはその額が少ない場合に限って加入義務がない |
雇用保険 |
加入義務:なし |
加入義務:なし 社長は「労働者」ではなく、経営者なので加入できない |
労災保険 | 加入義務:なし |
加入義務:なし 社長は「労働者」ではなく、経営者なので加入できない |
※個人事業主一人で社会保険に加入する場合には、事業ジャンルに応じた協会に加入することで社会保険に加入できる場合もある
このように社会保険の中でも、会社の一人社長に加入義務があるのは、健康保険と厚生年金保険のみとなります。
一方、個人事業であっても、国民健康保険と国民年金保険の加入は義務となるので、会社の一人社長となってもそれが社会保険に切り替わるというだけの違いと言えます。つまり、一人社長の時には、社会保険についてあまり身構える必要はないということです。
ただし、事業が拡大して従業員を雇用した際には、従業員の社会保険料の半額を、会社で負担することとなります。
この際、社会保険料を払えず、会社(法人)から個人事業に転向する会社も少なくありません。そのため、従業員を雇用する際には、社会保険料を含む支出を十分に計算する必要があると言えますね。
さて、話を社会保険の内容に戻しましょう。
健康保険は、国民健康保険と社会保険ともに、年間の収入に応じて、保険料が確定します。この点で考えると、健康保険においては、社会保険にしたからと言って大きな変化はないです。
一方、国民年金保険は保険料が定額なのに対して、厚生年金保険は年間の収入に応じて保険料が確定することに。そう、収入額が多ければ多いほど保険料が高くなるため、考え方によっては「損」にも思えます。
【保険料の決め方が違う!】
では、そもそものところ、「厚生年金保険」とは一体どのような制度なのか。国民年金保険に比べて損をしてしまうのでしょうか。
年金保険は、国民年金保険・厚生年金保険共に「国民の老後所得を補償する制度」であることに違いはありません。では、それぞれの違いとは何なのか。
簡単にまとめてしまうと、「老後に補償される所得額が異なる」と言えます。
つまり、収入に応じて保険料が確定する厚生年金保険制度では、収入が多ければそれだけ保険料は多くなるものの、老後に給付される金額も多くなるのです。
そう考えると、国民年金保険に比べて厚生年金保険は、決して損ではありません。会社(法人)として、わざわざ社会保険の加入義務を違反してまで、拒否する制度ではないのです。
社会保険の加入メリットは、厚生年金保険によって老後支給される金額が多くなるだけではありません。他にも得するメリット、そして事業として成功するメリットが隠れています。
その中から会社と社長個人の豊かさを左右する、大きなメリットを3つご紹介しましょう。
社長である本人だけではなく、生活を共にする家族(配偶者・子供)がいる場合でも、国民健康保険や国民年金保険では「扶養」という概念がありません。
そのため、家族が3人ならば、国民健康保険料も3倍。国民年金保険においては、配偶者と本人の2人分、さらに子供が満20歳以上であれば、3人分となります。
一方、社会保険の健康保険と厚生年金保険では、配偶者や子供の年収が130万円未満の場合、「扶養」という概念が適用されます。
これによって健康保険では、社会保険料を払う本人のみの金額で、家族の分も保険に加入できるということになります。
次に年金の場合、例えば夫が厚生年金に加入している場合、妻(年収130万円未満)が夫の扶養に入ることで、国民年金保険の第3号被保険者となるため、保険料は0円となるのです。
こうして考えると、家族がいる方は、断然「社会保険がお得」と言えますね。
会社経営者は、雇用保険・労災保険に加入できないことから、万が一ケガや病気をした際、収入が不安定になると心配している方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その認識、間違っています。
社会保険では、健康保険に加入している人であれば誰でも、「傷病手当金」という所得補償金が支給されます。
一人社長がケガや病気をして休業すれば、稼働ができない期間、企業として得る利益はなくなりますよね。その際、これまでの利益から社長の役員報酬を捻出することもできますが、これでは長期的な休業の場合、会社の資金がいつか底を尽きてしまいます。
この場合、休業する期間の役員報酬を受け取らない、もしくは減額することで、健康保険に付随する「傷病手当金」の支給対象となるのです。
これで安心して、ケガや病気の療養に集中できますね。
ただし、医師の判断により、入院や労務不可と判断された場合に給付される制度のため、単に体調が悪いから休むという自己判断では適用されないことをお忘れなく。
「会社の信頼と信用」という観点は、社会保険加入のメリットであり、未加入のデメリットでもあります。
というのも、そもそも社会保険は、たとえ社長一人であっても加入義務があるため、加入していないというのは、「法に違反している」という認識を持たれる可能性があるからです。
もちろん実際には、役員報酬が著しく少ない、もしくは受け取っていないので社会保険に加入していないというケースもあります。しかし、この場合でも企業によっては、「社会保険の適用外になるほど、実績(売上)がない会社」と認識されてしまう可能性も否定できません。
また新規に従業員を雇用する際にも、社会保険に加入できるかどうかは、重要な信用問題となることでしょう。
この点において、会社が円滑に事業を進めている、実績を持っていると誇るためにも、社会保険に加入することがとても重要に。
社会保険の加入は、社会的信頼・信用につながる、会社としての大事なステップなのではないでしょうか?
厚生労働省では、社会保険の適用促進対策として、未加入企業への勧告を進めています。
平成29年3月29日に厚生労働省年金局事業管理課から発行された資料によると、以下のような取り組みが行われています。
次の業種について、事業の許可等の際に、許可行政庁において社会保険(健康保険及び厚生年金保険)及び労働保険(労災保険及び雇用保険)の加入状況について確認し、加入が確認できない場合は、日本年金機構及び都道府県労働局へ情報提供が行われている。
○建設業…許可行政庁:国土交通省地方整備局、都道府県
○貨物自動車運送業、旅客自動車運送業…許可行政庁:国土交通省地方運輸局
○労働者派遣業… 許可行政庁:都道府県労働局
(中略)
事業を開始するに際し、許可等を必要とする厚生労働省所管の業種について、地方自治体等に、新規営業許可(届出、指定等含む)申請時等の際に社会保険及び労働保険の加入状況を確認していただき、適用されていることが確認できなかった場合には厚生労働省への事業所情報の提供を求める。(平成28年度内を目途に地方自治体等に連絡し、平成29年7月実施予定。)
(中略)
【対象業種】
飲食店営業、食品製造業、理容業・美容業、社会福祉事業など
引用元:厚生労働省年金局事業管理課「社会保険の適用促進対策について」資料
このように、社会保険加入の調査対象が広げられています。なお、万が一社会保険未加入が認められた場合、法的には以下のような罰則が定められています。
6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金
もちろん未加入が発生してすぐに罰則というわけでもなく、厚生労働省からの勧告→催告→罰則の実施、のように段階を踏まれるのが実際でしょう。
何にしても法について指摘されるというのは、気持ちが良い話ではないということは確かですよね。
また近年では、このような内容も報道されました。
国交省 / 社保未加入企業、業許可・更新認めず / 18・19年度の取り組みで方向性提示 [2018年1月16日1面]
国土交通省は15日、18・19年度に取り組む社会保険加入対策の方向性を示した。未加入企業の建設業許可・更新を認めないよう建設業法の改正を検討する。
引用元:日刊 建設工業新聞(株式会社 日刊建設工業新聞社)
つまり、社会保険未加入の建設業は、事業ができないように法が改正されようとしているのです。
とはいえ実際には以前から、社会保険未加入の建設業は、公共工事は請け負えないという取り組みは始まっていました。しかし、上記のニュースによると公共工事だけではなく、すべての建設事業を請け負えなくなるというペナルティーが法的に発令されようとしているのです。
こうした取り組みは今後、建設業だけにとどまるものではないでしょう。社会保険未加入の企業への取り締まりが強化されることが大いに想定されます。
こうした背景から考えても、会社において、社会保険の未加入はリスクが大きすぎるということがわかりますね。
社会保険を加入して得られる様々なメリット、そしてその反対に社会保険未加入で発生するデメリット(リスク)をしっかり考えてみると、「たとえ社長のみの会社でも、加入義務の条件に当てはまる限り、加入すべき」ということがいえます。
会社と個人の将来を考えると、社会保険の加入は必須であることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
会社設立時の社会保険加入については以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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画像出典元:Pixabay