アスクル株式会社の決算/売上/経常利益を調べ、IR情報を徹底調査

記事更新日: 2019/07/11

執筆: 山中恵子

火災と宅配クライシスを乗り越え、営業利益7.8%増となった「アスクル」の通期決算

2019年5月期 通期決算

  • 売上高:3,874億7,000万円(前期比+7.5%)
  • 営業利益:45億2,000万円(前期比+7.8%)
  • 経常利益:44億1,800万円(前期比+12.1%)
  • 当期純利益:4億3,400万円(前期比△90.7%)

2019年5月期通期の業績は、前期に対し増収となったものの、最終利益は4億3,400万円(前期比△90.7%)となりました。

増収の主な要因は、主力分野であるeコマース事業のBtoB事業が順調に推移したことと、BtoC事業において「LOHACO」の火災からの回復と前期に子会社化した株式会社チャームの連結効果が寄与したことによるものです。

配送原価低減策に取り組んだことで宅配クライシスを乗り越え、営業利益・経常利益ともに増益を達成しました。

【グラフ】四半期別eコマース事業営業利益推移

純利益は、固定資産の減損損失31億2,300万円を計上したことと、前期に火災損失引当金戻入額68億4,600万円を計上したこと等により大幅な減益となりました。

セグメント別の業績

eコマース事業

  • 売上高:3,810億円(前期比+7.9%)
  • 営業利益:50億円(前期比+32.3%)

販売費及び一般管理費は、配送運賃の大幅な増加、「ASKUL Value Center 関西」開設に係る固定費の増加等により増加。

一方、物流センターにおける労働生産性の飛躍的な改善と売上高の増加により増益となりました。

BtoB事業(事業者向け)

主力分野であるeコマース事業のBtoB事業は、売上高3,158億円(前期比4.4%増)、営業利益142億円(前期比+5.3%)と順調に推移。

商品の種類別では、日用消耗品や消耗紙、オフィスで利用される飲料等の生活用品が成長を牽引し、MRO商材、医療・介護施設向け商材の売上高も増加。

BtoB事業においては、以下の3点によって集客・購買機会を最大化にし、売上を伸ばしました。

 Web施策

SEOやSEM施策により新規客が増加。Web経由の新規登録は過去最高となりました。

さらに、ビッグデータやAI(人工知能)を活用したWEBサイト上の検索機能の進化により既存客の購入点数・単価ともに増加しました。

② オリジナル商品の拡大

2019年5月期に投入したオリジナル商品数は600アイテム超、5月20日現在で9,100アイテム超となりました。売上高の約36%がオリジナル商品で、その比率は上昇しています。

③ ロングテール商品の拡大

注力分野であるロングテール商品は取扱い数が610万を超え、売上高も順調に拡大しています。

販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えることで、どこで売っているかわからないといったお客の困りごとを解決しています。

今後も、データやテクノロジーを活用した商品開発、ロングテール商品の拡大とWEBサイトの進化に取り組んでいくとのことです。

BtoC事業(個人向け)

BtoC事業は、「LOHACO」の火災からの回復とチャームの連結効果により前期比28.7%増の652億円に。

一方、配送運賃の値上げの影響は大きく、営業利益は92億円の赤字となりました。

配送原価低減策を実行したことと「配送バー」改定により買い回りが進み、損益は改善傾向にあります。また、「LOHACO」の自社配送シェアは期末時点で36%となり、目標の「シェア35%」を達成しました。

BtoC事業では、将来の収益改善をともなった成長を実現するために「独自価値ECへの転換」に注力。下期より以下の取り組みを開始しています。

① 独自価値商品の拡大

メーカーとの共創によるオリジナル商品数の増加。

② 戦略カテゴリの強化

化粧品・健康食品・酒類の売上高シェア拡大。

③ 広告フィー収入の拡大

ビッグデータ活用による販促力の高い広告を実現。

加えて、引き続き物流配送コストの低減等の物流施策を進め、収益基盤の拡大を進めるとのことです。

ロジスティクス事業・その他

  • 売上高:63億円(前期比△10.5%)
  • 営業利益:△5億円

ロジスティクス事業は企業向け物流・小口貨物輸送サービス、不動産アセットマネジメント事業等を行っています。

グループ外の物流業務受託の売上高が増加しましたが、前連結会計年度の売上高には、株式会社ecoプロパティーズの「ALP首都圏」、「ASKUL Logi PARK 福岡」売却等の大型案件に係る不動産仲介手数料が含まれていたことから減収減益となりました。

2020年5月期の業績予想

2020年5月期は、前期に対し増収増益となる見込みです。

  • 売上高:4,040億円(前期比+4.3%)
  • 営業利益:88億円(前期比+94.7%)
  • 経常利益:86億円(前期比+94.6%)
  • 当期純利益:54億円

BtoB事業、BtoC事業それぞれの戦略に加え、 自社配送網の高密度化と高度自動化された物流・配送のシェアリング(OPA)による効率化によりEBITDA過去最高益を見込んでいます。

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明資料

 

 

2019年5月期 第3四半期 累積業績(19年3月更新)

  • 売上高:2,885億800万円(前年比+9.3%)
  • 営業利益:24億3,100万円(前年比△38.2%)
  • 経常利益:23億2,200万円(前年比△37.5%)
  • 四半期純利益:11億1,500万円(前年比△76.0%)

2019年第3四半期連結業績は、増収減益となりました。

営業利益・経常利益ともに減益していますが、第2四半期以降の各連結会計期間の利益水準は前年同四半期並みに回復しています。
物流センター内の生産性が、2017年2月にASKUL Logi Park首都圏で起こった火災以前の水準にまで順調に改善したことが要因です。

eコマース事業のBtoB事業は順調に推移し、BtoC事業は「LOHACO」が火災から復活したことと、前連結会計年度の第1四半期末に子会社化した株式会社チャームの連結効果で増収となりました。

一方、大手配送会社による配送運賃の値上げや、前年に火災損失引当金戻入額68億4,600万円を計上したことが大幅な減益要因となっています。

各セグメントの業績

  • eコマース事業(BtoB事業)

売上高は、前年比5.0%増の2,344億900万円となり、順調に推移しています。

Web成長戦略に力を入れ、SEO対策やインターネット広告の強化を行ったことで、新規客が増加。

さらに、ビッグデータを活用した効率的・効果的な販促とWEBサイト上の検索機能の改善を進めた結果、従来客の買い回りも進み、購入点数・単価ともに増加しました。

また、2018年8月には「アスクルカタログ 2018秋・冬号」を発刊し、定期配送サービスや、多様化する働き方やオフィス環境に適した新サービスの提案を行っています。

  • eコマース事業(BtoC事業)

「LOHACO」の売上高は火災前の水準まで回復しており、前年比33.3%増の388億9,500万円、前連結会計年度中に子会社化した株式会社チャームの連結効果も寄与し、BtoC事業合計では、前年比39.9%増の493億3,400万円となりました。

2月度単月で限界利益黒字を達成しました。来期以降は利益成長スピードを上げていく計画です。

2018年5月にYahoo!ショッピングへ出店を開始後、新規客の獲得が順調に進んでいます。

また、基本配送料が無料となる注文金額の改定等で、購入単価が上昇した結果、売上高の増加と収益性の改善が同時に進みました。

2019年1月より、配送バー改定を行っています。基本配送料が無料となる注文金額を「1,900円(税込)以上」から「3,240円(税込)以上」に改定。

2月には「LOHACO Yahoo!ショッピング店」でも、基本配送料が無料となる注文金額を「3,240円(税込)以上」から「3,780円(税込)以上」に改定しました。

これにより、1箱当たりの売上高が上昇し、売上高配送費比率が予定通り改善しています。

 

  • ロジスティクス事業

売上高は、前年比25.9%減の41億4,200万円、営業損失は4億100万円(前年同期は営業利益10億2,800万円)となっています。

グループ外の物流業務受託の拡大により売上高が増加しましたが、前第3四半期連結累計期間の売上高には、株式会社ecoプロパティーズの「ALP首都圏」、「ASKUL Logi PARK 福岡」売却を含めた大型案件に係る不動産仲介手数料が含まれていたことから、減収減益となりました。

自社配送の拡大

アスクルは、差別化された配送サービスの拡大と配送コストの低減を目的に、自社配送の拡大を進めています。

連結会計年度期首にて10%だった自社配送比率は、第3四半期連結会計期間末時点で、期首に計画した期末時点の目標であった20%を超え23%を達成しました。
連結会計年度末時点では35%を目標に進めています。

19年5月期の業績予想

19年5月期の予想への進捗率は4割にとどまっていますが、「増収効果や自社配送の拡大などにより採算を改善する」として予想を据え置いています。

4~5月の10連休の影響については精査中です。

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明会資料

 

 

2019年第2四半期 累積業績(18年12月更新)

  • 売上高:1,914億3,700万円(前年比+11.5%)
  • 営業利益:10億2,900万円(前年比-55.4%)
  • 経常利益:9億5,800万円(前年比-54.5%)
  • 四半期純利益:3億1,500万円(前年比-90.7%)

2019年第2四半期連結累計期間においての業績は、増収減益となりました。主力分野であるeコマース事業のBtoB事業は順調に推移し、BtoC事業は「LOHACO」が火災から復活しました。

一方、配送運賃の値上げが大きく影響し、営業利益は減益となりました。四半期純利益は、前年同期に火災損失引当金戻入額68億4,600万円を計上したことで大幅な減益となりました。

配送コストのピークは第1四半期で、配送コスト低減に向けたさまざまな施策により配送コストは低減しつつあります。

各セグメントの業績

  • BtoB事業

主力分野であるBtoB事業の売上高は、1,555億8,700万円(前年比+5.2%)となりました。SEOやインターネット広告の強化により新規の顧客を獲得することができ、ネット広告経由の売上高は前年同期比2倍超となりました。

日用消耗品や消耗紙、飲料等の生活用品が成長を牽引し、MRO商材、医療・介護施設向け商材の売上高も増加しました。ロングテール商品の拡充も貢献しました。

サービス別では、中堅・大企業向けの「SOLOEL ARENA」がBtoB事業の成長を牽引しました。

今後は、オリジナル商品の拡大、ロングテール商品のサービス差別化、WEBの進化継続によってさらなる売上拡大を目指します。

  • BtoC事業

BtoC事業の売上高は、「LOHACO」の売上高が257億2,100万円(前年比+43.9%)、また前連結会計年度中に子会社化した株式会社チャームの連結効果も寄与し、326億3,700万円(前年比+56.1%)となりました。

2017年2月の火災以降、売上高の減少が続いていましたが、現在は確実な成長路線に転じています。また、2018年5月より「Yahoo!ショッピング」への出店を開始するとともに、ヤフー株式会社と連携した販促施策を一層強化したことで新規顧客の獲得も順調に進み、売上高が増加しました。

今後は、オリジナル商品数のさらなる拡大、配送バーの改定、自社配送比率の向上等により収益力の向上を図っていきます。

画像出典元:「アスクル」決算説明資料

 

 

2019年5月期 第1四半期決算

  • 売上高939億7,200万円(前年同期比15.9%増)
  • 営業利益△1億1,100万円
  • 当期純利益△2億3,400万円

2019年5月期第1四半期の業績は、売上高939億7,200万円・営業利益△1億1,100万円の増収減益となりました。当期純利益は△2億3,400万円の赤字となっています。

2017年2月、アスクルは、自身が所有するLOHACO倉庫で火災が発生、サービスを一時的に停止させる状態にまで追い込まれました。同年9月までには完全回復、現在は火災前に比べて出荷能力160%以上の増加、取扱商品数倍増を実現しています。

一方、2017年に子会社化した株式会社チャームの費用計上、配送ドライバー不足等に起因する配送運賃の上昇などに伴い、販管費は220億300万円と前年同期に比べ23.6%増となりました。今回、営業利益が赤字となった原因は、コスト増加による部分が大きいと言えるでしょう。

続いて、アスクルの事業内容について見ていきます。

アスクルの事業内容

アスクルは、「お客様のために進化する――。」を経営理念に、BtoB事業のアスクルカタログから始まり、アスクルWebサイト、そしてBtoC事業のLOHACOへとサービスを展開してきました。現在はECサイトの運営が中心となっています。

1

SOLOEL ARENA

BtoB事業。大企業向けのEC。オフィス用品、理化学用品、PC本体・周辺機器・間接材、サービス材などをネット上で購入出来るワンストップサービスです。

2

ASKUL

BtoB事業。中小事業所向けのEC。取扱商品数は540万アイテム超え。20年以上の運営実績あり。仕事場で必要なモノやサービスを提供する通販サイトです。

3

LOHACO

BtoC事業。個人向けのEC。Yahoo! JAPANとコラボして開始された通販サイト。文房具、生活雑貨から食品、飲料まで生活に必要なものを取り扱います。

「ASKUL」通販ページ

アスクルの特徴として、環境への配慮の徹底が挙げられます。他団体環境活動への支援はもちろん、自社でのCO2削減への施策も行なっているそうです。2018年8月7日には、環境省推進エコ・ファースト制度にてエコ・ファースト企業認定を取得しました。

また、アスクルは、2004年にメディカル事業へ参入、衛生・介護用品カタログや医療機関向けカタログなどを通し、医療器具や材料などのデリバリーサービスを行なってきました。

さらに、2013年には、これまでのメディカルサービス事業で培ってきたノウハウを活かし、個人向けの医薬品のネット販売を行うECサイト「LOHACOドラッグ」を開始しています。

アスクルのこれから

現在、アスクルが抱えている最大の経営課題は、大手配送会社の配送運賃値上げ等の影響により高騰した配送コストです。それに伴い、2019年5月期は、物流改革の取組みを着実に進め、物流生産性の向上・配送基盤の強化・物流シェアリングでローコストオペレーションを目指します。

アスクルは、課題への意識を高めると共に、大手配送会社への依存度低減への具体的な施策として、3つの取り組みを宣言しました。

  • 地方では、地域パートナー配送会社の積極的な活用と物流センター間輸送の自社化
  • アスクル独自の受取りサービス「Happy On Time」によるBtoC事業の自社配送化
  • 物流基盤を外部提供する新サービス「Open Platform by ASKUL」の取組拡大

つまり、配送コスト増加の解決策として自社グループ配送の強みを強化していく方向性を示しているということでしょう。

さらに、アスクルは、BtoC事業は商品数・ユーザー数の増強で規模を拡大し、BtoB事業では引き続き増収増益を維持・ヘッド商品とロングテール商品の両軸から収益拡大を実現させていく方針でいます。

画像出典元:「アスクル」決算説明会資料・公式HP

会社概要

会社名 アスクル株式会社
事業内容 BtoB、BtoC向けeコマース事業
所在地 東京都江東区豊洲3-2-3
設立日 1963年11月1日
代表 岩田 彰一郎
資本金 211億8,900万円

 

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