※本記事は日本クラウドキャピタルによる寄稿記事です。
株式投資型クラウドファンディングを検討されている方から、「株式投資型クラウドファンディングで資金調達すると他の資金の出し手から調達できないってホント?」という話を聞く事があります。
株式投資型クラウドファンディングで資金調達した後に、他の資金の出し手からの資金調達に成功している企業は存在しているにもかかわらず、何故この様な話が出てきているのでしょうか?
今回は、エクイティ・ファイナンスとは何かという点と合わせて、以下の目次に沿って解説していきたいと思います。
このページの目次
株式投資型クラウドファンディング(FUNDINNO)で資金調達した後に、その他の資金の出し手からの資金調達に成功している企業は複数社存在しています。
以下、プレスリリース等で公表している事例をご紹介させていただきます。
弊社調べより
上記でご紹介したように、株式投資型クラウドファンディングで資金調達した後にも、他の資金の出し手による資金調達に成功している企業は複数社存在しています。融資ではなく増資という形です。
ここで、あらためて「エクイティ・ファイナンスとは何か」について触れていきたいと思います。
ベンチャー企業の資金調達手法のひとつに、株式発行による増資(エクイティ・ファイナンス)があります。
「エクイティ・ファイナンス」とは、「エクイティ=株式」による「ファイナンス=資金調達」のことです。
反対に、借入れによる資金調達は「デット・ファイナンス」で、銀行からの融資などが挙げられます。
成長企業においては、成長への投資を行う事から赤字の状態が続く事もあり、銀行からの融資が必ずしもできるとは限りません。
一方、エクイティ・ファイナンスによって調達された資金は、返済の必要がなく、配当の絶対的な義務もありません。
企業の成長を加速させるために必要な資金がエクイティ・ファイナンスなのです。
従来、ベンチャー企業のエクイティ・ファイナンスの方法としてVCからの出資が一般的でした。
VCからは大きな金額の出資を受けられ、事業を推進するうえでのアドバイザーとしての役割を担っています。間違いなくベンチャーファイナンスを支えてきた救世主です。
VCは機関投資家等から資金を集めてファンドを設立することが一般的です。
当然資金の出し手の期待利回りに応える必要があります。そういった中で、出資の際にはいくつかの条件提示があることもあります。
場合によっては、ベンチャー企業側にとって厳しい条件もある場合もあるでしょう。
また、VCは少数精鋭でチーミングされていることがほとんどですので、出資数には、資金的にも機会的にも限りがあります。
国内に眠る数多くの有望な企業すべてにその機会が提供されないということもあったでしょう。
そのような、エクイティ・ファイナンスへの課題に対する取り組みとして、国策の中で生まれた仕組みが株式投資型クラウドファンディング(ECF)と呼ばれる資金調達方法です。
起業家はエクイティ・ファイナンスで資金調達するタイミングと発行する株といったもので留意することはあるのでしょうか。
ここでは株式投資型クラウドファンディングと主要プレーヤーであるVCの特徴をみていきたいと思います。
・株式投資型クラウドファンディングの場合
株式投資型クラウドファンディングのプラットホーム企業が、自らベンチャー企業に資金を出資することはありません。
あくまで、個人のエンジェル投資家とベンチャー企業をマッチングする役割です。
対象企業は企業価値が数億円~20億円であるシード・アーリー期の企業が多いのが現状です。
2020年現在、規制で調達額にキャップがあるのも1つの要因となっています。
なお株式投資型クラウドファンディング各社は資金調達した後は、企業の成長をサポートし、取引先の紹介や次回ラウンドのVCを紹介、広報のサポートなど、調達後のサポートも行っています。
FUNDINNOにおいては投資家登録が2020年4月現在で2万5千人を超えていますので、ある意味数万人の投資家にピッチができるという事は、大きなメリットといえるかもしれません。
なお、近年では、既にVCや他の資金の出し手から資金調達を行った企業が、自社を応援してくれるファン投資家の獲得に向けて、株式投資型クラウドファンディングを利用して調達する事例も出てきています。
・VCの場合
VCはVC自体が、ベンチャー企業に出資を行います。
対象はシードからレイターまで、幅広く支援を行います。
シード専門のVCはシード期から出資しますが、多くのVCは企業価値が10~100億円までのアーリー期~レイター期までのシリーズA、成長期のシリーズB・C、成長期のシリーズC・Dを対象としています。
出資後も事業進捗のアドバイザーとしての役割を果たします。積極的に経営に関与し、ノウハウや人脈などのネットワークの提供などの協力が得られるVCも存在します。
以下、主たるVCの一覧です。
週刊東洋経済 2019年8/24号『マネー殺到! すごいベンチャー100』p36-37より作成
株式投資型クラウドファンディングでは普通株式を用いることが一般的です。最近では新株予約権もでてきています。
普通株は一般的に創業者や従業員、エンジェル投資家や、取引先などに対して発行されます。
一方、社外取締役に就任するといった会社の運営に深くかかわることが多いVCが出資する場合は、種類株式を用いられるケースが多いようです。
それぞれの資金調達ラウンドにおいて、新しいシリーズの種類株式(シリーズA、 シリーズ Bなど)が発行されます。
例えば、普通株主に対する優先権の確保があげられます。
優先株式の最も重要な権利の一つは、普通株式に先立って残余財産分配を受けることができることです。
優先株式を保有している場合、投資先企業の事業が期待通りにいかずエグジット時の売却額が投資総額を下回る場合でも、自己の当初投資額については優先的に回収できるので、この権利はダウンサイドリスクに対するプロテクションとして機能します。
優先株式の主な権利としては、『優先配当権・残余財産分配権・普通株式への転換権・償還請求権』などがあり、定款に規定する必要があります。
優先株のような種類株式を発行する際は、株主間で契約を締結し、会社の定款を変更しなければなりません。
株式投資型クラウドファンディングで資金調達して株主数が多くなった状態で、既存株主からの了承を得るのは煩雑かもしれません。
このような状況を回避するためにも、株式投資型クラウドファンディングのプラットホーム上には、投資家とのコミュニケーションが可能となっています。
また、一般的なクラウドファンディングとは異なり、株式投資型クラウドファンディングは免許事業であることから、投資家の審査も必須となっています。
反社チェックも当然行われており、例えばFUNDINNOでは、「エス・ピー・ネットワーク」「公益財団法人暴力団追放運動推進都民センター」を活用しています。
また株式投資型クラウドファンディングの個人投資家は金融リテラシーの高い投資家が多いことから、出資先の経営会議に参加し、ハンズオンで伴奏するVCへの期待も大きく、優先株が設定されることなどへの理解があるといえます。
ベンチャー企業は成長の過程で、M&Aや増資が発生することもあります。
その際に、株主間で契約を締結するといったことが発生します。
株主間契約を締結するといった場合に、複数の株主がいると管理手間が発生すると考えられるかもしれません。
上述の通り、株式投資型クラウドファンディングのプラットホーム上では、投資家とのコミュニケーションが可能であるため、契約・確認作業の煩雑さは回避されています。
そして、FUNDINNOで資金調達する企業で新株予約権型の場合に、成長過程でのM&Aや増資の可能性を想定して、資金調達企業が自ら、個人投資家と投資契約を締結するケースもあります。
具体的には「ドラッグアロング」*1や「タグアロング」*2といった条項を設けた契約を結ぶ選択肢もあります。
この場合、個人投資家は、M&A等でのEXITの際に、経営者に意思決定を委ねることになるので、株主が一体となって行動を共にすることになります。
この点からも、他の資金の出し手が懸念する点は回避できます。これは株主数の多さに限った課題ではないかもしれません。
*1 大株主の株式売却に際して、他の株主に対して買収に応じるべきことを請求できる権利、「強制売却権」
*2 特定の株主が株式売却の際、他の株主も同条件で買手に売却できる権利
上記の事を考えると、株主が多いから他の資金の出し手から資金調達できないということは考えづらいと言えます。
スタートアップ支援という同じ志をもつ資金の出し手は、出し手の出資ポリシーによって、出資条件を判断していると考えられます。
今回、ベンチャーキャピタルのPE&HR株式会社 代表取締役山本亮二郎氏にお話を伺いました。
山本氏
日本には独立心のある無名の若者がまだまだ沢山いて、必要なところに必要な資金が回るべきだと考え、「すべての独立する人のために」当社も活動しています。
2017年から株式投資型クラウドファンディングのサービスが始まり、これによってベンチャー企業の資金調達のバリエーションが増えました。
投資資金や調達手段が増え底上げがなされれば、私たちもそこに投資できます。
反対に、当社の投資先が活用するケースも増えており、起業家にとって良いことだと思っています。 この分野で先行している欧米ではVCと合わせて株式投資型クラウドファンディングも拡大しており、日本も必ずそうなると考えています。
日経新聞が日本ベンチャーキャピタル協会に加盟するVCなどから、企業価値30億円を目安にして有望な企業を推薦してもらい、その中から企業を抽出する「NEXTユニコーン」。
その名の通り次なるユニコーン企業ですが、こちらに選定されている、アプリ・ゲーム開発および映像制作やプロダクション運営を手がける株式会社グッドラックスリーはVCの資金調達の後に、株式投資型クラウドファンディングFUNDINNOで資金調達をしています。
独立系ベンチャーキャピタルのPE&HR株式会社はそのVCの1社です。
その他、FUNDINNOで資金調達した後に、VCが出資するケースもあります。
株式会社MealthyはFUNDINNOにおいて2017年11月に2,912万円の資金調達を完了後、2019年5月にPE&HRや一部上場企業から出資を受けています。
また、株式会社MOSO MafiaもFUNDINNOにおいて2017年12月に3,332万円の資金調達を完了後、2018年2月にPE&HRから2,000万円の出資を受けています。
プロフィール
PE&HR株式会社代表取締役 山本亮二郎氏
「株式投資型クラウドファンディングで資金調達すると他の資金の出し手から調達できないってホント?」は上記で見てきた通り、実際には調達事例は複数社あります。
国の制度で立ち上がった株式投資型クラウドファンディングですので、その他の資金の出し手からの資金調達ができないということでは、意味がなくなってしまいます。
どちらの事例も存在し、株式投資型クラウドファンディングはエクイティ・ファイナンスを支えていく新しい存在なのでしょう。
株式投資型クラウドファンディングは2017年からサービスがスタートしていますが、新しい制度であるがゆえに、プラットホーム上で解決できることは柔軟に対応しながら、進んでいます。現状の懸念事項に対しては、対応策は取られていることになります。
起業家にとって、調達方法に多様性があることが大事であると考えています。
エクイティ、デット、銀行、ファンド、VC、クラファン。戦略に合わせて、それぞれのメリット・デメリットを組み合わせた、資金調達を実現して頂きたいと切実に思います。
ベンチャー企業へのリスクマネーを供給するための仕組みである「株式投資型クラウドファンディング」をぜひ検討してみてください。
■株式投資型クラウドファンディング“FUNDINNO“概要■
日本初の株式投資型クラウドファンディングサービスのプラットフォームであるFUNDINNOは、1口10万円前後の少額から、IPOやバイアウトを目指すベンチャー企業の株式に投資することができます。
ベンチャー企業は各地から集まり、その中から厳しい審査を通過した企業のみが募集を行います。
FUNDINNOでは普通株式や新株予約権への投資となり、投資先企業からのIR情報を定期的に確認することができます。
企業によっては投資に対してエンジェル税制を活用できる場合や、株主優待を設定している会社もあり、新しい投資体験が可能です。FUNDINNOはオンラインでの資金調達の実績がサービス開始より約3年で約30億円という実績を誇ります。
また、FUNDINNOにご登録いただいております、貴社と志を共有してくれる可能性のあるエンジェル投資家様は、約2万5千人と国内No.1です。
※FUNDINNOを通じて投資を行う場合は、投資家様にも投資適格性などの審査が必要となります。
画像出典:Pixabay
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