独自のATMサービスを提供する、セブン&アイ・ホールディングス傘下「セブン銀行」の中間決算を見ていきます。
2020年3月期第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し経常ベースで増収減益、最終利益は黒字に転換しています。
増収となった主な要因は、米国子会社のFCTI社においてATMの利用件数増加が寄与したことによるものです。経常利益は、持分法による投資損失26億6,600万円を7pay廃止に伴う損失として経常費用に計上したことにより前年同期比で減益に。
純利益が黒字転換したのは、前期上期に米国子会社FCTI社の減損を行ったため。また、セブン銀行単体において、関係会社株式評価損25億9,000万円を「7pay」廃止に伴う損失として特別損失を計上しましたが、それも吸収されています。
次に、セブン銀行単体の業績を見ていきましょう。
セブン銀行単体の業績は、前年同期に対し減収増益となっています。
前年同期にはファンドからの配当が3億円ほどあったこと、またATM利用件数が前年割れしたことで経常収益は前年同期比で減収に。一方、コスト削減効果により経常利益は増益を確保しました。
2019年9月末のATM設置台数は25,342台(2018年9月末比2.3%増)となり、ATM受入手数料も1億円増加。一方、ATM1日1台当たりの平均利用件数、総利用件数はともに減少しています。
累計ではこのような結果ですが、低迷していたATM平均利用件数は、2019年9月、10月には前年同月比増を達成。ここ数年、利用件数の減少を設置台数増でカバーするという収益構造でしたが、スマートフォンでのATM取引が可能になったり、PayPayやLINE Pay、au walletのチャージが可能になったりと時代のニーズに合ったATMを開発することで、ここに来てATM利用件数が増加。前年同月比増となったのは、なんと約6年ぶりだそうです。
今後、これが定着するかが鍵となりそうです。またメルペイや楽天ペイとも連携すれば、さらに利用者数は増加すると思われます。
セブン銀行は1月10日、メタップス及びメタップスペイメントと業務提携の推進に合意したと発表。メタップスは、保有するメタップスペイメント株式の20%をセブン銀行に譲渡し、メタップスペイメントはセブン銀行の持分法適用会社となる予定です。
なお、通期の業績予想に変更はありません。
セブン銀行は、提携金融機関からの手数料を主な収益としており、これを「ATM受入手数料」と呼んでいます。個人がATMを利用する際に支払う手数料は提携先銀行の収入となり、提携先銀行はATMサービスの対価としてセブン銀行に受入手数料を支払います。
たとえATM利用手数料が0円であっても提携先からは受入手数料が支払われる仕組みです。提携先銀行に手数料を支払ってもらい、ATM利用者数により収入が決まるというビジネスモデルとなっています。
セブン銀行は2001年に開業。原則24時間365日止まらないATMネットワークをベースとした金融サービス=「ATMサービス」を主な業務とする銀行です。また、子会社を通じて、海外でのATMサービスの提供や事務受託サービスの提供も行っています。
グループは、セブン銀行、連結子会社4社(FCTI, Inc.、PT. ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONAL、株式会社バンク・ビジネスファクトリー、株式会社セブン・ペイメントサービス)及び関連会社3社(株式会社セブン・ペイ、TORANOTEC株式会社、TORANOTEC投信投資顧問株式会社)の計8社で構成 (2019年3月31日時点)。
国内事業セグメントにおいては、基幹事業であるATMプラットフォーム事業に加え、決済口座事業を行っています。また、海外事業セグメントにおいては米国、インドネシアにてATMサービスを展開しています。
セブン&アイHLDGS.のグループ各社のセブン‐イレブン、イトーヨーカドー等の店舗をはじめ、空港や駅、金融機関店舗等にATMを設置。
普通預金や定期預金、ローンサービス、海外送金サービス、デビットサービスなどの口座サービスを提供。また、連結子会社の株式会社バンク・ビジネスファクトリーは、セブン銀行の事務受託に加え、他金融機関等からの事務受託事業も展開しています。
米国において、当社連結子会社のFCTI,Inc.を通じATMサービスを展開。また、インドネシアにおいて現地企業と合弁で設立した連結子会社のPT. ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONALもATMサービスを展開。
画像出典元:「株式会社セブン銀行」決算説明資料
2020年3月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し増収増益となっています。米国子会社のFCTI社が当第1四半期で黒字を達成したことが寄与しました。
一方、セブン銀行単体では経常収益は微増、経常利益は微減となっています。
セブン銀行単体の業績をもう少し詳しく見ていきましょう。
セブン銀行単体の業績は、前年同期比でほぼ横ばいとなっています。
セブン銀行の主要収益源であるATM受入手数料は微減となりましたが、ATM受入手数料単価は前年同期比で1.8円上昇。
一方、ATM設置台数は増加しているものの、ATM利用件数は減少を続けています。
平均利用件数のピークは2009年度で、以降減少傾向にあるわけですが、ATM設置台数の増加により総利用件数が増えるという構造で総利用件数は右肩がりに上昇してきました。しかし、当第1四半期で創業来初めて総利用件数が減少。前年同期比で300万件も減少しています。
セブン銀行のATM利用時の手数料は提携金融機関が決めるわけですが、その手数料を有料化する銀行は増加しています。手数料が有料化されると利用を控える傾向が強くなり利用件数は減少傾向に。加えて、キャッシュレス化の流れにより現金離れが進み、ATM離れも加速しています。
対応策として、セブン銀行は金融機関以外の資金移動業者等との新規提携を積極的に推進しています。既に、nanacoや交通系電子マネー、楽天Edyへのチャージが可能となっていますが、さらに6月にはau WALLETのATM利用を開始。
クレジットカードや銀行からでもチャージはできますが、現金でのチャージを希望する利用者は意外と多いとのこと。LINE PayやPayPayにもチャージできるATMは、セブン銀行の大きな強みと言えるでしょう。
ATMで使えるプリペイドカード・その他
8月1日、セブン銀行の持分法適用関連会社である株式会社セブン・ペイは、7月1日に導入したバーコード決済サービス 7pay において一部アカウントに対する不正アクセスが発生したことに関して調査を行い、今後の対応を検討した結果、9月30日をもって7pay サービスを廃止することを決定したと発表。
なお、これによるセブン銀行の連結業績への影響は軽微とのこと。7payサービス廃止により販促費が発生しなくなる一方で、投資したシステムの今後の財務インパクトの見通しは立っていませんが、業績予想に変更はありません。
画像出典元:「株式会社セブン銀行」決算説明資料
2019年3月期通期の業績は、経常ベースでは前期に対し増収増益、経常収益・経常利益ともに最高益を達成しました。ATM台数が順調に増加し、利用件数が伸長したことに加え、米国でのATM事業本格化による収益が上積みされたことが寄与。
一方、米国連結子会社FCTI及びインドネシア連結子会社ATMiに係る収支が計画を下回って推移したことから、事業計画の見直しを行い、FCTI・ATMi両社に係る固定資産(主にFCTIの株式取得時に発生したのれん)等について減損損失148億3,000万円を特別損失として計上したことにより、当期純利益は前期比で半減しました。
【グラフ】業績推移(連結)
基幹事業のATMプラットフォーム事業が堅調に推移したことにより、セブン銀行単体においても経常ベースでは前期に対し増収増益、経常収益・経常利益ともに最高益を達成しました。
一方、海外子会社等の株式について実質価額の低下を認識し、関係会社株式評価損218億8,900万円を特別損失として計上したことにより、当期純利益は前期比で半減しました。
【グラフ】セブン銀行単体の業績推移
国内事業においては、ATM利用者拡大のため、金融機関以外の資金移動業者等との新規提携を積極的に推進。また、銀行口座を介さないで現金が受取れる現金受取サービス、交通系電子マネー及び楽天Edyへのチャージの取扱いを開始しました。
その結果、2019年3月末の提携金融機関等は、銀行124行、信用金庫257庫、信用組合127組合、労働金庫13庫、JAバンク1業態、JFマリンバンク1業態、商工組合中央金庫1庫、証券会社11社、生命保険会社7社、その他金融機関等73社の計615社に。預貯金取扱金融機関との提携数は横ばいですが、ノンバンクとの提携数が伸長しました。
ATM設置台数は年700~800台、多い時では年1,000台ペースで増加し、2019年3月末には前期末比760台増の25,152台(前期末比3.1%増)に。
【グラフ】ATM設置台数と提携金融機関等数の推移
一方、総利用件数は8億2,900万件(前期比1.8%増)と増加しているものの、ATM1日1台当たりの平均利用件数は92.3件(前期比1.9%減)と平均利用件数は低下傾向にあります。これは、地方銀行の手数料有料化等の影響によるもので、新たにこれから有料化する地域もあるため、平均利用件数の低下傾向は続くと思われます。
セブン銀行収益構造は、平均利用件数の低下傾向をATM設置台数の増加で補うことにより総利用件数が増えるという構造になっています。
【グラフ】ATM利用件数の推移
個人の預金口座数は200万口座を突破し、200万1,000口座(前期比9.5%増)に。個人向け預金残高は4,346億円(前期比6.1%増)、個人向けローンサービスの残高は226億円(前期比0.1%減)となりました。
【グラフ】決済口座事業 主要計数
米国連結子会社FCTIは、赤字。2018年12月末現在のATM台数は12,795台となりました。
【グラフ】業績推移(FCTI)
「本業を伸ばしつつ事業の多角化を実現」を掲げて2017年度よりスタートした中期経営計画2年目の進捗状況は、ATMプラットフォーム事業と決済口座事業が大きく下振れとなりました。
中期経営計画のKPIを「3年で経常収益プラス400億円、経常利益プラス80億円」としていましたが、計画進捗の遅れを回復するのは困難であると判断し下方修正されています。
2020年3月期の業績は、前期に対し増収となるも、経常利益ベースで減益となる見込みです。
セブン銀行単体においても、前期に対し増収となるも、経常利益ベースで減益となる見込みです。
セブン-イレブンが構造改革に集中するということで出店ペースをスローダウンした影響により、ATM設置台数もスローダウンを余儀なくされることに。ATM純増台数は350台の見込みで、受入手数料は3億円の減少が予想されます。また、次世代のATM設置によるコスト増も。
米国連結子会社FCTIにおいては大規模なリストラ策を進め、また低採算のATMを約1,000台整理し黒字化を目指すとのことです。
画像出典元:「株式会社セブン銀行」決算説明会資料
2019年3月期第3四半期連結累計期間の業績は、経常収益、経常利益ともに同期間において過去最高を更新しました。一方、海外事業を推進する過程で発生した減損損失147億1,900万円を特別損失として計上したことにより、純利益は前年同期比△63.4%となりました。
国内事業は好調に推移していますが、インドネシアにおける連結子会社ATMiは事業計画から大幅な乖離が生じていることにより、事業撤退の準備を進めています。
セブン銀行単体では、経常収益が910億円、経常利益が342億円となりました。ATM受入手数料は821億円で、収益のうち9割がATM受入手数料です。
四半期純利益は、米国連結子会社FCTIならびにインドネシア連結子会社ATMiの株式について実質価額の低下を認識し、関係会社株式評価損217億5,600万円を特別損失として計上したことにより85億となりました。
当第3四半期連結累計期間のATM1日1台当たり平均利用件数は93.6件(前年同期比1.7%減)、総利用件数は63,200万件(前年同期比2.1%増)と推移。また、2018年12月末現在の提携金融機関は616社となり、国内のATM設置台数は今期中に25,350台設置予定です。
なお、米国子会社FCTI社においては2018年9月末現在のATM設置台数は13,525台、米国セブンイレブンに設置したATM設置台数は8,202台となっています。
特別損失(のれん等の減損損失)が発生することに加え、海外事業における収益性改善の遅れ等のため、9月に通期の業績予想を変更しましたが、それ以降変更はありません。
ATMをさらに拡大していく予定。また、米国連結子会社は来年度の黒字化を目指しています。
画像出典元:「株式会社セブン銀行」決算説明資料
2019年上半期の業績は、米国連結子会社FCTI, Inc.とインドネシア連結子会社PT.ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONALの収支が計画を下回っため、減損損失146億円を特別損失に計上し、純利益はマイナス2億円となりました。
米国事業については、約8,000店舗のセブン-イレブンにATMを設置し、安定した利益体質の構築を目指しています。一方で、インドネシア事業は収益改善の見通しがつかないため撤退準備を進めると発表しました。
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