【実例多数】ベンチャー企業が活用すべき資金調達方法ごとの利点とリスク

【実例多数】ベンチャー企業が活用すべき資金調達方法ごとの利点とリスク

記事更新日: 2023/08/21

執筆: 栗島祐介

ベンチャー企業が事業拡大する際に必ず直面する課題の一つである「資金調達」。

本記事では、多くの実例とともに、資金調達ごとのメリットとリスクを整理して解説します。

ベンチャー起業家ができる資金調達方法

ベンチャー企業の資金調達手段は「出資」「融資」「補助金・助成金」の3種類に分けることができます。

企業の自己資金や売上状況などによって可能となる資金調達方法は変わります。

それぞれの手法の特徴やメリット・デメリットは下図の通りです。

 

上記の3つが主な資金調達方法になりますが、「短期間で急成長をしてIPO・M&Aを狙うベンチャー企業(=スタートアップ企業)」を目指すのであればベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家(個人投資家)からの「出資」をオススメします。

一方、カフェ店舗の経営や、ECでの物販などの既に多くの方がやっている従来型の事業の場合は「融資」「補助金・助成金」の利用をオススメします。既に多くの方がされている事業であれば、将来の見通しも立てやすく、融資を受けやすくもあります。ただし、VC・エンジェル投資家は事業に対して新しいビジネスモデルや新しい技術などの新規性を求めるため、従来型の事業の場合は「出資」を受けるのは困難になります。


ここからは各資金調達方法のリスク・その具体例を解説していきます。




資金調達手段 1:出資(資本での資金調達)

出資は、ベンチャーキャピタル(以下、VC)や個人等の投資家から「返済の必要がないお金をもらう」方法です。

もらったお金は経営者が自由に使うことができますが、出資者に経営権(株式)の一部を渡す必要があります。

また、場合によっては余剰利益を配当として分配することを求められます。

創業期の場合は

  • Founder(自分)
  • Family(家族)
  • Friends(友人)

(俗に”3F”と言われます)からの資金調達が基本です。

自己資金の投入であれば、第三者に経営権を渡す必要もなく、当然金利負担もありません。ただし、自身の資金量に限られてしまいます。

Family(家族)・Friends(友人)という選択肢もありますが、後に禍根を残す可能性がありますので要注意です。

最近では、創業前後の起業家に出資をするVCやエンジェル投資家も増えました。その結果、多くの「急成長を目指す起業家(≒スタートアップ)」はまず自己資本で会社を設立し、創業後に投資を受けるケースがほとんどになっています。


その一方、出資には注意すべきことが4点あります。

経営権を外部に取られてしまうリスク

1点目は「経営権を外部に取られてしまうリスク」です。

出資者から「返済の必要がないお金をもらう」代わりに「経営権の一部(株式)」を渡しているため、株式を渡しすぎてしまい経営権を出資者に取られてしまうこともあります。

悪どい投資家が、金融知識の少ない若手起業家に出資をもちかけ、大半の株式を渡してしまうことも実際に起きています。

実際にどんな流れから発生するのか、知り合いの起業家が直面した事例を紹介します。

▶事例:大学生Aさんの場合

東京都内の有名私立大学を休学し、これから会社を設立して、上場を目指して事業を創ろうと意気込んでいる起業家の卵である大学生Aさん。

ある日、起業家向けイベントで知り合った人から、事業をするなら投資家を紹介するよ!という言葉のもと、投資家を紹介してもらうことになりました。

当日お会いした投資家は過去の実績があり、信用できそうな人に見えました。曰く「一緒に事業を創ろう。事業プランも一緒に考えるし、創業資金も俺が出す。やるならすぐやろう、今すぐ決めてほしい」。

逡巡するAさん。「この投資家さんは事業のアドバイスをしてくれるし、創業資金も出してくれる。この方から資金調達できれば、俺も新進気鋭な若手起業家たちの仲間入りだ」、そう思ったAさんはその話を受け入れてしまいます。

一見すると良い話のように見えますが、オチがあります。

Aさんは株式に関する知識がほとんどなく、後でよくよく聞くと、その投資家が大多数の株式を保有し、Aさんは数%の株式しか貰えないという状況でした。しかも、事業自体はAさんが推進しており、その投資家はたまにアドバイスするのみで実際には一切動かない。

これでは起業家ではなく、単なる子会社の雇われ社長(サラリーマン)のようなものです。

結局、不満の溜まったAさんはその会社を辞め、その後大学に復帰、現在は大企業のサラリーマン(新規事業担当)をしています。


金融知識の少ない、事業経験の少ない若い学生ほど耳障りの良い言葉に引っかかりやすいので要注意です。現在のスタートアップ領域の資金調達相場観については以下の記事に記載してますのでぜひご覧いただき、不利な資金調達をしないよう注意してください。


また、株式とは別物ですが、とある資金調達マッチングサービスでは、出資であるはずにも関わらず「絶対に逃げない人」「なにがあってもお金を返す人」といった形で起業家に担保を求めるような投資家もいます。

さらには反社会勢力・反市場勢力に分類される投資家もおり、もし関係をもってしまうと上場できなくなる可能性が高くなります。

よくあるのが六本木でやるような経営者向けのパーティや芸能系イベントで知り合い、そこから漬け込まれるパターンのようです。他にも個人投資家が気軽に登録できる資金調達を謳うサービスには多く紛れ込んでいるようです。

今決めてくれたらすぐに投資する等の甘言を言う投資家や、元本保証をしろ等のリスクを全く取ろうとしない投資家、怪しいつながりが見え隠れする方にはご注意ください。

怪しい、わからないことがあれば専門家にセカンドオピニオンをすることをオススメします。

 

投資契約による経営の自由度低下リスク

2点目は「投資契約による経営の自由度低下リスク」です。

投資家が起業家へ出資する場合、ほとんどの投資家は「投資契約書の締結」を求めます。投資契約書は会社法において必須なものではありませんが、投資家が出資先の経営状況等を知るために用いられます。

契約によっては事前承認条項が盛り込まれていることもあり、よく考えずに契約書を締結してしまうと、経営者が自由に経営の舵取りが出来ない状態に陥る可能性があります。場合によっては後に契約書違反で訴訟に発展する可能性もあります。

そのため、スタートアップ法務になれた弁護士に相談をして、契約を締結するのが基本です。

では、実際にどんなことが起こりうるのか実例に触れていきます。

※ 実例といっても領域や数字等は適当に入れております

▶事例:不動産系スタートアップBさんの場合

不動産系スタートアップを経営するBさんは過去に3度の資金調達を行い、VC・CVC 3社を株主として迎え入れています。

Bさんは調達した資金を使って事業の仮説検証を進めていましたが、事業が上手くいかずに、事業の方向転換(ピボット)をする必要が出てきました。すぐに事業転換をしないと、事業が立ち行かなくなり、会社が危機的状況になる、そう考えたBさんは事業計画を修正すべく活動しはじめました。

ここで、投資契約書がBさんの前に立ちはだかります。Bさんが資金調達をする際に締結した投資契約書には事前承認事項として「事業計画の修正」が入っていました。そのため、大きく事業転換するためには、投資家3社に事前承認を取る必要があります。

もし承認を取らずに勝手に行動して投資家との信頼関係が崩れてしまった場合、株式の買取請求や、最悪の場合訴訟に発展する可能性もあります。それを避けたいBさんは、投資家に「事業計画の修正」について承諾をもらうべく、ミーティングを設定しました。

今後の事業について説明するBさん。投資家たちの反応は三者三様に分かれてしまいました。”今のまま事業を進めるべきだ”、”修正した事業計画じゃなくて、こんな事業の方が良いのでは?”、”自社シナジーのない方向に進んで欲しくない”等、話がまとまりません。

その日のミーティングでは結論が出ずに、また次回に持ち越されてしまいました。結局、話がまとまったのは数カ月後。初動が遅れた結果、Bさんをはじめとする経営陣は疲弊し、事業構築も遅れ、現場は混乱。最後にはサービス終了となりました。


本件はかなり不運な事例ですが、投資契約書の内容次第では事業に大きな影響を与えることを理解した上で、信頼できる弁護士や先輩起業家に相談することが肝心です。

投資家のファンド償還期限が到来するリスク

3点目は「投資家のファンド償還期限が到来するリスク」です。

ファンドは、金融機関・個人投資家・機関投資家から集めた資金を起業家に投資をして、満期時(通常10年程度)に利益(リターン)をつけて資金を返す仕組みです。

そのためファンドを組成して投資をしている投資家(主にVC)の場合、ファンドの償還期限が存在しています

VCのビジネスモデル
引用:フューチャーベンチャーキャピタルHP


償還期限が到来した際にファンドを運営する投資家は、資金の出元である金融機関・個人投資家・機関投資家にお金を返す必要があり、株式のまま保有している訳にはいきません。

そのため、ファンドで保有している当該企業の株式を発行会社・経営陣・第三者などに売却し、資金を回収する必要があります

▶事例:ヘルスケア系スタートアップCさんの場合

創業期にシード投資をするVCから資金調達をしたCさん。事業の立ち上げに時間がかかる領域だったこともあり、5年程度かけて少しずつ事業を伸ばしてきました。

事業資産も出来て、ここから急成長を目指そうと考え始めたある日のミーティングで、Cさんは投資家から相談をされました。

曰く、「ファンドの償還期限が迫っており、IPOできないのであれば事業売却するか、株式の買取先を見つけてほしい(=お金を回収したい)」。

その言葉を言われたCさんから、当時のことについてコメントもいただいたので以下に掲載します。

Cさん

私は弊社の株をもっていただいていた個人投資家からは元本通り、●●さん(VC)は少し値引いてもらいましたが、ほぼ元本通りで買い取りすることになりました。

 

株式を買い取れと言われた時点で会社の拡大は一切考えなくなりましたね。とにかく年数千万ぐらい売上が出るようにして、利益も確保して、カネを返そう、そればっかりだったので。

 

これから起業する子がいたら投資をもらう際に、契約当初から株式の買取りのことを念頭に入れておいたほうがいいよと言いますね。

 

まあ投資家の方からしたら無責任に聞こえるかも知れませんが、正直全額元本を返さないといけないなら、新しい取り組みなんて怖くてできませんね。親の退職金を使ってでも返せと言ってきた担当者もいましたし。

 

自分はこれから事業をするとしても利益蓄積して、あと使うとしても銀行ですかね。手堅い商売しかやらないつもりですし、ベンチャーをやるつもりはないですね。自分の器を知れていい経験だったなと思いますが、まあこれから起業する後輩とかがいたら、本当に買い取りには注意するように話しておいてください。

 

裁判するにしてもわりと裁判は消耗しますし、事業する上で面倒だと思いますので、多分最初から買い取りのことを言う人は外した方がいいです


このような事例のように、ファンドから出資を受けるということは、起業家が上場できなかった(もしくはM&Aできなかった)場合のリスク・責任を受け入れることでもあることを理解する必要があります。

金融商品取引法における発行開示規制に該当するリスク

4点目は「金融商品取引法における発行開示規制に該当するリスク」です。金融商品取引法において資金調達の募集行為は規制がされています。

この規制は投資家保護と市場の健全性確保のため、資金調達者である発行者(=起業家)を規制対象とし、投資家のために、発行する有価証券に関する情報(証券情報)や発行者に関する情報(企業情報)を適切に開示する義務を課する規制となります(参考:金融商品取引法における発行開示規制とは)。

要はあぶない投資話に投資家が引っかからないように、募集行為に規制がされています。

この規制によって募集(≒情報開示)人数の制限がされており、意図せずしてこの規制に該当する募集行為をしてしまうと、規制対応が必要となってしまいます。

多くの場合、発行者である起業家が本規制を知らずに公に募集行為をしてしまい、規制対応をしない結果として行政法違反となってしまう可能性があります。

▶事例:教育系スタートアップDさんの場合

資金調達を考えている教育系スタートアップ経営者のDさん。投資をしてくれる投資家を探していると、Facebook広告で資金調達マッチングを謳うWebサービスを見つけました。

Webサービスの内部を見てみると起業家・投資家間の資金調達マッチングをしている旨が書かれており、実際に投資家の募集等が多く掲載されていました。

Dさんから見て、正直、募集内容の多くは怪しい案件であり、本当にまともな起業家・投資家がいるのか不安はありましたが、手前の運転資金の状況的に背に腹は変えられず、利用して、投資家募集する旨をWebページに公開してしまいました。

公開してから何件か個人投資家とお会いすることになり、話をしてみたDさん。彼の場合は、結局そのサービスでは良い投資家と巡り合わず、知り合い経由で投資をしてくれる投資家を見つけることができました。

ここで、めでたし、めでたし、と終われば良かったのですが落とし穴がありました。

今回の場合は、Webサービス上で不特定多数のいるインターネット上で誰でも見れる形で投資家募集する旨が掲載されました。

日本では、金融商品取引法において発行開示規制という規制が存在しており、今回の場合は規制されている「募集」行為に該当します。

(規制に関する説明はこちらの記事を参照:クレア法律事務所)


「募集」行為に該当した場合、該当者は調達額によっては以下の対応が必要とされます。

(参考リンク:関東財務局 有価証券通知書

1. 資金調達額が1億円以上の場合

有価証券届出書を財務局に提出(EDINET利用)する必要があり、有価証券報告書の継続開示も必須となります(金融商品取引法第四条第一項)。

スタートアップにとっては負担が重く、とても現実的ではありません。

2. 資金調達額が1,000万円超、1億円未満の場合

募集開始直前に、財務局に対して有価証券通知書を提出する必要があります(金融商品取引法第四条第六項、企業内容等の開示に関する内閣府令第四条)。

スタートアップでも可能であり、現在は株式型クラウドファンディングがこのあたりを担っています。

3. 資金調達額が1,000万円以下の場合

届出は不要であり、スタートアップでも可能です。

Dさんの場合は、周りに開示規制について詳しい人物がおり、今回確定した金額が900万円であったこともあり、再度募集をして1,000万円を超える前に通知書の提出等の適切な措置をする方針にできたため、どうにか開示規制に対応することが出来ました。

金融商品取引法の規制を理解せずに安易に投資家集めをしてしまうと、後々大きくコストが発生してしまう、意図せず行政法違反してしまう等の問題が発生しますので注意しましょう。

もし既に募集行為をしている場合、弁護士等の信頼できる士業の方に相談してください。

ちなみに開示違反となった場合、金融商品取引法違反となり、まず上場は無理だと言われています(大手監査法人パートナーに確認済み)。

上場会社としての経営者の適格性に問題ありと見做されるようであり、日本証券取引所の上場審査部も重く受け止めるそうです。

よって基本的には募集行為にならない「私募」形式でVC等のプロ投資家を中心とした資金調達活動に動くことをオススメします。

(私募に関する説明はこちらの記事を参照:クレア法律事務所)



資金調達手段 2:融資(負債での資金調達)

融資は、金融機関や他人からお金を貸してもらう方法です。

「必ず返済する必要のあるお金」であるため、返済力(信用力)に応じて借りることのできるお金の額が決まります。出資とは異なり経営権の一部(株式)を第三者に手放す必要はありませんが、基本的にお金の使い方が限定され、金利負担と個人保証も発生します。

また、融資の性質上、リスクの高い新規事業向きではなく、ある程度ビジネスモデルが確立された事業の運転資金に充てられることが多いです。

融資の主なパターンは以下の「金融機関からの借入」「親や身近な人からの借入」の2つです。

金融機関(銀行・信用金庫・公庫等)からの借入の場合

創業したばかりですと、メガバンク等の大手金融機関の場合は口座開設ができないこともあり、融資での資金調達をすることは困難です。

そのため多くの起業家は、日本政策金融公庫信用金庫からの借入を行います。

特に日本政策金融公庫は、民間銀行から資金調達を受けにくい創業前後の方や中小企業への融資を積極的に行っています。実際に私の周りの起業家たちにヒアリングをしてみると、以下の2つの融資を利用する方が多いようです。

画像出典元:日本政策金融公庫公式HP


・新創業融資制度

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方であれば、3,000万円(うち運転資金1,500万円)まで融資可能な制度。

基本的には創業者のバックグラウンドや事業計画、自己資本等をみて決定されます。

この制度の大きな特徴として通常の融資とは異なり「無担保」「無保証人」で融資を受けることができる点があります。

そのため、最近の起業家は最初に公庫から資金調達を行い、プロダクトを作った上で、出資者を募る方が増えてきています。

 

・中小企業経営力強化資金

認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方であれば、7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで融資可能な制度。

こちらの場合、認定支援機関(会計事務所等)の支援があれば申請することができ、2,000万円以内であれば「無担保」「無保証人」で融資を受けることもできます。

他にも創業者が30歳未満であったり、女性起業家であったりすると、金利が安くなる制度もあります。

最近では日本政策金融公庫が「新事業・ベンチャー企業向け融資制度」を拡充させており、以下の新しい融資も推進しているようです。

  • 資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)
  • 新事業育成資金
  • 新株予約権付融資制度

また、融資を申請する際は、以下のような注意事項があります。

お金の無くなったタイミングで融資に行く問題

融資はその起業家の返済力・信用力に基づいて行われます。創業融資であれば別ですが、事業が軌道に乗らず、お金が底をつきかけている段階で話をしにいっても、門前払いされてしまいます。

一度審査を弾かれてしまうと、大きな事業上の進捗や変更点がない限りは基本的に半年間は申請しても通ることはありません

▶事例:若手起業家Eさんの場合

同年代の友人たちが起業していく姿に触発されて、会社を退職して起業したEさん。起業した勢いのまま事業プランを作り、すぐに出資をしてくれる投資家にアタックしたり、アクセラレータ/インキュベーションプログラムに応募もしてみました。

Eさんは無事にインキュベーションプログラムに採択され、少額の資金調達もできたので、プロダクト開発を始めました。

起業してから1年、プロダクトもローンチしましたが、思うように実績が出ず、調達した資金も会社員時代の貯金も後数ヶ月で無くなる状態になりました。そこで、Eさんは当面の運転資金を獲得するために融資を受けることを決意しました。

銀行の融資担当に語るEさん。この会社のビジョン、魅力のあるプロダクト、市場の大きさ。VCやエンジェル投資家に話した内容・資料を使って融資担当者に事業の成長性を語ります。

しかしながら、結果的に、当初想定していた金額よりもかなり少ない金額での融資になってしまいました。

理由としては単純で、会社として資金がなく、事業としても不調な状況ではとても融資するにはネガティブな状態であるためです。つまりEさんに融資しても返済力がほとんど無いと判断されているためです。

Eさんの場合は、少ない融資でなんとか食いつなぎ、なんとかプロダクトの実績を作ることができました。結果として、後日、株式での資金調達ができました。


私個人としては、基本的には自己資本が多くなったタイミングで、負債での調達も合わせて実施することをオススメします。

晴れた日に傘を貸すのが銀行の仕事です。

返済できなくなり会社倒産・自己破産した場合

ここまで融資について説明してきましたが、基本的に融資は経営者の「個人保証」が必要とされます。

もし借入を返済できなくなった場合、経営者個人が負担をする必要があり、借入金額によっては経営者も自己破産せざるをえなくなります。

では、自己破産のメリット・デメリットはどういったものでしょうか。以下に図示します。

自己破産したから終わりということもなく、再度起業して成功した方も多くいます。

着実に事業を伸ばして、借入を返済できるのがベストではありますが、いざという時に何が起きるのか、起業家であれば理解しておく必要があります。

親や身近な人からの借入の場合

銀行等の金融機関ではなく、親戚や知人からの借入をする場合、人間関係で借りやすいという側面があります。

その一方で、借入の返済が出来なくなった場合、家族間や友人間での揉め事になるため、経営者のプライベート面に対する影響がとても大きく、それまで培ってきた信用を失うリスクがあります。

資金調達手段 3:補助金・助成金 

補助金・助成金は、国や地方自治体等がお金をくれる制度です。原則として返済不要なお金です。

申請しても必ずもらえる訳ではなく、お金を使った後からもらえる「後払い」形式という特徴があります。

補助金・助成金のメリットは条件にもよりますが、

  • 創業する前後でも申請できること
  • 返済が不要なお金であること

の2点があります。

ただし、補助金と助成金の申請は募集期間が限定されており、後払い形式であります。そのため、それまでの運転資金を用意する必要があり、お金の振込みまで時間が必要です。

事業の途中で審査や監査が入ることも多く、資金が適切に使われているのかどうかも厳しくチェックされます。

では補助金・助成金の違いはなにか、以下に図示してみます

補助金は必ず採択されるわけではありませんが、助成金の場合は資格要件を満たすことができれば必ず受けることができます。

実際に起業家がよく利用する補助金としては、通常で1,000万円を上限に補助する「新ものづくり補助金」があります。

これは革新的な設備投資やサービス・試作品の開発、生産・業務プロセスの改善等を支援するための補助金です。

他にも「創業補助金」が活用されているようです。

助成金では、非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するために厚生労働省が実施している「キャリアアップ助成金」が活用されています。

2017年の「正規雇用等転換コース」では、1人の有期労働者を正規雇用にするたびに40万円が助成されており、多くの人材採用をしている会社ではばかにできない金額の助成金を受けることが出来ました。

ただし、補助金・助成金は年度毎によって内容が大きく変わってしまいます。

上述の補助金・助成金も現在では大きく変更されているものもあります。また、補助金・助成金の申請は、基本的に手続きが煩雑で様々な要件があります。

そのため、ある程度ノウハウが必要となりますので、税理士や中小企業診断士等の専門家へ相談することをオススメします。

 

資金調達手段(番外編):クラウドファンディング

2019年現在、ベンチャー企業の資金調達方法として「クラウドファンディング」が活用されることが増えています。クラウドファンディングは一般の消費者向けに広く製品・サービスをPRしつつ、必要となる資金を広く募集することができるのが人気の理由のようです。

実際にクラウドファンディングを活用したベンチャー企業としては、「パーソナルモビリティWHILL」や「ウェアラブルトランシーバーBONX」「世界最小の落し物追跡タグMAMORIO」などが挙げられます。これらは「購入型」のクラウドファンディングサービスを利用して、募集をしています。

「購入型」とは何か? 実はクラウドファンディングには「購入型」「寄付型」「融資型」「投資型」の4つの種類があります。

①購入型:新しい製品や面白い企画に対して資金を提供する代わりに、リターンとして特別な製品や発表会への参加などを受け取る形式。
②寄付型:社会性の高いプロジェクトに対して寄付の形で資金提供を行い、リターンとしてプロジェクトの成果発表会への参加権などを受け取る形式。
③融資型:個人投資家などの資産運用をしたい方から資金を募り、融資を受ける形式(もちろん金利などが発生します)。
④投資型:個人投資家などの資産運用をしたい方から資金を募り、株式での出資を受ける形式。

今のところ主にベンチャー企業が利用するのは①購入型、④投資型の2つですが、最近は③融資型の利用も増えているようです。

メリットとして、資金調達もしつつ、広く製品・サービスのPRや見込み顧客の獲得に繋がる点があります。その一方でクラウドファンディングで集めた資金に対して手数料が10%~20%程度発生し、運営業者によってはそれ以外の費用も多数発生することがあります。

 

資金調達後の留意点

出資での資金調達をした場合、出資者にその後の進捗状況をしっかり報告する事が重要です。

自社状況を定期的に報告をすることで、事業アドバイスや適切なキーマンの紹介、人材紹介、取引先紹介等をしてくれます。また、事業がうまくいかなかった場合にも無駄なトラブル回避に繋がります。

融資(特に金融機関)での資金調達をした場合も、なるべく早めに原因や解決策、現在の取り組みを誠意をもって報告することをオススメします。定期的にコミュニケーションをする事で、資金の返済が滞った時のトラブル回避につながります。

返済遅延をした場合は、遅延損害金などの支払いは免れませんが、返済が遅れる旨を報告しておけば金融機関からの催促を回避でき、相手との信頼関係を最低限保つことができます。

補助金・助成金での資金調達をした場合、定期的に実施状況の監査や報告が求められます。そのため、支払い実績がわかる領収書や契約書はしっかりと管理し、どのような事業を実施し、どの程度の資金を使用したのかが明確にわかるように必要書類を整えておくべきです。

資金使途が不明では、申請を通過していたとしても審査を通過できず、貰えるものも貰えなくなってしまいます。

避けることのできるトラブルは事前に回避しましょう。

自社に合ったVC・投資家を効率的に見つけませんか?

起業ログを運営するプロトスター会社は、起業家が最適な投資家探しをしたいというニーズに応え、国内最大級の起業家・投資家検索サービスStartupList(スタートアップリスト)を提供しています。

StartupListでは、投資家の投資レンジや評価基準、過去の経歴等から自社に合った投資家を検索可能。StartupList上で、見つけた投資家とそのままコンタクトをとることもできます。

現在、登録済のベンチャー企業は2,600社以上、投資家数は900名以上にのぼります。

  

 

まとめ

今回はベンチャー企業の資金調達方法ごとのメリット・デメリットに触れましたが、資金調達はあくまでも事業戦略・組織戦略の上で成り立つ1要素でしかありません。

自社にとって本当に資金調達が必要なのか、必要であるなら事業戦略において何を優先するのかをよく考えた上で、出資なのか、融資なのか、補助金・助成金なのか、しっかり考えてみてください。

以下の記事では、創業期のベンチャー企業に本当に資金調達が必要なのか、資金調達をしなくても事業の仮説検証は可能だということを紹介しています。

こちらもぜひ参考にしてください。

 

執筆者プロフィール

栗島祐介

HAKOBUNE株式会社 代表。早稲田大学商学部卒。アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、プロトスター株式会社を設立。HardTech領域の起業家支援コミュニティ「StarBurst」の運営総括、起業家・投資家の情報検索サービス「StartupList」の運営を行なった。

画像出典元:Burst

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