企業規模を示す言葉に「中堅企業」というものがあります。
中堅企業は大企業や中小企業のように知名度が高いわけでもないので、よく知らないという人も少なくないでしょう。
しかし、中堅企業というのは実に優良企業なのです。
そこで今回は、中堅企業の定義や位置づけ、さらには中小企業との違いについても詳しく解説していきます。
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中小企業の定義は、法律(中小企業基本法)によって明確に定められていますが、中堅企業には明確な定義が存在していません。
そのため、中堅企業がどの立ち位置なのかよくわからない、という人も少なくないでしょう。
中堅企業の立ち位置は一般に、大企業と中小企業の中間にあたるものだと認知されています。
では、中堅企業と中小企業、双方にはどのような違いがあるのでしょうか。
中小企業と中堅企業の違いは、定義が明確にされているか否かです。
まず明確な定義が存在している中小企業は、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員数」によって線引きされています。
つまり、この条件を満たしていれば中小企業という扱いです。
一方、中堅企業には明確な定義が存在していません。
現在のところ資本金額がおおむね「1億円以上10億円未満」である場合は、中堅企業として分類されているのです。
中堅企業は大企業ほどの規模や知名度はなく、特許権を取得した独自の技術や製品を持ち、特定分野に精通している企業が多く存在します。
また、BtoBで高い実績を残している優良企業であることも特徴のひとつです。
「中小企業」「大企業」「みなし大企業」、これらはすべて企業規模を表す言葉です。
この章では、それぞれの定義や違いを解説していきます。
前述のとおり、中小企業は中小企業基本法という法律で定義されており、資本金や従業員数によって分類されます。
下の表は、中小企業基本法で定められている中小企業の区別表です。
表にあるように「事業分類・資本金・従業員数」、この条件を満たしている場合、その企業は中小企業であるということになります。
日本にある企業のうち、99%以上の割合を占めているのが中小企業と小規模事業者です。
中堅企業と同様、大企業の定義も法律によって明確にされているわけではありません。
では、なにをもって大企業として区分されているのでしょうか。
基準となるのが中小企業基本法です。
一般的に、中小企業基本法で定められている中小企業の定義を上回る企業の場合、大企業としています。
「資本金が3億円以上、従業員数300人以上」である場合、大企業に区分されるのですが、これも確固たる定義は存在しません。
大企業として該当している企業は、日本全体で見ても0.3%だけです。
中小企業と大企業の違いは、資本金額と従業員数といったいわゆる企業規模。
では、それ以外にも違いがあるのでしょうか。
助成金・補助金といった国や政府からのサポートに違いがあります。
中小企業には、中小企業を対象とした補助金や助成金などが複数用意されています。
たとえば、ITツールを導入する際、発生する経費の一部を補助する「IT導入補助金」。
また、高齢者や障がい者などの就職困難者に対し、継続雇用する事業主を助成する「特定求職者雇用開発助成金」など。
国や地方公共団体などによるサポートが、大企業に比べて手厚いといった違いがあります。
企業規模を表す際の言葉として「みなし大企業」があります。
みなし大企業とは、中小企業の規模でありながら、大企業の傘下に属している企業のことです。
みなし大企業は、中小企業基本法で定義されている条件に該当するため、中小企業であることに間違いありません。
しかし大企業が経営に参画しているといった理由などから、経営基盤は安定しているとみなされる場合があります。
よって、中小企業の対象範囲であったとしても、通常の中小企業のような助成金や補助金、さらには法人税の軽減措置の対象から外れるケースもあるのです。
みなし大企業であるか否かの具体的な条件は、おおむね以下のとおりです。
こうした条件に当てはまる場合は、みなし大企業とされます。
みなし大企業の定義も明確に存在しているわけではありません。
そのため、助成金や補助金の制度を活用する際は、募集事項をよく確認してから申請する必要があります。
前述のとおり、中堅企業には明確な定義がないので、常用する従業員数や売上高も決められているわけではありません。
経済産業省によると、常用雇用者数が100人以上~1,000人未満程度、売上高は年商10億円~1,000億円程度の企業を中堅企業として位置づけています。
日本全国における企業総数は382万社。
このうち中小企業は約381万社(小規模企業で約325万社)・大企業は約1.1万社です。
この数字を見てわかるように、小規模はじめ中小、そして中堅企業が日本の経済・社会を支えているといっても過言ではありません。
なかでも中堅・中小企業は、地方雇用の創出にも大きく貢献しており、地域経済において中核的役割であるとして、政府からも大きく期待される存在なのです。
まず経済産業省が掲げている中堅企業の定義を見てみると、おおむね以下のようになっています。
製造業・建設業・運輸業・その他 |
資本金3億円以上~10億円以下 |
卸売業 |
資本金1億円以上~10億円以下 |
小売業/サービス業 |
資本金5,000万円以上~10億円以下 |
中堅企業となるためには、上記で挙げた定義を満たす必要があります。
中小企業が中堅企業へと成長するためには、どのような取り組みをおこなうべきなのでしょうか。
その取り組みとして考えられることが、積極的な事業規模の拡大です。
前述のとおり、全国における中小企業の数は約381万社あり、全体の99.7%を占めています。
大多数を占める中小企業ですが、なかには"あえて成長させない"といった企業も少なくありません。
その理由は、中小企業を基準対象とした優遇措置があるためです。
中小企業は中小企業基本法で定義された条件に基づき、製品開発や設備投資などに対して金利や税制面で優遇されています。
企業が成長して定義の範囲を超えてしまうと、これまで受けられた優遇が受けられなくなるのです。
こうした背景もあり、みずから成長を抑制してしまうケースも多々見受けられます。
このような事態を解決するため、政府は中小企業の成長を支援する中小企業成長促進法という法案を可決し、2020年10月に施行しました。
中小企業成長促進法には、中小企業が積極的に事業展開を行い、成長できる環境を整備するため、さまざまな制度が盛り込まれています。
なかには規模拡大のためのM&Aへの税制措置も盛り込まれているので、中堅企業へと成長させるためには、こうした制度はフルに活用するべきです。
中小企業はIT化の遅れが課題となっており、中小企業が中堅企業へと成長していく過程でITの導入は必要です。
PC類やネットワーク環境など、ITを専門とする人材の確保や育成も重要となってきます。
中小企業から中堅企業へと成長させることは容易ではありませんが、政府が打ち出した支援策をうまく活用して事業規模の拡大に力を注ぎましょう。
経営に必要な資源(ヒト、モノ、カネ)これらに余裕のある大手企業ですが、伸びしろといった意味では中堅企業のほうが大きいといえるでしょう。
前述のとおり、中堅企業というのは独自の技術や製品を保持していることが多いものです。
特定の分野で高い市場占有率を維持しながら、安定的な収益を得ています。
企業はそもそも、事業の基軸がしっかりと確立されていて、なおかつ他にはない技術、品質、アイデアなどを確実に持っていてこそ、強く安定した経営が望めるのです。
近年ではクラウド化が進み、これまで大手企業でしか実現できなかった高いレベルのICT(情報通信技術)が、今では中小・中堅企業でも手の届く存在となりました。
そのおかげで、中小・中堅企業でもデータに基づく戦略的な活動が可能となり、市場の変化にもスピード感をもって対応できるようになっています。
中堅企業はその強みを生かしつつ、データの収集や統合、可視化、分析といったICTの活用など、やり方次第でまだまだ発展できる力があるのです。
※ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)
中堅企業の定義について解説してきましたが、中堅企業に明確な定義はなく、中堅企業の位置づけとしては「大企業と中小企業の中間」です。
中堅企業は独自の技術や製品を保持し、特定分野に精通している強みを持った企業であり、経営も比較的安定しているといえます。
中小企業が中堅企業へと成長する一歩として、政府のさまざまな支援策を活用し、さらなる事業の拡大に挑戦していきましょう。
画像出典元:O-DAN