アスクル株式会社の決算/売上/経常利益を調べ、IR情報を徹底調査

執筆: 山中恵子

過去最高の売上高!新型コロナの影響で注文が殺到している「アスクル」の第3四半期決算

2020年5月期 第3四半期決算

  • 売上高:2,994億3,900万円(前年同期比+3.8%)
  • 営業利益:63億3,500万円(前年同期比+160.5%)
  • 経常利益:62億4,800万円(前年同期比+169.0%)
  • 四半期純利益:41億1,600万円(前年同期比+268.9%)

オフィス用品通販サービスやLOHACO(ロハコ)を展開する「アスクル」の決算を見ていきます。

2020年5月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収、すべての利益項目で3桁増益となっています。同期間として過去最高の売上高を達成。火災と宅配クライシスで一時落ち込んでいた利益も回復しつつあります。

主力分野であるeコマース事業のBtoB事業は、当第3四半期において消費税増税の影響が懸念されましたが、新型コロナウイルス感染症予防のための衛生用品等の急激な需要増もあり、利用者数、購入単価ともに増加。

前年同期比で増収増益を達成しましたが、特に営業利益は、1Q(30億円)→ 2Q(37億円)→ 3Q(46億円)と第3四半期に向かって利益成長が加速しています。

BtoB事業好調の要因として、新型コロナウイルスによる需要増以外にも、収益性の高いロングテール商品の売上高拡大、SEO対策やインターネット広告強化の効果現れが挙げられます。

特にWeb施策の効果は顕著で、検索エンジン経由の新規客獲得数は過去最高に。今後の継続的な成長が大いに期待されます。

一方、BtoC事業は、売上高については通期計画達成は厳しいものの、赤字幅縮小は計画通り達成できる見込みとのこと。

なお、LOHACOの赤字推移は、1Q(△17億円)→ 2Q(△17億円)→ 3Q(△14億円)

LOHACOは、PayPayモール店の売上高構成比が拡大していることにより固定費削減が実現。今後は、LOHACO本店においてもヤフーのシステム基盤の活用を検討していくとのこと。

新型コロナの影響

アスクルは多くの医療機関にも利用されていますが、新型コロナウイルスの影響により第3四半期は衛生用品(マスク、消毒液)等の慢性的な品切れが発生。

また、第4四半期においてはトイレットペーパなどの急激な需要増で配送が追いつかず、LOHACO本店は3月4日から6日まで(実質48時間)受注停止という措置が取られました。今もなお、マスクや手指消毒剤等の感染予防商品、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、おむつ等の紙製品の品切れが多く発生しており、出荷の遅延も見られます。

BtoBにおいても、購入数量制限などの対策が行われるなど、しばらく影響は続きそうです。


画像出典元:LOHACO公式HPトップページ

足元では急激な受注増が見られますが、一方で今後のリスクとして大きく2点挙げられます。

1点目は、中国生産品の供給不安。アスクルの在庫商品アイテム数の2割超が中国製ですが、既に一部商品が欠品に。今後、さらなる欠品商品の増加が懸念されます。

2点目は、BtoBにおける需要の低下。多くの企業がテレワークを導入していますが、テレワークやサービス業の企業活動停滞が長引けば、需要増から一転、需要減となる可能性も考えられます。

なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響が不透明であることから、業績予想は据え置かれています。今後は、業績影響の極小化に向けた対策を検討、実施していくとしています。

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明資料

 

 

2020年5月期 第2四半期決算(19年12月更新)

  • 売上高:1,996億2,500万円(前年同期比+4.3%)
  • 営業利益:34億6,800万円(前年同期比+236.9%)
  • 経常利益:33億9,300万円(前年同期比+254.1%)
  • 四半期純利益:21億9,200万円(前年同期比+594.0%)

2020年5月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収、すべての利益項目で3桁増益となっています。上期としての売上高は過去最高を更新し、営業利益3.3倍、経常利益3.5倍、純利益6.9倍と業績V字回復に向け順調に推移。

増収に貢献したのは、主力分野であるeコマース事業のBtoB事業。消費税増税前の駆け込み需要の効果もあり、前年同期比5.4%の増収と順調に推移。

一方、BtoC事業は前年同期比で3.0%減収となりましたが、これはLOHACO事業において独自価値ECへの転換に向けての構造転換を最優先しているためとのこと。

なお、BtoC事業のうち、LOHACO事業の売上高は前年同期比6.7%減の240億円。海外向けや国内の大口顧客向け売上の落ち込みや、売上高配送費比率の高い飲料の販売方法の見直しにより飲料品のケース販売額が減少したことが響きました。

売上総利益率は、BtoB事業において消費税増税対応(物流山崩しクーポン等)の影響により一時的に低下したものの、LOHACO事業の売上総利益率が向上し、前年同期比で同水準の23.6%に。

営業利益が大幅増となったのは、BtoB事業の増収に加え、売上高配送費比率の減少、減価償却費の減少等により売上高販管費比率が21.9%と前年同期比で1.2ポイント改善したことによよるものです。

なかでも、LOHACO事業においては配送コスト削減による効果が大きく見られ、売上総利益率の上昇と売上高配送費比率の低下が同時に進んだことで損益構造の改善が実現。その結果、BtoC事業の赤字幅は15億円縮小。

対立から一転、ヤフーとの連携強化へ

アスクルは、ヤフーと対立し資本関係を解消したい意向を示していましたが、一転、LOHACO事業においてヤフーとの連携を強化していくと当第2四半期決算で発表しました。

なお、ヤフーが10月1日付でZホールディングスに商号変更し持株会社へと移行したため、ヤフーの連結子会社であるアスクルはZホールディングス傘下となります。

ここで、LOHACO事業のおさらいです。

オフィス用品通販サービスで順調に成長してきたアスクルは、サービスを一般消費者向けに展開すべく、2012年に一般消費者向け通信販売サイト「LOHACO(ロハコ)」の提供を開始しましたが、倉庫火災もあり赤字は拡大の一途。業績改善が見られないことで、筆頭株主であるヤフーと対立を深め、社長解任騒動へと発展していったわけです。

それが10月、LOHACOはヤフーが開始したPayPay モールに出店。PayPayモールはLOHACO本店と比較してオーダー単価が高く、またPayPayモール全体での大型販促があるため販促効率も非常に高いものとなっています。そのため、LOHACO本店の売上は伸び悩んでいますが、PayPayモールでの売上は販促効果もあり好調に推移しているとのこと。

今後は、PayPayモールでの売上高拡大によって収益改善を目指し、ヤフーとの連携をさらに強化していくとしています。

なお、通期の業績に変更はありません。前期に対して増収増益、EBITDA過去最高益を見込んでいます。LOHACO事業においては、成長頼みではない収益改善に取り組み、2023年5月期までに黒字化を実現させていく予定です。

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明資料

 

 

2020年5月期 第1四半期決算(19年9月更新)

  • 売上高:978億9,100万円(前年同期比+4.2%)
  • 営業利益:14億7,900万円
  • 経常利益:14億5,600万円
  • 四半期純利益:9億1,000万円

ヤフーの連結子会社、eコマース事業を展開する「アスクル」の決算を見ていきます。

2020年5月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し増収、利益面では大幅な増益となり黒字に転換しています。

増収の主な要因は、主力分野であるeコマース事業のBtoB事業が前年同期比4.2%増収と好調に推移したことによるものです。

一方、何かと話題のBtoC事業LOHACO(ロハコ)の売上高は前年同期比2.5%減に。ただ、連結子会社のチャームの増収が寄与し、BtoC事業合計としては前年同期比0.4%の増収となっています。

チャームは、ペット・ガーデニング用品の品揃えに強みを持ち、チャームが運営するeコマースサイト「Charm」はアマゾンや楽天、Yahoo!ショッピングにも出店しています。アスクルはLOHACOにおけるペット用品取扱い拡充を狙い、2017年にチャームを連結子会社としています。

LOHACOの「Charm」トップページ

利益に関しては、増収による増益に加え、販売費及び一般管理費が前年同期比で減少したことにより大幅な増益となり、黒字化を達成。

LOHACOに関しては赤字が続いていますが、前年同期26億円の赤字から17億円の赤字と赤字幅は縮小しています。

費用面は、配送に関する施策が奏功し売上高配送費比率が減少したこと、前期に「ASKUL Value Center 日高」の固定資産を減損し減価償却費が減少したこと等により販売費及び一般管理費が前年同期比で1.9%減少しています。

なお、通期の業績予想について変更はありません。EBITDA過去最高益を見込んでいます。

社長解任騒動

アスクルは8月2日、経営体制の見直しに伴うものとして、創業者の岩田彰一郎社長の退任を発表しました。事実上の解任です。

発端は2019年1月、業績不振を理由にヤフーがアスクルにLOHACO事業の譲渡を検討するよう申し入れたこと。しかしアスクルは、この譲渡要請を拒否。

すると同年6月27日、ヤフーは岩田社長に対し退陣要求するとともに、8月2日の定時株主総会において岩田社長再任へ反対する意向を表明。

これに対し、アスクルはヤフーとの経営思想の違いや、上場企業としての独立性の侵害が顕著になったとし、ヤフーに対し提携関係の解消を申し入れました。

ヤフーは株主権行使の理由を「アスクルの数年にわたる業績低迷の早期回復」とするのに対し、アスクルは「これは真の理由ではない」と反発。コマース事業を強化したいヤフーがLOHACOを手に入れたいのだろうというのが一般的な見方です。なお、ここ最近のヤフーの業績は先行投資が響き、減益が続いています。

泥沼化の様相を呈していましたが、結局45.1%の株式を保有する筆頭株主であるヤフーと11.6%の株式を保有するプラスが岩田氏の再任に反対する議決権を行使。また、岩田氏を支持する社外取締役3氏の再任も否決されました。

新社長には吉岡晃氏が選任されましたが、「今後のヤフーとの関係については資本関係を解消したいという基本スタンスは変わってないが、両社にとってよりよい関係の模索のための協議を速やかに開始したい」としています。

一方で、ヤフーが今秋開始するPayPayモールにLOHACOも出店。ZOZOTOWNも出店予定です。コマース事業に力を入れるヤフーは、ZOZOを買収したことにより一気にコマース事業を加速させていくと見られます。

アスクルのあゆみ

アスクルとヤフーとの関係の理解を深めるために、アスクルのあゆみを振り返っていきます。

設立は1963年、創業は1993年となっています。事務用品、事務用器具の製造を目的としてプラス株式会社の100%出資により、1963年にプラス工業株式会社を設立。

1993年、オフィス用品の中小事業所向けカタログ通信販売を目的とする新規流通事業部門として、プラスの中でアスクルの前身であるアスクル事業部が発足。

プラス株式会社トップページ

1997年にプラスから分社し、商号をアスクル株式会社に変更。岩田彰一郎氏が社長に就任し、インターネットによる受注を開始します。

2000年にJASDAQ市場に上場。2004年に東京証券取引所市場第一部へ市場変更。

2012年にBtoCオンライン通信販売事業の垂直立上げを目的にヤフー株式会社と業務資本提携契約を締結し、一般消費者向け通信販売サイトLOHACO(ロハコ)を開始2015年にヤフーはアスクルの株式を約45%(議決権ベース)保有し、アスクルを連結子会社化。

しかし、LOHACOはサービス開始から現在まで収益の改善は見られず、2014年5月期の約29億円の赤字から悪化して、2019年5月期は約92億円の赤字という結果に。

アスクルとしては業績悪化の要因は、2017年に発生した物流拠点「ASKUL Logi PARK首都圏」の火災の影響と宅配クライシスによるもので、それは乗り越えたとしています。

アスクルグループについて

次に、アスクルグループについて。

アスクルグループは、アスクルおよび連結子会社10社により構成され、eコマース事業を主な事業として展開しています。セグメントは、「eコマース事業」「ロジスティクス事業」「その他」の3つに区分されています。

全体の売上の約98%がeコマース事業によるもので、そのうちの8割がBtoB事業です。BtoB事業は順調に推移しており、LOHACOの赤字が足を引っ張っているのが現状です。

1

eコマース事業

OA・PC用品、事務用品、オフィス生活用品、オフィス家具、食料品、酒類、医薬品、化粧品、MRO商材 、ペット用品等の販売事業

 

  • BtoB事業(アスクル・ソロエルアリーナ等)
  • BtoC事業(LOHACO・連結子会社チャーム)
2

ロジスティクス事業

企業向け物流・小口貨物輸送サービス

3

その他

連結子会社嬬恋銘水株式会社にて水の製造販売

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明資料

 

 

2019年5月期 通期決算(19年7月更新)

  • 売上高:3,874億7,000万円(前期比+7.5%)
  • 営業利益:45億2,000万円(前期比+7.8%)
  • 経常利益:44億1,800万円(前期比+12.1%)
  • 当期純利益:4億3,400万円(前期比△90.7%)

2019年5月期通期の業績は、前期に対し増収となったものの、最終利益は4億3,400万円(前期比△90.7%)となりました。

増収の主な要因は、主力分野であるeコマース事業のBtoB事業が順調に推移したことと、BtoC事業において「LOHACO」の火災からの回復と前期に子会社化した株式会社チャームの連結効果が寄与したことによるものです。

配送原価低減策に取り組んだことで宅配クライシスを乗り越え、営業利益・経常利益ともに増益を達成しました。

【グラフ】四半期別eコマース事業営業利益推移

純利益は、固定資産の減損損失31億2,300万円を計上したことと、前期に火災損失引当金戻入額68億4,600万円を計上したこと等により大幅な減益となりました。

セグメント別の業績

eコマース事業

  • 売上高:3,810億円(前期比+7.9%)
  • 営業利益:50億円(前期比+32.3%)

販売費及び一般管理費は、配送運賃の大幅な増加、「ASKUL Value Center 関西」開設に係る固定費の増加等により増加。

一方、物流センターにおける労働生産性の飛躍的な改善と売上高の増加により増益となりました。

●BtoB事業(事業者向け)

主力分野であるeコマース事業のBtoB事業は、売上高3,158億円(前期比4.4%増)、営業利益142億円(前期比+5.3%)と順調に推移。

商品の種類別では、日用消耗品や消耗紙、オフィスで利用される飲料等の生活用品が成長を牽引し、MRO商材、医療・介護施設向け商材の売上高も増加。

BtoB事業においては、以下の3点によって集客・購買機会を最大化にし、売上を伸ばしました。

① Web施策

SEOやSEM施策により新規客が増加。Web経由の新規登録は過去最高となりました。

さらに、ビッグデータやAI(人工知能)を活用したWEBサイト上の検索機能の進化により既存客の購入点数・単価ともに増加しました。

② オリジナル商品の拡大

2019年5月期に投入したオリジナル商品数は600アイテム超、5月20日現在で9,100アイテム超となりました。売上高の約36%がオリジナル商品で、その比率は上昇しています。

③ ロングテール商品の拡大

注力分野であるロングテール商品は取扱い数が610万を超え、売上高も順調に拡大しています。

販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えることで、どこで売っているかわからないといったお客の困りごとを解決しています。

今後も、データやテクノロジーを活用した商品開発、ロングテール商品の拡大とWEBサイトの進化に取り組んでいくとのことです。

●BtoC事業(個人向け)

BtoC事業は、「LOHACO」の火災からの回復とチャームの連結効果により前期比28.7%増の652億円に。

一方、配送運賃の値上げの影響は大きく、営業利益は92億円の赤字となりました。

配送原価低減策を実行したことと「配送バー」改定により買い回りが進み、損益は改善傾向にあります。また、「LOHACO」の自社配送シェアは期末時点で36%となり、目標の「シェア35%」を達成しました。

BtoC事業では、将来の収益改善をともなった成長を実現するために「独自価値ECへの転換」に注力。下期より以下の取り組みを開始しています。

① 独自価値商品の拡大

メーカーとの共創によるオリジナル商品数の増加。

② 戦略カテゴリの強化

化粧品・健康食品・酒類の売上高シェア拡大。

③ 広告フィー収入の拡大

ビッグデータ活用による販促力の高い広告を実現。

加えて、引き続き物流配送コストの低減等の物流施策を進め、収益基盤の拡大を進めるとのことです。

ロジスティクス事業・その他

  • 売上高:63億円(前期比△10.5%)
  • 営業利益:△5億円

ロジスティクス事業は企業向け物流・小口貨物輸送サービス、不動産アセットマネジメント事業等を行っています。

グループ外の物流業務受託の売上高が増加しましたが、前連結会計年度の売上高には、株式会社ecoプロパティーズの「ALP首都圏」、「ASKUL Logi PARK 福岡」売却等の大型案件に係る不動産仲介手数料が含まれていたことから減収減益となりました。

2020年5月期の業績予想

2020年5月期は、前期に対し増収増益となる見込みです。

  • 売上高:4,040億円(前期比+4.3%)
  • 営業利益:88億円(前期比+94.7%)
  • 経常利益:86億円(前期比+94.6%)
  • 当期純利益:54億円

BtoB事業、BtoC事業それぞれの戦略に加え、 自社配送網の高密度化と高度自動化された物流・配送のシェアリング(OPA)による効率化によりEBITDA過去最高益を見込んでいます。

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明資料

 

 

2019年5月期 第3四半期決算(19年3月更新)

  • 売上高:2,885億800万円(前年比+9.3%)
  • 営業利益:24億3,100万円(前年比△38.2%)
  • 経常利益:23億2,200万円(前年比△37.5%)
  • 四半期純利益:11億1,500万円(前年比△76.0%)

2019年第3四半期連結業績は、増収減益となりました。

営業利益・経常利益ともに減益していますが、第2四半期以降の各連結会計期間の利益水準は前年同四半期並みに回復しています。
物流センター内の生産性が、2017年2月にASKUL Logi Park首都圏で起こった火災以前の水準にまで順調に改善したことが要因です。

eコマース事業のBtoB事業は順調に推移し、BtoC事業は「LOHACO」が火災から復活したことと、前連結会計年度の第1四半期末に子会社化した株式会社チャームの連結効果で増収となりました。

一方、大手配送会社による配送運賃の値上げや、前年に火災損失引当金戻入額68億4,600万円を計上したことが大幅な減益要因となっています。

各セグメントの業績

  • eコマース事業(BtoB事業)

売上高は、前年比5.0%増の2,344億900万円となり、順調に推移しています。

Web成長戦略に力を入れ、SEO対策やインターネット広告の強化を行ったことで、新規客が増加。

さらに、ビッグデータを活用した効率的・効果的な販促とWEBサイト上の検索機能の改善を進めた結果、従来客の買い回りも進み、購入点数・単価ともに増加しました。

また、2018年8月には「アスクルカタログ 2018秋・冬号」を発刊し、定期配送サービスや、多様化する働き方やオフィス環境に適した新サービスの提案を行っています。

  • eコマース事業(BtoC事業)

「LOHACO」の売上高は火災前の水準まで回復しており、前年比33.3%増の388億9,500万円、前連結会計年度中に子会社化した株式会社チャームの連結効果も寄与し、BtoC事業合計では、前年比39.9%増の493億3,400万円となりました。

2月度単月で限界利益黒字を達成しました。来期以降は利益成長スピードを上げていく計画です。

2018年5月にYahoo!ショッピングへ出店を開始後、新規客の獲得が順調に進んでいます。

また、基本配送料が無料となる注文金額の改定等で、購入単価が上昇した結果、売上高の増加と収益性の改善が同時に進みました。

2019年1月より、配送バー改定を行っています。基本配送料が無料となる注文金額を「1,900円(税込)以上」から「3,240円(税込)以上」に改定。

2月には「LOHACO Yahoo!ショッピング店」でも、基本配送料が無料となる注文金額を「3,240円(税込)以上」から「3,780円(税込)以上」に改定しました。

これにより、1箱当たりの売上高が上昇し、売上高配送費比率が予定通り改善しています。

 

  • ロジスティクス事業

売上高は、前年比25.9%減の41億4,200万円、営業損失は4億100万円(前年同期は営業利益10億2,800万円)となっています。

グループ外の物流業務受託の拡大により売上高が増加しましたが、前第3四半期連結累計期間の売上高には、株式会社ecoプロパティーズの「ALP首都圏」、「ASKUL Logi PARK 福岡」売却を含めた大型案件に係る不動産仲介手数料が含まれていたことから、減収減益となりました。

自社配送の拡大

アスクルは、差別化された配送サービスの拡大と配送コストの低減を目的に、自社配送の拡大を進めています。

連結会計年度期首にて10%だった自社配送比率は、第3四半期連結会計期間末時点で、期首に計画した期末時点の目標であった20%を超え23%を達成しました。
連結会計年度末時点では35%を目標に進めています。

19年5月期の業績予想

19年5月期の予想への進捗率は4割にとどまっていますが、「増収効果や自社配送の拡大などにより採算を改善する」として予想を据え置いています。

4~5月の10連休の影響については精査中です。

画像出典元:「アスクル株式会社」決算説明会資料

 

 

2019年5月期 第2四半期決算(18年12月更新)

  • 売上高:1,914億3,700万円(前年比+11.5%)
  • 営業利益:10億2,900万円(前年比-55.4%)
  • 経常利益:9億5,800万円(前年比-54.5%)
  • 四半期純利益:3億1,500万円(前年比-90.7%)

2019年第2四半期連結累計期間においての業績は、増収減益となりました。主力分野であるeコマース事業のBtoB事業は順調に推移し、BtoC事業は「LOHACO」が火災から復活しました。

一方、配送運賃の値上げが大きく影響し、営業利益は減益となりました。四半期純利益は、前年同期に火災損失引当金戻入額68億4,600万円を計上したことで大幅な減益となりました。

配送コストのピークは第1四半期で、配送コスト低減に向けたさまざまな施策により配送コストは低減しつつあります。

各セグメントの業績

  • BtoB事業

主力分野であるBtoB事業の売上高は、1,555億8,700万円(前年比+5.2%)となりました。SEOやインターネット広告の強化により新規の顧客を獲得することができ、ネット広告経由の売上高は前年同期比2倍超となりました。

日用消耗品や消耗紙、飲料等の生活用品が成長を牽引し、MRO商材、医療・介護施設向け商材の売上高も増加しました。ロングテール商品の拡充も貢献しました。

サービス別では、中堅・大企業向けの「SOLOEL ARENA」がBtoB事業の成長を牽引しました。

今後は、オリジナル商品の拡大、ロングテール商品のサービス差別化、WEBの進化継続によってさらなる売上拡大を目指します。

  • BtoC事業

BtoC事業の売上高は、「LOHACO」の売上高が257億2,100万円(前年比+43.9%)、また前連結会計年度中に子会社化した株式会社チャームの連結効果も寄与し、326億3,700万円(前年比+56.1%)となりました。

2017年2月の火災以降、売上高の減少が続いていましたが、現在は確実な成長路線に転じています。また、2018年5月より「Yahoo!ショッピング」への出店を開始するとともに、ヤフー株式会社と連携した販促施策を一層強化したことで新規顧客の獲得も順調に進み、売上高が増加しました。

今後は、オリジナル商品数のさらなる拡大、配送バーの改定、自社配送比率の向上等により収益力の向上を図っていきます。

画像出典元:「アスクル」決算説明資料

 

 

2019年5月期 第1四半期決算

  • 売上高939億7,200万円(前年同期比15.9%増)
  • 営業利益△1億1,100万円
  • 当期純利益△2億3,400万円

2019年5月期第1四半期の業績は、売上高939億7,200万円・営業利益△1億1,100万円の増収減益となりました。当期純利益は△2億3,400万円の赤字となっています。

2017年2月、アスクルは、自身が所有するLOHACO倉庫で火災が発生、サービスを一時的に停止させる状態にまで追い込まれました。同年9月までには完全回復、現在は火災前に比べて出荷能力160%以上の増加、取扱商品数倍増を実現しています。

一方、2017年に子会社化した株式会社チャームの費用計上、配送ドライバー不足等に起因する配送運賃の上昇などに伴い、販管費は220億300万円と前年同期に比べ23.6%増となりました。今回、営業利益が赤字となった原因は、コスト増加による部分が大きいと言えるでしょう。

続いて、アスクルの事業内容について見ていきます。

アスクルの事業内容

アスクルは、「お客様のために進化する――。」を経営理念に、BtoB事業のアスクルカタログから始まり、アスクルWebサイト、そしてBtoC事業のLOHACOへとサービスを展開してきました。現在はECサイトの運営が中心となっています。

1

SOLOEL ARENA

BtoB事業。大企業向けのEC。オフィス用品、理化学用品、PC本体・周辺機器・間接材、サービス材などをネット上で購入出来るワンストップサービスです。

2

ASKUL

BtoB事業。中小事業所向けのEC。取扱商品数は540万アイテム超え。20年以上の運営実績あり。仕事場で必要なモノやサービスを提供する通販サイトです。

3

LOHACO

BtoC事業。個人向けのEC。Yahoo! JAPANとコラボして開始された通販サイト。文房具、生活雑貨から食品、飲料まで生活に必要なものを取り扱います。

「ASKUL」通販ページ

アスクルの特徴として、環境への配慮の徹底が挙げられます。他団体環境活動への支援はもちろん、自社でのCO2削減への施策も行なっているそうです。2018年8月7日には、環境省推進エコ・ファースト制度にてエコ・ファースト企業認定を取得しました。

また、アスクルは、2004年にメディカル事業へ参入、衛生・介護用品カタログや医療機関向けカタログなどを通し、医療器具や材料などのデリバリーサービスを行なってきました。

さらに、2013年には、これまでのメディカルサービス事業で培ってきたノウハウを活かし、個人向けの医薬品のネット販売を行うECサイト「LOHACOドラッグ」を開始しています。

アスクルのこれから

現在、アスクルが抱えている最大の経営課題は、大手配送会社の配送運賃値上げ等の影響により高騰した配送コストです。それに伴い、2019年5月期は、物流改革の取組みを着実に進め、物流生産性の向上・配送基盤の強化・物流シェアリングでローコストオペレーションを目指します。

アスクルは、課題への意識を高めると共に、大手配送会社への依存度低減への具体的な施策として、3つの取り組みを宣言しました。

  • 地方では、地域パートナー配送会社の積極的な活用と物流センター間輸送の自社化
  • アスクル独自の受取りサービス「Happy On Time」によるBtoC事業の自社配送化
  • 物流基盤を外部提供する新サービス「Open Platform by ASKUL」の取組拡大

つまり、配送コスト増加の解決策として自社グループ配送の強みを強化していく方向性を示しているということでしょう。

さらに、アスクルは、BtoC事業は商品数・ユーザー数の増強で規模を拡大し、BtoB事業では引き続き増収増益を維持・ヘッド商品とロングテール商品の両軸から収益拡大を実現させていく方針でいます。

画像出典元:「アスクル」決算説明会資料・公式HP

会社概要

会社名 アスクル株式会社
事業内容 BtoB、BtoC向けeコマース事業
所在地 東京都江東区豊洲3-2-3
設立日 1963年11月1日
代表 吉岡 晃
資本金 211億8,900万円
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