LINE株式会社の決算/売上/経常利益を調べ、IR情報を徹底調査

執筆: 山中恵子

最終468億円の赤字!Zホールディングスとの経営統合により上場廃止となる「LINE」の通期決算

2019年12月期 通期決算

  • 売上収益:2,274億8,500万円(前期比+9.8%)
  • 営業利益:△389億9,700万円
  • 税引前利益:△516億1,600万円
  • 当期利益:△468億8,800万円

Zホールディングスとの経営統合を発表した「LINE」の決算を見ていきましょう。なお、今回は決算説明会は開催されませんでした。

2019年12月期通期の業績は、前期に対し増収となったものの、最終468億8,800万円の赤字となっています。2期連続の赤字です。

まず、LINEプラットフォームの月間アクティブユーザー数(MAU)を見てみましょう。主要4カ国(日本・台湾・タイ・インドネシア)のMAUは、前期比で横ばいの1億6,400万人。インドネシアで500万人減少する一方で、日本では400万人増加しています。

次に売上収益ですが、増収となった主な要因は広告の売上増加によるものです。広告売上は、LINEの主な収益源。全社売上の54.9%を占め、前期比で166億円増加しています。

一方、人件費やマーケティング費用の増加等が響き、大幅な営業損失を計上。事業別ではコア事業は増収増益となったものの、戦略事業はFintechに関連する開発やマーケティング費用の増大により666億円の赤字となりました。

LINEは、2016年にニューヨーク証券取引所および東京証券取引所市場第一部に上場後、売上収益を堅調に伸ばしてきましたが、近年は戦略事業への投資が響き、2期連続の最終赤字。大幅な赤字を抱えたままZホールディングスと経営統合することとなりました。

スマホ決済アライアンス「MoPA」終了

2019年12月19日、LINE Pay、メルペイ、NTTドコモ、KDDIによって運営される加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」は、LINE Pay側のサービス方針転換を理由に、活動を終了することに合意したと発表。LINEとZホールディングスの経営統合が影響したものと思われます。

LINE Payとメルペイは、2019年3月に戦略的業務提携を締結し「MoPA」を設立。6月にはドコモが、9月にはKDDIが参画し、国内でのキャッシュレス決済普及に向けて体制を強化していましたが、1年足らずでの解散となりました。

そのLINE Payについて見ていきましょう。

第4四半期ではLINE Payのグローバル取扱高は3,550億円、グローバルMAUは652万人となり、いずれも前四半期より増加。LINE Payの国内MAUも前四半期比84万人増の370万人となっていますが、これは第4四半期で年末クーポンのキャンペーンを実施したことが要因です。

キャンペーンを実施すると利用者が増えるが、キャンペーンが終了すると利用者が減少するという構造になっています。

ZHDと経営統合

1. LINEとZHD経営統合へ

2019年11月18日、LINEとZホールディングスは両社グループの経営統合について、資本提携に関する基本合意書を締結すると発表。同日、LINEの出澤社長とZホールディングスの川邊社長は共同記者会見を行いました。

本経営統合に至った理由として、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」の早期実現を挙げています。現在、プラットフォーム企業は米中に集中しており、米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)、中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)の独占・寡占状態です。

たとえLINEとZホールディングスが経営統合したとしても、企業規模では圧倒的な差があります。ただ、LINEの親会社は韓国のNAVER、Zホールディングスの親会社はソフトバンク、ソフトバンクの親会社はソフトバンクグループと、グループ全体のシナジー効果を考えると、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」を目指すというのはあながち夢物語ではないのかもしれません。

なお、経営統合に関する最終合意は、2019年12月23日に締結されました。

 

2. 経営統合までのスキーム

経営統合までのスキームは複雑ですが、現状においてはLINEの親会社はNAVER、Zホールディングスの親会社はソフトバンクとなっています。

【現状】

まず、ソフトバンクとNAVERは、LINEの非公開化を目的として共同公開買付けを実施。公開買い付け価格は1株5,380円で、公開買付けは2020年5月から6月に開始、買付代金は約3,720億円、ソフトバンク及びNAVERはそれぞれ50%の買付けを行う予定です。共同公開買付けの成立後にスクイーズアウト手続き実施予定のため、LINEは上場廃止となる見通しです。

その後、複雑なスキームを経て、10月にはLINE承継会社はZホールディングスの子会社となり、ZホールディングスはソフトバンクとNAVERが50%ずつ出資する新会社の傘下に。ソフトバンクグループの構造がますます複雑となります。

【本経営統合後】

なお、業績予想は非開示となっています。

LINE PayとPayPayは同じグループとなり、メルペイはスマホ決済の草分け的存在のOrigami Payを運営するOrigamiを買収するなど、消耗戦が続いているスマホ決済の動向にも今後注目です。

画像出典元:「LINE株式会社」決算説明資料・公式HP

 

 

2019年12月期 第3四半期決算(2019年10月更新)

  • 売上収益:1,667億200万円(前年同期比+10.2%)
  • 営業利益:△275億2,100万円
  • 税引前利益:△362億2,400万円
  • 四半期利益:△339億6,100万円

コミュニケーションアプリLINEを提供する「LINE」の決算を見ていきます。

2019年12月期第3四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益、最終339億6,100万円の赤字となっています。

増収となった要因は、広告事業が堅調に推移したことによるものです。なかでもディスプレイ広告が好調。LINE NEWSとスマートチャネルのLAPインプレッション増により、ディスプレイ広告の第3四半期の売上収益は前年同期比42.1%増と大きく成長しています。

大幅な赤字となったのは、先行投資に加え、第3四半期ではゲームへのマーケティング費用が増加したことによるものです。

ただ、第3四半期は大型キャンペーンを実施した第2四半期からは投資額が約100億円減少しています。投資額は第1四半期並みになるということでしたが、実際には第1四半期よりも投資額を抑えることに成功。

一方、LINE Payへのマーケティング費用を97億円から8億円に下げたことで、国内MAUは490万人から286万人に減少。約4割減少しています。

LINE Payは、広く知ってもらう、とりあえず使ってもらうという面ではなくアクティブ化に注力する時期に移行。ばらまきではなく、効果的な投資効率を重視するとしています。実際、第2四半期での大型キャンペーンを通じて獲得したライトユーザーの利用は減ったもののグローバル取扱高は維持。送金件数は第1四半期比で2倍以上、リテンション率は75%以上とコアユーザーによるLINE Pay利用は習慣化しています。

当第3四半期連結累計期間末のLINE Payグローバル登録ユーザー数は5,000万人突破、 国内登録ユーザー数は3,690万人(前四半期比67万人増)、本人確認完了者数は500万人突破しました。

新規事業

LINEは第3四半期において、金融事業における各種サービスをリリース。

まず8月20日、子会社である LINE 証券株式会社を通じ、LINE上で取引ができる新スマホ投資サービス「LINE 証券」をAndroid 版にて先行スタート。LINE上で簡単に口座開設申込、取引が可能となりました。

また、LINEの仮想通貨事業およびブロックチェーン関連事業を展開する LVC 株式会社は9月6日、仮想通貨交換業者への登録が完了。9月17日に、国内向け仮想通貨取引サービス「BITMAX」の提供を開始しました。

そのほか、7月30日には台湾の金融監督当局である金融監督管理委員会よりインターネット専業銀行業の認可を取得。台湾でのインターネットバンキングの提供準備を開始しています。

金融事業に注力するLINEですが、今後も規律ある投資を行っていくとのこと。第4四半期は年末商戦やゲームへのマーケティング費用が増加する見込みですが、第1四半期並みの投資を実施予定。広告事業は、動画広告を拡大していくとしています。

3年以内の収益化を目指しているそうですが、そのロードマップは取りまとめ中とのことです。

画像出典元:「LINE株式会社」決算説明資料

 

 

2019年12月期 第2四半期決算

  • 売上収益:1,107億6,000万円(前年同期比+11.5%)
  • 営業利益:△218億1,600万円
  • 税引前利益:△284億9,000万円
  • 四半期純利益:△266億1,900万円

LINE Payで300億円の大盤振舞いをした「LINE」の決算を見ていきます。

2019年12月期第2四半期連結累計期間の売上収益は前年同期に対し+11.5%成長したものの、最終266億1,900万円の赤字となっています。

大幅な赤字となった主な要因は、5月20日から実施した「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」のマーケティング費用やプロモーション費用によるものです。このキャンペーンは当初予定していた予算外の戦略投資であり、消費税増税前にユーザー基盤をもう一段階上げていくという狙いで実施されたものです。

よって投資額は第2四半期がピークで、第3四半期は第1四半期並みの投資額となる見込みです。

具体的な数字を見ると、第2四半期ではマーケティング費用に131億円投下しており、前年同期比で84億円増、前四半期比で56億円増と突出しています。うち日本でのマーケティング費用が113億円です。

一方、広告事業は堅調に推移しています。LINEの売上収益のうち、55%が広告事業によるものです。

国内のMAU(月間アクティブユーザー)は前年同期比500万人増の8,100万人となり、そのうちの86%が毎日利用しています。

それでは、事業別の業績を詳しく見ていきましょう。

セグメント別の業績

コア事業

  • 売上収益:963億5,500万円(前年同期比+10.4%)
  • 営業利益:168億6,100万円(前年同期比+10.4%)

コア事業の第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となっています。

第2四半期の営業利益率が17.8%と前四半期比で0.6ポイント改善しているのは、広告事業の売上増加に加え、ゲーム事業やスタンプ事業のマーケティング費用の減少によるものです。

コア事業では広告事業が成長し、なかでもディスプレイ広告が伸びています。

LINE NEWSの継続的な成長と、スマートチャネルでの広告表示の本格展開を受け、第2四半期ではLAPインプレッションが急激に伸びています。それに伴い、ディスプレイ広告の売上も増加しています。

スマートチャネルは6月から動画広告も開始しています。

ただ、LAPインプレッションが前年同期比+77.8%と大幅に伸長しているのに対し、ディスプレイ広告の売上は前年同期比+24.8%にとどまっています。これは、広告単価が伸びていないことが要因の一つとのこと。

6月からLAPのインプレッション定義を変更し基準を厳しくしたので短期的には売上が落ちる可能性もありますが、広告主にとってはメリットがあるので利用増が期待できます。

戦略事業

  • 売上収益:144億500万円(前年同期比+19.0%)
  • 営業利益:△384億8,300万円(前期同期は△140億4,800万円の営業損失)

戦略事業の第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収となったものの、384億8,300万円の赤字となっています。

第2四半期だけで234億9,600万円の赤字です。ほぼすべて、大盤振る舞いの300億円キャンペーンによるものです。

300億円キャンペーンを行った結果、新規に約300万人の本人確認済みユーザーのアクティブ化に成功しています。グローバルMAUは前年同期比+181.1%の741万人となり、今期のKPIであるグローバルMAU1,000万人に一気に近づきました。

狙いどおりとなったと言えるでしょう。

LINE Payの国内登録ユーザー数は3,600万人超、国内取扱高は前年同期比2.2倍以上成長しています。継続的に利用し続ける割合も8割に上昇しています。

一方、LINE Payの決済箇所も順調に拡大し、前四半期比35万か所増の171万か所となっています。

各社提携の動きも見られます。

6月27日には、LINE Pay株式会社と株式会社メルペイが設立したモバイルペイメントにおける加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance」に株式会社NTTドコモが参画すると発表がありました。

NAVER Payとのサービス連携開始や、LINE Pay VISAクレジットカードの導入といった動きも見られます。

乱立するモバイル決済ですが、今後提携の波が来るのか、淘汰の波が来るのか注目です。なお、業績予想は開示されていません。

画像出典元:「LINE株式会社」決算説明会資料・公式HP

 

 

2019年12月期 第1四半期決算(19年4月更新)

  • 売上収益:553億2,300万円(前年同期比+13.5%)
  • 営業利益:△78億9,200万円
  • 税引前利益:△112億7,000万円
  • 四半期利益:△103億1,400万円

2019年12月期 第1四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収となりましたが、営業利益は赤字に転落。最終損益は103億円の赤字となりました。

広告売上の堅調な成長とゲーム事業におけるマーケティング費用減少により増収となりましたが、LINE Payプロモーション費用への積極的な投資により大幅な赤字となりました。

全体の売上収益のうち広告売上が占める割合は54%、地域別売上では日本が75%を占めました。

アジア主要4ヶ国(日本・台湾・タイ・インドネシア)合計の月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比で100万人減少し、1億6,400万人になりました。インドネシアは引き続き減少傾向にあり、前年同期比で800万人減少しました。一方、日本においては500万人増の8,000万人となりました。

各セグメントの業績

コア事業

  • 売上収益:479億4,800万円(前年同期比+12.3%)
  • 営業利益:82億6,600万円(前年同期比+2.4%)

コア事業は、広告事業やスタンプ事業の売上増加に加え、ゲーム事業におけるマーケティング費用の減少により増収増益となりました。営業利益率は前年同期比では1.7ポイント低下しましたが、前四半期の11.4%からは大きく改善し17.2%となりました。 

LINE GAME、LINE マンガ、LINE MUSICなどのコンテンツも順調に推移しました。

新しい取り組みとしては、4月中に全てのLINEユーザーにスマートチャネルの配信を開始します。

スマートチャネルとは、LINEのトークルーム上部に設置されている情報エリアのことです。昨年11月よりテスト配信を行っており、天気予報などの情報を提供していますが、将来的には広告を配信することで、さらなる広告売上拡大が期待できます。

戦略事業

  • 売上収益:73億7,500万円(前年同期比+21.8%)
  • 営業利益:△149億8,700万円

戦略事業の売上収益は、LINE FRIENDSの売上が季節要因で減少したことにより前四半期では減少したものの、前年同期比では+21.8%となりました。一方、利益面では150億円の損失となりました。

LINE Payにおいて決済ユーザー拡大のために積極的なプロモーションを実施したことや、金融事業のサービス拡大に伴う人件費増加が響きました。今期は600億円の戦略投資を実施予定であり、計画どおり投資が進んでいるとのことです。

O2O(Online to Offline)・コマース分野においては取扱高が拡大しており、LINE Payや広告との連携を図ることで大きなシナジー効果の創出を目指すとのこと。

具体的には、昨年LINEデリマにおけるLINE Payの決済比率は4%でしたが、直近では18%と上昇しており、LINEプラットフォームのエコシステム強化につながっています。

第1四半期におけるLINE Payグローバル取扱高は2,520億円(前年同期比+45.8%)と大幅に増加しました。

前四半期では台湾で保険料納付による一時的な取扱高の増加があったほか、ポイントの還元率を2%から1%に引き下げた結果、台湾での取扱高は前四半期比で減少しましたが、日本国内における取扱高は順調に推移しています。

毎月実施している「Payトク」キャンペーンにより認知度も向上し、グローバルMAUは430万人(前年同期比+85.2%)となり、今期のKPIであるグローバルMAU1,000万人に向け着実に拡大しています。

新しい取り組みとしては、国内パートナー第一弾としてメルペイと提携。2019年初夏を目途にメルペイ及びLINE Payにおける加盟店を相互に開放し、それぞれのユーザーが双方の加盟店で決済できるようになります。

また、4月にはLINE Payアプリをリリースし、「LINE Pay かんたん本人確認」の提供も開始。LINE Payユーザーの利便性が向上することにより、ユーザーの活性化、加盟店拡大につなげ、さらにはLINEプラットフォームの他サービスとの連携強化も期待できます。

3年以内の収益化を目指すとしていますが、モバイル決済が乱立している中、どれだけのシェアを得られるかが鍵となりそうです。なお、業績予想については開示されていません。

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事業内容

LINEの親会社は韓国ネイバーですが、ライブドアのメディア事業を吸収合併しているため、ライブドアの遺伝子も引き継いでいます。

LINEのルーツは、2000年に設立されたハンゲームジャパン株式会社。2003年にNHN Japan 株式会社に商号変更し、2007年に子会社として、ネイバージャパン株式会社を設立。2010年に株式会社ライブドアを子会社化し、翌2011年に コミュニケーションアプリ「LINE」の提供を開始。

スタンプ機能と無料通話機能がリリースされると、瞬く間に日本で最も使用されるコミュニケーションアプリとなりました。

2012年にNHN Japan株式会社、ネイバージャパン株式会社および株式会社ライブドアの3社が経営統合し、2013年にLINE株式会社に商号変更。2016年にニューヨーク証券取引所および東京証券取引所市場第一部に上場。

当初はスタンプやゲームが主な収益源でしたが、現在は広告売上が半分以上占めるようになりました。

事業内容は、「コア事業」と「戦略事業」の2つに区分されています。

コア事業

全体の収益の9割弱がコア事業で占められています。

1

広告サービス

  • ディスプレイ広告
    タイムラインやLINE News等に掲載される広告
  • アカウント広告
    LINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプ、LINEポイント等
  • その他の広告
    livedoor blog、NAVERまとめ、LINE バイトに掲載される広告

新サービス「LINE Sales Promotion」

2

コミュニケーション

  • LINEスタンプ
  • クリエイターズスタンプ等
3

コンテンツ

  • LINE GAME
  • LINE マンガ
  • LINE MUSIC等

戦略事業

全体の収益のうち、戦略事業が占める割合はまだ1割強です。

1

LINE Pay

LINEでお金がやりとりできる”スマホのおサイフサービス”

 

提携サービス・店舗での買い物や、LINEの友だち同士での割り勘・送金もすべてスマホひとつで可能

2

金融サービス

  • LINEスマート投資
  • LINE証券
  • LINEほけん
  • LINEスコア
  • LINEポケットマネー
  • LINE Bank(仮)
  • 仮想通貨取引所「BITBOX」

3

O2O(Online to Offline)・コマース

ショッピング領域

  • LINEショッピング
  • SHOPPING GO

グルメ領域

  • LINEデリマ
  • LINEポケオ

トラベル領域

  • LINEトラベル
4

LINE FRIENDS

キャラクター商品の販売

5

AI/Clova

LINEが開発したAIアシスタント「Clova」

 

画像出典元:「LINE株式会社」決算説明会資料

 

 

2018年12月期 通期決算(19年2月更新)

  • 売上収益:2,071億8,200万円(前期比+24.0%)
  • 営業利益:161億1,000万円(前期比△35.8%)
  • 税引前利益:33億5,400万円(前期比△81.5%)
  • 当期利益:△57億9,200万円
  • 親会社の所有者に帰属する当期利益:△37億1,800万円

2018年通期の業績は、前期に対し増収減益となりました。売上収益は過去最高を達成しましたが、積極的な投資が響き、最終損益は37億1,800万円の赤字となりました。

売上収益が増加した主な要因は、広告売上の増加によるものです。営業利益が減少した主な要因は、人件費、AIやシステム等の開発費、外注費が増加したことによるものです。

今期、特に注力したPay・Fintech分野ではグローバルLINE Pay決済高が1兆円を超え、日本国内のスマホ決済箇所は100万箇所を達成しました。

アジア主要4ヶ国合計の月間アクティブユーザー数(MAU)は前期比で微減となりましたが、日本・台湾・タイの3ヶ国合計のMAUは、前期比で5.7%増加しました。インドネシアのみ減少しました。

ユーザーのエンゲージメントを示すDAU/MAU比率は、主要4ヶ国では77%、主要3ヶ国では80%を超え、非常に高い水準を維持しています。

日本国内のMAUは前期比7.7%増の7,900万人となり、そのうちの85%が毎日利用しています。

各セグメントの業績

コア事業

コア事業の売上収益、セグメント営業利益は以下のとおりです。

  • 売上収益:1,783億9,800万円(前期比+14.0%)
  • セグメント営業利益:265億5,900万円(前期比△22.5%)

コア事業の増収の主な要因は、ディスプレイ広告やアカウント広告が好調だったことによる広告売上の増収が貢献したことによるものです。

一方、セグメント営業利益はコミュニケーション・コンテンツの売上収益の減少、LINEバイトやLINEマンガなどのマーケティング費用の増加などにより前期に対し減益となりました。

営業利益率は、コンテンツサービス拡大のためのマーケティング費用や広告プラットフォームの移行費用が増加したことにより14.9%となりました。

広告売上収益は、1,082億円(前期比29.9%増)となりました。

アカウント広告では、従来の月額固定方式から従量課金方式への変更を行いました。その結果、アカウント広告の売上は567億円(前期比24%増)となりました。

ディスプレイ広告では、より拡張性の高い新広告プラットフォームへの移行を8月から順次開始し、年内に移行を完了させました。タイムラインおよびNEWSのインプレッションが引き続き増加し、ディスプレイ広告の売上は362億円(前期比34%増)となりました。

さらに新しい取り組みとして、「LINE Sales Promotion」の提供を開始しました。

コミュニケーション売上収益は285億円(前期比5.6%減)、コンテンツ売上収益は382億円(前期比4.8%減)と、それぞれ前期に対し減収となりました。

コンテンツ事業においては、ゲーム事業で新規タイトルのヒットと従来タイトルの安定運用によって収益の安定化が進むとともに、LINEマンガやLINE MUSICが大きく決済高を伸ばしています。

戦略事業

戦略事業の売上収益、セグメント営業損失は以下のとおりです。

  • 売上収益:287億8,400万円(前期比+59.5%)
  • セグメント営業損失:△349億3,100万円(前期は176億7,400万円の損失)

戦略事業の売上収益の主な増収要因は、FriendsやEコマースに関連する売上収益が増加したことによるものです。営業損失の主な増加要因は、Clova AIの開発費用やFintechに関連する開発やマーケティング費用の増大によるものです。

2018年4月に経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、日本国内のキャッシュレス化は本格的にスタートを始めました。そのような環境下、多くの事業者の参入によってモバイル決済の認知度は格段に上がり、市場が大きく活性化しました。

LINE Payにおいては、加盟店拡大に向けて店舗用アプリのリリースや自社決済端末の提供開始に加え、決済手数料を3年間無料にするキャンペーンを開始しました。さらに11月からは、QUICPayとの連携によるNFC決済への対応も開始し、一気に加盟店拡大が加速しました。

これらの取り組みにより、スマホ決済対応箇所は12月末時点で133万箇所となりました。

ユーザー向け施策としては、コード決済時の最大5%還元施策や、最大20%還元の「Payトクキャンペーン」などを実施しました。

これらの結果、2018年度のグローバル決済高は2.2倍(前期比126%増)となり、1兆円を超えるまでに成長しました。

コマース事業では、LINEショッピングとLINEデリマの取扱高が順調に拡大しました。AI事業では、トヨタ自動車との連携など、企業パートナーとの連携が拡大しました。

金融サービス事業では、LINEスマート投資、LINE保険をリリースしました。

LINEのこれから

来期は、特に広告とLINE Payに注力していく予定です。

広告事業では、「LINE Sales Promotion」という販促ソリューションを本格展開することで、広告価値の最大化と事業拡大を進めていきます。

2019年は、キャッシュレス化に向けてさらなる追い風が吹くと考えられます。消費税増税対策としてデジタル決済へのポイント還元や、ラグビーワールドカップ・東京オリンピック開催による多くの訪日観光客を受け入れるためにも、キャッシュレス社会の早期実現の必要性が高まっています。

このような事業環境下、LINE Payにおいては加盟店の拡大とユーザーの利用活性化に注力していきます。

画像出典元:「LINE株式会社」決算説明会資料

 

 

2018年第3四半期決算

  • 売上収益:1,512億1,100万円(前年比+24.7%)
  • 営業利益:67億4,500万円(前年比-72.4%)
  • 税引前利益:△2億2,600万円
  • 四半期利益:△76億9,000万円
  • 親会社の所有者に帰属する四半期利益:△60億6,800万円

2018年第3四半期連結累計期間において、売上収益は前年比+24.7%と増加したものの営業利益は前年比-72.4%と大幅な減益、最終損益は△60億6,800万円の赤字となりました。

広告サービスやLINEゲームなどを含むコア事業は安定した収益を確保しましたが、LINE Payを起点としたFintech新サービスやLINE Clovaなどの戦略事業への投資が響きました。

戦略事業の拡大のため、9月に1,480億円の転換社債を発行しました。調達した資金は、今後3年間の戦略事業への投資に充当する予定です。

コミュケーションアプリ「LINE」やゲーム事業は成熟期となり、Fintech、AI、Friends、Eコマースといった戦略事業に軸を移しつつあります。

特に、キャッシュレス後進国の日本ではキャッシュレス決済の利用はまだまだ浸透していません。多様化するキャッシュレス決済が進む中、SNS事業で獲得してきたユーザーをモバイル(スマホ)決済「LINE Pay」に取り込めるか期待するところです。

画像出典元:「LINE」決算説明会資料

会社概要

会社名 LINE株式会社
(2013年4月1日 NHN Japan株式会社より商号変更)
事業内容 コミュニケーションアプリ「LINE」およびLINEプラットフォーム上で展開するコンテンツ・サービス、その他ウェブサービス事業、AI事業、Financial事業の提供・運営
所在地 東京都新宿区新宿四丁目1番6号 JR新宿ミライナタワー23階
設立日 2000年9月4日
代表 出澤 剛
資本金 965億3,500万円(2019年9月末時点)

 

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