リーンな仮説検証法|創業期のベンチャーに資金調達は必要か?

リーンな仮説検証法|創業期のベンチャーに資金調達は必要か?

記事更新日: 2018/09/19

執筆: 栗島祐介

創業するためには資金が必要と脊髄反射で考えてしまう人は多くいます。しかし実際には創業期においてもほとんどお金を使わずに事業の仮説検証をすることができます。本記事では、その方法について触れていきます。

なぜ資金調達をする必要があるのか?

創業しよう!という意識が頭にあると、先に会社を登記して、人を雇って、サービスを開発して、という形で先行投資が必要なやり方をしがちです。動き始めてしまうとまとまった資金が必要となり、資金調達をする必要が出てきてしまいます。

しかし、そもそも事業を作る際に法人格(会社)は必要ではなく、手元の最低限の資金のみで、世間の人に必要とされるサービスなのか、アイディアを検証することは可能です。実際にアイディアを検証していく中で、本当に価値のあるアイディアであれば、お金を払ってでも利用したいといった声がでてきますし、その際に事業を法人化すればよく、駄目なら違うアイディアに方向転換すればよいのです。

ここで、理解を深めるためにアイディアの仮説検証フェーズを整理した図を以下に示します。

上図は事業の仮説検証をする際によく用いられるリーンスタートアップの9つの要素を縦軸に、横軸に事業の仮説検証フェーズを記載した図となります。

事業において最大のリスクは「顧客に課題があるか」であり、事業アイディアの検証において重要なのは、どんなサービスを作りたいか以上に、顧客の課題とセグメントに対する理解が重要となります。

孫子において「彼を知り己を知れば百戦危うからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に危うし。」とあるように、事業において顧客のことを知らずしての成功は困難となります。そのため、顧客という”コンパス”を頼りにしながら仮説検証していくのが定石です。

では、実際の現場においてどのようにして仮説検証をしていくのか。基本的に仮説は「事実」を元に検証していきます。そして、その事実を素早く集めるためにMVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)を作ります。

MVP(Minimum Viable Product)による仮説検証

こちらに仮説検証に利用できるMVPの種類を提示します。

オススメはPre-Order MVPWizard of Oz MVPになります。

Pre-Order MVPはMAKUAKEやCampfireなどの購入型クラウドファンディングサイトを利用したりすることで、プロダクトのコンセプトを公開し、顧客獲得・事前販売・チャネル開拓等を狙うものです。

Wizard of Oz MVPは、表向きは完全な製品に見えるけど、裏側ではクラウドソーシング等を活用した人力での運営を行い、データを蓄積し、最終的には自動化での提供を目指すサービス等となります。

やりがちな仮説検証の失敗

なお、初めて起業しようとする人がやりがちな事として「アンケート」がありますが、基本的に役に立ちません。自身の課題を明確に言える人なんてほとんどいませんし、その課題が想定顧客にとって優先順位何番目の課題かどうかも文字では伝わってきません。

また、多くの人は相手との関係を気にして事なかれ主義的な嘘をつきます。心の中で()書きで『(私は使わないけど)良いと思う!』とか、『(私は顧客じゃないけど)ニーズありますね!』といった具合に。目の前の想定顧客の言葉は基本的に信じず、α版でも実際にお金払う、登録してSNSで広げてくれている等の行動(事実)以外は信じない方が良いです。

お金を使わないスタートアップの仮説検証事例

では、ここからは実際にスタートアップによる仮説検証事例について触れていきたいと思います。

事例:buffer

bufferはSocial Media管理のSaaSを提供する会社です。bufferの創業者は下図にあるようなシンプルなランディングページ(以下、LP)を用意して、価格表ページ・問合せページをつけることで、仮説検証をしています。

これにより「プロダクトのコンセプトに同意してくれるユーザーがどれ位いるのか?」「プロダクトに(どれ位)お金を払ってくれるのか?」の検証を進めることができています。


bufferのランディングページ

事例:Dropbox

Dropboxはクラウドストレージを提供する会社です。現在では1兆円の時価総額を超える巨大企業になっています。創業者は当時、既存のクラウドストレージサービスの課題として、「ユーザーにとって使いにくい」「安全性に難がある」の2つがあると考えており、その仮説検証に動きました。

仮説検証にあたり、プロダクトを開発せずに、創業者自身が30秒のサービス紹介動画を作り、2007年4月Hacker Newsに投稿しました。結果として、数千ものコメントがユーザーから寄せられ、LPも活用することで70,000人もの初期ユーザー候補の連絡先を獲得することに成功しました。

事例:AI-CON

AI-CONは契約リスクをオンラインで判定するサービス(開発会社:GVA TECH)です。創業者はGVA法律事務所という弁護士事務所の代表であり、実際に多くの企業の法律業務に携わっていました。

GVA TECHは顧客ニーズ・提供するサービス価値の仮説検証にあたり、LPを作成して初期ユーザーを獲得し、人力でサービスを提供しながらオペレーションの効率化、自動化を並行して行っています。結果として、2018年4月に正式リリースしたサービスは5か月で1,000社以上に利用される段階まで成長しています。

AI-CONランディングページ

事例:STUDIO

STUDIOは自由自在なデザインのWebサイトを、コードを書くことなく作成可能な次世代のWebデザインプラットフォームを提供する会社です。

STUDIOは初期ユーザーの獲得、顧客ニーズの仮説検証をするにあたり、プロダクトニュースサイトのProduct Huntにサービス動画やLPへのリンク等を登録し、情報をSNS上で拡散させました。結果として、STUDIOはProductHunt上で多くの人に支持され、No1プロダクトに選ばれ、世界中のユーザーを獲得することができました。

Product Huntへの掲載

事例:StartupList

StartupList(スタートアップリスト)は起業家・投資家のための情報検索サービス(開発会社:プロトスター)です。もともと運営元のプロトスターは国内最大のスタートアップコミュニティを運営しており、起業家・投資家のマッチングをリアル・オンライン双方で頻繁に行っていました。

StartupListはサービスコンセプトの検証および初期顧客の獲得をするために、サービス概要資料(登録ページへのリンク付き)を起業家コミュニティ内の起業家・投資家に送付および説明し、仮説検証をしました。結果としてサービス提供の前段階で、スタートアップ50社、投資家100名の事前登録を集めることができ、本番開発の判断ができました。現在では半年弱で2,000アカウントを超えるまでに成長しています。

サービス概要資料の表紙

資料の続きはこちらから

簡単に仮説検証をしたいならLPを作ること

仮説検証する際にLP(ランディングページ)を作るのは鉄則です。最近では無料でLPを作成できるサービスが溢れているため、何個かのサービスに触れてみて利用してみることをお勧めします。

LP作成サービス例

なお、起業ログを運営するプロトスター社のホームページはStrikinglyで作成されています。また、起業家コミュニティStarBurstのDemoDay特設ページはSTUDIOで作成されています。

プロトスター株式会社HP(Strinkinglyで作成)


StarBurst DemoDay特設ページ(STUDIOで作成)

LP作成サービスを利用することで、簡単におしゃれなLPを作成することができます。

参考リンク①:Strinkingly公式HP

参考リンク②:STUDIO公式HP

目の前の想定顧客がズレている可能性には要注意

仮説検証をしていく中で注意すべきことに「目の前にいる想定顧客のタイプがズレていることに気付かない」事象があります。イノベーター理論において、初期市場の対象となる顧客は「イノベーター」「アーリーアダプター」タイプとなります。

目の前の顧客がそれ以外の後段階タイプの場合、その人の話を鵜呑みにしすぎると、まだ不必要で無駄な機能ニーズを拾ってしまうことや、初期の課題設定がズレてしまうリスクが発生します。

画像出典元:【キャズム理論】マーケティングの深い溝を乗り越えるには?

そのため、目の前にいる人がイノベーター理論においてどのタイプかを意識しながら仮説検証していくことをオススメします。

みなさんが参考にしている多くのサービスは初期の検証段階があって、今の洗練されたサービスに辿り着いています。まずは出来るだけ無駄を排除して最低限の実用可能なプロダクトを目指しましょう。

初期ユーザーには有料でサービスを提供すべき

世の中のプロダクトは「社会期待創出型」「社会課題解決型」の2パターンに分かれます。前者はFacebookやTwitterのように明確な課題解決というよりは、社会に付加価値をつけていこうとするタイプです。後者は上記に挙げているStartupListのように明確な課題に対して解決手段を提供するタイプです。

プロダクトの仮説検証をする際によくある悩みとして、製品の値段設定があります。期待創出型のプロダクトであれば、フリーミアムモデルでユーザー獲得を優先するという戦略もアリですが、課題解決型のプロダクトであれば初期ユーザーだとしても価格を設定して有料でサービスを提供すべきです。

なぜなら、課題を解決しているのであれば、そのプロダクトには価値があるということであり、価値あるプロダクトにお金を払うのは当たり前です。逆に無料じゃないとユーザーが利用しないのであれば、そのプロダクトには価値がないということです。もちろんプロダクトの試用期間はあってもよいと思います。

はじめてプロダクトをローンチする際は多くの不安があるため、妥協する心がでてしまいやすいですが、仮説検証をするためにも早期のプロダクトの価値を検証してみてください。

まとめ

仮説検証は顧客というコンパスを頼りに進みましょう。そして、間違ったコンパス(顧客タイプ)を選択しないように注意しながら、MVPでの事実集めをしてみてください。初期プロダクトほどそれほどお金を必要としないはずであり、仮説検証も様々な工夫をこらせば進めることができます。是非試行錯誤して、挑戦してみてください。

執筆者プロフィール

栗島祐介

プロトスター株式会社代表取締役CCO (Chief Community Officer) 早稲田大学商学部卒。アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、当社を設立。HardTech領域の起業家支援コミュニティ「StarBurst」の運営総括、起業家・投資家の情報検索サービス「StartupList」の運営を行う。

画像出典元:Burst

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