株式投資をしていれば、耳にする持ち株比率。
株主だけではなく、経営者や起業家にとっても、重要なキーワードです。
本記事では、株の仕組から持ち株比率の意味、それに応じた株主の権利や行使する要件、会社の経営権を維持するために必要な持ち株比率まで初心者の方にも分かりやすく解説します。
このページの目次
株(株式)とは、会社が事業に必要な資金を調達するために発行しているもので、お金を出してくれた人(投資家)に、その金額に応じて交付される、いわば証明書のようなものです。
株は会社から直接買う事はできず、基本は証券会社を通じて、証券取引所から購入します。
会社からは、「お金を出してくれてありがとう!」という意味で、会社の利益の一部を配当金として株主に還元したり、優待制度がある会社なら、会社の製品や割引などが受けることができます。
また、持っている株は売る権利もあり、買った時よりも株価が上がったタイミングで売却したりと、その差額で多くの投資家が利益を得ています。
ちなみに、買った株の会社が業績悪化などで倒産した場合には、投資したお金が全く返ってこないというリスクもあります。但し、投資額以上のリスクを負うことはありません。
株主は出資した金額に比例した数の株を保有し、その持ち株に応じてさまざまな権利を持つ事ができます。
日本の会社法上の株式会社では、株主の権利は、以下の3つが主とされています。
1. 剰余金配当請求権
2. 残余財産分配請求権
3. 株主総会の議決権
また、株主の権利は「自益権」であるか「共益権」であるか、「単独株主権」であるか「少数株主権」であるかによって分類されます。
株主個人の利益だけに関係する権利で、主とされる権利三つのうちの、配当を受ける「利益配当請求権」、会社が倒産した時などに残った財産の分配を受けられる「残余財産分配請求権」などがあります。
株主が会社の経営に参与するための権利で、主とされる権利3つのうちの一つで、株主総会に参加して議決に関わる「議決権」があります。その他の権利は株の保有率で異なり、株を沢山保有しているほど、会社に影響を与える権利となります。
1株でも持っていれば認められる権利
一定割合以上の株を持っていないと認められない権利
自益権はすべて単独株主権であり、共益権は、議決権は単独株主権ですが、それ以外は、単独株主権であるものと、少数株主権であるものとがあります。
さて、ここまでで、株(株式)について、株主の権利についてざっくりと理解していただけたかと思います。ここからは、持ち株比率とその権利について解説していきましょう!
持株比率とは、その会社の発行済株式総数に対し、株主が保有する株式の割合のことです。
この保有率で、どの程度、会社の経営に参加できるかが明確になるので、株主や会社経営者にとっては重要な割合となります。
簡単にいうと、原則として会社の株を1株または1単元でも保有していれば、議決権が一つ与えられますが、株主総会招集請求権や株主総会招集権、株主提案権には、ある一定以上の待ち株がなければ権限はありません。
持ち株比率は、下記数式で求めることができます。
持ち株比率=(保有株式数÷発行済株式数)×100
例えば、会社の発行株式数が100株で、株主Aさんの持ち株が50株であれば、(50÷100)×100=持株比率は50%、持ち株が25株であれば、(25÷100)×100=25%ということになります。
株主として、自分が持っている株の比率を把握し、何ができるのかを知っておくことは大切なことです。
では、持ち株比率に応じた権利をみていきましょう!
持ち株比率 | 株主の権利 |
1株以上 | ・議事録閲覧権 ・株主代表訴訟 |
1% | 株主総会における議案提出権 |
3%以上 | 主総会の招集、会社の帳簿等、経営資料の閲覧ができる。 |
33.4%(1/3以上) | 特別決議を単独で阻止することが可能 |
50.1%(1/2超) | 株主総会の普通決議ができる。 役員報酬の変更、剰余金の配当などの事柄を単独で可決できる。 |
66.7%(2/3以上) | 株主総会の特別決議ができる。 取締役の解任、定款変更、合併や解散、など、会社経営に関する重要な事柄を単独で可決できる。 |
100% | 全て自分の意志で決定する事ができる。 |
上記表の通り、1/2超ではあれば普通決議が可能になります。
普通決議では、役員の報酬額を決めたり、会社の剰余金を株主に増配したりなど使い道を決める事ができます。
ただし、それ以上の特別決議については単独で通すことはできないので、絶対的な権力があるとはいえません。
2/3以上の持ち株比率があれば、特別決議ができるので、会社における重要事項を一人で決める事ができます。
具体的には重要度の高い決議事項である、定款の変更や解散、合併、事業譲渡など、会社組織に関する事項を決める事ができるので、一人で会社経営する方や中小起業のオーナーならこの持ち株比率を保持しておきたいところです。
この章では、よく耳にするもののどう使い分けるのか、わかりづらい用語を解説します。
大株主とは、具体的に何%以上の株式を所有していなければならないという決まりはないものの、企業の株式の持ち株比率が高い株主のことを表す言葉です。
主要株主とは、企業の議決権のある発行済株式の100分の10以上を保有する株主を表す言葉です。
筆頭株主とは、企業の議決権のある発行済株式の最も多くを保有している株主を表す言葉です。
筆頭株主だからと言って、必ずしも多くの権限を持っているわけではなく、株式の保有率で権限は変わってきます。
では実際に、持ち株比率とその権利が大きく関係した事例をご紹介します!
今までニュースで目にしていた事件、株の仕組や持ち株比率の意味を理解しているだけでとってもわかりやすくなると思いますよ!
この事件は既に10年以上経過していますが、若手の新鋭起業家率いるライブドアが、大会社のフジテレビの実権を握ろうと挑んだ大騒動だったので、鮮明に記憶に残っている人も多いと思います。
現在、最大手のTV局であるフジテレビは、元々はニッポン放送の子会社でした。
親会社であるニッポン放送よりも大きな会社に成長したフジテレビ。
そのフジテレビの経営に加わりたいとライブドアは考えていました。
しかし、大きな会社に成長してしまったフジテレビの経営に口を出せるほどの、株を買い集めるには膨大なお金がかかります。
そこで、それよりも比較的、株を集めやすい親会社であるニッポン放送の株を買い集めたのです。
つまり、親会社のニッポン放送の経営を握れば、間接的に子会社であるフジテレビの経営にも口を出せるという事。
ライブドアが保有する、ニッポン放送株の持ち株比率が上がれば上がるほど、ライブドアには経営に大きくかかわる株主の権利が与えられるわけです。
結果的には、ライブドアの戦略を回避したいニッポン放送が、持っていたフジテレビの株を貸株として手放したので、必然的にライブドアもフジテレビの経営に口をだせなくなったのです。
この事件、最終的にはフジテレビとライブドアは和解し、幕を閉じましたが、まさに持ち株比率によって、経営権がとって代わられてしまう危機を痛感する事件でした。
これは会員制高級家具店の経営方針を巡る骨肉の内紛で、今まで通りの経営方針を貫きたい会長である父と、時代に合わせて新しい経営をしたい社長である娘の、経営権を巡る争いでした。
経営方針が真っ向から合わない父娘は、お互いの退任を要求し、新たな役員人事案を提出。株主総会で、株主からより多くの賛成を集めた方が経営権を握る事ができます。
そこで、父娘の間で繰り広げられたのが、敵対する株主同士が、他の株主からより多くの支持得て委任状を得る「プロキシファイト」と言われる委任状争奪戦です。
そして委任状争奪戦の勝敗は娘に上がり、経営権は娘のものとなり、父は退任することとなりました。
この事件、父の持ち株比率がもっと多ければ、娘も歯が立たず、宣戦布告をしなかったのでは?とも言われています。
これは記憶に新しい事件ですね。
もともとは、スポーツウエアメーカーのデサントと筆頭株主である伊藤忠商事の関係はとっても良好でした。
しかし、2013年にデサント創業家出身者が社長に就任してからというもの、デサントは筆頭株主である伊藤忠商事に何の相談もなく、他社と業務提携を結んだり、利益目標額に達成していない事の説明義務を怠ったり、伊藤忠出身者の権限を弱らせるなどしたため、お互いの溝は深まって行きます。
デサント側からすると、この社長に就任してから業績は大幅に上がり、伊藤忠から来た人ばかりが社長になるのではなく、自分たちデサントのカラーで経営していきたいんだ!という思いがありました。
両社の溝は埋まらず、とうとう伊藤忠は敵対的TOBという手段に出たのです。
敵対的TOBとは、買収目的の株式公開買い付けの事です。
要は「私たち伊藤忠商事はデサントを買収することにしました!デサントの株を持っているみなさん!私たちに売ってください!」ってことですね。
しかも、かなりのプレミア価格で買い付けるとしており、デサントの株を保有している株主は儲けるチャンスなので、相当株集まるのでは?と予想されます。
多くの株を保有すれば伊藤忠商事もデサントの経営権を全面的に握る事ができます。しかし、伊藤忠側は、デサントとお互いが納得できる方向での和解を希望しており、話し合いの余地を残しています。
敵対的TOBで、デサントの経営権を握れる株を保有した伊藤忠ですが、和解を希望していたため交渉を重ねました。
その結果、伊藤忠が折れ取締役会の人数を譲渡する形で双方合意しましたが、合意の直後に石本社長が翻意したことにより、伊藤忠側は交渉を打ち切りを決意。デサント生え抜きの経営陣を全て入れ替えることになりました。
この前代未聞ともいわれた騒動は、2019年の3月に、デサントの石本社長が退任、デサントの生え抜き経営陣も総退陣するという形で幕を閉じました。
ちなみに、この騒動で伊藤忠がTOBに投じた金額は200億円と言われています。
さて上記では、持ち株比率により経営が脅かされる事例をご紹介しました。
もちろん、出資100%オレ!となれば、誰にも経営を脅かされることはありません。
しかし、会社経営というのは、大きな資金を必要とするので、そんなオーナー社長ばかりではありません。
では経営者としては、どのくらいの持ち株比率があれば、安心して経営をしていけるのでしょうか?
普通決議で過半数こえたら、一応、その会社では一番権力があるわけなんだし、半分もあれば大丈夫なんじゃない?…いやいや!大丈夫じゃ、ありません!
安心して経営するのに必要な持ち株比率は、2/3以上であることが重要です。
先述しましたが、2/3以上の持ち株比率であれば、会社の経営に関わる重要な決議を社長の裁量と判断で行うことができるからです。
中には、株式が創業者の家族や親族などに分散されていて、社長自身が2/3以上の株式を保有していないこともあります。
その場合、親族同士の敵対が原因で、社長を解任!!なんて、ドラマみたいなこともありえますし、大塚家具のお家騒動のような事件がおこることも考えられます。
もし、社長のあなたの持ち株比率が低い場合には、日ごろから株主に感謝の気持ちを忘れずに、業績の開示や経営方針の説明をするなど、株主との間に信頼関係を築いておく事が大事ですよ!
いかがでしたでしょうか?
株主だけではなく、起業家や経営者にとっても重要な持ち株比率について解説しました。
会社で一番偉いのは株主と言われるように、持ち株にはその割合によって会社の経営権をも左右する力があるのです。
これから起業される方、経営権を守る持ち株比率があることを理解し、経営に必要な持ち株を保持しておけば、安定して会社を経営し続ける事ができるので、ぜひ覚えておいてください。
※外部サイトのStartupListに飛びます
自社に合ったVC・投資家を効率的に見つけませんか?
起業ログを運営するプロトスター会社は、起業家が最適な投資家探しをしたいというニーズに応え、国内最大級の起業家・投資家検索サービスStartupList(スタートアップリスト)を提供しています。
StartupListでは、投資家の投資レンジや評価基準、過去の経歴等から自社に合った投資家を検索可能。StartupList上で、見つけた投資家とそのままコンタクトをとることもできます。
現在、登録済のベンチャー企業は2,600社以上、投資家数は900名以上にのぼります。
画像出典元:o-dan
【資金調達の方法】経営者必見の11種類!選び方・メリット・デメリットも解説
【テンプレ付き】スタートアップが資金調達するときのピッチ資料の作り方
デュアルトラックプロセスとは?意味や事例をやさしく解説
必読!スタートアップの資金調達でおさえておきたい用語まとめ
飲食店をつぶさないために知っておくべき資金繰り方法を解説!
エンジェル税制とは?メリットや注意点・利用する流れを詳しく解説!
関わってはいけないエンジェル投資家・キャピタリスト【特徴5選】
資金調達のタイミングと調達額を事例と相場を元に徹底解説!
出資金とは?株主から返せと言われたらどうするべき?
私募債とは?仕組みや種類・メリット・発行の条件をわかりやすく解説