確定申告のときに個人事業主の頭を悩ますのが「経費」の計算の仕方です。経費に含まれるものと含まれないもので悩んだりします。
この記事では、そんな個人事業主の方のお役に立てるように、経費に含まれるものの例、含まれないものの例を分かりやすく紹介します。
さらに家賃を経費として計上する方法など、節税のために経費を上手に増やすコツなどもあわせて紹介します。
このページの目次
所得税青色申告決算書の中には、あらかじめ18項目の経費として計上できる勘定科目が記載されています。
まずは、それぞれの勘定科目の意味とその中に経費としてどんなものを含めることができるのか解説します。
所得税青色申告決算書で経費の欄に記載されている18項目とそれに含まれるもの、含まれないものや注意点を表にしました。
内容 | 含まれるもの |
含まれないものや |
|
租税公課 | 国税や地方税などの税金である「租税」と、国や公共団体などに対する交付金や会費などの「公課」が含まれる |
印紙税、収入印紙、登録免許税、事業税、固定資産税、不動産所得税、償却資産税、自動車税など 商工会議所、協同組合、商店会などの会費・組合費・賦課金など |
所得税、相続税、住民税、国税の延滞税、地方税の延滞金など |
荷造運賃 | 商品等の出荷に伴い発生する荷造・梱包作業費・運送代のこと |
荷造り用の段ボール、緩衝材、ガムテープなどの代金 |
|
水道光熱費 | 水道代・電気代・ガス代 |
水道代・電気代・ガス代・暖房灯油代など |
プライベートで利用した分は計上出来ない |
旅費交通費 | 旅費と交通費 |
出張のための宿泊費や出張手当などの旅費 |
旅費でも研修旅行であれば研修費、慰安旅行の費用は福利厚生費になる |
通信費 | 業務上使用する電話やスマホ、インターネットなどの費用 | プロバイダ料金、インターネット料金、固定電話や携帯電話料金、切手代 |
業務上使用した分のみが計上できプライベートで利用した分は計上出来ない 取引先への祝電やお悔やみの電報は交際費になる |
広告宣伝費 | 不特定多数の人に対して商品やサービスの販売促進、求人などのために行われた広告宣伝のための費用 |
テレビ・ネット・新聞・雑誌広告費 |
取引先など特定された人物に対して行なわれた物品の贈答は交際費になる |
接待交際費 | 営業目的などのために仕入先や取引先などに対して接待・供応・慰安・贈答などを行なった際の費用 |
接待のための飲食代 |
社員を対象にした食事会・慰安旅行の費用は該当しない |
損害保険料 | 事業を万が一の事故や災害から守るために支払われた保険料 |
事業用の自動車やバイクの自動車保険、自賠責保険 |
自動車やオフィスを事業用とプライベートの両方で使用している場合は家事按分できる |
修繕費 | 建物・機械・備品などのメンテナンス費用、修繕費用 |
コピー機のメンテナンス費用 |
事業用の車のタイヤ交換・オイル交換・車検費用などは車両費として計上されるケースが多い |
消耗品費 | 購入金額が10万円未満、使用可能期間が1年未満のどちらかの条件を満たしたものを購入した際の費用 |
文房具、伝票用紙、印鑑、封筒、電池 |
|
減価償却費 | 建物や機械、消耗品に含まれない高価なソフトウェアなどの有形・無形の固定資産の取得価額を耐用年数に応じて費用化したもの | 減価償却の方法は、定額法、定率法、生産高比例法がある | 資産の種類によって採用できる減価償却方法が決まっている |
福利厚生費 |
役員・従業員の福利厚生のために支払われたもの |
法定福利費: 法定外福利費: |
福利厚生費は、従業員全員に平等に支出するのが条件なので、特定の成果を出した従業員へのインセンティブ(報奨金)は給与となり福利厚生費には含まれない |
給与賃金 | 従業員への給与や手当 | 基本給、残業手当 |
個人事業主への給与は経費にならない 白色申告なら専従者への給与は経費にできないが、事業専従者控除として控除の対象になる |
外注工賃 | 外部業者に仕事を依頼した際の経費 |
ホームページの運営を外注した際の費用 |
弁護士・司法書士・行政書士・税理士などのへの報酬は「支払手数料」の勘定科目に含められる |
利子割引料 | 事業用資金を借入した際に支払う利息や手形の割引料など | 事業に関係するローンの支払利息 | 自動車やを事業用とプライベートの両方で使用している場合は自動車ローンの利子も家事按分できる |
地代家賃 | 事務所・工場・倉庫・駐車場などの家賃 |
家賃 |
20万円以上の礼金を支払った場合は資産となり「長期前払費用」で処理できる |
貸倒金 | 売掛金や未収入金、貸付金などが得意先の倒産や経営悪化により回収不能となった際の損失金額 | 回収不能となる可能性が高い売掛金などは「貸倒引当金」の勘定科目で経費として計上できる | |
雑費 |
上記のどの勘定科目にも当てはまらない少額の経費 |
事務所の引っ越し代 |
雑費の金額が増えると税務署からの指導を受ける可能性がある 個人事業主で、情報収集のために大量の書籍や雑誌などを購入する必要などがあれば「新聞図書費」という勘定科目を作り、雑費の金額を抑えることができる |
青色申告決算書の中にあらかじめ記載されている経費の勘定科目を説明しましたが、税理士に支払う手数料や不動産屋に払う仲介手数料などは「支払手数料」、資料として新聞・雑誌・本などを購入する必要があれば「新聞図書費」などの勘定科目を追加し経費として計上できます。
個人事業主でも事業に関係するものであれば経費になります。
逆に個人的な支出は金額の大小に関係なく経費としては計上できません。
3つを紹介します。
事業と関係のない個人的な趣味や用事のための費用は計上できません。
しかし、本や雑誌・CDなどがフリーライターなどのように個人事業主として仕事を行うために必要な資料と認められるなら経費として計上できます。
従業員の給与・福利厚生費・社会保険料などは経費になります。
厳密には「個人事業主への給与」という概念は存在しないので、それは経費になりません。
さらに国民健康保険や年金、生命保険料なども事業の経費としては計上できません。しかしこれらは確定申告の際に控除の対象になります。
個人事業主本人にかかる所得税や住民税は経費になりません。
しかし、事業のための印紙税・登録免許税・事業税などは「租税公課」の勘定科目で経費として計上できます。
経費の勘定科目には何が含まれるのかを理解しておけば、個人事業主でもきちんと経費を計上し、節税することができます。
次に賢く経費を増やして節税するためのコツを2つ紹介します。
1. 家事按分
2. 出金伝票を作る
家事按分とは事業にかかった経費と生活や個人的な事柄のための費用をきちんと分けておくことです。
自宅をオフィスにしている個人事業主の場合、電気料金・通信費・家賃・自動車関連の費用などは、仕事用とプライベート用の線引きが難しいです。
だからといって、すべてが経費ですと税務署に申告することはできません。家事按分という方法で、仕事用とプライベート用の経費を分けることができます。
家事按分の具体例を3つ紹介します。
自宅をオフィスにしている個人事業主は、電気料金を使用時間で仕事用の経費とプライベートでの支払に分けることができます。
同じ様な考え方を通信費(スマホやインターネットの料金)にも適用できます。
例えば1日8時間仕事をしているならば、1日の電気代もしくは通信費の1/3が経費になります。
自宅をオフィスにしている個人事業主は家賃も家事按分することで一部を経費にできます。
この場合は、床面積を計算して家事按分します。
例えば、60㎡(平方メートル)のマンションに住んでいる個人事業主が、10㎡の部屋をオフィスにしているとします。そうすると1/6つまり約16.6%を事業用スペースとして使っていることになります。
家賃が月12万円ならば経費になるには毎月2万円ということになります。
個人事業主が車を所有していてそれを仕事でもプライベートでも使っているなら、自動車維持に関係する費用も家事按分して一部を経費にできます。
その際には仕事で使った時の走行距離とプライベートでの走行距離をもとに家事按分できます。
自動車関連の費用には、車両購入代金、駐車場代、ガソリン代、自動車税、車検代など高額な費用が含まれるので家事按分しておけば経費を上手に計上でき、節税につながります。
お客様用に自販機でコーヒーやジュースを買った、バス代や電車代、取引先の冠婚葬祭のお祝いや香典などレシートや領収書のない支払も、「出金伝票」に日付・支払先・内容・金額を記入して保管しておけば経費として計上できます。
出金伝票はレシートや領収書をなくしたり、もらい忘れたりした時にも使えます。
お祝いや香典などの出金伝票にはその招待状やお知らせなどを合わせて保管しておくと内容を証明する際に便利です。
個人事業主の中には、仕事用の経費とプライベート用の領収書やレシートがごちゃ混ぜになり仕分けるのが難しいという方、その経費を勘定科目のどこに記入したらいいのか分からないという方もおられます。
そんな個人事業主の悩みを解決する方法が次の2つです。
1. ビジネス用とプライベート用のクレジットカードを作る
2. 会計ソフトを利用する
ビジネス用のクレジットカードを作り、仕事関連の支払いはすべてそれで行うことで、仕事の経費とプライベートの支払を完全に分けることができます。
そうすることで会社の経費を全体として把握することができるようになります。
またビジネス用のクレジットカードは利用限度額がプライベート用のカードよりも高く、急な出費に対応することができます。
さらに、ポイントが貯まる、出張の際に役立つ空港ラウンジが利用できる、旅行保険がつくなどの特典が付帯しているものもあります。
経費を該当する勘定科目に記載したリ計算したリするのが苦手という方には、会計ソフトの導入がおすすめです。
例えば、会計ソフト「freee」は面倒な会計処理の手間から個人事業主の方を解放してくれます。
その機能の中には、銀行口座やクレジットカードを同期すれば自動で経費を入力してくれるというものがあります。
日付や金額はもちろん、勘定科目を推測して自動入力してくれるのでいちいちこれはどの勘定科目に該当するのか考える必要もありません。
経費をきちんと計上しておけば節税になります。
では個人事業主は、青色申告と白色申告ならどちらが節税になるのでしょうか?
青色申告では最大65万円の特別控除が受けられます。
青色申告承認申請書を税務署に提出し、複式簿記で帳簿をつけるなら65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。
簡易簿記で帳簿をつけるなら10万円の「特別控除」となります。
白色申告では特別控除はありません。
青色申告は帳簿をつけるのが面倒だという意見もありますが、先ほど紹介したビジネス用のクレジットカードを利用する、会計ソフトを利用するなどの方法で帳簿つけも簡単にできるようになります。
個人事業主が経費として認められるものには何があるのか、どんなものは認められないのかを解説しました。
自宅をオフィスにしている個人事業主は家事按分を上手に行うことで、家賃や通信費、電気代、自動車関連の費用の一部を事業経費として計上できます。
バス代や電車代などのレシートのない経費も出金伝票を使えば経費として計上できます。
こうしたことをこまめに行うことで個人事業主も経費を賢く計上でき節税できます。
節税で得たお金は事業資金などの有益な目的のために利用できるでしょう。
画像出典元:pixabay、O-DAN
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