起業ログTOP > 資金調達 クラウドファンディング > 起業家のための「株式投資型クラウドファンディング」完全マニュアル!
クラウドファンディングには「購入型」「寄付型」などさまざまな種類がありますが、今回はその中でも株式投資型クラウドファンディング(株式型クラウドファンディング)を紹介していきます。
未上場企業の株式を投資家が買う形式のクラウドファンディング。最近注目を浴びていますが、リスクをはらんでいるのも事実。
この記事では、株式投資型クラウドファンディングのメリットやデメリット、代表的なサービス、そしてリスクをわかりやすく解説していきます。
このページの目次
「株式投資型クラウドファンディング」とは、投資家に非上場企業の株式を買ってもらい、資金調達をするクラウドファンディングのことです。
クラウドファンディングには、リターンを作って購入者にはそれを買ってもらって支援する「購入型クラウドファンディング」や、社会貢献などによくある「寄付型クラウドファンディング」などがありますが、それとはまた違った形式のクラウドファンディングです。
日本では以前まで法律により禁止されていたものの、2015年に金融商品取引法が改正され、解禁されました。最近では、実際に株式投資型クラウドファンディングを取り入れる会社も増えてきています。
なお、購入型・寄付型などその他のクラウドファンディングとの違いについては以下の記事を参考にしてください。
株式投資型クラウドファンディングでは、クラウドファンディングサイトを通じて多くの人に自社を知ってもらい、ファンになってもらえます。
toCのサービスやプロダクトを提供する場合、ファンを作ることによるPR効果に期待することができます。
購入型クラウドファンディングの場合、リターンを作って支援者にお礼をしなければなりません。クラウドファンディングでなくても、融資を受ける場合には、当然返済が必要となります。
これに対して株式型クラウドファンディングでは、支援者は株の価格が上がることで利益を得るため、もらった事業資金を返済する必要がありません。
もちろん支援者(投資家)は会社がM&AやIPOをして利益を得ることを期待しているため、投資家の期待に応えるべく努力する責任が伴うことは肝に銘じておきましょう。
株式投資型クラウドファンディングでは、募集開始前にバリュエーション(企業価値)評価を行います。
このバリュエーション評価は公認会計士・税理士などの専門家によって行われるため、現在自社の価値がどのくらいあるのかを客観的にしることができます。
また「投資家にどこをアピールすればよいか」などもアドバイスしてくれるので、自社の強みを知ることができます。
株式投資型クラウドファンディングにはメリットがある一方で、当然デメリットもあります。
株式投資型クラウドファンディングの致命的なデメリットが、株主が増えることです。
通常の出資による資金調達では、VC(ベンチャーキャピタル)などから投資を受けるため、株主が急激に増えることはありません。
しかし、株式投資型クラウドファンディングでは20~30人の投資家から10~50万円ずつ出資を受けることになります。株主が急激に増えることによって、いくつかの問題が生じます。
どれだけ小口の株主でも、株主は会社の所有者です。当然、経営者には投資家に対する責任があります。
経営者は定期的に株主総会をおこなうなど、株主との関係性を保つための努力を行う必要がでてきます。
株主が20~30人いる場合、株主総会の準備や実施にかかる費用はばかになりません。
流動性が低く、リスクの高い未上場の会社に投資家が投資をするのはなぜでしょうか。それは一攫千金を狙っているからです。
投資家はあなたの会社が IPOかM&Aをして、大儲けできることを期待しているのです。
株式投資型クラウドファンディングで投資を受けた場合、その期待に応えられるよう最大限努力するのが経営陣の義務です。
途中で事業で投げ出すなんてことは許されません。
投資を受けるということは、それなりの責任とプレッシャーがかかることだと覚悟して臨む必要があります。
一気に株主が増えると、その株主がどんな人なのかなど知るよしもありません。あとで詳しく説明しますが、このことは大きなリスクです。
もし株主の中に、反社会的勢力に関わる人がいた場合、その会社は二度と上場できません。
株式投資型クラウドファンディングのサービスを提供している会社は、投資家の審査を行っていることを強調していますが、果たしてそれで安全と言いきれるでしょうか。
株主が増えるということはそれだけリスクも高まるということを覚悟しておくべきです。
企業ができる株式投資型クラウドファンディングによる資金調達は、年に1億円未満です。
そのため多額の資金を調達したい場合には向いていません。そのような場合は、VCから調達や融資の活用を検討する必要があります。
株式投資型クラウドファンディングで資金調達をした場合、次の資金調達が難しくなると考えられます。
基本的に、クラウドファンディングで資金調達した会社はVCから嫌われると思っておきましょう。
これは小口の株主があまりにも多いからです。
VCは経営陣と事業をみて投資の意思決定を行いますが、他の株主がいる場合、経営の意思決定に干渉される可能性があります。また人数が多いため、そのときの交渉も困難です。
VCからすると不確定要素が大きいため、嫌がられるのも仕方ないといえます。
株式投資型クラウドファンディングを利用するなら、次の資金調達ではハンデを背負う、あるいは次もクラウドファンディングで資金調達することを覚悟しておくべきです。
VCから出資や金融機関からの融資など、他の資金調達方法でも当然手間はかかります。しかし、株式投資型クラウドファンディングでは審査に手間と費用がかかることが特徴的です。
株式投資型クラウドファンディングでは、まず最初に審査を受ける必要があります。
これは投資家保護が目的で、これまでの経営で不正がないかなど、投資を募集して問題がない会社かをチェックされます。
このとき必要書類の提出などの手間がかかるほか、少なくても10万円、多い場合は200万円程度の費用がかかります。費用は当然審査に落ちた場合にもかかります。
また審査には通常3ヶ月程度かかります。
これだけの費用と時間をかけても、まったく資金調達できなかったということが起こりうることを知っておきましょう。
購入型クラウドファンディングのCAMPFIRE、Makuakeのように、株式投資型クラウドファンディングでも多くのサービスが登場しています。
起業家はこれらのサービス上で投資家を募集することができます。
FUNDINNO(ファンディーノ)は2018年10月27日現在、累計15億円以上もの成約をし、取引量日本No.1となっている株式投資型クラウドファンディングサービスです。
非常に勢いを感じるサービスで、一時期の仮想通貨業界のコインチェックをイメージしていただけると分かりやすいのはないでしょうか。
審査は厳しいです。企業の登録にあたっては法律を遵守しているか、革新性はあるか、独自性はあるかといった項目を公認会計士や弁護士、税理士などが厳しくチェック。満場一致でなければダメという審査です。
審査には10~100万円がかかります。
募集が成立した場合、発行価格の総額の20%(税込:21.6%)が手数料としてかかります。
また企業情報開示のサポートサービスの提供に対して、資金調達成立の1年後から毎月5万円(税込:5万4千円)がかかります。
手数料20%には、募集時のバリュエーション評価・BS / PLなどの投資家向け資料の作成費用が含まれています。
資金調達後のサポートが月5万円というのも、比較的リーズナブルな料金設定だといえます。
VCなどのプロの投資家がすでに投資している企業に対して、投資できる株式投資型クラウドファンディングサービスです。
起業家からすれば、すでに一度VCやエンジェル投資家から投資を受けていなければ、利用することができません。
また特徴的なのが、株式ではなく新株予約権をリターンとして渡すという仕組み。
株式投資型クラウドファンディングのデメリットである、株主が急激に増えるというデメリットをカバーできる仕組みになっています。
募集が成立した場合、発行価格の総額の20%(税込)が手数料としてかかります。
別途、審査にも費用がかかります。
GoAngel(ご縁ジェル)はその名の通り「縁をつなぐ」ということを重視しているのが特徴的です。
幅広く投資家を募集したいというよりかは、株式型クラウドファンディングを通してファン形成をしたいという企業に向いているといえます。
他社では会社側が負担する手数料を、投資家が負担するというのが特徴的です。なお手数料率は10%程度です。
会社が負担するのはバリュエーション算定、開示する事業計画やIR情報等の作成コストです。これらの費用は合わせて、50万円~200万円程度です。
現在まだ事前登録受付中の段階の株式投資型クラウドファンディングサービスです。
投資家が1社あたり年間 50万円までスタートアップ投資を行うことができるプラットフォームです。
株式投資型クラウドファンディングを使う場合に成功させるためのポイントを紹介します。
株式型クラウドファンディングの場合、非上場企業の株式に投資するので、投資家は将来どこまで会社が大きくなるかを見据えて投資します。
そのため、将来性を感じてもらえるサービス内容を打ち出すと、支援を受けられやすいです。
株式型クラウドファンディングは、購入型クラウドファンディングに比べると、SNSで拡散されません。
ただしクラウドファンディングであるため、公開後は多くの人が見ます。そしてページを閲覧した人に投資されるには、金銭面での将来性だけではなく、共感されやすさも必要です。
株式投資型クラウドファンディングは通常の株式投資に比べて、投資する会社を「応援する」という気持ちも大きいです。
投資をする人が「自分はこんな素晴らしい事業をしている会社に投資をするんだ」と思えるような見せ方をすることが重要なのです。
株式型クラウドファンディングでは、IPOやM&Aされないと投資家は株式を返してもらえず、収益を得られません。
投資をする人もばかではありませんから、のちのちM&Aされやすそうな企業を選んで投資する人も多くいます。
大企業が興味を持ちそうな注目分野での事業、業界構造的に参入障壁が高い領域などは、自然と投資も集まりやすくなるでしょう。
株式投資型クラウドファンディングのデメリットはさきほども紹介した通りですが、あらためて反社会的勢力に関するリスクについて説明します。
もしクラウドファンディングによって、出資を受けた投資家のなかに反社会的勢力に関わる人がいれば、上場をすることができなくなります。
利用しているサービスで、どのくらい投資家に対する反社チェックがなされているかを確認することが重要です。
たとえばファンディーノでは投資家向け取引約款の第6条・第7条で反社会的勢力への対応について定めています。
具体的には、以下のような対応をしていることが読み取れます。
まず投資家登録時に反社チェックを実施(第6条)
また株式購入後に投資家に反社がいることが分かった場合、あるいは反社になった場合には、投資家が保有する株式を、当該株式の発行者又は発行者が指定する第三者に購入価額で譲渡(第7条)
ファンディーノでは、投資家に反社が入れない、また万が一反社が入った場合にも起業家側への損害を極力少なくする仕組み作りがなされていることが分かります。
株主に反社会的勢力がいたことによって上場できなかったときに、クラウドファンディングサービスは必ずしも責任をとってくれません。
自分と自分の会社を守るためにも、利用しようとしているサービスがきちんとリスクに対処できているかは必ず自分でジャッジするようにしましょう。
よくこういった話には自分には関係ないことだと考える人がいますが、決してそんなことはありません。
以下の記事では、経営者として知っておくべき反社会的勢力に関する知識をまとめていますので、この機会にぜひ読んでみてください。
株式投資型クラウドファンディングのメリットやデメリット、代表的なサービス、そしてリスクを解説してきました。
得られるメリットとそれに伴うリスクをよく考えて利用するようにしましょう。
以下の記事では株式投資型クラウドファンディング以外の資金調達方法についても解説しています。他の資金調達方法もあわせて検討しましょう。
画像出典元:Pexels
少人数私募債で資金調達とは?メリット・デメリットと手順を解説!
起業の羅針盤 ~起業家が事業フェーズ毎に直面する課題と解決策~〈→0〉起業前夜編(随時アップデート)
反社会的勢力について経営者が必ず知っておくべきこと
増資のメリット・デメリットから手続き方法まで徹底解説!
第三者割当増資の目的やメリット・デメリット、手続き方法まで徹底解説!
200社以上のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を一覧で総まとめ!
上手い話には裏がある。エンジェル投資家から出資を受けるリスクとデメリット
【最新版】国内外VC(ベンチャーキャピタル)一覧 | 投資先まで徹底紹介!
東証マザーズ上場基準とは?上場準備のための基礎知識
持ち株比率と株主権利の関係 | 経営権を守るために必要な比率は?
人気の「CREAL(クリアル)」の特徴や評判を徹底調査!安心して利用できる?
不動産投資型クラウドファンディングとは?仕組みとおすすめサービスを紹介
株式投資型クラウドファンディングの資金調達は併用できない?投資型CFの実際
代金先払いで行きつけを応援!飲食だけではない先払いサービス5選
株主数が多いとIPOできない?投資型クラウドファンディングの実際
投資型クラウドファンディングとは?種類とメリット・デメリットを解説!
【保存版】ファンディーノの評判は?断トツおすすめな理由を徹底解説
融資型(貸付型)クラウドファンディングとは?仕組み・リスク・リターンを解説
株式投資型クラウドファンディングは儲かるの?メリットとリスクを解説
クラウドファンディングのやり方と成功のコツを事例を使って徹底解説