スタートアップの資金集めではとても便利なクラウドファンディングですが、どのように行うのかわからない起業家や起業家志望の人も多いはず。
そこで今回はクラウドファンディングのやり方を解説します。
基本的な流れに事例を加えて、クラウドファンディングを成功させるコツも紹介していきます!
このページの目次
クラウドファンディングとは、広く資金を公募してプロジェクトの資金を集めることです。
有名な事例としては、映画『この世界の片隅に』を製作するときや、月面探査レースに参加した日本チーム「HAKUTO」の活動資金を募るときに使われました。
クラウドファンディングには購入型、寄付型、融資型、投資型がありますが、今回は中でももっともメジャーな購入型クラウドファンディングのやり方を解説していきます。
クラウドファンディングとは何か、クラウドファンディングの種類から知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
基本的には必要最低限の金額にしましょう。それ以上増やしたい場合、「ストレッチゴール」が活用できます。
ストレッチゴールとは、当初の目標金額が達成されたときに、追加される目標金額のことです。
例えば「100万円集まったらシングルCDを制作する」が当初の目標金額の場合、「130万円集まったら未発表曲を発表する」、「160万円集まったらMVを制作する」といった具合に、目標金額を追加していくことで、支援者のモチベーションを引き上げつつ、集める金額を増やすことができます。
また「こういうことがしたいので、いくら必要なんです!」といった具合に、なぜその金額が必要なのかをしっかりアピールすることが大切です。これも支援者のモチベーションを引き出すことができます。もしできるなら、かかる費用の明細を作るのもいいでしょう。
目標金額を設定したら、次にリターンを考えましょう。リターンの種類は支援者が自分に合ったリターンを選べるように、金額別に3〜8種類あると良いです。
クラウドファンディング最大手の「CAMP FIRE」の統計によると、5,000〜10,000円の支援が一番多いそうです。
この価格帯に支援者が魅力的に感じるリターン(例:支援者だけが参加できるイベント、商品の送付など)を設けることで、支援されやすくなります。
またこの値段帯は人気なので、なくなっても在庫を手軽に追加できるものだと、なお良いでしょう。
企業が10万円以上の大口支援をするケースもあります。そのような場合に備えて、企業向けの大口リターンも考えておくことも効果的です。
クラウドファンディングの概要と目標金額が定まったら、各クラウドファンディングサイトからプロジェクトを立ち上げましょう。プロジェクトを成功させたい場合、キャッチコピーやキャッチ画像も重要なので、しっかり考えましょう。
この時スタッフに相談すれば、アドバイスをもらうこともできるので、初心者で成功させる自信がないなら、積極的に活用しましょう。
プロジェクトが始まったら、プロジェクトを宣伝しましょう。SNSなどで友人に呼びかけるのはもちろん、使える人脈は全部使って拡散を狙います。
このときにポイントになるのは、「どれだけ共感を呼べるか」です。
期間中にページの文言を変えてもいので、(ただし概要とリターンは変えてはいけない)とにかく人の共感を呼ぶ宣伝を考えてください。
プロジェクトスタート時に設定した期間が終わると、目標金額に届いていても、届いていなくても、プロジェクトは終了します。
このときに集まった支援金を受け取りますが、All-or-Nothing 形式で目標金額に届かなかった場合、集まった支援金は受け取れないので注意が必要です。
All-In 形式だと、目標金額に届かなくても支援金は受け取るいことができます。
クラウドファンディングが終了したら、リターンを支援者に配布します。このときに配布を忘れると、詐欺案件として炎上することも考えられるので、必ず配布するようにしましょう。
クラウドファンディングにおける「失敗」とは、ズバリ「目標金額を集められなかった」ことを指します。ここでは、よくある失敗例を紹介します。
プロジェクトに思わずSNSでつぶやきたくなるような魅力がないか、拡散活動を怠ったことが原因です。
主催者にある程度のファンがいるならそのファンから目標金額を調達できますが、そうもいかない場合はなお一層プロジェクトの拡散具合がポイントとなります。
PRの方法を必死に練りましょう。
プロジェクトを進めている途中で、実現不可能なアイデアであることが発覚したパターン。
例えば、洗剤なしで洗濯できるボール「Crystal Wash(クリスタル ウォッシュ) 2.0」は、当初画期的なアイデアとして注目を浴びたものの、科学的根拠が取れていない技術を使っていたため、「効き目がないのではないか」と世論から厳しい目を向けられ、最終的にプロジェクトは白紙になってしまいました。
日本のクラウドファンディングでもっとも多額の金額を集めたプロジェクトでも、1.2億円しか集めていません。(2018年10月現在)
ところが、イギリスでは映画『ロードオブザリング』に登場する巨大都市「ミナス・ティリス」を現実で再現するプロジェクトが、建築家チームによって立ち上がりました。
目標金額はなんと日本円にして3,600億円。もちろんこのプロジェクトは目標金額が多額すぎるため失敗しました。
これもよくある失敗例です。
SKULLY (スカイリー) AR-1というナビゲーションをヘルメット内に内蔵しているバイクヘルメットが過去にクラウドファンディングサイトにてプロジェクトとして立ち上がりましたが、集めた資金は創業者の高級スポーツカー代や、ハワイ旅行代で使い果たされた…という事例があります。
その後会社は破産。支援者への返金はなく、商品が届くこともありませんでした。
クラウドファンディングでは、そのプロジェクトが募集ページに書いてある通りに実行されることを前提として、資金集めをします。
そのため途中で計画をストップした場合は、社会的な信用を落としてしまうこともあるのです。あらかじめ法律や技術的に実現可能であるか、リサーチしてからプロジェクトを立ち上げましょう。
クラウドファンディングは、資金が入金されるまでに時間がかかります。
クラウドファンディングでは、プロジェクトが完了してから入金されるため、プロジェクトが完了するまでの時間と、完了してからの時間がかかってしまいます。
もしも「今すぐ」資金が欲しいのであれば、融資や出資など別の方法を検討しましょう。
クラウドファンディング ではまだ販売していない商品アイデアを後悔することになるため、アイデアをパクられて先行されるリスクがあります。
イスラエルの起業家・Yekutiel Shermanさんは、スマホケース付き自撮り棒「STIKBOX」を開発し、クラウドファンディングで400万円の資金調達を開始しました。すると1週間後に中国のネットショップで類似品が販売されていることが発覚しました。
プロジェクトの途中、Yekutiel Shermanさんは向こうがあとから模造したにも関わらず、「Yekutiel Shermanさんがパクった」と支援者から言われることも。
その後、プロジェクトは成功し、商品も品質が高いことからヒットを果たすことができました。しかし、一定の顧客が模造品に流出したことは売上にも響いたはずです。
こうの史代原作のマンガ『この世界の片隅に』をアニメ映画化するプロジェクトです。
目標金額2,160万円のところ、3,900万円もの支援金を集め、2016年11月には女優ののん主演でアニメ映画化を果たしました。
映画はロングヒットを記録し、2018年12月には『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の公開へとつながりました。
もちろん『この世界の片隅に』自体の人気があった点も成功の要因なのですが、2,160円〜1,080,000円と幅広く支援枠を用意したことや、10,800円コースでは片渕須直監督も参加するファンミーティングをリターンに設定し、支援者のモチベーションを上げたことも成功の要因です。
ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが「カッコいいラジオが欲しい」と思い、カッコいいラジオを作るためにスタートしたプロジェクトです。
声にフォーカスしているため、ラジオの音声が聞き取りやすく、Bluetoothでスマホとつなげられるので、ラジオで流れた曲が流れたあとにすぐわかるようになっており、ラジオの最先端を行く仕様となっています。
目標金額1,300万円のところ、3,000万円以上を集め、大成功を収めました。もちろん吉田尚記アナウンサーの人気や、ニッポン放送の拡散力がある点も成功の要因といえますが、ラジオはお世辞にもカッコいいと言えるデザインのものが多くなかったため、需要があった点も成功の要因といえるでしょう。
「こんなのあったらいいな」を形にした好例と言えます。
予防医療普及委員会が立ち上げた、ピロリ菌検査キットを作るためのプロジェクト。目標金額は1,000万円でしたが、1,300万円を集めてフィニッシュしました。
堀江貴文らのインフルエンサーが予防医療普及委員会におり、インフルエンサーの拡散力を使えたのも成功した要因の1つともいえますが、プロジェクトページにはビッシリとピロリ菌検査キットに対する思いが書かれています。
支援者の共感を呼ぶことで、拡散や支援を促し、成功させたプロジェクトといえます。
CAMPFIRE 公式HP
2011年6月にサービスをスタートしたクラウドファンディングサービス。日本のクラウドファンディング業界において草分け的存在で、日本最大級の規模を誇ります。
クラウドファンディングサービスが乱立する中、プロジェクトのフィルタリングやサポートが充実しているため、初めての人でも安心して使えるのが特徴です。
Radyfor(レディーフォー)公式HP
2011年3月にオープンしたクラウドファンディングサービス。
CAMPFIREと並んで日本のクラウドファンディング業界において先駆け的存在であり、こちらもクラウドファンディングサービスとしては日本最大級の規模です。
「准認定ファンドレイザー」という資格を取得したスタッフがサポートをするため、本格的なサポートが期待できます。
Makuake(マクアケ)公式HP
サイバーエージェントが運営するクラウドファンディングサービス。スタートしたのは2013年で、Ready forやCAMP FIREと比べると2年遅いものの、高い知名度があります。
サイバーエージェントのネットワークを生かしてプロジェクトの拡散・「Makuakeアナリティクス」で支援者の年齢層や性別の市場調査ができるので、プロジェクトを多くの人に知ってもらいながらターゲット層のマーケティングもでき、クラウドファンディングの先を見据えたプロジェクトが起こせる点が強みです。
また1案件につき1人担当が付いているので、プロジェクトのスタートからゴールまで手厚いサポートが受けられます。
クラウドファンディングは、目標金額・概要決定→各サイトでページを立ち上げる→クラウドファンディングに挑戦→終了・リターンを支援者に返す、という手順を踏めば誰にでもできます。
クラウドファンディングをするまでには、手間がかかるので、その手間をムダにしないためにも、失敗例や成功例から学び、自分たちなりにベストなプロジェクトを遂行しましょう。
またクラウドファンディング以外にも資金調達手段は多くあります。
以下の記事では資金調達の方法ごとのリスク・注意点を多くの失敗事例とともに解説していますので、こちらぜひ参考にしてください。
画像出典元:写真AC
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