起業に必要な費用はいくら?費用を抑えて小さく始める方法を紹介

起業に必要な費用はいくら?費用を抑えて小さく始める方法を紹介

記事更新日: 2023/09/05

執筆: 小石原誠

初めて起業する場合、どのくらいの費用が必要になるかのイメージを持てている人はそう多くありません。「資本金1円から株式会社を作れる」とはいうものの、実際には会社設立には手続きにかかる費用から事務所、設備・備品などを揃えるための費用まで様々な面でお金がかかります。

場合によっては株式会社を作らずに個人事業主としてスタートしてしまう方が良いこともあります。

今回は起業の際に必要となる費用について項目別に解説していきます。実際の手続きを始めてしまう前にしっかりと確認してみましょう。

会社設立の手続きにかかる費用

まずは、会社を設立する際の行政機関での手続きにかかる費用について確認しましょう。ここでは「株式会社」の設立手続きについて解説していきます。

1. 株式会社の資本金

2006年5月の会社法改正により、株式会社の場合は資本金1円から会社設立が可能となっています。しかし実際には資本金額が安いと創業融資制度を利用できなかったり対外的な信頼性が低くみられたりなどのデメリットがあるために、ある程度の金額を準備するのが一般的です。

多くの場合、創業時の資本金は300万円が理想とされています。これは数か月分の運転資金を確保する必要性といった観点からの考え方です。ですが、最近はフリーランスの延長で法人格を取得することが増えてきており、そういった場合は資本金額が数10万円であることも多いです。

具体的な資本金の決め方については、以下の記事を参考にしてください。

2. 定款認証にかかる費用

公証役場での定款認証の手続きを行う際には、まず定款認証代として5万円の費用が必要です。加えて「紙定款」か「電子定款」のどちらを使用するかで収入印紙代4万円の有無が変わります。

3. 法人設立登記にかかる費用

登記所での法人設立登記にかかる登録免許税は15万円と決まっています。

なお資本金額の0.7%が15万円を超える場合にはその金額ががかるとされていますが、これはつまり資本金額が2,143万円以上になる場合なので、特に初めて会社設立する場合には基本的に15万円と考えておけばよいでしょう。

なお、法人設立登記にかかる登録免許税は、自治体が運営している「創業支援事業」の制度を利用すれば半額の7.5万円に軽減してもらえる特例措置を受けられます。

株式会社の設立手続きには約20万円の費用がかかる

ここまで説明してきた会社設立の手続きにかかる費用をまとめると、少なくともおよそ20万円の費用が必要になるといえます。

もちろんこれらは手続きの費用だけなので、実際には書類に押印する実印や用紙、CDなどの備品の準備、公証役場や登記所への交通などにもお金がかかることを考えておくべきでしょう。

費用を抑えるために、手続きは自分でもできる?

会社を設立する段階でそれなりに費用が必要となることがおわかりいただけたかと思います。

もちろん、これらの手続きを自力で行なうことは可能ですが、おすすめはできません
書類作成から役場・法務局への提出などの作業に追われて貴重な時間を浪費してしまうからです。

そのため、一般的には代行業者に依頼することが多いですが、会社設立費用に加えて委託料金も、となると必要経費は20万円どころでは済みません。

そんな貴重な時間とお金をムダにしないためにおすすめなのが、会社設立freeeマネーフォワード会社設立などのサービスを利用することです。

これらのサービスはフォームに必要事項を記入するだけで必要書類が作成できるので、効率的に準備をすすめることができます。

会社設立freeeのオプションサービスである登記お任せプランを利用すれば、相場の約1/3の価格でわずらわしい登記手続きを一任できます。

登記おまかせプランの概要及びヘルプページはこちらから

事務所、設備・備品、広告宣伝にかかる費用

定款認証や法人登記といった手続きを行えば、法的には会社を設立したことになります。ですが実際の会社運営には事務所や設備・備品が必要不可欠ですし、ホームページなどで自分の会社を広告宣伝することも必要です。

これらにかかる費用を一つ一つ確認していきましょう。

事務所費は家賃×3~5倍が目安

会社設立に際して新たに事務所を借りる場合には、以下の数式を参考に、物件家賃のおよそ3~5倍の初期費用がかかると考えておいてください。

家賃10万円の場合

家賃10万円 + 敷金・礼金・補償金(それぞれ家賃1か月分)30万円 + 仲介手数料(家賃1か月分)10万円 = 50万円


店舗運営をするのであれば更に内・外装工事費などの費用が必要になります。

もちろん、事務所を別に借りずに自宅を事務所として利用する場合には事務所費はかかりません

設備・備品は数10万円、場合によっては100万円が必要

会社運営に必要となる設備・備品は会社の規模や事業の様態によって大きく変わります。

Webメディアを運営する場合などのようにインターネット上で作業が完結する場合には、パソコンとその周辺機器を揃えればそれで事業が成り立ちます。しかし、それでも会社の規模がある程度大きくなればその人数分のパソコン等機器が必要となるので費用がかさみます。

例えば、一人で事業を行う場合には以下のような設備・備品が必要です。

必要となる設備・備品(例)

  • パソコン及び周辺機器:10万円~
  • オフィスソフト類:数万円
  • デスク・チェア等:数千円~
  • 文具等:数千円~


複数人で事業を行う場合には、それぞれを人数分用意しなければならないので、設備・備品にかかる費用は数10万円単位になります。

また、事務所機能をそれなりに揃えたい場合には、以下のような業務用の設備・備品を導入することも検討しなければなりません。

事務所の設備・備品(例)

  • 業務用複合機:新品購入100万円~、中古購入10万円~、リース月額数万円
  • 業務用NAS:10人規模で3万円~、50人規模で10万円~、50人以上規模で20万円~
  • 業務用電話(ビジネスホン):数万円~数10万円(台数により変動)


新たに事務所を借りたり、あるいは事業拡大のために人を雇うのであれば、その分の設備・備品コストは数10万円から100万円くらいまで必要となるということを押さえておきましょう。

最近は自前の事務所を持たずにシェアオフィスを使う例も増えてきています。事務所運営のコストが抑えられるのでシェアオフィス利用を検討してみるのも良いです。

広告宣伝が必要なことも忘れずに

他にも、ホームページを開設・運営したりパンフレットを作成したり、あるいは名刺を作るなどの広告宣伝にも費用はかかります。これらの広告宣伝を外注する場合にかかる費用は以下のようなイメージです。

  • ホームページ作成:数10万円~
  • パンフレット作成:数10万円~
  • 名刺作成:数1000円~(100枚)


広告宣伝も事業展開の内容次第で必要なものとそうでないものとが出てきます。またスキルがあれば全て自力で作ってしまうことも出来ます。

重要度やかかるコストなどを検証して必要な広告宣伝を行うようにしましょう。

会社設立時の費用は経費にできる

会社設立時にかかった費用は経費にすることができます。

経費にすることで税金を抑えることができるというメリットがあります。

もちろん会社設立時にかかったすべての費用を経費にできるわけではありませんが、登記にかかった登録免許税から名刺の作成費用まで、比較的幅広く経費にすることができます。

具体的に経費することができる費用、会計上のやり方については以下の記事で解説しています。

法人用口座の作成

会社設立の手続きが終わったら、必ず法人口座を作成しましょう。法人口座は取引先とのお金のやり取りや、税金の支払い、融資や助成金を得る際に必要になります。また、法人口座の開設は個人口座とは異なり審査が厳しいため、できるだけ早く着手しましょう。

GMOあおぞらネット銀行などのネットバンクの開設は、メガバンクと比べ手数料が安く、法人口座も開設しやすい点も魅力です。

 

運営費用(ランニングコスト)

先ほど「資本金は運転資金を考慮して決める」ことを解説しましたが、実際運営にかかる費用(ランニングコスト)はどのくらい必要なのでしょうか。

ランニングコストの相場

特に起業したての時期は売上が安定しないことも多いために、会社運営が軌道に乗り収支がうまく回転するまで持ちこたえられるようランニングコストをまかなえる資金を前もって準備しておくことが必要です。

ランニングコストとして必要となるのは半年でおよそ300万円くらいから、といわれています。もちろん業種によってかなり違いがあるので一概にはいえませんが、どんな業種であっても一定のランニングコストがかかることを心得ておきましょう。

ランニングコストとして必要となる費目

ランニングコストとして主に必要になる費用は以下です。

1. 人件費

従業員を雇用している場合にはその分の人件費がかかります。給料だけではなく保険や年金の支出もあることを忘れてはいけません。

2. 事務所費

事務所を借りている場合には家賃と光熱水費がかかります。店舗を運営している場合には金額もある程度大きくなるはずです。前もってしっかり予算立てしておきましょう。

3. 宣伝費

インターネットでウェブページを運営している場合にはレンタルサーバー費用や、ページ運営そのものを委託している場合には委託費などのコストがかかります。

4. 仕入れ費用

小売業を営む場合には商品等の仕入れ費用が先にかかります。商品等そのものの費用だけではなく、それらを保管しておくために倉庫などを借りていればそのコストも計算に入れておかなければなりません。

5. 顧問税理士、行政書士、司法書士等への報酬

税理士や行政書士、司法書士などの士業と顧問契約を結んでいる場合はその報酬もランニングコストとなります。契約を締結する前にコスト面から検討しておく必要があります。

6. 税金

最初の事業年度が終わり確定申告を行うと「税金」を納めることになります。特に気にしてほしいのは法人税、法人住民税、法人事業税、そして消費税の4つです。

特に、これらのうち法人住民税の「均等割り」と呼ばれる部分(最低7万円)だけは事業が赤字であっても必ず納める義務が生じることを覚えておいてください。

 

これらに加えて、例えば飲食店や理容室・美容室あるいは小売店などの店舗運営を必要とする場合には、店舗や設備・機器の維持管理に大きなコストがかかります。

一方で自宅をオフィスとして、パソコンとインターネットがあれば仕事ができる環境であればランニングコストはそれほど大きくはなりません。

いずれにしろ、会社設立に際しては設立の費用だけではなくランニングコストも前もって予算立てしておくことを忘れないでください。

ビジネスローンの活用

ビジネスローンとは、法人や個人事業主向けの金融商品で、通常、事業資金を確保する目的で利用されています。

企業などの運転資金や設備投資、新規事業の立ち上げや取引先への支払いなど、事業に関係するものであれば自由に利用することが可能です。

GMOあおぞらネット銀行のあんしんワイドは、スタートアップや創業期の起業家の方向けにGMOあおぞらネット銀行独自の審査基準で審査し、申し込みから借入まで最短2営業日でオンライン完結します。また、決算書や事業計画書、担保なども不要で、融資枠内ならいつでも何度でも借り入れでき、利便性の高い資金調達を実現するビジネスローンです。

 

個人事業主としてスタートするのも一つの手段

ここまで解説してきたとおり、起業に際して会社を設立する場合には、行政機関での法的な手続きから事務所の整備、さらにはランニングコストなど、大きなコストがかかります。少なく見積もっても数10万円、場合によっては数100万円単位のお金を準備しておかなければなりません。

会社を設立するのことのメリットは税金面でのコストカットや対外的な信頼獲得など様々ありますが、一方で最近は「個人事業主」という働き方が社会的に認められるようになってきており、法人格を持っていなくとも十分に社会を渡り歩いていける環境が整いつつあります。

個人事業主であれば「個人事業主開業届」を税務署に提出するだけで手続きが完了するので、起業に際しての金銭的コストとマンパワーを大幅に削減することができます。個人事業主として実績を積み重ねながら金銭的体力を貯めてから、満を持して法人格を取得する「法人成り」を目指すのもスタートの方法としては十分にアリです。

ただし、個人事業主として動くのと法人格を取得するのとどちらが良いかは、起業しようとしている業界や業種によっても違いがあります。業界研究を綿密に行った上で判断してください。

個人事業主と法人の違いについては以下の記事を参考にしてください。

 

まとめ

起業の際に必要となる費用について解説してきました。

費用を抑えてスタートしたい場合には、個人事業主という選択肢もあるということを覚えておいてください。

会社を設立すると決めた方は、以下の記事で会社設立の流れを確認しましょう。

画像出典元:Photo-AC, Pexels

この記事に関連するラベル

最新の記事

ページトップへ