持分会社の種類から設立費用、メリット・デメリットまで徹底解説!

持分会社の種類から設立費用、メリット・デメリットまで徹底解説!

記事更新日: 2023/09/03

執筆: 高浪健司

会社法にて定められている会社形態は、「株式会社」と「持分会社」の2つに分けられており、会社を設立する際、どちらで設立するかを決めなければなりません。

株式会社と持分会社、どちらも法人であることには変わりありませんが、それぞれ特徴が異なります。

そこで今回は、株式会社と持分会社の違いなどを交えながら、持分会社の種類から設立費用、メリット・デメリットまで、詳しく解説していきます。

持分会社とは

冒頭でも記述したとおり、会社法にて定められている会社形態は、株式会社と持分会社の2種類の形態に区別されています。 

このうち、持分会社というのは「合同会社」「合資会社」「合名会社」を、ひとつにまとめた総称のことをいいます。

つまり、現在日本においての会社形態は「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4形態あるということになります。

ではなぜ、会社法では株式会社と持分会社とを区別しているのでしょうか?

それは会社組織の根本的なあり方の違いからです。

株式会社と持分会社との違い

まず、株式会社というのは原則、不特定多数の投資家などから多額の資金を集め、集めた資金(資本金)で大規模な事業をおこなうということを目的としています。

株式会社では基本的に、「資本と経営の分離」という仕組みが取られており、出資した投資家(株主)が会社を所有者し、実際に会社を運営するのは経営者と、それぞれ分離するという特徴を持ちます。

一方の持分会社では、株式会社と違って比較的少人数で、しかも信頼し合う仲間たちとの間で会社を経営していくということを前提としています。

また、株式会社とは違い、資本金を出資した全員が経営者となり、一緒に事業を展開していくといった特徴を持っています。

株式会社・持分会社、どちらもお金を儲けることが目的な「営利法人」であることには違いありませんが、このように法律で定められている事項や会社のあり方などが、まったく異なっているわけです。

理解しておくべき有限責任・無限責任

会社形態は、株式会社と持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)があるわけですが、それらの違いを捉えるにあたって、出資者に対する責任範囲が「有限責任」なのか、それとも「無限責任」なのかという観点があります。

この「有限責任」と「無限責任」というのは、会社が倒産した時などに出資者が負うべき責任の範囲のことを示したもので、特に経営者であるならば、必ず知っておくべきことです。

有限責任とは

会社が倒産してしまった場合、債権者に対して出資した金額を上限とし責任を負うことが「有限責任」です。

つまり、会社が倒産してしまった場合、出資したお金のみが消えてしまうだけで、それ以上の責任は一切負わなくても良いということになります。

無限責任とは

会社が倒産してしまった場合、債権者に対して負債が無くなるまで、全額すべてを支払う責任が生じてくるのが「無限責任」です。

つまり、会社が倒産してしまい、債権者に対して会社が負債額を支払いきれなかった場合、自らの財産を投げ打ってでも弁済しなければならないということになります。

はっきり言ってしまうと、会社設立をする本人にとって無限責任であるメリットはありません

だからこそ、近年設立される会社のほとんどは、有限責任である株式会社と合同会社なのです。

会社を設立し、事業を営むということは、同時にリスクを背負うということにもなるので、こうした責任範囲についてもしっかり知っておくことが重要です。

持分会社の種類

持分会社である合同会社、合資会社、合名会社それぞれの特徴を見ていきましょう。

合同会社(LLC)とは

株式会社に続いて多く選ばれているのが合同会社です。

株式会社に比べて知名度が低いと同時に、社会的信用性なども劣りますので、金融機関から融資を受けたい時や、新規取引先との交渉などの際にはマイナス要素となることもあります。

しかしながら、会社設立のしやすさや、経営の柔軟性に関して言うなら合同会社は非常に有利です。

基本的に有限責任社員のみで構成されている合同会社では、株式会社と違って出資者全員が経営に携わることができ、さらに「株主総会」や「取締役会」などの業務意思決定機関の設置が不要なので、迅速な意思決定がおこなえ、よりスピーディなビジネス展開が可能となります。

最近では、アップルジャパンやアマゾンジャパン、P&Gマックスファクターなど、有名企業も合同会社で設立していることもあり、知名度や人気も上昇傾向にあります。

合同会社は個人事業主から会社設立する方など、設立のコストを抑え、なおかつ有限責任で柔軟な経営が可能な会社を設立したいという方には最適な会社形態です。

合資会社とは

合同会社が有限責任社員だけで構成されていることに対し、合資会社は有限責任社員と無限責任社員の2つで構成されているのが大きな特徴です。

また、合資会社では有限責任社員と無限責任社員それぞれ1名ずつ置く必要があり、最低でも2名は必要となります。

そのため、もし設立後に社員1名が欠けてしまった場合は、社員1名でも可能な会社形態に変更する必要があります。

なお、合同会社と同じく

  • 設立時の手続きが簡単
  • 設立費用も安く抑えられる
  • 決算報告の義務がない

などのメリットが合資会社にもありますが、やはり有限責任社員だけで構成される合同会社が選ばれる場合がほとんどです。

合同会社と比較すると、

  • 無限責任社員が必要
  • 設立に最低2人が必要

というデメリットがあるわりに、メリットがないので、最近ではほぼ設立されていません。

合名会社とは

合名会社は、債権者に対して直接連帯して責任を負う無限責任社員のみで構成されているのが特徴で、1人だけで設立することが可能です。

ちなみに、無限責任社員のみで構成されているという意味では、個人事業主が一つの場所に集まり、事業を展開しているといったようなイメージです。

また、合名会社は出資者全員が経営者となりますので、出資者も経営者もすべて同じです。つまり、会社に属する社員一人ひとりの人脈や技術などが、会社経営の浮き沈みを左右することになります。

合資会社と同じく、無限責任社員という大きなデメリットがあるにも関わらず、合同会社と比較してメリットがないので、最近ではほとんど設立されていません。

 

持分会社のメリット・デメリット

持分会社のメリット

持分会社には、以下のようなメリットがあります。

  • 会社設立時の費用が安い
  • 資本金制度が特にない
  • 会社設立の手続きが比較的簡単
  • 出資者と経営者が同一で、スピーディな意思決定が可能
  • 決算公告の義務がない
  • 定款の内容に規定がない

持分会社のデメリット

  • 多額の負債を自ら背負う可能性がある
  • 合資会社に限るが、社員が2名以上いないと設立できない
  • 知名度が低い

会社を大きく成長させたいなら株式会社

持分会社のメリット・デメリットはこのようになっており、一見するとメリットの方が多く感じますが、デメリットの方には事業を展開していくうえで、大きなマイナスに繋がる可能性があるので、注意したいところです。

また持分会社に対して、株式会社には豊富な資金調達手段があるのが魅力です。

会社を大きくしようとしているスタートアップが、ほぼ株式会社なのは、これが理由です。

持分会社を設立する際に必要な費用

設立手続きの費用の安さは持分会社のメリットでもあります。では株式会社と比べた場合、実際どのくらい費用が安くなるのかを見てみましょう。

※1:定款印紙代の4万円は、電子定款にすることで0円になります。
※2:会社実印等の費用は一般的な価格となりますので、種類によって価格は変動します。

このように、株式会社と比べると持分会社の設立手続き費用が安いということが分かります。

なお、会社の形態に関わらず会社設立にかかる費用を抑えつつスピーディに手続きを行いたい場合、会社設立freeeなどのクラウドサービスがおすすめです。

まとめ

今回は、持分会社について詳しく解説してきました。

ご紹介してきたとおり、持分会社は「合同会社・合資会社・合名会社」の3種の形態をまとめた総称のことです。

持分会社では、株式会社に比べ会社設立のハードルも低く、会社経営に関しても比較的自由に展開していくことのできる形態です。

なかでも合同会社は、社員全員の責任が有限責任でありながら経営にも携わることができることから柔軟な会社運営が可能で、近年人気を増している会社形態です。

とは言え、株式会社も持分会社も、いずれにしてもメリット・デメリットはありますので、自身がやろうとしているビジネスがどの形態に合っているのかを良く考慮したうえで、最適な会社形態を決めるようにしてください。

こちらの記事では合同会社と株式会社を徹底比較しています。会社設立を本格的に考えている方はぜひ参考にしてください。

画像出典元:pexels

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