資金調達のタイミングと調達額を事例と相場を元に徹底解説!

資金調達のタイミングと調達額を事例と相場を元に徹底解説!

記事更新日: 2018/07/23

執筆: 栗島祐介

起業家が事業拡大する際に行う資金調達。本記事では、その資金調達のタイミングと調達額について、数多くの事例を元に解説していきます。

起業家の特性によって最適な資金調達法が違う

前回は資金調達方法ごとのメリット・デメリットについて触れましたが、そもそも起業家の特性によって資金調達方法(出資 / 融資 / 補助金・助成金)に向き不向きがあります。

日本ではベンチャー企業という言葉で新規の起業家について語られていますが、ベンチャー企業には2種類の区別があります。1つは、短期間で指数関数的な成長を目指す起業家である「スタートアップ」。もう1つは、対数関数的に確実な成長を目指す起業家である「スモールビジネス」です。

ベンチャーキャピタル(以下、VC)やエンジェル投資家のような投資家から出資を受けようとする場合、新しいビジネスモデルで急成長を志向する起業家(=スタートアップ)が基本的に対象となります。

一方、既存のビジネスモデルが確立されており着実な成長を目指す事業(例:飲食店)を行う起業家(=スモールビジネス)の場合は、出資ではなく融資の方が向いています。

それぞれの違いを図示すると以下のような形になります。

最初の事業はスモールビジネス的にはじめて事業資産をつくり、一気に指数関数的な成長を目指す会社もあります。よって、起業家の状況次第でどちらに該当するかが変わってきます。

また、最近の起業家は出資による資金調達で自己資本を増強した上で、即座に融資も実施する方が増えています。融資の特性上、返済力・信用力の高まった段階ですべきですので、良い戦略だと思います。

補助金・助成金であればスタートアップ・スモールビジネスに関係なく活用されていますが、短期間で急成長を目指すスタートアップの場合は時間と手間をかけたくないという理由で活用しない会社が多い傾向にあります。

起業家が資金調達をするタイミング

資金調達はあくまでも事業戦略・組織戦略の延長線上で語られる要素の1つでしかありません。そのため、起業家が資金調達するタイミングは「戦略的に必要な状況」となります。

戦略的に必要なとき

ここで、理解を深めるために事業戦略の状況を整理した図を以下に示します。

事業は基本的に価値仮説」「成長仮説の2つで成り立ちます。価値仮説は、作ろうとしているプロダクト/サービスが顧客に価値提供ができるかを検証するもの。成長仮説は、価値検証できたプロダクト/サービスを顧客に広く知ってもらい急成長できるかを検証するものです。

起業家は自社の状況がどのフェーズにいるかを理解した上で、適切なタイミングで資金調達を行います。では、戦略的に必要な状況とはどういったタイミングか。例えば以下のような事例が該当します。

  • 事業アイディアを仮説検証するプロダクトを作りたい
  • 作った製品が市場に受け入れられるか判断するために広告・営業等をして検証したい
  • 価値検証の完了した製品を一気に成長させるための人員増強・組織体制の構築をしたい

つまりは、資金調達ができれば事業が上手くいく(≒仮説検証が進む)状態が出来ているタイミングとなります。

事業が好調なとき

戦略的に必要な状況だけではなく「事業が好調な時」に資金調達をすることで、資金調達を最も有利に進めることができます。出資であれ、融資であれ、事業が好調なときであれば高い評価(信頼)を得ることができ、結果として資金調達が上手くいきます。

単にお金が無くなったからといったネガティブな要因での資金調達である場合、出資者にしても融資者にしてもその起業家の経営能力に問題を感じてしまいますし、資金調達がうまくいかずに苦しむことになってしまいます。

起業家が資金調達すべき金額はいくらか

事業によって特性・背景も違うため明確な答えはありませんが、私個人の答えとしては「事業戦略上のマイルストーンを実現するために必要な額」になります。

事業戦略上のマイルストーンを実現するために必要な額

マイルストーンは次の資金調達であったり、事業の単月黒字化、ユーザー数100万人の達成等、会社の状況に合わせて設定されます。そして、このマイルストーン自体は大体6ヶ月〜12ヶ月以内に達成できる目標とすることをオススメします。

実際には想定通りに事業が進むことは滅多にありませんので、想定した必要金額の1.5倍程度の金額を確保し、備えておくのがベターとなります。

また、出資の場合は資金に対する対価として株式を渡すため、会社が発行する株式価値がいくらなのか、出資者に提示する必要があります。この株式価値は、会社から発生する将来の利益を、現在の価値に評価し直したものとなります。つまり、事業リスクの高い状況では将来実現する利益の実現率が低くなるため株式価値は低くなり、必然的に事業リスクが低くなれば株式価値も高くなります。

たまに勘違いされる方がおりますが、資本金の金額と株式の価値はイコールではありません(資本金額 ≠ 株式価値)。この勘違いを利用して、株式、つまり経営権の大半を外部のVCやエンジェル投資家に奪われてしまう事例も出ていますので注意してください。特に金融知識の少ない学生起業家が騙されたという報告をちらほら聞きます。

では、ここで現在の未上場市場における株式評価の相場観についても触れていきます。

株式による資金調達相場

私は今まで起業家コミュニティを運営しており、ここ数年間でスタートアップ数百社の資金調達について相談にのってきました。その相談に基づいた経験則としての相場観を以下に記載します。ただし、ここに挙げる相場観は2017–2018年の数字ですので将来的に相場観も変わってくるかと思います。

(用語説明)
Post-Value(厳密にはPost Money Valuation)は資金調達後の時価総額。
Pre-Valueは資金調達前の時価総額。よってPre-Value + 資金調達額 = Post-Value。
トラクションはユーザー数や売上等の実績や勢いを表します。

①チーム有り・プロトタイプ無し・トラクション無し段階(Angel Roundレベル)

Post-Value:2,000万円〜1億円(調達額は500〜1,000万円程度)
※人のみを見て投資する投資家やインキュベータが主なプレイヤー
※事業アイディアが固まる前に一緒に考えてくれたりもします。

②チーム有り・プロトタイプ有り・トラクション無し(Angel Roundレベル)

Post-Value:1億円(調達額は1,000万程度)
※主にエンジェル段階寄りのシード投資を行うVC

③チーム有り・プロダクト有り・トラクション無し(Seed Roundレベル)

Post-Value:1億円~2億円(調達額は1,000〜2,000万円程度)
※通常のシード投資を行うVCは大体ここが対象

④チーム有り・プロダクト有り・トラクションが出てきている(Seed Roundレベル)

Post-Value:2億円〜5億円(調達額は2,000〜5,000万円程度)
※ここは挑戦する領域の市場規模やトラクション状況の期待感等で変動

上記が実際に起業家の資金調達を支援していく中での資金調達の相場観です。この評価額をベースとして、株式を数%〜20%程度まで放出して資金調達する場合が多いです。たまにそれ以上の株式を放出する場合もありますが、それをしてしまうと次の資金調達でいくつかのVCが投資をしない(少なくともやり辛くなる)のでオススメしません。

この数字を資金調達済みの起業家や投資家にヒアリングをして、腹落ちすると言われているので概ね間違ってないと思います。

では、価値仮説の検証が終わり、成長仮説を検証するフェーズであるシリーズA以降(アーリー期)の相場観はどのようなものか。著名VCの500Startups Japan澤山さんが登記簿等より調査してきた内容を引用すると以下のような数字になるようです。

シリーズAの平均評価額11.7億円(資金調達金額:平均2.6億円)
シリーズBの平均評価額18.9億円(資金調達金額:平均3.8億円)
シリーズCの平均評価額35.5億円(資金調達金額:平均4.0億円)
シリーズDの平均評価額66.2億円(資金調達金額:平均13.5億円)

(引用:調査レポート: 186社の登記簿から分かったスタートアップの資金調達の「相場」

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連続起業家は強くてニューゲーム

ここまで相場観について触れてきましたが、実はこの相場観に当て嵌まらない事例があります。俗に言う連続起業家(シリアルアントレプレナー)による資金調達の場合です。

シリアルアントレプレナーの場合、最初期から相場観を超えた資金調達が実現できます。なぜなら彼らの多くは以前の経験に基づき業界内の専門家とのネットワークや、優秀な仲間、事業構築ノウハウ、業界構造への理解、投資家との信頼関係等を保有しています。

言うなれば、強くてニューゲーム状態であるためです。

早すぎる段階での調達で株式放出しすぎ問題

事業構築をする前からVC等から資金調達を繰り返した結果、シード段階で過半数近くの株式を外部に持たれてしまうことがあります。株式は会社にとっての奥の手であり、基本的にはできる限り放出しない方がよいです。

スタートアップであるほど事業スピードが重要であるにも関わらず外部株主が多く、コミュニケーションコストが膨大になり、事業が停滞するようなリスクはなるべく避けましょう。また、次の資金調達において経営者の株式持分比率によっては一部投資家が投資できなくなる恐れがあります。

▶事例:メディア系スタートアップAさんの場合

創業時にインキュベーション施設に入居すると同時に少額の資金調達をしたAさん。創業初期から大きめの金額を出資で調達するために、株式の20%を出資者に放出しました。事業を開始して少し経ったある日、昔から尊敬しているエンジェル投資家から出資してもらうことになり、さらに20%の株式を放出して資金調達をしました。

無事に最初期の資金調達ができ、事業も軌道に乗り始めました。Aさんはさらに加速して事業成長をするためにシリーズAの資金調達に動き始めます。調達予定金額は1.5億円、放出予定の株式は15%でした。

事業自体はうまくいっており、単月黒字も実現、軌道に乗っているようにみえましたが、資金調達はなかなかうまくいきません。

経営陣の持ち分が過半数割れすることを嫌う投資家や、今回投資しても筆頭株主になれないことを嫌う投資家が多く、契約面、金額面でリードをとってくれる投資家が見つからなかったためです。

結果的にAさんはかなりの時間(半年〜1年間)をかけて、リード投資家を探し、なんとか資金調達を実現することができました。

資金調達が長引きすぎる問題

出資者探しに躍起になるあまり、資金調達が長引いてしまう方を数多くみてきました。資金調達活動は、経営者自身が動く必要があり、特に創業初期ほど人員がいないため、資金調達の活動期間は事業がストップしてしまいます。

こうなってしまうと本末転倒です。多くの場合は、自社の事業検証が浅く、投資をするにはリスクが高い段階で資金調達に動いています。結果として、適切な投資家が見つからずに、資金調達活動が長引く悪循環に陥っています。

そうならないためにも、自社の状況と相場観を鑑みた資金調達をしましょう。適切な方が見つからない場合は、一旦株式での資金調達活動を切り上げ、事業を先に進め、実績を積んでから再度投資家に話をしにいくことをオススメします。

▶事例:FinTech系スタートアップBさんの場合

金融系サービスを準備中の起業家Bさん。事業プランを練り上げ、事業を一気に広げるための人員確保・プロダクト開発するための資金調達をすべく、投資家めぐりをしています。

Bさん曰く、「このサービスは今までの金融市場を変える素晴らしいプロダクトで、このプロダクトを作ることができれば巨大な市場を独占できます。そのためには、5,000万円の資金が必要なので出資してください」。

巡れども巡れども出資をしてくれる投資家は見つかりません。毎回投資家にはこう言われます。「トラクション(実績)が出てきたらもう一度来てください」。

つまりは、この起業家の自己評価と他者評価が釣り合っていない状況なのです。この段階で投資家巡りしても時間がただ浪費されるだけであり、最低限度のプロダクトでも良いからさっさと開発して、小さな実績を積み上げていく必要があります。

結局Bさんの場合、受託事業をしながら自社プロダクトを開発し、実績を積んでいきました。その後、無事に投資家から資金調達ができ、事業拡大フェーズに到達することができました。

まとめ

前回も書きましたが、資金調達はあくまでも事業戦略・組織戦略の上で成り立つ1要素でしかありません。自社にとって本当に資金調達が必要なのか、必要であるなら事業戦略において何故今資金が必要なのか、その金額で良いのか、しっかり考えてみてください。

執筆者プロフィール

栗島祐介

プロトスター株式会社代表取締役CCO (Chief Community Officer) 早稲田大学商学部卒。アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、当社を設立。HardTech領域の起業家支援コミュニティ「StarBurst」の運営総括、起業家・投資家の情報検索サービス「StartupList」の運営を行う。

画像出典元:Burst

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