会社設立の際に、忘れてはいけないのが「社会保険の加入」。
会社員であれば、当たり前のように毎月の給料から天引きされた社会保険ですが、自身が会社を設立するとなると、社会保険はどのように関係してくるのか、不安に感じる方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、社会保険の加入義務や手続き・必要書類など、会社設立時に必要となる知識を一挙にご紹介します。
このページの目次
日本では、すべての国民が医療保険と年金制度に加入する義務を持っています。これは、国民の生活を守るために定められているものです。
そして、主な医療保険制度として挙げられているのが、以下の2種類です。
つまり今回のテーマである「社会保険」とは、会社に属する人が加入する保険制度と言えます。
また社会保険は、健康保険や厚生年金だけではありません。
健康保険 / 厚生年金保険 / 雇用保険 / 労災保険、これら4種類の保険制度を総称して、社会保険と言われることが一般的です。
社会保険は以下の4つの保険制度の総称です。
それでは、4種類の保険制度について、それぞれの特徴と、それがなぜ社会的に国民を守るために必要となるのかを確認していきましょう。
ケガや病気をした際に、国民が安心して医療機関にかかれるよう、国(自治体)がその治療にかかった費用の一部を負担する制度。
また、治療費が高額に達した場合には、自治体への申し立てにより「高額医療費制度」が適用されることもあります。(※ 高額医療費制度の適用額は、収入によって異なります)
会社に属する人が加入する、公的な年金制度。
■ 年金の種類
健全な暮らしが送れるよう、以下のようなケースで年金が支給されます。
尚、年金支給額はこれまで積み立ててきた額によって異なります。
何かしらの事情により失業した際にも、安定した暮らしが送れるよう、雇用者に対して給付される保険制度です。
■ 給付の種類
※ 各種給付には、一定の条件があります。
その他、以下のような、雇用主が活用する給付制度も存在します。
正式名称:労働者災害補償保険
勤務時や通勤中などが要因となり、ケガ・病気・障害を負った、もしくは死亡をした際などに保証金が給付される保険制度です。
■ 受給方法
このように4つの保険制度はそれぞれに、安心して社会生活を送るための補助となっているのです。
さて、社会人にとって便利で安心な補償が詰まっている社会保険制度でありますが、果たして会社にとって必要なものなのでしょうか。
答えはもちろん、YES。
従業員の生活を守るためはもちろん、たとえ一人社長の会社であっても社会保険に加入しなければいけない「義務」があります。ただし、一概にすべての会社が社会保険加入義務の対象とは言えません。
そこで、どのような企業(事業所)に社会保険の加入義務があるのか、整理してみましょう。
「強制適用事業所」とは、社会保険の加入義務がある事業所(会社)のことを指します。会社・法人はもれなく強制適用事業所である点がポイントです。
一方、「任意適用事業所」とは、従業員の半数以上が社会保険の加入に同意した場合、事業主が厚生労働省の認可を受けることで社会保険を加入することができる「加入義務がない」事業所のことを言います。
ただしこの適用条件は、常勤する従業員が5人未満の個人事業所のみです。
つまり会社・法人であるかぎり、たとえ社長一人の会社であっても社会保険の加入が義務なのです。
社長一人の会社の社会保険加入義務については、以下の記事でより詳細に解説しています。
社会保険は、申請をすることで加入ができます。そう、制度で定められた義務があるとはいえ、会社を設立したからといって、自然に社会保険への加入が完了するわけではないのです。
すると、なかには社会保険の加入申請をしない会社も存在します。もちろん、違反ですよね。
では万が一、社会保険の加入義務を違反した場合、どのようなリスクがあるのか、代表的なものを紹介しましょう。
■ 6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が課せられる可能性がある
社会保険の加入義務は、法律で定められた義務です。そのため、加入していない事実が発覚すると、摘発の対象となり、法に基づく裁きを受けることもあります。
■ 企業としての信頼・信用を失う
あなたが採用応募者の場合、社会保険に加入している会社と、加入していない会社、どちらを選びますか?
もちろん、生活の安定を求めて、義務を全うし、社会保険に加入している会社を選ぶ人が大半かと思います。
また社会保険に加入していない事実が知れ渡れば、人事面だけでなく、会社の運営の上でも、「法を厳守できない会社」として、信頼を失うことも考えられます。事実、建設業では、平成29年4月から「社会保険未加入の事業所に、公共工事をさせない」という兆候が見られています。
つまり、健全な企業として社会で活躍するためにも、法に基づく義務を果たさない限り、対等な扱いを受けられなくなる可能性が大いにあるのではないでしょうか。
「アルバイト・パートだから、社会保険には入っていない」
「試用期間は、社会保険はつかない」
このようなケースは、意外と耳にすることが多いことでしょう。しかし、この認識、間違っています。
そもそも4つの社会保険制度(健康保険 / 厚生年金保険 / 雇用保険 / 労災保険)には、それぞれ次のような加入条件があるのです。
■ 健康保険/厚生年金保険
1. 学生ではない
2. 所定労働時間 週20時間以上
3. 月額賃金 88,000円以上
4. 勤務期間が1年以上になる予定
5. 企業の被保険者(従業員)が、501人以上
■ 雇用保険
次のような条件を満たす、すべての従業員に加入義務があります。
■ 労災保険
正社員、非正規雇用に限らず、従業員全員に加入義務があります。
つまりアルバイトやパートであっても、社会保険に加入すべき条件に当てはまるケースもあるのです。
さらに「試用期間は社会保険を加入しない」説について。
確かに、短期契約が前提の雇用であれば、社会保険の加入義務はありません。そのため、このグレーゾーンを活用して、「試用期間は、社会保険の適用外とする」会社も少なくはないのです。
しかし試用期間の場合、大半が長期雇用を前提として採用の場合が多いのではないでしょうか?
ということは、たとえ試用期間であっても社会保険の適用義務はあるということが言えます。このグレーゾーンを悪用する、悪徳雇用主には決してならないでくださいね。
社会保険加入から逃れることはできるのでしょうか?
社会保険に入っていないと、加入を促す通知や督促の電話がかかってきます。それを無視する、あるいはかわし続けることで、少なくとも加入を先延ばしにすることはできます。
ただ、先ほども述べたようなリスクを背負うことになるので、決しておすすめはしません。
社会保険の加入義務やリスク、注意点について知ったところで、いよいよ実践編。社会保険の加入手続きについて、確認していきましょう。
社会保険の加入手続きは、会社設立後5日以内に行う必要があります。
■ 必要書類
1. 健康保険・厚生年金保険新規適用届
[書類のダウンロード]日本年金機構
2. 法人登記簿謄本(原本)
3. 法人番号指定通知書等(コピー)
※ 手元にない場合は、国税省・法人番号公表サイトで情報をコピー
【従業員を雇用した場合の追加書類】
以下の書類を雇用後5日以内に提出する必要があります。
1. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
2.[扶養家族がいる場合]被扶養者(異動)届
3. 保険料口座振替納付(変更)申出書
[1と2の書類のダウンロード]日本年金機構
■ 提出場所
会社所在地を所轄する年金事務所(日本年金機構)
雇用日翌日から10日以内に申請する必要があります。
■ 必要書類
[各種書類について詳しく]厚生労働省
■ 提出場所
会社所在地に所轄する公共職業安定所(ハローワーク)
保険関係成立の翌日から10日以内に申請する必要があります。
■ 必要書類
[各種書類について詳しく]厚生労働省
■ 提出場所
会社所在地を管轄する労働基準監督署
社会のルールに従うことは、社会に受け入れてもらう上で最も大切なことと言えます。その意味でも、社会保険の加入が法律で義務化されている限り、これを守ることは避けて通れないファーストミッションと言えるでしょう。
そして社会保険の加入は、社員や人事的評価はもちろん、取引先をはじめとした外部からの企業的信用を保つためにも重要に。
せっかく設立する会社を末永く存続させるためにも、信用作りの投資となる社会保険の加入については、真剣に考えていきたいところですね。
今、社会保険への加入について調べれられているということは、起業にむけて準備をしている、もしくは会社設立間近という方もいらっしゃるでしょう。
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