今更聞けない「クラウドファンディング」とは?起業家視点で徹底解説!

今更聞けない「クラウドファンディング」とは?起業家視点で徹底解説!

記事更新日: 2023/08/27

執筆: 坂本安未

インターネットを介して不特定多数の人から少額ずつ資金調達できる「クラウドファンディング」

特に、社会貢献度の高いアイデアや、世の中を便利にするサービスなど、出資者が共感し応援したくなるようなプロジェクトの場合、クラウドファンディングは有効な手段です。

言葉としては馴染みはあるものの、実際にクラウドファンディングの仕組み、メリット・デメリット、種類など詳細はイマイチ明確ではないという方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、今更聞けないクラウドファンディングとは何かを、特に起業家目線で解説していきたいと思います!

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の人から少額ずつ資金調達できる仕組みです。

クラウドファンディングの1番大きな特徴は、従来の銀行、企業、ベンチャーキャピタルなどからの資金調達ではなく、不特定多数の個人から幅広く資金調達ができることです。


幅広い人たちから資金調達が可能

クラウドファンディングの流れ

クラウドファンディングの種類によって流れは異なりますが、ここでは、個人に馴染みのある購入型クラウドファンディングの流れを例に説明します。

1. プロジェクトの内容、目的、目標金額をまとめ、クラウドファンディング運営会社に提出

2. クラウドファンディング運営会社による審査

3. 審査に通過した後、ページやリターンを設計する

4. 一般公開し、クラウドファンディングスタート

5. 期限が来る or 目標金額を達成

6. 支援者にお礼の手紙や実際の製品などのリターンを送る


クラウドファンディングの実施方法は以下の記事で紹介しています。

 

クラウドファンディングのメリット・デメリット

起業家視点でのメリット

クラウドファンディングで得られるメリットをいくつかご紹介します。

1. インターネットを介して簡単に資金調達ができる

従来の資金調達より、比較的簡単に資金調達ができます。

特に、購入型のクラウドファンディングであれば、支援者に対して、プロジェクトの詳しい内容と明確な目的を熱意をもってアピールできれば、煩雑な手続きのステップを踏むことなく資金調達ができます

2. ファン作りができる

市場に出回る前の商品やサービスに興味をもってクラウドファンディングサイトをチェックしている支援者なので、きちんとプロジェクトの詳細を説明し、支援して貰えれば、長くファンになってくれる支援者も多いです。

自分が育てた商品やサービスという感覚を得て、継続的に支援してくれる支援者もいるでしょう。

  • 3. 拡散効果で知名度のアップを狙える

特にBtoCサービスの場合、サービスの知名度が上がってテストマーケティングにもなるという、通常の資金調達では得られないメリットがあります。

起業家視点でのデメリット

1. 目標金額が達成できず資金調達できないこともある

クラウドファンディングで支援者に支援を呼び掛けても、目標金額が達成できない場合があります。

一般的に知られている購入型の場合は、目標金額に達しなくても集めた資金を基にプロジェクトを実行しリターンを返すAll-in方式があり、この場合資金がなくともリターンを準備しなければなりません。

事前にプロジェクトの成立確率や、VCなどその他の資金調達方法も視野に動いておきましょう

 

2. アイデアが盗まれることもある

クラウドファンディングサイト上に、発案者の新しいプロジェクトや商品の詳細を掲載する以上、不特定多数の多くの人がその情報を目にします。

そのため、そのアイデアが盗まれてしまうというリスクもゼロではありません。

過去には、コピーした方の商品が売り上げを伸ばしでしまったケースもありました。

こうしたトラブルを避けるため、新しい商品・技術・サービスについては、必ずサイト公開前に特許権の出願をしておきましょう。

また、事前に特許権、商標権、著作権が出されていないかも確認し、逆に自社が知的財産権を侵害していないかもチェックしておきましょう。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングにはいくつか種類がありますが、代表的な以下の4つのクラウドファンディングを紹介します。

代表的な4つのクラウドファンディング

  • 購入型クラウドファンディング
  • 株式投資型クラウドファンディング
  • 寄付型クラウドファンディング
  • 融資型クラウドファンディング

 

購入型クラウドファンディング

購入型クラウドファンディングとは

画像出典元:「CAMPFIRE ACADEMY」公式HP
 
購入型クラウドファンディングとは、発案されたプロジェクトに対して、支援者が資金を支援し、そのリターンとして物やサービスを得る仕組みのクラウドファンディングで、広く一般に知られているクラウドファンディングの仕組みと言えます。
購入型の場合、原則として起案者が募集の際に設定した物やサービスがリターンとなり、金銭はリターンになりません

購入型のメリット・デメリット

    • 購入型のメリット
      クラウドファンディングの中でも世間一般に浸透しており、わかりやすいためSNSなどで拡散されやすく、知名度のアップが期待できる点が挙げられます。

    • 購入型のデメリット
      購入型の募集方法として、「All-or-Nothing方式」と「All-in方式」があり、「All-in方式」の場合は、資金が足りなくてもリターンを準備しなければなりません。
      「All-or-Nothing方式」:目標金額に達しなければ、資金は支援者に返金
      「All-in方式」:目標金額に達しなくても、募集期間内に集まった資金は受取り可能。
              但し、発案者はプロジェクトを実行し支援者にリターンを返す必要あり。
      元々ある程度資金がある場合は「All-in方式」、資金がない場合は「All-or-Nothing方式」を選択しないと、リターン工面に苦労することがあります。
      プロジェクトに最適な募集方法を事前に検討しましょう。

成功事例

数が多いだけにさまざまな成功事例が挙げられ、近年では大規模なプロジェクトを成功させて、テレビに取り上げられるケースもあります。

『この世界の片隅に』アニメ映画化プロジェクト

出典元:Makuake


2016年11月に公開され、累計400館以上もの映画館で上映、公開から600日経っても上映され続けている大ヒット映画『この世界の片隅に』。この映画の制作資金はなんとクラウドファンディングでまかなわれました。

2,160円(税込)〜1,080,000円(税込)まで幅広い金額での支援枠が設けられ、内容も「映画のエンドロールに自分の名前が出る」「監督のトークショーに招待」などさまざま。ライト層から熱心なファンまで自分に合った金額で支援できるようになっています。

「夜の図書室」オープンプロジェクト

出典元:CAMPFIRE


夜も営業していて、お酒も飲める図書室を渋谷にオープンするためのプロジェクトです。オープン時はテレビの取材が来るなど、多くの人の注目を集めました。500円〜150,000円まで、こちらも幅広い金額のリターンが選べるようになっていて、「ちょっと気になる」という人から企業まで、幅広い層が支援できるようになっていました。

      • 共感を呼ぶプロジェクトであること
      • リターンが魅力的であること
      • 数千円〜10万円超まで、幅広い支援額を設定すること

購入型クラウドファンディング成功の条件と言えるので、購入型クラウドファンディングを使うときは参考にしてみましょう。

購入型クラウドファンディングサイトの一覧

寄付型クラウドファンディング

寄付型クラウドファンディングとは

画像出典元:「CAMPFIRE ACADEMY」公式HP
 

寄付型クラウドファンディングとは、その名の通り発案されたプロジェクトに対し、支援者は支援目的で資金を寄付する仕組みのクラウドファンディングです。

寄付型が利用できるのは、自治体、学校法人、認定NPO法人、財団法人などの非営利団体のみになっています。

金銭面でいえば、寄付型クラウドファンディングでは寄付金控除を利用できるため、発案者・支援者共にメリットもあります。

寄付型のメリット・デメリット

    • 寄付型のメリット
      集まった資金は、「寄付金」として受け取ることができるため、寄付金収入は非課税になる場合があります。

    • 寄付型のデメリット
      寄付型クラウドファンディングでは、社会的意義がないと寄付が集まらないどころか、バッシングの的になることもあるため、内容はよく考えておきましょう。社会的意義がない場合は、購入型クラウドファンディングを使いましょう。

成功事例

スーダンの砂漠地帯で暮らす1万人に安全な水を届けたい!

出典元:Readyfor


スーダンの北コルドファン州には、300万人が住んでいますが、安全で清潔な水を飲めない人も多くいます。そこで1万人に安全で清潔な水を供給できるよう、井戸を建設するために、砂漠地帯でも動く四輪駆動車の購入費用を求めるプロジェクトです。

寄付金枠は3,000〜1,000,000円までありますが、300,000円と1,00,000円枠のスタッフが直接お礼とプロジェクトの実施報告に伺うコース以外のリターンは全部サンクスレターと活動報告書、領収書のみです。

それでも目標金額が500万円なのに対し、寄付総額が722万円と目標金額以上集まった理由としては、クラウドファンディング中に頻繁にページを更新してすでに寄付している人からさらなる共感を生み出したことにあります。

寄付型クラウドファンディングの場合、リターンが薄い分どれだけ共感されるページ作りができるかがポイントです。

『10月4日は里親の日』 全国一斉啓発OneLoveキャンペーン

出典元:日本こども支援協会


社会的養護で育っている子供は40,000人以上もいますが、里親は15,443世帯(平成28年3月末現在)とまだまだ不足しています。里親制度自体の知名度が低く、そんな里親制度の知名度を上げるためのプロジェクトです。

リターンはバッジと理事会への参加権・1日秘書権・サイトのトップページで1年間名前や会社名、ロゴを掲載と、バッジ以外は豪華なようにも見えますが、よく考えると大してコストはかかっていません。

寄付型クラウドファンディングではリターンにかける予算を抑えめに、寄付者からの資金をプロジェクトや事業に最大限に有効活用しましょう。わざわざお金をかけなくても、寄付者が喜ぶようなリターンの提供をすることも可能です。

寄付型クラウドファンディングサイトの一覧

株式投資型クラウドファンディング

株式投資型クラウドファンディングとは

 
 

株式投資型クラウドファンディングとは、非上場企業の株式を発行することで、インターネットを通じて多くの投資家から少額ずつ資金を調達する仕組みのクラウドファンディングです。

投資家への利益の分配は株で行われ、投資家は非上場企業の株を入手できます。

特にスタートアップ企業の資金調達の方法の1つとして、2021年度には前年の2倍近い調達が行われました。

株式投資型のメリット・デメリット

起業家が投資型クラウドファンディングを使うメリットにはこのような点があります。

    • 株式投資型のメリット
      株式投資型クラウドファンディングを利用すれば、これまで限られた投資家やVCからしか投資を受けられなかった非上場企業であっても、少額取引の個人投資家から資金調達ができ、個人投資家へ自社の魅力をアピールしたりファンの獲得が可能になります。
      また、一般的に1~3か月と短い期間でスピーディに資金調達ができます。

    • 株式投資型のデメリット
      株式投資型クラウドファンディングのデメリットとしては、1年間の資金調達額が1億円未満と制限があること、原則として取扱業者を通じて取引を行うため、手数料を支払う必要があることなどです。

株式投資型クラウドファンディングサイトの一覧

株式投資型クラウドファンディングのより詳しい情報は、以下の記事をご確認ください。

 

融資型(ソーシャルレンディング)クラウドファンディング



画像出典元:「Teamクラファン」公式HP


融資型クラウドファンディングとは、インターネットを介してファンドの募集を行い、投資者からの出資をクラウドファンディングサービスを通して融資先企業に貸し付ける仕組みのクラウドファンディングソーシャルレンディングとも呼ばれています。

投資家は、元本の返済と共に月1回利息の中から利益の分配を得ることができます。

融資型のメリット・デメリット

  • 融資型のメリット
    過去に実績のないスタートアップやベンチャー企業であっても、今後の事業計画や成長性が分かれば融資を受けられる点、また1万円~など少額投資が可能なので、投資家にとっても投資しやすい、元本価格の変動がない点などが挙げられます。

  • 融資型のデメリット
    あくまでも「融資」なので、集めたお金を返済する必要があること、投資家の目を引く利回りに設定しないとなかなか投資してもらえない、1口の額が少ないこともあるので目標金額に達しないこともあるなどがあります。

融資(貸付型)クラウドファンディングサイト一覧

 

クラウドファンディングの有効活用で効率的な資金調達をしよう!

起業家はクラウドファンディングを有効活用することで、効率的な資金調達ができます。

特に斬新で話題性があるものやサービスでクラウドファンディングをすれば、通常の資金調達にはないメリットを得られます。

  • 銀行の審査を通さずに資金調達できる
  • 中長期的に応援してくれるファン作りができる
  • テストマーケティングができる

そのため、サービスの知名度アップを狙いたい起業家・企業や、銀行の審査に通らない起業家・企業にとっては便利です。

一方で

  • BtoBサービスなどで、共感によって広く拡散されることが期待できない
  • サービスを展開するまで世間に出したくない

場合には、クラウドファンディングは向いていないので、別の資金調達方法を検討しましょう。

またクラウドファンディングと一口に言っても、さまざまな種類のクラウドファンディングがあります。企業やそのサービス、製品によっても向き・不向きがあるので、事前によく調査した上でクラウドファンディングを使いましょう。

画像出典元:Pexels

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