イオンに続いて、国内小売業売上高2位を誇る「セブン&アイ・ホールディングス」の決算を見ていきましょう。
2020年2月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収増益となっています。減収とはなったものの、営業利益、四半期純利益は過去最高益を達成。
まずは営業収益構成比から見ていきましょう。営業収益は、国内・海外コンビニエンスストア事業が全社売上の6割弱を占めます。なお、海外コンビニはガソリンスタンドを併設した店舗をアメリカやカナダで展開しており、売上の約半分はガソリン売上という特徴があります。
スーパーストア事業は総合スーパーであるイトーヨーカ堂、百貨店事業はそごう・西武、金融事業はセブン銀行をそれぞれ主に指し、専門店事業には赤ちゃん本舗、ニッセン、デニーズ、ロフト、タワーレコード、Francfrancなどが含まれます。
次に、営業収益推移について。営業収益は、主にイトーヨーカ堂の店舗数減少、既存店売上の苦戦、北米のコンビニエンスストアにおける原油価格の下落に伴うガソリン売上のマイナスにより前年同期比で減収となりました。
一方、国内コンビニエンスストア事業は店舗数増が寄与し、前年同期比で増収に。また、上期は既存店売上が伸び悩んでいましたが、消費増税後はキャッシュレス・消費者還元事業の恩恵を受け、既存店売上は伸長しました。
営業利益は、国内コンビニと海外コンビニの増益が他のセグメントの減益をカバーし、同期間として7期連続で過去最高益を更新。
国内コンビニエンスストア事業は、売上増や荒利率改善に加え、販管費適正化により大幅増益となり、計画達成。
一方、スーパーストア事業、百貨店事業は苦戦しています。消費増税後のキャッシュレス・消費者還元事業の恩恵を受けた国内コンビニ事業とは対照に、スーパーストア事業、百貨店事業はともにマイナスの影響を受け、特に百貨店事業は増税後、売上が大きく落ち込み、19億円の赤字を計上しました。
セブン‐イレブン・ジャパンは、キャッシュレス・消費者還元事業に参加(中小・小規模事業者に該当しない一部の加盟店を除く)しており、キャッシュレス決済手段で商品を購入した場合、購入価格の2%分が還元されます。
増税となった10月以降、キャッシュレス比率は急増し、11月には42.3%にまで上昇。セブン‐イレブンにおいては、約4割の客が決済手段としてキャッシュレス決済を選んでいることになります。各社キャンペーン効果も加わり、キャッシュレス決済の場合、客単価も高くなる傾向にあり、既存店売上も伸長しました。
キャッシュレス決済で最も恩恵を受けた小売業はコンビニという結果となりましたが、恩恵が受けられるのも2020年6月末まで。
不振が続くスーパーストア事業と百貨店事業を抱えているセブン&アイ・ホールディングスは、2019年10月の上期決算時に事業構造改革を発表し、イトーヨーカ堂とそごう・西武の店舗閉鎖、人員削減に言及しています。
あわせて、セブン‐イレブン・ジャパンの事業構造改革も発表。今や国内では飽和状態となっているコンビニ業界において、事業構造改革をどのように進めていくのか、今後の動向に注目です。
なお、直近に公表されている業績予想から変更はありません。前期に対し減収増益となる見込みです。
画像出典元「株式会社 セブン&アイ・ホールディングス」決算説明会資料
コンビニエンスストア、総合スーパー、百貨店、レストラン、銀行、ITサービスなどを擁する総合流通グループ「セブン&アイ・ホールディングス」の決算を見ていきます。
2020年2月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し減収増益となっています。同期間としては、すべての利益項目で過去最高を達成。
減収となったのは、国内・海外のコンビニエンスストア事業は増収となったものの、スーパーストア、百貨店、金融関連、専門店といった事業が軒並み減収となったことが要因です。
営業利益が増益となった主な要因は、セブン‐イレブン・ジャパンと7-Eleven, Inc.の大幅な増益が寄与したことによるものです。
【グラフ】セグメント別営業利益増減
過去最高の利益を叩き出したセブン&アイ・ホールディングスですが、今後は人手不足や人件費上昇が継続するなど厳しさが増していくと見られます。加えて、スーパーストア事業は苦戦が続き、百貨店事業に至っては赤字となっていることを踏まえ、構造改革を実施することを発表しました。
セブン&アイ・ホールディングスは、成長戦略として7-Eleven,Inc.による北米及びグローバル展開の強化と、グループ共通戦略としてのデジタル戦略、金融戦略、調達・物流戦略及び食品戦略を行っていく一方で、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、そごう・西武では事業構造改革を実施すると発表。
国内・海外のコンビニエンスストアは当第2四半期末で合計69,050店ですが、2020年度中に70,000店まで拡大予定。
つまり、海外でのコンビニエンスストア事業を拡大する一方で、国内のコンビニエンスストア事業は基盤造りにシフト。さらに、イトーヨーカ堂とそごう・西武では不採算店の閉店、数千人規模のリストラを進めていく方針です。
具体的な構造改革は以下のとおりです。
【セブン‐イレブン・ジャパン】
主な構造改革は、インセンティブ・チャージの見直し、約1,000店舗の閉鎖・立地移転、本部人員の削減、今期末までに新レイアウトを累計10,400店に導入。
インセンティブ・チャージの見直しにより加盟店利益は1店舗あたり年50万円改善されますが、本部の利益は年100億円減額となる見込みです。ただし、24時間営業店と非24時間営業店では支援に差があり、24時間営業店のほうがより多く支援されます。
【イトーヨーカ堂】
主な構造改革は、33店舗についてグループ内外企業との連携または閉店、2022年度末までに従業員数約1,700人削減、ライフスタイル事業のMD改廃・売場減積、 食品館事業の分社化視野。
【そごう・西武】
主な構造改革は、5店舗閉鎖・2店舗減積、 2022年度末までに従業員1,300人削減。
セブン&アイ・ホールディングスは、デジタル化に軸を移すとしていますが、7pay問題の影響もあってかオムニチャネルサービス「omni7(オムニセブン)」における上期のEC売上は前年同期比で減少しています。それでも事業構造改革の発表は評価され、人手不足により時短営業を行なったFCオーナーとの対立や7Pay問題によって低迷していた株価は上昇しています。
セブン&アイ・ホールディングスの株価推移画像出典元:グーグルファイナンス
では、セグメント別の業績を詳しく見ていきましょう。
グループ内で一番利益を出している国内コンビニエンスストア事業は、前年同期に対し増収増益となっています。
国内コンビニエンスストア事業の主要会社はもちろん、セブン‐イレブン・ジャパン。セブン‐イレブン・ジャパンの業績を見ていきましょう。
上期のセブン‐イレブン・ジャパンの業績は、営業総収入4,476億500万円(前年同期比0.3%増)、営業利益は1,324億2,500万円(前年同期比3.9%増)と前年同期比で増収増益となっています。
天候影響等により既存店売上は前年同期を下回ったものの、店舗数が増加したことが寄与し増収に。営業利益は 荒利率の改善と販管費適正化により増益となっています。
2019年7月には、セブン‐イレブン・沖縄が全国で最後の出店エリアとなる沖縄県への店舗展開をスタートさせたことにより、47都道府県全てにセブン‐イレブン店舗の出店を達成。当第2四半期末の国内店舗数は、前期末比158店増の2万1,034店になりました。
グループ内で最も収益を上げている海外コンビニエンスストア事業は、前年同期に対し増収増益となっています。収益の7割がガソリンの売上によるものです。
米国内既存店商品売上が前年を上回ったことと、ガソリンの売上が伸長したことにより前年同期比で増収に。営業利益は、既存店売上・荒利率の伸長とガソリン収益の向上により増益となっています。
7-Eleven, Inc.は、商品売上・営業利益・店舗数ともに右肩がりに推移しています。上のグラフは前期末までの状況を反映していますが、当第2四半期末の店舗数は前期末比37店増の9,610店となっています。
スーパーストア事業は、前年同期に対し減収、営業利益は2桁減益となっています。イトーヨーカ堂、ヨークベニマルともに既存店売上は前年を下回りましたが、ヨークベニマルは荒利率の改善により増益を確保。一方、イトーヨーカ堂は前年同期比72.7%減と大幅な減益に。
【グラフ】イトーヨーカ堂の事業部別営業利益推移
上のグラフのとおり、イトーヨーカ堂のライフスタイル事業(衣料・住居)は赤字が続いているため、2018年度比で約50%まで売場面積縮減を目指すとのことです。
百貨店事業は、前年同期に対し減収、6億1,800万円の赤字となっています。なかでも、百貨店事業の柱であるそごう・西武は10億7,800万円(前年同期は△2億9,200万円の営業損失)の赤字と赤字幅が拡大しています。
首都圏基幹店である池袋、横浜、千葉、渋谷、大宮の5店舗は前年を上回って推移していますが、地方・郊外店は苦戦。店舗閉鎖・減積となるのは、苦戦している地方・郊外店となります。首都圏への経営資源集中を加速させる戦略です。
金融関連事業は、前年同期に対し減収減益となっています。
クレジットカード事業に付随するセキュリティ対策強化に向けたカードのIC化や、バーコード決済サービス「7pay(セブンペイ)」に関する費用を計上しています。なお、7payは2019年9月3日をもってサービスを廃止しています。
セブン&アイ・ホールディングスは、7pay不正問題で多大な迷惑をかけたとし、役員報酬の自主返上と子会社における代表者の異動を発表。 記者会見で二段階認証を知らなかったことが露呈したセブン・ペイ社長の小林氏は10月10日をもって退任し、同日付でセブン・ペイ取締役だった水落氏が社長に就任。
また、セブン&アイ・ホールディングス社長の井阪氏と副社長の後藤氏は月額報酬の30%を3ヵ月減額、システム本部長の粟飯原氏は月額報酬の10%を3ヵ月減額するとのこと。
営業収益は前年同期比で減収となりましたが、営業利益はセブン&アイ・フードシステムズやロフトの営業利益が前年同期を上回ったこと等により増益に。
セブン&アイ・フードシステムが手がけるファミリーレストラン・デニーズでは、売上も既存店客数も減少していますが、商品粗利率改善により営業利益が前年同期比19.8%増と大幅な増益を確保。
ニッセンホールディングスは9,900万円の赤字(前年同期は△3億9,300万円の営業損失)となっていますが、赤字幅は縮小しています。この赤字幅縮小も専門店事業の利益を押し上げる要因となりました。
2020年2月期の通期業績は、前期に対し減収増益となる見込みです。なお、利益は据え置かれていますが、営業収益は下方修正されています。
国内コンビニエンスストア、スーパーストア、百貨店、専門店それぞれの事業の営業収益を下方修正したことにより、直近の業績予想より5億3,000万円減の営業収益予想となっています。
株式会社 セブン&アイ・ホールディングスは、2005年9月1日に株式会社セブン-イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社デニーズジャパンの3社の共同株式移転により設立された純粋持株会社です。
セブン&アイ・ホールディングスグループは、セブン&アイ・ホールディングスを含む160社(2019年2月末現在)によって形成される、流通業を中心とする企業グループで、主として国内コンビニエンスストア事業、海外コンビニエンスストア事業、スーパーストア事業、 百貨店事業、金融関連事業、専門店事業を行っています。
株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを中心とした、直営方 式及びフランチャイズ方式によるコンビニエンスストア事業
株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを中心に、主にフ ランチャイズ・システムからなり、「セブン‐イレブン」という同一店舗名でチェーン展開を行っています。
7‐Eleven,Inc.を中心とした直営方式及びフランチャイズ方式によるコンビニエンスストア事業
主にガソリンスタンドを併設した店舗を米国及びカナダで積極的に展開しており、同社のチェーン全店売上に占めるガソリン売上が約半分を占めています。
食料品や日用品等の日常生活で必要なものを総合的に提供する小売事業
主として株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、株式会社ヨークマート等で構成され、GMS(総合スーパー)事業と食品スーパー事業からなります。
多種多様で上質な商品を提供する小売事業
銀行業、クレジットカード事業、リース事業等
専門性が高く、特徴のある商品・サービスを提供する小売事業
不動産事業等
画像出典元:「株式会社セブン&アイ・ホールディングス」決算説明会資料・決算補足資料・グループ戦略と事業構造改革について
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