シニア起業の真実 | 事例から学ぶ失敗と成功を分けるポイント

シニア起業の真実 | 事例から学ぶ失敗と成功を分けるポイント

記事更新日: 2019/09/20

執筆: 浜田みか

60歳を過ぎると、定年が近づくにつれて頭に浮かぶのはセカンドキャリアのことではないでしょうか?

「まだまだ体も動くし、長年培った経験も知識もある。のんびりと暮らすのもいいけれど、やっぱりまだ現役でいたい」こうした思いから今、シニア起業する人が増えています。

一方では、起業をしたいけれど起業ノウハウもない、専門知識もないからとなかなか踏み出せない人も少なくありません。

今回は、現職をリタイアしたセカンドキャリアで、何かをしたい方や起業を検討している方に向けて、シニア起業を成功に導くためのポイントを事例を通してお伝えします。

失敗と成功を分けているのが何なのかを知ることで、一歩先へ踏み出すヒントが得られるはずです。

シニア起業とは

シニア起業とは、定年退職や早期退職した55歳以上のシニア層が、どこかの会社に再就職するのではなく、自身で事業を興すことをいいます。

シニア起業の事例

シニア世代の起業には、どんなものがあるのでしょうか。主なパターンを事例としてご紹介するとともに、どんなところで失敗しているのかについても併記しています。ぜひ参考にしてください。

起業例1. 前職の経験を活かすパターン

よくあるのが、前職の経験を活かしてコンサルタントとして起業するパターンです。たとえば、銀行勤務やメーカー勤務を長年経験していると、内部事情もよく把握しています。その知見を活かして堅実なアドバイスなどの支援ができるのが強みです。

前職での経験をフルに生かせ、自身のサービスを求める人がどんな人かも明確になっているため、失敗しづらいパターンといえるでしょう。

しかし、経験があるからと新しい情報を取り入れたり、知識を身につけたりすることを怠れば、起業が失敗することもあります。

ビジネスのやり方は、時とともに変わっていくものです。業界の技術や知識、常識なども変わっていきます。いまの自分に満足せずに、積極的に新しい情報や知識を取り入れていくことが大切です。

起業例2. 得意を仕事にするパターン

得意なことを仕事にするのも、よくあるパターンです。たとえば、主婦(主夫)が長年何気なくやっていた料理や掃除といった家事も、極めれば仕事になります。

代表的な例が、家事代行です。個人で始めることもできますし、複数人で集まって起業することもできます。

家事に限らず料理好きであれば、料理教室を開くという方法もあります。同様に好きなことを極めて仕事にするパターンもあります。

コーヒー好きが高じてカフェを開いたり、ラーメンが好きでラーメン店を開業したりもよく見られるパターンです。

また、趣味を突き詰めて仕事にしている人もいます。

代表的な例では、カメラマンがあります。撮影した写真を写真素材サイトに登録して販売できるようになっています。自分のペースで仕事ができるので、シニア起業にも向いています。

得意や好きなこと、趣味を仕事にする場合に気をつけておくべきことは、顧客となるターゲットをいかにして獲得するかという点です。

たとえばカフェなどの店舗を構える場合、立地が悪ければターゲットへの訴求が難しくなります。

集客が上手くいかなければ売り上げも伸びませんから、せっかくの起業も失敗しかねません。

立地、商品やサービス開発、顧客、それぞれの目線でターゲットが求めることを考え、しっかりと準備することが成功に繋がります。

起業例3. 地域の繋がりを活かすパターン

長年同じ地域で生活をしていると、地域コミュニティとの繋がりが生まれます。その繋がりを活かして起業するパターンもあります。

地域の人から求められて何らかの役割を担っていることがあれば、それを事業にしてしまうのも成功しやすい起業方法です。

たとえば、前職で外国語を使って仕事をしていた関係から、地域に来訪した外国人観光客に対して通訳ボランティアを依頼されていた人なら、それを事業化する方法もあります。

ほかにも、NPO法人を立ち上げて、地域の子どもたちの成長を支援するような活動もシニア起業としてよく見られます。

地域に根差したサービスともなると、その地域全ての一つが顧客対象となります。これまで無償で引き受けてきたことに対価を求めるようになれば、途端に依頼が減ってしまうことも考えられます。

この場合、その地域になくてはならないものサービスを展開するなどして収益化を図ることが重要になってきます。

シニア起業の良いところは、生活の足しになる程度の収益があればいいという“ゆるさ”です。

周囲との兼ね合いを考えて、無理のない範囲で料金を設定すれば細く長く続けていけるはずです。

シニア起業のメリット

シニア世代の起業には、たくさんのメリットがあります。どんなメリットがあるのか、一つずつ見ていきましょう。

長年培った技能と経験が活かせる

シニア起業の最大のメリットは、長年培った技能や経験が活かせるところです。特に経験がものをいうような業種の場合は、経験値の高さが強みになります。

長い年月をかけて身につけた技能や、その能力の高さも、自身の強みとしてそのままビジネスに活かせます。

現役時代に培った人脈が活かせる

最初の顧客を獲得するには、これまでに培った人脈に頼るところから始まることが多いものです。その後の顧客発掘や販路開拓においても、人の繋がりから顧客獲得や市場参入しやすくなります。

このほか、事業やビジネスに関する情報を得る機会創出にも繋がります。

年齢を気にしなくていい

働ける体力と身体がある限り、何歳まででも働けます。会社組織に属していると、就労規則によって定められた就労年齢に従うことになります。

起業すれば自身が経営者ですから、従業員に求める規則を自身に適用する必要がありません。

大きく稼ぐ必要がない

シニア起業の良い点は、日々の生活にほどよい金銭的余裕が持てる程度にゆるく事業をしても問題がないところです。

若年層や青年層の人たちのように、大きくライフステージが変化することがほとんどありません。

それでいて年金の受給もあります。そのため、大きく稼がなくても生活できます。これはシニア世代の強みでもあります。

国のシニア向け支援制度が活用できる

シニア世代の起業は、政府が後押しをしていることもあり、国や自治体単位でシニア向けの起業支援制度が用意されています。

それぞれで利用できる要件が異なりますが、中高年齢層から利用できますので、定年後のセカンドキャリアで起業を検討している人は、どんな支援制度があるのか予めチェックしておくといいでしょう。

シニア起業のデメリット

シニア起業はセカンドキャリアの形成にいいとはいえ、デメリットもあります。

老後の生活にも関わってくるシニア起業では、体力や健康面でリカバリーすることが難しいため、デメリットについてもしっかりと把握したうえで、「自分にはシニア起業が必要か?」を考えてみてください。

全てが自己責任になる

事業の進め方、資金の運用、事務作業、健康管理など全て自己責任のもとで行うことになります。

在職中は部下に頼んでいたコピーなどの雑務も、起業後は自分で全て行うことになります。経験のない書類作成などの作業も、調べながらでも自分で行っていかねばなりません。

万が一業務上のミスや失敗があれば、自らで尻拭いをするのはもちろんのこと、経営に関する失敗に対しても、必要であれば自分で幕引きする責任が伴います。

ゆるい起業ができるとはいえ、常に責任はついて回ります。

事務的なミスに関しては、謝罪やのちの行動でどうにかなることも多いものです。

しかし、資金運用や管理については、これまで会社の経理担当者や財務担当者に任せていたことを自分で先々まで見積もったうえで行動していかねばなりません。

なかには、退職金や預貯金などの私財のほとんどを投入して起業をする人もいます。

ですが、起業で使ってしまった資産が必ず元の状態にまで戻るとはいいきれません。計画的に資金を運用しなければ、自転車操業に陥ってしまうこともあるのです。

売り上げを給料と同じ感覚で捉えていると、すぐに資金難にあえぐことになります。

売り上げ目標をしっかりと立て、そのためにどのように行動すればいいのか計画を練り、思うようにいかなければ私財で賄うのではなく、何が原因だったのかを考え、きちんと対策を取りましょう。

過去の功績が効力をなさないことも

在職中は、会社の名前や肩書きでできていた仕事も、起業すれば関係ありません。

社内で華々しい成果を上げていた過去があっても、起業した途端、何の効力をなさないこともあるのです。

過去にしがみついてばかりいると、ビジネスに対する姿勢が後ろ向きだと見られてしまい、やがて取引相手がいなくなります。

過去の功績は、あくまでも在職時のみ有効だったと考え、まっさらな気持ちでビジネスを始めるようにするのが失敗を防ぐポイントです。

健康の変化を前提に仕事をする必要がある

加齢に伴う健康状態の変化は、誰にでも訪れるものです。客観的に自分の身体の状態を把握しながら仕事をしていくのが、シニア起業に不可欠な視点です。

起業後も加齢は進みます。いずれは、後継者に事業を引き継ぐことも考えなければなりません。

もしも後継者がいなければ、事業をたたむことも視野に入れておくのも、創業者としての務めです。

取引相手の大半が年下に

起業後、取引する相手の大半が年下です。なかには、孫ほどの年齢の経営者もいるでしょう。

起業家同士には年功序列のような制度がありませんから、どれだけ年齢が離れていようと対等に接することになります。

ときには、自分の子どもや孫ほどの年齢の相手に頭を下げたり、頼ったり、教えを乞うたりすることもあります。

相手の年齢に関係なく、謝るべきときにはきちんと謝罪し、素直に相手の言葉に耳を傾けられるシニアこそが起業で失敗しにくいといえます。

シニア起業の資金調達

起業する際には、資金が必要です。

初期費用がほとんどかからないビジネスであっても、事業を続けていけば、近いうちに取引先への支払いや備品購入、接待などで資金が必要になるからです。

ここでは、シニア世代が起業をするときにどれくらいの資金を準備していたのか、その傾向をご紹介するとともに、公的支援についても言及しています。

これから資金の準備に入る方はもちろん、起業を検討している方はぜひ参考にしてください。

準備した起業資金は「250万円未満」が約半数

2012年8月に日本政策金融公庫総合研究所が実施したシニア起業家の「新規開業実態調査」によると、自己資金で用意した起業資金は「250万円未満」が41.9%が最も多い数値でした。次いで「1,000万円以上」が23.7%で、平均605万円。中央値で300万円です。

どんな事業を始めるかによって、必要となる初期費用は異なります。

起業に際して必要となる資金は、ビジネスプランによって左右されます。まずは事業計画書を作り、何に対してどれくらいの費用が必要なのか、費用感を掴むようにしましょう。

その結果次第では、公的融資や補助金も賢く利用していくのが望ましいでしょう。

公的融資と補助金制度を賢く利用

【厚生労働省】中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

これから起業する人、起業して間もない事業主(法人・個人ともに)が活用できる助成金制度です。

「雇用創出措置助成」と「生産性向上助成分」の2種類があります。

雇用創出措置助成は、40歳以上で自らの就業機会を起業によって創出することにくわえ、事業運営に必要な従業員で中高年齢者(40歳以上)を雇い入れる際に要した費用の一部を助成してくれる制度です。

助成額:150~200万円

生産性向上助成は、雇用創出措置助成を受給した後、一定期間経過しても生産性が向上している場合に、さらなる生産性向上にかかる助成を受けられる制度です。

助成額:雇用創出措置助成で受給した金額の1/4

厚生労働省の「中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)」の詳細

※厚生労働省のページに飛びます。

【日本政策金融公庫】シニア起業家支援資金

55歳以上で、 新たに事業を始める事業主や事業を始めておおむね7年以内の事業主が対象の融資制度です。

融資のため返済があります。融資額および返済期間は、用途によって異なります。

  融資額(最大) 返済期間
設備資金の場合

7,200万円
※運転資金4,800万円含む

20年以内
運転資金の場合

7,200万円
※運転資金4,800万円含む

7年以内

日本政策金融公庫の「シニア起業家支援資金」の詳細

※日本政策金融公庫のページに飛びます。

【中小企業庁】創業支援等事業者補助金

市区町村と連携した民間事業者などの創業支援の取り組みに必要な経費の一部を補助する制度です。

地域の創業と雇用機会の創出を目的にしており、地域経済の活性化を図る狙いがあります。

補助金は起業資金として使え、返済の必要がないのも起業家に嬉しい制度といえます。ただし、募集時期が限られているため、その期間内に申請する必要があります。

募集期間:毎年5月中旬~6月中旬

補助金:上限1,000万円

中小企業庁の「創業支援等事業者補助金」の詳細

このほかにも、国や自治体が実施している補助金・助成金制度があります。

県や市の創業や起業関連の窓口、もしくは地域に根差した社会保険労務士に確認してみましょう。

クラウドファンディングも視野に入れて検討を

国や自治体の融資や補助金などの利用が難しい、あるいは資金が不足した場合には、クラウドファンディングを検討してみるのも一案です。

有志からの支援を得られるうえ、返済が不要です。クラウドファンディングをする場合は、支援者へのリターンを用意すると支援を受けやすくなります。

最近は個人単位でクラウドファンディングをする人も増えています。いろいろなポータルサイトがあり、それぞれで手数料なども異なりますので、よく確認したうえで活用してみるといいでしょう。

クラウドファンディングについては、こちらの記事を参考にしてください。

 

シニア起業を成功させるポイント

シニア世代が起業をするなら、できるだけ失敗は避けたいものです。ここでは、シニア起業の成功に欠かせないポイントをご紹介します。

スモールビジネスから始める

シニア起業は今後の生活のこともあり、できるだけ多く稼ぎたいと思うかもしれません。だからといって、最初から大きくビジネスを広げてしまうと、手に負えなくなるなど失敗の原因にもなりかねません。

まずは小さく始めて段階的に大きくしていきましょう。

早い段階でメンターと仲間をつくる

起業すれば、会社員時代のように指導してくれる先輩もいなければ、相談できる同僚もいません。

自分の意思一つで事業が動きますし、日々の業務も何をすべきか、自分一人で考えていくことになるからです。

会社員時代には感じなかったプレッシャーや、不安を感じることも出てくるでしょう。

起業前や起業後の早い段階でメンターや仲間をつくっておくと、ビジネスのヒントや経営に必要なノウハウを得られたり、ときには相談できたりといった心強い存在になります。

家族の理解と協力を得る

シニアに限らず、起業するときは家族の理解と協力が必要不可欠です。特にシニア層が起業をするときには、家族が生活や将来への不安を大きく感じやすいものです。

リタイア後の生活のためにと貯蓄していた預貯金や退職金を投入することがあれば、その後の生活がどうなるのか見通しが立てられないと思うからでしょう。

「なぜ起業したいのか」「起業後の生活水準に変化の可能性はあるのか」家族が納得できるように、事前にしっかりと話し合って理解を得ましょう。

まとめ

シニア起業を始める際は、しっかりとした事前準備と、起業後の自身の姿を客観的に描くことが失敗を防ぐポイントです。

人生100年時代といわれるなかで、ただ漫然と定年退職後の日々を過ごすよりも、自分が輝ける場所を自らで作り上げ、それで収入が得られるならこれほど素晴らしい人生はありません。

生き生きとセカンドキャリアを過ごす方法の一つとして、シニア起業をぜひ始めてみてはいかがでしょうか?

画像出典元:StockSnap、Unsplash、Pexels、O-DAN

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