融資型(貸付型)クラウドファンディングとは?仕組み・リスク・リターンを解説

融資型(貸付型)クラウドファンディングとは?仕組み・リスク・リターンを解説

記事更新日: 2023/09/11

執筆: 浜田みか

融資型(貸付型)クラウドファンディングとは、資金が必要な企業に対し、個人投資家から集めた少額の資金をファンドを通じて大口化し、貸付を行う仕組みです。

比較的安定したリターンが見込みやすく、個人投資家からも、資産運用に向いた投資商品として注目を集めています。

今回は、そんな融資型クラウドファンディングとは何か?その仕組みから、どんなリスクがあり、どのようなリターンが望めるのかについて徹底解説をします。

融資型(貸付型)クラウドファンディングとは

資産運用に向く投資商品

クラウドファンディングには、主に5つのタイプがあります。

融資型クラウドファンディングは、貸付型クラウドファンディングやソーシャルレンディングとも呼ばれ、これらさまざまな投資商品のうちの一つです。

  • 寄付型
  • 購入型
  • 株式投資型(有価証券型)
  • ファンド型
  • 融資型(貸付型)


「寄付型」は、事業やプロジェクトに対し支援者がお金を寄付する仕組みで、応援することがメインなのでリターンが用意されていない場合もあります。

「購入型」は、事業やプロジェクトに対しお金を出してくれた支援者に、リターンとして商品やサービスを提供する仕組みです。

この2つのタイプは、投資した側は金銭以外のリターンを受け取るのが特徴です。

一方、「株式投資型」は、非上場企業の株式に投資し、配当金や、新規上場等に伴う値上がり益をリターンとして受け取ります。

投資先はベンチャーやスタートアップが多く、投資先が倒産する可能性もあり、また、IPOやバイアウト(M&A)までに時間がかかるケースもあるため、高い収益を得るには長期的な時間がかかる場合があります。

そのため、短期間で高い収益を得たいと考える投資家には株式投資型クラウドファンディングはあまり向いていないかもしれません

そんな中でも、「融資型クラウドファンディング」は、資産運用に向くタイプと言われます。

融資型クラウドファンディングの場合は、クラウドファンディングサービス運営会社を通じてファンド企業へ融資(貸付)を行います。

融資には期限があるため、元本割れや貸し倒れが起きない限りは、満期を迎えると元本が戻ってきます。

期間内は、返済金の一部が分配金として投資家に割り当てられるので、株式投資型よりも安定的にリターンを期待することができます

 

市場規模も拡大中

一般社団法人日本クラウドファンディング協会の「クラウドファンディング市場調査報告書」によると、融資型クラウドファンディングの市場規模はクラウドファンディング全体の6割強を占める大きな市場です。

■融資型クラウドファンディングの市場規模
2017年 1,316億円
2018年 1,764億円 (前年度比 +448億円)
2019年 1,113億円 (前年度比  -651億円)
2020年 1,125億円 (前年度比   +12億円)

2018年に大手ソーシャルレンディング業者での不正流用問題で、金融庁の行政処分が行われたこともあり、2019年は縮小していますが、2020年には再度復調の兆しを見せており、今後も規模は拡大していくとみられています。

融資型(貸付型)クラウドファンディングの仕組み

融資型(貸付型)クラウドファンディングの仕組み

融資型(貸付型)クラウドファンディングでは、融資を受けたい企業がクラウドファンディングサービス運営会社を通じて、融資を集めます。

なお融資の募集の際には企業情報は公開されず、匿名のファンドとして融資の募集が行われます。なぜ匿名で資金が集められるかは、後ほど詳しく説明します。

投資家は、興味のあるファンドに出資をし、クラウドファンディングサービス運営会社を通じて企業へ融資します。

融資された企業は、クラウドファンディングサービス運営会社に対し、返済金として融資された元本に金利を乗せた金額を月々返していきます。

クラウドファンディングサービス運営会社は、返済金の中から手数料を引き、残った分を出資した投資家へ分配金として割り当てるのです。

元本保証されていない分配金は、元本割れすることもあります。

融資型(貸付型)クラウドファンディングが低リスクの理由

融資型クラウドファンディングが低リスクだといわれているのは、期限付きの融資という形で出資することにくわえて、融資を受ける企業の返済能力をクラウドファンディングサービス運営会社が予め審査しているため、リスクの高い企業へ出資する可能性が低くなっているからです。

また、クラウドファンディングサービス運営会社によっては、返済能力や経営状態から融資先の企業をランク付けし、過去にファンドで融資を集めた際の返済実績を公開するなどして、投資家が安心して出資できる仕組みをつくっているところもあります。

このほかにもクラウドファンディングサービス運営会社では、万が一の貸し倒れで投資家が大きな損失を受けないように、担保や保証が付いているところもあります

ファンドの企業名が開示されない理由は『匿名組合契約』

融資型クラウドファンディングでは、他のクラウドファンディングとは異なり、融資先の企業名が公開されていません

これは貸金業法によって、禁止されているためです。通常、特定の人物あるいは事業者が継続的に他人に金銭を貸し付けるには、貸金業法で定められた免許が必要です。

しかし、投資家は貸金業者ではないため、そういった免許は持っていません。そのため、投資家がさまざまな企業に対して継続的に貸し付けをおこなうと、貸金業法に抵触してしまいます。

これを避けるには、クラウドファンディングサービス運営会社が仲介し、投資家がどこの企業に出資しているのか判断できない状況をつくる必要があります

これを可能にするのが『匿名組合契約』です。投資家とファンド企業がこの契約を結ぶことによって、お互いに匿名で出資をしたり受けたりすることができるのです。

金融庁の匿名化解除に関する見解

この匿名化は、借り手企業の名前が伏せられていることが投資家の不安材料になるという点と、また、匿名での調達を悪用する運用業者が出てきたことなどが度々問題視されてきました。

そのため、平成31年3月18日金融庁が匿名化解除への公式見解を発表。

事業スキーム・貸付事業者・ファンド販売業者についてそれぞれ一定の要件を満たす場合であれば、融資先の匿名化・複数化は不要とされることとなりました。

これを受けて、運営業者各社では、順次各社の基準・判断に基づき、情報公開をスタートさせています。

気になる融資型クラウドファンディングサービスがある場合は、各社のHPで開示状況を確認してみましょう。

有名な融資型(貸付型)クラウドファンディングサービス

融資型クラウドファンディングはまだまだ新しい仕組みであるため、実績あるサービスを利用するのがリスクを下げるためのポイントです。

ここでは、特に知名度の高いクラウドファンディングサービスを紹介します。

クラウドクレジット

画像出典元:クラウドクレジット公式HP

1番におすすめするのは、「クラウドクレジット」です。

クラウドクレジットは、南米や欧米、新興国などの海外案件に特化したソーシャルレンディング運営事業者です。

大手総合商社の伊藤忠商事株式会社が20%近い株式を保有しているため、リターンの大きさに期待できます。また、投資家への情報発信が積極的です。

このほか、投資家が気になるリスクに関しても、ファンド内で貸付を分散させ、貸倒れの可能性を下げる努力も見られます。

・最低投資額:1万円~
・貸付期間:1年以上~が多い
・平均利回り:4.2%~9.3%(2022年7月時点)


運用実績を見やすく公開している
点も特徴的で、安心感をもって利用することができます。

クラウドクレジット公式HP

 

 

Funds

画像出典元:Funds公式HP


貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」は、2019年にサービス開始した比較的新しいソーシャルレンディングです。

すべてのファンドに1円単位から投資ができ、投資に関する手数料も無料(振り込み手数料はあり)な点がメリットです。

また、クーポンの提供やイベント参加など「Funds優待」があるファンドがある点も特徴的です。

・最低投資額:1円~
・貸付期間:2ヶ月などの短期~中期間が多め
・平均利回り:1%~6%(2022年7月時点)

 

クラウドバンク

画像出典元:クラウドバンク公式HP

 

クラウドバンク」は、日本クラウド証券が運営する、ソーシャルレンディングサービスです。

運営会社が証券会社(第1種金融商品取引業者)のため、金融商品取引法によって求められる高い財務基準をクリアした信頼感の高いサービスを受けられる点がメリットです。

また、累計募集金額はソーシャルレンディング業界で国内最大手であり、2022年7月現在、元本回収率100%である点も強みです。

・最低投資額:1万円~
・貸付期間:1年前後の案件が多めだが幅広く提供
・平均利回り:5.80%(2022年7月時点)

 

融資型(貸付型)クラウドファンディングのリスクと回避法

1. 運営会社の倒産

融資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングサービス運営会社を介して出資をおこないます。投資家は、出資先企業がどこなのか知ることができません。

そんな状況で、運営会社が倒産してしまえば、分配金が入って来ないばかりか、出資したお金が戻ってこなくなってしまうこともありえます。

リスク回避策

運営会社を選定する際に「分配管理」をおこなっている会社かどうか、確認してください。

分配管理とは、運営会社がおこなう資金管理の方法の一つです。投資家から預かった資金から運営費を差し引いた資金を、運営費とは別に管理することです。

分けて管理をすることによって、運営会社が倒産することになっても、手を付けていない資金から多少なりとも出資した資金が戻ってきます。

出資する前の口座開設の段階で、必ず規約を確認しておくようにしましょう。規約には必ず、会社が倒産した場合の対応についても書かれています。

出資をした後は、定期的に運営会社の経営状況を把握するようにします。どこの運営会社もインターネット上に決算書を公開しています。

経営状況が芳しくないと判断したら、新たな出資はせず被害が最小限に済むようにしましょう。

運営会社によっては元本保証サービスを謳っているところもありますが、このサービス自体も運営会社が健全であってこそです。

運営会社に体力がなくなりつつあるのであれば、元本は戻ってこない、僅かでも戻ってくればいいほうだと思っておいたほうがいいでしょう。

 

2. ファンドの元本割れ・貸し倒れ

出資先の企業が倒産すると、そのまま貸し倒れてしまうことがあります。

企業情報は開示されていないため、決算書の確認などもできず、投資家は運営会社が掲示している信用度で判断したり、過去の実績で判断せざるを得ません。

リスク回避策

融資するファンドは1つに集中せず、複数のファンドを選択するようにします。また、運営会社も1社だけにせず、複数の運営会社で出資をおこない、分散投資を行いましょう

1つのファンドに資金全額を出資してしまうと、元本割れや貸し倒れがあったときに資金が回収できないリスクが高まります。これを避けるために、ファンドと運営会社それぞれで分散して出資するようにしましょう。

このほか、高利回りのファンドも注意が必要です。

一般的に融資型クラウドファンディングの年利は5%前後、低くて2%~高くても7%程までです。

しかし、高利回りののファンドは、出資者を確実に募るため、利率を引き上げてあることもあります。逆にいえば、こうしたファンドは利率を引き上げないと出資者が集まらないような、ワケありのファンドである可能性があります。

高金利のファンドを選択するときは、資金とのバランスを考えて出資するようにしましょう。

 

3. 途中解約できない

融資型クラウドファンディングは、運用期間が定められています。そのため期間中は、お金が入り用になり、解約をしたくなったとしてもそれができません。

リスク回避策

運用開始日をずらしたり、運用機関の異なるファンドに出資するなどして、元本が戻ってくるタイミングをずらすようにします。

資金を失ってしまうと投資どころではなくなってしまいます。資金全額を出資してしまわずに、資金に余裕を残した状態で少額ずつ出資するようにしましょう。

まとめ

融資型クラウドファンディングの仕組み・リスク・リターンについて解説してきました。

融資型クラウドファンディングは、資産運用に向いているクラウドファンディングです。

資金回収できる可能性が他のクラウドファンディングよりも高いので、投資初心者にも向いているといわれています。

しかし、ローリスクとはいえ、全くリスクがないわけではありません。ご紹介したリスク回避策を参考に、融資型クラウドファンディングで安全に投資するようにしてください。

 

画像出典元:PEXELS

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